蚊㡡かや)” の例文
これは、翠紗すいしゃ蚊㡡かやのせいでもない。燭のゆらぐ加減でもない。光秀の心のうちにあるものの色であり影であろう。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すべてを片づけてから、夜の十時過になって、始めて蚊㡡かやの外まで来て、一言ひとこと見舞を云うのが常であった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
蚊㡡かや越しではあるが、九尺の大床のわきには、武者隠しの小襖こぶすまがある。その金砂子きんすなごは、内にかくしてある刺客せっかくの呼吸と殺気とに気味悪く燦々きらきらしているではないか。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
燭の影がことさら青く見えたわけは、光秀のまわりに翠紗すいしゃ蚊㡡かやが広くめぐっていたからであった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)