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茅
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かや
ふりがな文庫
“
茅
(
かや
)” の例文
そして白い熊苺の花は、既に
茅
(
かや
)
の葉にこぼれかけていた。無理に一言の形容を求めれば、緑の地に花を散らした大きな
絨毯
(
じゅうたん
)
であった。
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
黒船町
(
くろふねちょう
)
へ来ると、町が少し下って二の町となる。村田の本家(
烟管屋
(
キセルや
)
)がある。また、
榧寺
(
かやでら
)
という寺がある。境内に
茅
(
かや
)
が植わっていた。
幕末維新懐古談:12 名高かった店などの印象
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
悚然
(
ぞっ
)
として、
向直
(
むきなお
)
ると、
突当
(
つきあた
)
りが、樹の枝から
梢
(
こずえ
)
の葉へ
搦
(
から
)
んだような石段で、上に、
茅
(
かや
)
ぶきの堂の屋根が、
目近
(
まぢか
)
な
一朶
(
いちだ
)
の雲かと見える。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
因って
茅
(
かや
)
の小屋を結び帰り、夕方にその内に入りて伺うと黒衣の人果して来り、馬を樹に
繋
(
つな
)
ぎ墓内に入り、数輩と面白く笑談した。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
まず
朱然
(
しゅぜん
)
は、
茅
(
かや
)
柴
(
しば
)
の類を船手に積み、江上に出て風を待て、おそらくは明日の
午
(
うま
)
の刻を過ぎる頃から東南の風が波浪を捲くだろう。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
茅
(
かや
)
ヶ岳などが見え、すぐ下には、かんば沢の、(それはすっかり崩壊して、
砂礫
(
されき
)
と土のむきだしになった、むざんなさまを呈していたが)
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
下りが急になって、笹も
茅
(
かや
)
も人丈を没する程に伸びている。今迄
禿山
(
はげやま
)
であったのが此辺から木立が現れて来た。殊に西側の方が繁っている。
美ヶ原
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
それから、
茅
(
かや
)
ぶきの家と小さい庭のある曲がりくねった道を通ったのち、あまり立派でもない教会の玄関の前に着いたのです。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
昔は知らず、いまはここらを往来する者もないらしく、並木のあいだは一面の秋草に埋められて、おどろに乱れた
茅
(
かや
)
は人の
丈
(
たけ
)
を越えていた。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
早めて
歩行
(
あゆめ
)
ども夏の夜の
更
(
ふけ
)
易
(
やす
)
く早
五時過
(
いつゝすぎ
)
とも成し頃名に聞えたる坂東太郎の
川波
(
かはなみ
)
音高く
岸邊
(
きしべ
)
に
戰
(
そよ
)
ぐ
蘆
(
あし
)
茅
(
かや
)
は
人丈
(
ひとたけ
)
よりも高々と
生茂
(
おひしげ
)
り
最
(
いと
)
長
(
なが
)
き
堤
(
つゝみ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
十丈二十丈の高さの斷崖の頭の方は篠笹の原か
茅
(
かや
)
の野になつて居り、その下は殆んど直角に切り落ちて露出した岩の壁です。
樹木とその葉:32 伊豆西海岸の湯
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
高き
金峰
(
きんぷ
)
山は定かならねど、
茅
(
かや
)
が岳、
金
(
きん
)
が岳一帯の近山は、
釜無
(
かまなし
)
川の低地をまえに、仙女いますらん島にも似たる姿、薄紫の色、わが夢の色。
雪の武石峠
(新字新仮名)
/
別所梅之助
(著)
芒
(
すすき
)
や
茅
(
かや
)
の
戦
(
そよ
)
いでいる野路の向うに、
明神
(
みょうじん
)
ヶ
岳
(
だけ
)
とか、
大内山
(
おおうちやま
)
という島原半島の山々が紫色に
霞
(
かす
)
んで、中腹の草原でも焼き払ってるのでしょうか
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
大島の神社の境内に、
御幣
(
ごへい
)
を木の下に立て、
茅
(
かや
)
をもってこれを囲んであるものがある。これは島内の安全を祈るための
祠
(
ほこら
)
代用であるとの話だ。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
処々より雪かこひの丸太あるひは
雪垂
(
ゆきたれ
)
とて
茅
(
かや
)
にて幅八九尺
広
(
ひろ
)
さ二間ばかりにつくりたる
簾
(
すだれ
)
を
借
(
かり
)
あつめてすべての
日覆
(
ひおひ
)
となす。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
一径
(
いっけい
)
互
(
たがい
)
に
紆直
(
うちょく
)
し、
茅棘
(
ぼうきょく
)
亦
(
また
)
已
(
すで
)
に
繁
(
しげ
)
し、という句がありまするから、曲がりくねった
細径
(
ほそみち
)
の
茅
(
かや
)
や
棘
(
いばら
)
を分けて、むぐり込むのです。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「ちぇッ……藁が無けりゃ、藁の代りになりそうな、
麦稈
(
むぎわら
)
でも、
茅
(
かや
)
でも、それが無けりゃな、人の家の畳でもむしりこわして持って
来
(
き
)
ねえな」
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
もう一度春がめぐつて来た時、庭は唯濁つた池のほとりに、洗心亭の
茅
(
かや
)
屋根を残した、雑木原の木の芽に変つたのである。
庭
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし荷物を背負う用途を兼ねるものは、必然材料に丈夫なものが選ばれてくる。
茅
(
かや
)
、
菅
(
すげ
)
、
蒲
(
がま
)
、岩芝、くご、
葡萄
(
ぶどう
)
、
胡桃
(
くるみ
)
、特に愛されるのは
科
(
しな
)
の皮。
蓑のこと
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
新たに芽を出した
蘆荻
(
あし
)
や
茅
(
かや
)
や
蒲
(
がま
)
や、それにさびた水がいっぱいに満ちて、あるところは暗くあるところは明るかった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
軒の端に不揃いな
茅
(
かや
)
の端が出ていてもそれさえお切りにならせられずに、その上に民草が食べるお米のない時には年貢さえも免除された程なのである。
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
今の省線駒込駅の付近がまだ
茅
(
かや
)
ぶき屋根の多かった頃、拙宅の垣の外は、やぶ畳に草原の未開地。夏から秋の夕べはさまざまの虫が競争で鳴き立てる。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
国方
(
くにがた
)
で、
菜萸
(
ぐみ
)
といっているものの一尺ほどの細木、草はといえば、
茅
(
かや
)
、
葭
(
よし
)
、
山菅
(
やますげ
)
が少々、渚に近いところに
鋸芝
(
のこぎりしば
)
がひとつまみほど生えているだけであった。
藤九郎の島
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「何れの処にか在る」と一場の問答でもすべき処である。ただ向うの山は旧に依りて
茅
(
かや
)
で蔽われて居る。雑木の林の方はまだ十分に秋の景色を現わして居ない。
楞迦窟老大師の一年忌に当りて
(新字新仮名)
/
鈴木大拙
(著)
森林に囲まれた大沼は、
黒漆
(
くろうるし
)
の縁にふちどられた、曇った鏡のそれのようであった。沼は浅く水も少く、
芦
(
あし
)
だの
茅
(
かや
)
だの
芒
(
すすき
)
だのが、かなりの沖にまで生えていた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
若
(
もし
)
凪がずば、枕をこの
茅
(
かや
)
屋根の下に安くして、波の音を聞くこと、昔子もり歌を聞きしが如くせんといふ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
気がついて見ると、新兵衛の大きな
茅
(
かや
)
ぶきの
母屋
(
おもや
)
がまる出しになっていた。
椎
(
しい
)
や
楠
(
くす
)
やのごもごもとした森がことごとく切られて、家がはだかになってるのであった。
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
蕃人に皇民教育を授ける霧社公学校が
瓦
(
かわら
)
ぶきの堂々たる建物であるのに比較すると、内地人児童のための小学校は、
茅
(
かや
)
ぶきの粗末な、見すぼらしい校舎に過ぎない。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
怖ろしいから
茅
(
かや
)
の蔭に隠れていて、のちにその場所に行って見れば、川原に甚だ大きな足跡があった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
かわいそうにお父さん蛙は
鵙
(
もず
)
に捕えられて
茅
(
かや
)
の刈り株に突き刺されて日干になって死んでいました。
鵙征伐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ふと見ると、そこに山小屋か何かの
腐朽
(
ふきゅう
)
したような
茅
(
かや
)
や小枝の
朽
(
く
)
ちたのが一かたまりになっていた。
藤の瓔珞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ここをはいってなお一〇〇メートルほど歩くと、うすぐらい林のなかに小さな
茅
(
かや
)
ぶきの家があった。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
茅
(
かや
)
ぶき屋根の家があり、そのまえに、土地の顔役、
出羽作
(
でわさく
)
親分が住んでいたことだのを話しました。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
父の圓太郎と母のおすみを七軒町の新宅へのこして圓朝は、浅草
茅
(
かや
)
町の小間物屋の裏へ引き移った。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
時々ふり返ると、別府湾がだんだん低く小さくなって行く。登りつめた頃から、周囲は
茅
(
かや
)
の草原になる。
鶴見山
(
つるみさん
)
、由布山のなだらかな
麓
(
ふもと
)
に、針葉樹の黒い密林が望まれる。
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
茅
(
かや
)
で
葺
(
ふ
)
かれた
収穫蔵
(
とりいれぐら
)
の屋根も、その前面から広くとって、ずっと奥庭との境の垣根まで続いて春や秋、の頃の収穫物を干し乾かす場所に宛ててある外庭の土も、皆一様に灰色に
かやの生立
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
茅
(
かや
)
だの竹の
生
(
へ
)
えている中に孩児が火の付いたように啼いてるから、何うしたんかと抱上げて見ると、どうだんべい、可愛そうに竹の
切株
(
きッかぶ
)
が孩児の肩のところへ
突刺
(
つッさゝ
)
っていたんだ
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
淀川十里の間あし
茅
(
かや
)
の深き処、浅瀬の船底石に
摩
(
す
)
る処、深淵の蒼みたるところ、堤に柳ありて直曲なる処、
野渡
(
やと
)
のせばき処、遠き山見るところ、近き村ある処、彼此観望する間
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
おやおやと
駈
(
か
)
けつけて見ると、住居の
茅
(
かや
)
屋根が燃て、近所の人たちが消ていてくれた。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
正門のすぐ向いに
茅
(
かや
)
屋根の、居酒屋ふうの店があり、それが約束のミルクホールであった。ここで待って居れ、と言われた。かれは、その飲食店の
硝子
(
ガラス
)
戸をこじあけるのに苦労した。
花燭
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ここでも軽便を待つのがもどかしく、勝手知った道なので、近道をしようとして野原を突切ったのはいいが、
茅
(
かや
)
なんかの埋まっているところは体が半分位雪の中に入りそうになったり
雉子日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
ずっと海の方まで傾斜面はつづいて、そこでいきなり切れている風に見えるが、きっと高い断崖になっているのだろう。秣畑を区切ったみたいにしての
茅
(
かや
)
のような雑草がところどころにある。
石ころ路
(新字新仮名)
/
田畑修一郎
(著)
竹の柱に
茅
(
かや
)
の屋根といふ小唄の文句の通りの見る影もない庵室の奧に、修業者鐵心道人はさゝやかな佛壇を前にして讀經中で、その後ろに居流れた善男善女は、一本氣の信心に
凝
(
こ
)
り固まつた
銭形平次捕物控:104 活き仏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
一反五
畝
(
せ
)
の内、宅地、杉林、櫟林を除いて正味一反余の耕地には、大麦小麦が一ぱいで、
空地
(
あきち
)
と云っては畑の中程に
瘠
(
や
)
せこけた桑樹と枯れ
茅
(
かや
)
枯れ草の生えたわずか一畝に足らぬ位のものであった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ふるさとの
茅
(
かや
)
ぶきに似る黄なる屋根柳にまじり川遠く行く
満蒙遊記:附 満蒙の歌
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
壁草
(
かべくさ
)
に藁ぬりこめて竹ばしら
茅
(
かや
)
の屋根こそ住みよかりけれ
礼厳法師歌集
(新字旧仮名)
/
与謝野礼厳
(著)
電柱の
片側
(
かたがは
)
くらき月夜
照
(
で
)
り石ころに
茅
(
かや
)
に露ぞ滿ちたる
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
武蔵野は百鳥栖めり雑木の林に続く
茅
(
かや
)
草の原
晶子鑑賞
(新字旧仮名)
/
平野万里
(著)
忠臣蔵にはこの近くのかいどうに
猪
(
いのしし
)
や
追
(
お
)
い
剥
(
は
)
ぎが出たりするように書いてあるからむかしはもっとすさまじい所だったのであろうがいまでもみちの両側にならんでいる
茅
(
かや
)
ぶき屋根の
家居
(
いえい
)
のありさまは阪急沿線の西洋化した町や村を
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
大根
(
だいこ
)
干す
茅
(
かや
)
の
軒端
(
のきば
)
や
舟大工
(
ふなだいく
)
自選 荷風百句
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
“茅”の解説
茅(かや)は、古くから屋根材や飼肥料などに利用されてきた、イネ科あるいはイネ科およびカヤツリグサ科の草本の総称である。
カヤと呼ばれるのは、細長い葉と茎を地上から立てる一部の有用草本植物で、代表種にチガヤ、スゲ、ススキがある。
ススキを特定的に意味することもある。総称が本義でススキの意が派生だが、逆に、ススキが本義で意味が広がったとも。
(出典:Wikipedia)
茅
漢検準1級
部首:⾋
8画
“茅”を含む語句
茅屋
茅舎
茅葺
浅茅生
茅草
茅萱
茅野
茅原
茅場町
浅茅
茅町
茅屋根
茅蜩
茅針
白茅
茅山
茅茨
茅葭
茅沼
茅家
...