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ふりがな文庫
“
素
(
もと
)” の例文
この伯爵の秘書、斎木
素
(
もと
)
子なる女性について、黒岩万五は元来詳しいことは知らなかつた。蔭ではいろいろなことを云ふものがある。
泉
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
彼
(
か
)
の
(四三)
三
晉
(
しん
)
の
兵
(
へい
)
は、
素
(
もと
)
(四四)
悍勇
(
かんゆう
)
にして
齊
(
せい
)
を
輕
(
かろ
)
んじ、
齊
(
せい
)
を
號
(
がう
)
して
怯
(
けふ
)
と
爲
(
な
)
す。
善
(
よ
)
く
戰
(
たたか
)
ふ
者
(
もの
)
は
(四五)
其勢
(
そのいきほひ
)
に
因
(
よ
)
つて
之
(
これ
)
を
利導
(
りだう
)
す。
国訳史記列伝:05 孫子呉起列伝第五
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
素
(
もと
)
より赤の他人には相違ありませんが、一と月でも半月でも、離屋に置いたお半を、このまま犬猫のように
葬
(
ほうむ
)
るわけにも行きません。
銭形平次捕物控:182 尼が紅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
中指を切られた者が既に
幾人
(
いくたり
)
有ったか知れん、誠に何とも、ハヤ面目次第もない、權六
其方
(
そなた
)
が無ければ末世末代東山の家名は
素
(
もと
)
より
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
素
(
もと
)
より奥向きへは出入りを許されていなかったので、まだ桔梗の方の顔を見たこともなく、美人の噂は
疾
(
と
)
くより耳にしているものゝ
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
素
(
もと
)
汗吐下の三法は
張仲景
(
ちやうちゆうけい
)
に至つて備はつたから、従正は
当
(
まさ
)
に仲景を祖とすべきである。然るに此に出でずして、溯つて素問を引いた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
素
(
もと
)
より関係なき事故、迷惑至極とは思いながら、代人を立てる訳にも行かぬから、その日の定刻少々前に自ら裁判所に出頭せられたが
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
山嶽谿間あつて大竹、喬木繁茂し、諸島會〔禽〕獸多く
龜鼈
(
ぎよべつ
)
、貝類
素
(
もと
)
より磯邊に充滿して産物足れる島なるとかや(伯耆民談)。
他計甚麽(竹島)雑誌
(旧字旧仮名)
/
松浦武四郎
(著)
その時お島の父親は、どういう
心算
(
つもり
)
で水のほとりへなぞ彼女をつれて行ったのか、今考えてみても父親の心持は
素
(
もと
)
より解らない。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
斯の如き事たる
素
(
もと
)
より今の思想界の必当の運命たるべしと
雖
(
いへども
)
、心あるもの陰に前途の濃雲を憂ふるは、又た是非もなき事共かな。
国民と思想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
「お察し申す、礼などは
素
(
もと
)
よりいうに及ばぬ、これもみな貴殿御兄妹の孝心を、武道の神が
護
(
まも
)
られたのであろう、祝着に存ずる」
武道宵節句
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それでお母さんは
退引
(
のっぴ
)
きさせないように、葉書や切手は
素
(
もと
)
よりのこと通信に必要な品を一切お父さんの机の引出しに揃えて置く。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
父の茶道は
素
(
もと
)
より
然
(
しか
)
るべき
藪
(
やぶ
)
の
内
(
うち
)
の宗匠に
就
(
つい
)
て仕上げをしていたのであるが、しかも父の強い個性は
徒
(
いたず
)
らな風流を欲しなかった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
その技芸
素
(
もと
)
より
今日
(
こんにち
)
の如く発達しおらぬ時の事とて、
科
(
しぐさ
)
といい、
白
(
せりふ
)
といい、ほとんど滑稽に近く、全然
一見
(
いっけん
)
の
価
(
あたい
)
なきものなりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
忘
(
わす
)
れはせまじ餘り
情
(
なさけ
)
なき
仕方
(
しかた
)
なりと利兵衞を
恨
(
うら
)
みけるが吉三郎は
素
(
もと
)
より
孝心
(
かうしん
)
深
(
ふか
)
ければ母を
慰
(
なぐさ
)
め利兵衞殿斯の如く
約束
(
やくそく
)
を
變
(
へん
)
じ
音信
(
おとづれ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
彼の本国は
素
(
もと
)
より、日本の政治界は、その為に、どんな大騒ぎを演じることであろう。新聞は、どんな激情的な記事を掲げることであろう。
人間椅子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
名前が分って居るなら先ず其名前を
聞
(
きこ
)
う(大)
素
(
もと
)
より名前を
言
(
いい
)
ますが夫より前に
私
(
わた
)
しの発見した手続きを申ます、けどが長官
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
素
(
もと
)
より田舎の事とて泥臭いのは
勿論
(
もちろん
)
だが、
兎
(
と
)
に角常陸から
下総
(
しもうさ
)
、
利根川
(
とねがわ
)
を股に掛けての縄張りで、
乾漢
(
こぶん
)
も掛価無しの千の数は揃うので有った。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
陶は
素
(
もと
)
から酒が強かったから、従ってぐでぐでに酔うことはなかった。馬の友人に
曾
(
そう
)
という者があったが、これも酒豪で相手なしときていた。
黄英
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
わが
日本民族
(
にほんみんぞく
)
は
靈智
(
れいち
)
靈能
(
れいのう
)
を
有
(
も
)
つてゐる。
炳乎
(
へいこ
)
たる
獨特
(
どくとく
)
の
文化
(
ぶんくわ
)
を
有
(
いう
)
してゐる。
素
(
もと
)
より
拓拔氏
(
たくばつし
)
や
印度人
(
いんどじん
)
やトルコ
人
(
じん
)
の
比
(
ひ
)
ではない。
国語尊重
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
芸術に関する事は
素
(
もと
)
より、一般教養のこと、精神上の諸問題についても突きつめるだけつきつめて考へて、
曖昧
(
あいまい
)
をゆるさず、妥協を卑しんだ。
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
徳望
素
(
もと
)
より
隆
(
さか
)
んにして、一時の
倚重
(
きちょう
)
するところとなり、政治より学問に及ぶまで、帝の
咨詢
(
しじゅん
)
を
承
(
う
)
くること
殆
(
ほとん
)
ど
間
(
ひま
)
無く、翌二年文学博士となる。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
萬一斯かる事あらんには、大納言殿(宗盛)は兄の内府にも似ず、
暗弱
(
あんじやく
)
の
性質
(
うまれつき
)
なれば、
素
(
もと
)
より物の用に立つべくもあらず。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
鶏は
素
(
もと
)
より夜明けを報ずるめでたい鳥であったけれども、これを庚申さんの
傍
(
かたわ
)
らに持って来るのには、何かまた特別のわけがなくてはならない。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一、吾この回初め
素
(
もと
)
より生を謀らず、また死を必せず。ただ誠の
通塞
(
つうそく
)
を以て天命の自然に委したるなり。七月九日に至っては、ほぼ一死を期す。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
系図によると
素
(
もと
)
は平田氏とも平尾氏とも云って居たが、この宮本村へ移ってから宮本氏を称したとするのが本当で、此処で武蔵は生れたのである。
巌流島
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
素
(
もと
)
より惚れて女房にしたわけではないのですから、私は妻をひどく好いていたわけではないのですが、然し憎む気などはさらさら無かったのです。
悪魔の弟子
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
素
(
もと
)
より不信の
極悪人
(
ごくあくびと
)
、此儘に打ち捨て置き、
風来犬
(
ふうらいいぬ
)
にな食す可きなれど、今日は異例の情をもて、
聖
(
さんた
)
まりやに祈りを上げ
蘇生
(
よみがへ
)
らして呉れむずらむ。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
素
(
もと
)
より今日のごとき
国交際
(
こくこうさい
)
の
関係
(
かんけい
)
あるに非ざれば、
大抵
(
たいてい
)
のことは
出先
(
でさ
)
きの公使に一任し、本国政府においてはただ
報告
(
ほうこく
)
を聞くに
止
(
とど
)
まりたるその
趣
(
おもむき
)
は
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
是
素
(
もと
)
より予の善く忍び得る所にあらず。予は
寧
(
むしろ
)
、予自身を殺すの、遙に予が精神的破産に
勝
(
まさ
)
れるを信ずるものなり。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それは鮓の
素
(
もと
)
であるところの、醋の嗅覚や味覚にも
関聯
(
かんれん
)
しているし、またその醋が、暗所において醗酵する時の、静かな化学的状態とも関聯している。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
素
(
もと
)
より宮は唯継を愛せざりしかど、決してこれを憎むとにはあらざりき。されど今はしも正にその念は起れるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
而
(
しか
)
して家庭の風儀は社会の風儀の
泉源
(
せんげん
)
であって、家庭の元気は即ち国民の元気でありとすれば、女子教育の国家に必要なる、
素
(
もと
)
より
其所
(
そこ
)
でありましょう。
国民教育の複本位
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
丁度
(
ちょうど
)
予科の三年、十九歳頃のことであったが、私の家は
素
(
もと
)
より豊かな方ではなかったので、一つには家から学資を仰がずに
遣
(
や
)
って見ようという考えから
私の経過した学生時代
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
むかし
観世
(
くわんぜ
)
の家元に
豊和
(
とよかず
)
といつて家の芸は
素
(
もと
)
より、
香聞
(
かうきゝ
)
にも一ぱし聞えた男がゐて、
金春
(
こんぱる
)
流の
某
(
なにがし
)
と仲がよかつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
素
(
もと
)
より戯曲には種々の規則あり、罪過を以つて唯一の規則となすは不可なるべしと
雖
(
いへど
)
も、
之
(
これ
)
が為めに罪過は不用なりと言ふあらば
亦
(
ま
)
た
大
(
おほい
)
に不可なるが如し。
罪過論
(新字旧仮名)
/
石橋忍月
(著)
フランソアズは散々泣いて、一目でもいいから倅に会わせてと願ったけれど、
素
(
もと
)
よりそうしたことの許さるべき筈もなく、がっかりして村へ帰って行った。
情状酌量
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
げに常に神の
聖意
(
みこゝろ
)
の中にとゞまり、これによりて我等の
意
(
こゝろ
)
一となるは、これこの
福
(
さいはひ
)
なる生の
素
(
もと
)
なり 七九—八一
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
素
(
もと
)
より
精
(
くは
)
しき技藝、高き趣味をこゝに求むべきにはあらねど、些の音樂に耳を悦ばしめんとする下層の市民の願をばこれによりて遂げしむることを得べく
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
山の首座は
素
(
もと
)
商人で遁世した人である。此人がセルギウスを引見して、なんの変つた扱をもせずに、只あたり前の事のやうに寂しい草庵を引き渡してくれた。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
「
夫
(
それ
)
梅田は
素
(
もと
)
より奸猾なれば余
与
(
とも
)
に志を語ることを欲せざる所なり何の密議をかなさんや」と記している。
志士と経済
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
釣遊の目的は、
素
(
もと
)
より魚を獲るにあれども、真の目的物は、魚其の物に非ずして、之を釣る
興趣
(
きょうしゅ
)
にあり。
研堂釣規
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
まだ
積
(
つ
)
んだまゝの
雜具
(
ざふぐ
)
を
繪屏風
(
ゑびやうぶ
)
で
劃
(
しき
)
つてある、さあお
一杯
(
ひとつ
)
は
女中
(
ねえ
)
さんで、
羅綾
(
らりよう
)
の
袂
(
たもと
)
なんぞは
素
(
もと
)
よりない。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「国を憂へ、君に忠、又善く朋友と交はりて信あり、其の人懇篤にして剛毅、余
素
(
もと
)
よりその人を異とす」
大衆維新史読本:07 池田屋襲撃
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
余は
素
(
もと
)
より舞踏なんど
洒落
(
しやれ
)
た事には縁遠き男なれど、せめて
所謂
(
いはゆる
)
ウオールフラワアの一人ともなりて花舞ひ蝶躍る珍しきさまを見て未代までの語り草にせばやと
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
愛
(
あい
)
ちやんは
素
(
もと
)
より、
其
(
その
)
可愛
(
かあい
)
い
猫
(
ねこ
)
のことを
話
(
はな
)
さう
話
(
はな
)
さうと
思
(
おも
)
つてた
所
(
ところ
)
だッたので、
𤍠心
(
ねつしん
)
に
答
(
こた
)
へて
云
(
い
)
ふには
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
あの大声のラジオや蓄音機などというような唯騒々しいばかりのものなど
素
(
もと
)
よりその頃はないので、こうした親子連れの町芸人の芸などもしんみり聞けたのだった。
京のその頃
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
だが俺は「不実」だから君を身うけしようなんぞとは
素
(
もと
)
より思つてゐない! 一寸そんな事を考へた事もあるが、まあ君の身はあの「
紅毛
(
オランダ
)
の犬」に任せる事にしよう。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
然るに其後に至りて出版されたる絵図の数は
素
(
もと
)
より二、三種にして止まらざるも、尽くツウラ沼なる名の相承け相継ぎ、
終
(
つい
)
に明治に至る迄百八十余年に
亙
(
わた
)
る長日月の間
古図の信じ得可き程度
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
蛙に似て痩せこけたるものだ。自分は必ず
河鹿
(
かじか
)
であると悟つた。河鹿に極つてゐるのだ。圖解以外に河鹿を見るのは今が始めてで
素
(
もと
)
より攫へて見たのもはじめてである。
炭焼のむすめ
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
素
常用漢字
小5
部首:⽷
10画
“素”を含む語句
平素
素直
素性
素人
素裸
素馨
質素
素地
素振
素破
素見
素絹
素生
素描
要素
素敏
素姓
素面
素袍
素通
...