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燕
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つばめ
ふりがな文庫
“
燕
(
つばめ
)” の例文
上体をかがめる事も無く、お顔をしゃんと挙げて、お皿をろくに見もせずスプウンを横にしてさっと掬って、それから、
燕
(
つばめ
)
のように
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
だから私は「
荒布橋
(
あらめばし
)
」の冒頭に出てくる
燕
(
つばめ
)
の飛ぶ様子や、「
夷講
(
えびすこう
)
」の酒宴の有様を叙するくだりに出会った時、大変驚ろいたのです。
木下杢太郎『唐草表紙』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「へへえ、電気とやらいうもんはあかりがともるもんかと思ったら、これはまるで綱じゃねえか。雀や
燕
(
つばめ
)
のええ休み場というもんよ」
おじいさんのランプ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
皆
(
みな
)
がそれを
見
(
み
)
ると、
子安貝
(
こやすがひ
)
ではなくて
燕
(
つばめ
)
の
古糞
(
ふるくそ
)
でありました。
中納言
(
ちゆうなごん
)
はそれきり
腰
(
こし
)
も
立
(
た
)
たず、
氣病
(
きや
)
みも
加
(
くは
)
はつて
死
(
し
)
んでしまひました。
竹取物語
(旧字旧仮名)
/
和田万吉
(著)
燕
(
つばめ
)
はこのあたりでは宿をしている家がどこにもない。農家も折々は気を付けて見るが、燕が土を持って出入りする様子を見かけない。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
農家の垣には梨の花と八重桜、畠には
豌豆
(
えんどう
)
と
蚕豆
(
そらまめ
)
、
麦笛
(
むぎぶえ
)
を鳴らす音が時々聞こえて、
燕
(
つばめ
)
が街道を斜めに
突
(
つ
)
っ
切
(
き
)
るように飛びちがった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「でもなんですか、
僕
(
ぼく
)
たちは春になったら
燕
(
つばめ
)
にたのんで、みんなにも知らせて
結婚
(
けっこん
)
の
式
(
しき
)
をあげましょう。どうか
約束
(
やくそく
)
してください」
シグナルとシグナレス
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
とられた手に一層力がはいったと思うと、おとよさんはそのまま手を引き、
燕
(
つばめ
)
のように身をひるがえして戸の内へ消えてしまった。
隣の嫁
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
むろん例の冗談口だが、その隙間からうそ寒い風が吹くだろう。また、こんな話もある。知合いの婦人の若い
燕
(
つばめ
)
か何かが死んだ。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
燕
(
つばめ
)
は
嬉
(
うれ
)
しさうに
父
(
とう
)
さんを
見
(
み
)
て
尻尾
(
しつぽ
)
の
羽
(
はね
)
を
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふり
)
ながら、
遠
(
とほ
)
い
空
(
そら
)
から
漸
(
やうや
)
くこの
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
へ
着
(
つ
)
いたといふ
話
(
はなし
)
でもするらしいのでした。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
再び来るその雨も、
鈴蘭
(
すずらん
)
や
忍冬
(
すいかずら
)
が恵みをたれるのみで、少しも心配なものではなかった。
燕
(
つばめ
)
は見るも不安なほどみごとに低く飛んでいた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
源三郎の頭に、このとき影のように浮かんだのは、隻眼隻腕、白衣の右の肩をずっこけに、濡れ
燕
(
つばめ
)
の長い
鞘
(
さや
)
を落し差しにしたある人の姿。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
鳶尾
(
いちはつ
)
などの青々と繁っている茅葺の家、そことなく洩れ来る
梭
(
ひ
)
の音に交って、うら若い女の歌う声、路のへに飛び交う
燕
(
つばめ
)
の群。
秩父の渓谷美
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
もうこっちの物だと云うような軽い心持になって、彼は堤のまんなかを飛んでゆく
燕
(
つばめ
)
の影を見送りながら、ひとりで涼しそうにほほえんだ。
半七捕物帳:62 歩兵の髪切り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
……ばかりじゃ無い、……
雁
(
かりがね
)
、
燕
(
つばめ
)
の
行
(
ゆ
)
きかえり、軒なり、空なり、
行交
(
ゆきか
)
う目を、ちょっとは紛らす事もあろうと、昼間は白髪の
仮髪
(
かつら
)
を
被
(
かむ
)
る。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
手堅い品が盛に作られてこそ本当の発展だというべきではないでしょうか。三条に続いて
燕
(
つばめ
)
で、鍋、釜、
薬缶
(
やかん
)
の類に忙しい仕事を見せます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
お客は
燕
(
つばめ
)
のやうな口もとをして、気味わるさうに一寸皿の物を嘗めたが、言ひ合はせたやうに変な
表情
(
かほつき
)
をして、その儘
匙
(
さじ
)
をおいてしまつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
燕
(
つばめ
)
という鳥は所をさだめず飛びまわる鳥で、暖かい所を見つけておひっこしをいたします。今は日本が暖かいからおもてに出てごらんなさい。
燕と王子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼女は
燕
(
つばめ
)
が幾羽となく飛び交っている、目映いばかりに照りはえた青空を見上げたり、遠くエストゥレル山塊の気まぐれな峯の姿を眺めたり
初雪
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
御馳走
(
ごちそう
)
がでて、みんながにぎやかに、面白く
喰
(
た
)
べたり、飲んだりして、話してゐるまつ最中、そこへあたふたと飛びこんで来たのは
燕
(
つばめ
)
でした。
虹猫の話
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
彼は
燕
(
つばめ
)
のように飛んで、その汽船のマストの上にとびついた。ゼリア号というのが、この汽船の名だった。五百トンもない小貨物船であった。
霊魂第十号の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
何でもその最初の晩が七日だったそうで、彼女は若い
燕
(
つばめ
)
の「23」に倣って、それから7にばかり賭けることにしたのです。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
木々の金緑の若芽が、日の光に
顫
(
ふる
)
えていた。小さな
雫
(
しずく
)
が、銀の音色をして木の葉から
滴
(
したた
)
っていた。そして空には、
燕
(
つばめ
)
の鋭い声が過ぎていった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「贅沢じゃないわよ。上流の人はみんなそうよ。おまけに
男妾
(
おとこめかけ
)
だの、若い
燕
(
つばめ
)
だのがワンサ取り巻いているんですもの……」
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
近くの・名も判らない・低い木に、
燕
(
つばめ
)
の倍ぐらいある真黒な鳥がとまって、
茱萸
(
ぐみ
)
のような紫色の果を
啄
(
ついば
)
んでいる。私を見ても逃げようとしない。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「ネー、今夜はモロッコの
燕
(
つばめ
)
の巣をお前にやろう。ダントンがそれを食いたさに、椅子から転がり落ちたと云う
代物
(
しろもの
)
だ」
ナポレオンと田虫
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
彼は橋の下をくぐる
燕
(
つばめ
)
を斬って速技を会得したというが、小次郎の見解によれば、要するに燕を斬るには初太刀をかわして燕が身をひるがえす時
青春論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
すると、突如、
大銀杏
(
おおいちょう
)
の木蔭から、竹ノ子笠を
眉深
(
まぶか
)
に、身には
半蓑
(
はんみの
)
をまとった武士が、
燕
(
つばめ
)
のごとく、公卿の傘へ、体当りにぶつかッて逃げた——。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
空想が生き生きと目ざめて、いつもいつも同じ
幻
(
まぼろし
)
のまわりを
素早
(
すばや
)
く
駆
(
か
)
けめぐる
有様
(
ありさま
)
は、朝焼けの空に
燕
(
つばめ
)
の群れが、
鐘楼
(
しょうろう
)
をめぐって飛ぶ姿に似ていた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
鶏でも
家鴨
(
あひる
)
でも
鶉
(
うずら
)
でも
燕
(
つばめ
)
でも何の卵でも好き自由に
孵化
(
かえ
)
ります。玉子五十個入で三十円も出せば軽便なのがあります。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
燕
(
つばめ
)
温泉に行った時、ルビーのような、赤い実のついている
苔桃
(
こけもも
)
を見つけて、
幽邃
(
ゆうすい
)
のかぎりに感じたことがあります。
果物の幻想
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
秋の風が立つと、
燕
(
つばめ
)
や、
蝶
(
ちょう
)
や、散った花や、落ちた葉と一しょに、そんな生活は吹きまくられてしまう。そして別荘の窓を、外から冬の
夜
(
よ
)
の
闇
(
やみ
)
が覗く。
冬の王
(新字新仮名)
/
ハンス・ランド
(著)
近頃この界隈に噂が立ちかけて来た、老妓の若い
燕
(
つばめ
)
というそんな気配はもちろん、老妓は自分に対して現わさない。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と、いきなり彼女は、身を
燕
(
つばめ
)
のようにひるがえすと、左手の壁にやや高く掲げてあるルソーの影響を受けたらしい明るい色の油絵の額面に手をふれた。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
的確な、みごとな
突
(
つき
)
であった。六郎兵衛は相手の刀の
切尖
(
きっさき
)
が、こちらの
躯
(
からだ
)
に当る
刹那
(
せつな
)
、
燕
(
つばめ
)
の返るように身を転じた。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「姐さんですか。それが先生あの有名な竹村先生と軽井沢で心中した芝野さんの
旦那
(
だんな
)
を
燕
(
つばめ
)
にしているんですよ。」
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
松山と半ちゃんは、その傘の中を
潜
(
くぐ
)
って
一跨
(
ひとまた
)
ぎの
泪橋
(
なみだばし
)
を渡った。その時
壮
(
わか
)
い男が
燕
(
つばめ
)
のように後から来て二人に
躍
(
おど
)
りかかった。壮い男は
円木棒
(
まるたんぼう
)
を持っていた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
しかし、それは家伝来の梟であり、したがって、その平和を乱してはならないのである。
燕
(
つばめ
)
は煙突に巣をつくってどれもこれもほとんどつまらせてしまった。
ジョン・ブル
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
「精霊が来ることもあるし、神霊が来ることもある。神霊はまた別な鳥の形をして降りて来るのじゃ。ときには
燕
(
つばめ
)
、ときには
金翅雀
(
かわらひわ
)
、ときには山雀の形をして」
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
なぜ鴎外はこんな若き
燕
(
つばめ
)
然とした
柔弱児
(
にゅうじゃくじ
)
を描いて、而もそれに「青年」という題名をつけたのだろうと不審に堪えなかった。最近読み返して眼のあく思いをした。
落穂拾い
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
あなたの欲しいものは何ですか?
火鼠
(
ひねずみ
)
の
裘
(
かわごろも
)
ですか、
蓬莱
(
ほうらい
)
の玉の枝ですか、それとも
燕
(
つばめ
)
の
子安貝
(
こやすがい
)
ですか?
二人小町
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
祥子は、必死になって相手をふり放そうと
燕
(
つばめ
)
のように身を
翻
(
ひるがえ
)
しながら、英夫の救いをもとめたが、だんだん追いつめられ、階段の下で自由をうしないかけていた。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
... ただの
江戸
(
えど
)
つ
子
(
こ
)
であるよりも
生粹
(
きつすゐ
)
とつけた
方
(
はう
)
を
喜
(
よろこ
)
ぶらしい)それから、その——(
夫
(
をつと
)
といつていゝか、
燕
(
つばめ
)
?——
少
(
すこ
)
し、
禿
(
はげ
)
すぎてゐるが)
愛
(
あい
)
する
於莵吉
(
おときち
)
は十一も
齡下
(
としした
)
で
長谷川時雨が卅歳若かつたら
(旧字旧仮名)
/
直木三十五
(著)
『おれはあの犬になりたい』と
奴隷
(
どれい
)
は主人の犬を見て思わなかっただろうか。『おれは
燕
(
つばめ
)
になりたい』と、だれかが残虐な
牢獄
(
ろうごく
)
の窓にすがって思わなかっただろうか。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
燕
(
つばめ
)
の様に、雲の中へと、勇ましい姿を隠したが、十数分の後、空しく引返して来るのが眺められた。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
板塀の上に二三尺伸びている
夾竹桃
(
きょうちくとう
)
の
木末
(
うら
)
には、
蜘
(
くも
)
のいがかかっていて、それに夜露が真珠のように光っている。
燕
(
つばめ
)
が一羽どこからか飛んで来て、つと塀のうちに入った。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
郵便脚夫
(
ゆうびんきゃくふ
)
にも
燕
(
つばめ
)
や
蝶
(
ちょう
)
に春の来ると同じく春は来たのであろう。郵便という声も陽気に軽やかに、
幾個
(
いくつ
)
かの郵便物を投込んで、そしてひらりと燕がえしに身を
翻
(
ひるが
)
えして去った。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
或
(
あ
)
る
農村
(
のうそん
)
にびんぼうなお
百姓
(
ひやくせう
)
がありました。びんぼうでしたが
深切
(
しんせつ
)
で
仲
(
なか
)
の
善
(
よ
)
い、
家族
(
かぞく
)
でした。そこの
鴨居
(
かもゐ
)
にことしも
燕
(
つばめ
)
が
巣
(
す
)
をつくつてそして四五
羽
(
は
)
の
雛
(
ひな
)
をそだててゐました。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
燕
(
つばめ
)
の飛ぶ小雨の日に、「新藁、しんわら」と、はだしの男が
臑
(
すね
)
に細かい泥を
跳
(
は
)
ねあげて、
菅笠
(
すげがさ
)
か、手ぬぐいかぶりで、駈足で、青い早苗を一束にぎって、売り声を残していった。
旧聞日本橋:22 大門通り界隈一束(続旧聞日本橋・その一)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
日に幾たびとなく
撤水車
(
みずまきぐるま
)
が町角から現われては、商家の軒下までも
濡
(
ぬ
)
らして行くが、見る間にまた乾ききって
白埃
(
しらほこり
)
になってしまう。酒屋の軒には
燕
(
つばめ
)
の子が
嘴
(
くちばし
)
を揃えて巣に啼いた。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
燕
漢検準1級
部首:⽕
16画
“燕”を含む語句
燕尾服
燕麦
燕子花
海燕
岩燕
如燕
燕巣
燕京
燕丹
燕麥
燕子
燕路
燕府
飛燕
燕尾
燕雀
燕返
燕人
燕枝
日柳燕石
...