かや)” の例文
細君は漸く體を動かし始めて、かやつた糊を拭き取つたり、飛び散つた文殼を纒めたりして、鼻を啜り上げながら其邊を片附け始める。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
東京芝白金の近郊ちかく谷峡たにが三つ寄つた所がある。そこは、あちらもこちらも滴る許りの緑翠みどりで飾られて居るので唯谷間の湿つぽい去年の稲の株がまだかやされて居ない田圃だけに緑がない。
細君はまだ默つて木像の如く坐つて居る。「奧さん雜巾は?」と三藏はかやつた糊皿を見て心配さうに細君の顏を見る。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)