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蚊遣
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かや
ふりがな文庫
“
蚊遣
(
かや
)” の例文
軒下の竹台に釘抜のように曲った両脚を投げ出した目明し藤吉、
蚊遣
(
かや
)
りの煙を
団扇
(
うちわ
)
で追いながら、
先刻
(
さっき
)
から、それとなく聴耳を立てている。
釘抜藤吉捕物覚書:05 お茶漬音頭
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
庭の芝生へ
毛氈
(
もうせん
)
を敷き、月見の飾り物を前に
酒肴
(
しゅこう
)
の
膳
(
ぜん
)
を置いた。
雪洞
(
ぼんぼり
)
をその左右に、
蚊遣
(
かや
)
りを
焚
(
た
)
かせ、正四郎もふさも浴衣にくつろいで坐った。
その木戸を通って
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
大分もう薄暗くなっていましたそうで……
土用
(
どよう
)
あけからは、目に立って日が
詰
(
つま
)
ります
処
(
ところ
)
へ、一度は一度と、散歩のお帰りが遅くなって、
蚊遣
(
かや
)
りでも我慢が出来ず
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
立ち迷うている間にふと縁先の
蚊遣
(
かや
)
りの燃え残っているのが眼についた。彼女は蚊遣りの
器
(
うつわ
)
を持って
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二、
里見
(
さとみ
)
君の「
蚊遣
(
かや
)
り」も
亦
(
また
)
十月小説中の
白眉
(
はくび
)
なり。唯
聊
(
いささ
)
か
末段
(
まつだん
)
に至つて落筆
匇匇
(
そうそう
)
の
憾
(
うら
)
みあらん
乎
(
か
)
。他は人情的か何か知らねど、
不相変
(
あひかはらず
)
巧手
(
かうしゆ
)
の名に
背
(
そむ
)
かずと言ふべし。
病牀雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
蚊はもう夕暮れには軒に音を立てるほど集まって来て、夜は
蚊遣
(
かや
)
り火の
煙
(
けむり
)
が家々からなびいた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
月はだんだん光を増して行って、電灯に
灯
(
ひ
)
もともっていた。目の先に見える屋根の間からは、炊煙だか、
蚊遣
(
かや
)
り
火
(
び
)
だかがうっすらと水のように澄みわたった空に消えて行く。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それは
梅雨
(
つゆ
)
もカラリと上った七月の中旬のこと、日も既に暮れてこの比野の家々には
燭力
(
しょくりょく
)
の弱い電灯がつき、開かれた戸口からは、昔ながらの
蚊遣
(
かや
)
りの煙が
濛々
(
もうもう
)
とふきだしていた。
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
蚊遣
(
かや
)
りが出る。月がさしこんでくる。
明
(
あか
)
りがつく。
端近
(
はしじか
)
にいると空も見える。風はまったく
凪
(
な
)
げて静かな夜となった。熱くもあり蚊もいるが、夜はさすがにあらそわれない秋の色だ。
廃める
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
老人は上田
紬
(
つむぎ
)
の
万筋
(
まんすじ
)
の
単衣
(
ひとえ
)
の下に夏
痩
(
や
)
せのした
膝頭
(
ひざがしら
)
をそろえて、
団扇
(
うちわ
)
で
蚊遣
(
かや
)
りの煙を追いながら、思いなしか眼ぶたをしばだたいているのは、除虫菊に
咽
(
むせ
)
んだのかも知れない。………
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
瓜
(
うり
)
浸して食いつゝ
歯牙香
(
しがこう
)
と詩人の
洒落
(
しゃれ
)
る川原の夕涼み快きをも
余所
(
よそ
)
になし、
徒
(
いたず
)
らに
垣
(
かき
)
をからみし夕顔の暮れ残るを見ながら
白檀
(
びゃくだん
)
の切り
屑
(
くず
)
蚊遣
(
かや
)
りに
焼
(
た
)
きて是も余徳とあり
難
(
がた
)
かるこそおかしけれ。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そのなかには肌脱ぎになった人がいたり、柱時計が鳴っていたり、味気ない生活が
蚊遣
(
かや
)
りを
燻
(
いぶ
)
したりしていた。そのうえ、軒燈にはきまったようにやもりがとまっていて彼を気味悪がらせた。
ある崖上の感情
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
あれを刈りに行くものは、腰に
火縄
(
ひなわ
)
を
提
(
さ
)
げ、それを
蚊遣
(
かや
)
りの代わりとし、襲い来る無数の
藪蚊
(
やぶか
)
と戦いながら、高い
崖
(
がけ
)
の上に
生
(
は
)
えているのを下から刈り取って来るという。あれは
熊笹
(
くまざさ
)
というやつか。
嵐
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
物いはねば狭き
家
(
いゑ
)
の
内
(
うち
)
も何となくうら淋しく、くれゆく空のたどたどしきに裏屋はまして薄暗く、
燈火
(
あかり
)
をつけて
蚊遣
(
かや
)
りふすべて、お初は心細く戸の外をながむれば、いそいそと帰り来る太吉郎の姿
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
おすえも側に付きっきりで、
蚊遣
(
かや
)
りを
焚
(
た
)
いたり、汗になった栄二を
団扇
(
うちわ
)
であおいだり、手拭を水で絞って来たりした。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
物
(
もの
)
いはねば
狹
(
せま
)
き
家
(
いゑ
)
の
内
(
うち
)
も
何
(
なん
)
となくうら
淋
(
さび
)
しく、くれゆく
空
(
そら
)
のたど/\しきに
裏屋
(
うらや
)
はまして
薄暗
(
うすくら
)
く、
燈火
(
あかり
)
をつけて
蚊遣
(
かや
)
りふすべて、お
初
(
はつ
)
は
心細
(
こゝろぼそ
)
く
戸
(
と
)
の
外
(
そと
)
をながむれば、いそ/\と
歸
(
かへ
)
り
來
(
く
)
る
太吉郎
(
たきちらう
)
の
姿
(
すがた
)
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
三人の弟子は、縁先で、
榧
(
かや
)
の枯れ木を
蚊遣
(
かや
)
りに
焚
(
た
)
いていたのである。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あたしも汗をながそう」とおみやは云った、「新さん済まないけれど
蚊遣
(
かや
)
りを
焚
(
た
)
いてちょうだい、わかるでしょ」
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
母屋に煙る
蚊遣
(
かや
)
りを眺めながら、小次郎は部屋の中に寝そべった。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その夜は
蚊遣
(
かや
)
りを焚きつぎながら、狭いところへごたごたと寝て、明くる朝は日蔭のあるうちにと早くでかけた。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
銀母屋
(
ぎんほや
)
の
蚊遣
(
かや
)
り
炉
(
ろ
)
からのぼるその
燻煙
(
くんえん
)
がその姿を巻いている。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おくみは行燈を明るくし、
蚊遣
(
かや
)
りを
焚
(
た
)
き、庭に面した障子をあけてから、茶の支度をしに去った。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
蚊遣
(
かや
)
りの側から腰を
泛
(
う
)
かしかけると、槍組
頭
(
がしら
)
の湯浅五助が
大谷刑部
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
成信はいつもの癖で、
蚊遣
(
かや
)
り火を
焚
(
た
)
きながら、燈火をひき寄せて夜半すぎまで本を読んだ。
泥棒と若殿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
蚊遣
(
かや
)
りの
焚
(
た
)
いてある縁側で涼をいれていると、野口重四郎が廊下づたいにやって来た——道場に附属したこの
住居
(
すまい
)
は、十畳と八畳の客間が並び、ほかに居間、寝所、納戸という広い間取で
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「ひどい蚊ではないか」と岡安が下役人に云った、「
蚊遣
(
かや
)
りを
焚
(
た
)
いてやれ」
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
蚊
常用漢字
中学
部首:⾍
10画
遣
常用漢字
中学
部首:⾡
13画
“蚊遣”で始まる語句
蚊遣火
蚊遣香
蚊遣煙
蚊遣線香