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空蝉
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うつせみ
ふりがな文庫
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空蝉
(
うつせみ
)” の例文
今はましてがらでない気がする
空蝉
(
うつせみ
)
であったが、久しぶりで得た源氏の文字に思わずほんとうの心が引き出されたか返事を書いた。
源氏物語:16 関屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
さんざん、楽しんだあげく、
空蝉
(
うつせみ
)
みたいな女のぬけ殻を、持って行くにちがいない。忠平に、そのあとを贈呈するのはおもしろい。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
老探偵は甥と肩を並べて、その近くまでを
動く道路
(
ベルト・ロード
)
に乗って行き、
空蝉
(
うつせみ
)
広場から先を、歩道にそってゆっくり歩いていった。
断層顔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
正
(
しょう
)
の肌身はそこで藻抜けて、ここに
空蝉
(
うつせみ
)
の立つようなお澄は、
呼吸
(
いき
)
も黒くなる、相撲取ほど肥った紳士の、
臘虎襟
(
らっこえり
)
の
大外套
(
おおがいとう
)
の厚い煙に包まれた。
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
をかしかるべき
世
(
よ
)
を
空蝉
(
うつせみ
)
のと
捨
(
す
)
て
物
(
もの
)
にして
今歳
(
ことし
)
十九
年
(
ねん
)
、
天
(
てん
)
のなせる
麗質
(
れいしつ
)
、をしや
埋木
(
うもれぎ
)
の
春
(
はる
)
またぬ
身
(
み
)
に、
青柳
(
あをやぎ
)
いと
子
(
こ
)
と
名
(
な
)
のみ
聞
(
きゝ
)
ても
姿
(
すがた
)
しのばるゝ
優
(
やさ
)
しの
人品
(
ひとがら
)
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
▼ もっと見る
一方
空蝉
(
うつせみ
)
や夕顔との恋は、源氏がいかに言い寄り女がいかに答えたかをきわめて詳細に描いているにかかわらず、この重大な御息所との恋は、右のごとくただ
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
先方にも
貴樣
(
きさま
)
は傳吉ならずやと云ふに
久々
(
ひさ/″\
)
にて御目に
懸
(
かゝ
)
りたり何の御用にてと
尋
(
たづ
)
ねければ源次郎は大いに
急込
(
せきこみ
)
たる樣子にて然ば貴樣が三浦やの
暇
(
いとま
)
を取し後
空蝉
(
うつせみ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
武骨者と人の笑ふを心に誇りし齋藤時頼に、あはれ今無念の涙は一滴も殘らずや。そもや瀧口が此身は
空蝉
(
うつせみ
)
のもぬけの
殼
(
から
)
にて、腐れしまでも昔の膽の一片も殘らぬか。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
だけど、そんな知識を
振翳
(
ふりかざ
)
したって何になるでしょう。そんな学問はただの装飾です。いくら
紅
(
くれない
)
の
綾
(
あや
)
の
単襲
(
ひとえがさね
)
をきらびやかに着込んだって、
魂
(
たましい
)
の無い人間は
空蝉
(
うつせみ
)
の
抜殻
(
ぬけがら
)
です。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
一々
(
いちいち
)
の批評をして見た所で、その俳優に対する好き好きがあろうから無駄な事だが、私は過日帝国館で上場された改題「
空蝉
(
うつせみ
)
」の女主人公に扮したクララ・キンベル・ヤング嬢などは
活動写真
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
藤野の佳人は
忽
(
たちま
)
ち他に
嫁
(
とつ
)
いで
仕舞
(
しま
)
つたのです、藤野の生命は其時既に奪はれたのです、
華厳滝
(
けごんのたき
)
へ投げたのは、
空蝉
(
うつせみ
)
の如き冷たき藤野の屍骸です、去れど姉さん、貴嬢が独身で居なさらうとも
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
世を忘れ人を離れて
父子
(
おやこ
)
ただ二人
名残
(
なごり
)
の遊びをなす今日このごろは、せめて小供の昔にかえりて、
物見遊山
(
ものみゆさん
)
もわれから進み、やがて消ゆべき
空蝉
(
うつせみ
)
の身には要なき
唐
(
から
)
織り物も、末は
妹
(
いもと
)
に
紀念
(
かたみ
)
の品と
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
空蝉
(
うつせみ
)
か
沙上の夢
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
空蝉
(
うつせみ
)
が何かのおりおりに思い出されて敬服するに似た気持ちもおこるのであった。
軒端
(
のきば
)
の
荻
(
おぎ
)
へは今も時々手紙が送られることと思われる。
源氏物語:06 末摘花
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
あゝ、まぼろしのなつかしい、
空蝉
(
うつせみ
)
のかやうな
風土
(
ふうど
)
は、
却
(
かへ
)
つてうつくしいものを
産
(
さん
)
するのか、
柳屋
(
やなぎや
)
に
艶麗
(
あでやか
)
な
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
える。
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「君の友情、丞相の芳恩、共にふかく心に銘じてはおるが、心はつねに劉皇叔の上にあって、都にはない。ここにいる関羽は、
空蝉
(
うつせみ
)
のようなものでござる」
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
良
(
よ
)
しや其人なりとても、此世の中に心は死して、殘る體は
空蝉
(
うつせみ
)
の我れ、我れに恨みあればとて、そを言ふの要もなく、よし又人に誠あらばとて、そを聞かん願ひもなし。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
空蝉
(
うつせみ
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
すてヽ
思
(
おも
)
へば
黒染
(
すみぞめ
)
に
袖
(
そで
)
の
色
(
いろ
)
かへるまでもなく、
花
(
はな
)
もなし
紅葉
(
もみぢ
)
もなし、
丈
(
たけ
)
にあまる
黒髮
(
くろかみ
)
きり
拂
(
はら
)
へばとて
夫
(
そ
)
れは
見
(
み
)
る
目
(
め
)
の
菩提心
(
ぼだいしん
)
、
人前
(
ひとまへ
)
づくりの
後家
(
ごけ
)
さまが
處爲
(
しよい
)
ぞかし
経つくゑ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
貰
(
もらひ
)
等にて成程百五十兩に
成
(
なり
)
ましたで御座りませうと云に又大岡殿
尋問
(
たづねら
)
るゝ樣先年其の宅の遊女
空蝉
(
うつせみ
)
年明後
(
ねんあけご
)
井戸源次郎と云者妻に致たる由其事ありしや又同人を
抱
(
かゝ
)
へし時の
手續
(
てつゞき
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
これまでは
空蝉
(
うつせみ
)
階級の女が源氏の心を引くようなこともなかったが、あの雨夜の品定めを聞いて以来好奇心はあらゆるものに動いて行った。
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
便利あり、利益ある方面に向って
脱出
(
ぬけだ
)
した跡には、この地のかかる俤が、
空蝉
(
うつせみ
)
になり
脱殻
(
ぬけがら
)
になって
了
(
しま
)
うのである。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると久しぶり、
空蝉
(
うつせみ
)
のくだりを美しいお声で読まれるのを伺い、聞いているうちに、うっとりとして
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三浦やの遊女
空蝉
(
うつせみ
)
同人が
根引
(
ねびき
)
いたし妻となりし
故
(
ゆゑ
)
に存じ居ますと言にぞ其の
者
(
もの
)
妻
(
つま
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
いつぞは正気に
復
(
かへ
)
りて夢のさめたる如く、
父様
(
ととさま
)
母様
(
かかさま
)
といふ折の有りもやすと
覚束
(
おぼつか
)
なくも
一日
(
ひとひ
)
二日
(
ふつか
)
と待たれぬ、
空蝉
(
うつせみ
)
はからを見つつもなぐさめつ、あはれ
門
(
かど
)
なる柳に秋風のおと聞えずもがな。
うつせみ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
自分の冷淡さに懲りておしまいになったのかと思って、
空蝉
(
うつせみ
)
は心苦しかったが、源氏の病気をしていることを聞いた時にはさすがに
歎
(
なげ
)
かれた。
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
便利
(
べんり
)
あり、
利益
(
りえき
)
ある
方面
(
はうめん
)
に
向
(
むか
)
つて
脱出
(
ぬけだ
)
した
跡
(
あと
)
には、
此
(
この
)
地
(
ち
)
のかゝる
俤
(
おもかげ
)
が、
空蝉
(
うつせみ
)
になり
脱殼
(
ぬけがら
)
になつて
了
(
しま
)
ふのである。
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
源氏の
帖
(
じょう
)
が何冊も、かたわらに重ねてある。小机にひらかれてあるのは、その中の「
空蝉
(
うつせみ
)
の巻」で
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いつぞは正氣に
復
(
かへ
)
りて夢のさめたる如く、父樣母樣といふ折の有りもやすと覺束なくも一日二日と待たれぬ、
空蝉
(
うつせみ
)
はからを見つゝもなぐさめつ、あはれ門なる柳に秋風のおと聞こえずもがな。
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
源氏は
空蝉
(
うつせみ
)
の極端な冷淡さをこの世の女の心とは思われないと考えると、あの女が言うままになる女であったなら、気の毒な過失をさせたということだけで
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ここらに色鳥の小鳥の
空蝉
(
うつせみ
)
、
鴛鴦
(
おしどり
)
の
亡骸
(
なきがら
)
と言うのが有ったっけと、酒の
勢
(
いきおい
)
、雪なんざ苦にならねえが、赤い
鼻尖
(
はなさき
)
を、
頬被
(
ほおかぶり
)
から突出して、へっぴり腰で
嗅
(
か
)
ぐ工合は
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
気がついてみれば、破った筈の殻は、依然として
空虚
(
うつろ
)
の自分を包んでいる。あらゆる信念を
喪失
(
そうしつ
)
しかけて
空蝉
(
うつせみ
)
にも似た自分の影が、今宵もふわふわと暗い風の中を歩いている。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いつぞは
正氣
(
しやうき
)
に
復
(
かへ
)
りて
夢
(
ゆめ
)
のさめたる
如
(
ごと
)
く、
父樣
(
とゝさま
)
母樣
(
かゝさま
)
といふ
折
(
をり
)
のありもやすると
覺束
(
おぼつか
)
なくも
一日
(
ひとひ
)
二日
(
ふたひ
)
と
待
(
ま
)
たれぬ、
空蝉
(
うつせみ
)
はからを
見
(
み
)
つゝもなぐさめつ、あはれ
門
(
かど
)
なる
柳
(
やなぎ
)
に
秋風
(
あきかぜ
)
のおと
聞
(
き
)
こえずもがな。
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
死骸になっての、
空蝉
(
うつせみ
)
の藻脱けた
膚
(
はだ
)
は、人間の手を離れて
牛頭
(
ごず
)
馬頭
(
めず
)
の腕に上下から
掴
(
つか
)
まれる。や、そこを見せたい。その
娘
(
こ
)
の
仮髪
(
かつら
)
ぢゃ、お稲の髪には念を入れた。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
灯影
(
ほかげ
)
で見た
空蝉
(
うつせみ
)
の横顔が美しいものではなかったが、姿態の優美さは十分の魅力があった。
源氏物語:06 末摘花
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「よし、よし。……二年見ぬまに、また一ばい大きくなったものだ。こう見れば、そちもはや、たれにも劣らぬ一人前の男よ。それにひきかえ、口惜しいが、この貞氏は
空蝉
(
うつせみ
)
に感じる。いかにせん、この病体」
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この行燈で、巣に
搦
(
から
)
んだいろいろの虫は、
空蝉
(
うつせみ
)
のその
羅
(
うすもの
)
の
柳条目
(
しまめ
)
に見えた。灯に
蛾
(
ひとりむし
)
よりも
鮮明
(
あざやか
)
である。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
筑波
(
つくば
)
おろしに落ち着かぬ心を抱きながら消息の絶えた年月を
空蝉
(
うつせみ
)
は重ねたのである。
源氏物語:16 関屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
空蝉
(
うつせみ
)
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
裳
(
もすそ
)
は
畳
(
たたみ
)
につくばかり、細く
褄
(
つま
)
を
引合
(
ひきあわ
)
せた、
両袖
(
りょうそで
)
をだらりと、
固
(
もと
)
より
空蝉
(
うつせみ
)
の殻なれば、
咽喉
(
のど
)
もなく肩もない、
襟
(
えり
)
を掛けて裏返しに下げてある、
衣紋
(
えもん
)
は
梁
(
うつばり
)
の上に日の通さぬ
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
空蝉
(
うつせみ
)
の尼君の住んでいる所へ源氏は来た。そこの
主人
(
あるじ
)
らしくここは住まずに、目だたぬ一室にいて、
住居
(
すまい
)
の大部分を仏間に取った空蝉が仏勤めに傾倒して暮らす様子も哀れに見えた。
源氏物語:23 初音
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
これが
空蝉
(
うつせみ
)
になって、二人は、裏の松山へ、湯どのから
消失
(
きえう
)
せたのではなかろうか——
些
(
ち
)
と
仰山
(
ぎょうさん
)
なようであるが
真個
(
まったく
)
……勝手を知った湯殿の外まで
密
(
そっ
)
と様子を見に行ったくらいです。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
空蝉
(
うつせみ
)
の尼君には
青鈍
(
あおにび
)
色の織物のおもしろい上着を見つけ出したのへ、源氏の服に仕立てられてあった薄黄の服を添えて贈るのであった。同じ日に着るようにとどちらへも源氏は言い添えてやった。
源氏物語:22 玉鬘
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
空蝉
(
うつせみ
)
の身をかえてける、
寝着
(
ねまき
)
の
衣紋
(
えもん
)
緩やかに、水色縮緬の
扱帯
(
しごきおび
)
、座蒲団に褄浅う、火鉢は手許に引寄せたが、寝際に炭も
注
(
つ
)
がなければ、
尉
(
じょう
)
になって寒そうな、銀の
湯沸
(
ゆわかし
)
の五徳を外れて
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
空蝉
(
うつせみ
)
の身をかへてける
木
(
こ
)
のもとになほ人がらのなつかしきかな
源氏物語:03 空蝉
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
半ば
掻巻
(
かいまき
)
を藻脱けた姿の、
空蝉
(
うつせみ
)
のあわれな胸を、
痩
(
や
)
せた手でしっかりと、浴衣に
襲
(
かさ
)
ねた
寝衣
(
ねまき
)
の襟の、はだかったのを切なそうに
掴
(
つか
)
みながら、銀杏返しの
鬢
(
びん
)
の崩れを、
引結
(
ひきゆわ
)
えた
頭
(
かしら
)
重げに
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
羽衣のうすきにかはる今日よりは
空蝉
(
うつせみ
)
の世ぞいとど悲しき
源氏物語:42 まぼろし
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
薫
(
かおり
)
の高い薬を噛んで口移しに含められて、膝に抱かれたから、一生懸命に
緊乎
(
しっかり
)
縋
(
すが
)
り着くと、背中へ廻った手が空を
撫
(
な
)
でるようで、娘は
空蝉
(
うつせみ
)
の
殻
(
から
)
かと見えて、
唯
(
たっ
)
た二晩がほどに、糸のように
瘠
(
や
)
せたです。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と言って、
空蝉
(
うつせみ
)
は泣いてしまった。
源氏物語:23 初音
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
空蝉
(
うつせみ
)
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
空
常用漢字
小1
部首:⽳
8画
蝉
漢検準1級
部首:⾍
15画
“空蝉”で始まる語句
空蝉之