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渓
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たに
ふりがな文庫
“
渓
(
たに
)” の例文
旧字:
溪
我が越後にも化石渓あり、
魚沼郡
(
うをぬまこほり
)
小出
(
こいで
)
の
在
(
ざい
)
羽川
(
はかは
)
といふ
渓
(
たに
)
水へ
蚕
(
かひこ
)
の
腐
(
くさり
)
たるを
流
(
ながし
)
しが一夜にして石に
化
(
くわ
)
したりと
友人
(
いうじん
)
葵亭翁
(
きていをう
)
がかたられき。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
かくて仲善き
甲乙
(
ふたり
)
の
青年
(
わかもの
)
は、名ばかり公園の丘を下りて温泉宿へ帰る。日は西に傾いて
渓
(
たに
)
の東の山々は
目映
(
まば
)
ゆきばかり輝いている。
恋を恋する人
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
渓
(
たに
)
は狭い、信州上高地のように、湯に漬りながら雪の山を見るという
贅沢
(
ぜいたく
)
は出来ない、明日は七曲峠の上で白峰を見たいものだと思う。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
御やすみになっているところを御起しして済みませんが、
夜前
(
やぜん
)
からの雨があの通り
甚
(
ひど
)
くなりまして、
渓
(
たに
)
が
俄
(
にわか
)
に
膨
(
ふく
)
れてまいりました。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
哀れを止むる馬士歌の箱根八里も山を貫き
渓
(
たに
)
をかける汽車なれば
関守
(
せきもり
)
の前に
額
(
ひたい
)
地にすりつくる面倒もなければ煙草一服の間に山北につく。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
水力電気の工事でせき留められた木曾川の水が大きな
渓
(
たに
)
の間に見えるようなところで、私はカルサン姿の太郎と一緒になることができた。
嵐
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そこにきました
当座
(
とうざ
)
は、
外
(
そと
)
に
出
(
で
)
て、
山
(
やま
)
や、
渓
(
たに
)
の
景色
(
けしき
)
をながめて
珍
(
めずら
)
しく
思
(
おも
)
いましたが、じきに、
同
(
おな
)
じ
景色
(
けしき
)
に
飽
(
あ
)
きてしまいました。
町のお姫さま
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
樹にでも、石にでも、当れば当れ、川にでも
渓
(
たに
)
にでも陥らば陥れ、彼はさうした
必死的
(
デスペレエト
)
な気持で、獣のやうに風のやうに、たゞ走りに走つた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
それがまたあまりに悲しがりまして、生きていられないというふうなので、
今朝
(
けさ
)
は
渓
(
たに
)
へ飛び込むのでないかと心配されました。五条の家へ使いを
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
渓
(
たに
)
の水で
咽喉
(
のど
)
を
湿
(
うる
)
おして、それから一里半ばかりも登りますと、見上げる程の大樹ばかりで、
両人
(
ふたり
)
は
草臥
(
くたび
)
れたから大樹の根にどっかり腰を掛けて
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
藤葛
(
ふじかずら
)
を
攀
(
よ
)
じ、
渓
(
たに
)
を越えて、ようやく絶頂まで辿りつくと、果たしてそこに一つの草庵があって、道人は
几
(
つくえ
)
に倚り、童子は鶴にたわむれていました。
中国怪奇小説集:14 剪灯新話(明)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
藤かずらを
攀
(
よ
)
じ、
渓
(
たに
)
を越えて、ようやく絶頂までたどりつくと、果たしてそこに一つの草庵があって、道人は机に
倚
(
よ
)
り、
童子
(
どうじ
)
は鶴にたわむれていた。
世界怪談名作集:18 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
瞿佑
(著)
丹治はもう山におるのが
厭
(
いや
)
になった。そこから向うの
渓
(
たに
)
へ降りる
捷径
(
ちかみち
)
が
岐
(
わか
)
れている。丹治は銃を
引担
(
ひっかつ
)
いでその
径
(
みち
)
の方へ往きかけた。鶴は動かなかった。
怪人の眼
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
谷川橋の
断崖
(
きりぎし
)
の
際
(
きわ
)
にある道しるべ石の文字が、白い残月に、微かに読まれて、その後はただ、
渓
(
たに
)
の水音と風だった。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もし私の記事によってこの
渓
(
たに
)
を探勝せられるものがあるなら、
希
(
こいねが
)
わくは自然の愛護を忘れぬようにして欲しい。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
心持
(
こころもち
)
よほどの大蛇と思った、三尺、四尺、五尺四方、一丈余、だんだんと草の動くのが広がって、
傍
(
かたえ
)
の
渓
(
たに
)
へ一文字にさっと
靡
(
なび
)
いた、
果
(
はて
)
は
峰
(
みね
)
も山も一斉に
揺
(
ゆら
)
いだ
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
梨の実の出盛りに庭阪に行き、または
葡萄酒
(
ぶどうしゅ
)
の仕入時にローヌの
渓
(
たに
)
などをあるいて見ると、盗まれて見なければ豊年の
悦喜
(
えつき
)
が、徹底せぬような顔した人がいる。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
街道筋からそれて、森の中、
渓
(
たに
)
の間、
隈
(
くま
)
もなく探し廻ったのです。河野も私も、
行
(
ゆき
)
がかり上じっとしている訳には行きません。手を分って捜索隊に加わりました。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
松柏
(
しょうはく
)
月を
掩
(
おお
)
ひては、暗きこといはんかたなく、
動
(
やや
)
もすれば岩に足をとられて、
千仞
(
せんじん
)
の
渓
(
たに
)
に落ちんとす。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
パラパラ墓と称する墓場を
経
(
へ
)
、雨夜に隠火の出づると言う森と、人魂の落ちこみしと伝うる林を右左にうけて通りこし、かの唐碓の
渓
(
たに
)
の下流なる
曲淵
(
まがりぶち
)
の堤に出でたり
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
で、或る晩、———と云うのは、あの異常な経験をしてから二日目の晩、法師丸はこっそり城の裏山の
渓
(
たに
)
へ降りて、そこから城廓の外へ通ずる間道を伝わって行った。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一つは
渓
(
たに
)
に沿った街道で、もう一つは街道の傍から渓に懸った
吊橋
(
つりばし
)
を渡って入ってゆく山径だった。街道は展望を持っていたがそんな道の性質として気が散り易かった。
筧の話
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「あんなことを言っている、白馬ヶ岳から高山の花を
摘
(
つ
)
んだり、雪の
渓
(
たに
)
を越えたりして、越中の
剣岳
(
つるぎだけ
)
や、あの盛んな堂々めぐりを、いい気になってながめて来たくせに」
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
小屋のうしろは直ぐ深い大きな
渓
(
たに
)
で、いつの間にか此処らに薄らいだ霧がその渓いっぱいに密雲となって真白に流れ込んでいる。空にもいくらか青いところが見えて来た。
青年僧と叡山の老爺
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
軌道より左に折れてもとの街道をゆくに、これも
断
(
た
)
えたる処あれば、山を
踰
(
こ
)
え
渓
(
たに
)
を渡りなどす。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その
渓
(
たに
)
を
出
(
い
)
でて
蜿蜿
(
えんえん
)
と平原を流るゝ時は
竜蛇
(
りゅうだ
)
の如き
相貌
(
そうぼう
)
となり、
急湍
(
きゅうたん
)
激流に怒号する時は
牡牛
(
おうし
)
の如き形相を呈し……まだいろ/\な例へや面白い
比喩
(
ひゆ
)
が書いてあるけれど……
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
画は
青緑
(
せいりょく
)
の
設色
(
せっしょく
)
です。
渓
(
たに
)
の水が
委蛇
(
いい
)
と流れたところに、村落や
小橋
(
しょうきょう
)
が散在している、——その上に起した主峯の腹には、ゆうゆうとした秋の雲が、
蛤粉
(
ごふん
)
の濃淡を重ねています。
秋山図
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
昨日高城が花田と会ったのは、両側から草山の斜面が切れこんだ
渓
(
たに
)
あいの小さな部落で、その小屋にはもはや同盟の記者はいない。食糧と塩を求めて東海岸方面に出発したという。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
深い
渓
(
たに
)
や、高い山を幾つとなく送ったり迎えたりするあいだに、汽車は
幾度
(
いくたび
)
となく高原地の静なステーションに
停
(
とど
)
まった。旅客たちは
敬虔
(
けいけん
)
なような目を
側
(
そば
)
だてて、山の姿を眺めた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あの、黒い山がむくむく
重
(
かさ
)
なり、その
向
(
むこ
)
うには
定
(
さだ
)
めない雲が
翔
(
か
)
け、
渓
(
たに
)
の水は風より
軽
(
かる
)
く
幾本
(
いくほん
)
の木は
険
(
けわ
)
しい
崖
(
がけ
)
からからだを
曲
(
ま
)
げて空に
向
(
むか
)
う、あの景色が石の滑らかな
面
(
めん
)
に描いてあるのか。
チュウリップの幻術
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そこに一つの洞穴があって、入口に
渓
(
たに
)
の水が流れ、それに石橋をかけてあった。
翩翩
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
そして人間というものは誰でも海とか空とか砂漠とか高原とか、そういう
涯
(
はて
)
のない虚しさを愛すのだろうと考えていた。私は山あり
渓
(
たに
)
ありという山水の風景には心の慰まないたちであった。
石の思い
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
それから
仁和寺
(
にんなじ
)
の前を通って、古い
若狭
(
わかさ
)
街道に沿うてさきざきに断続する村里を通り過ぎて次第に深い
渓
(
たに
)
に入ってゆくと、景色はいろいろに変って、高雄の紅葉は少し盛りを過ぎていたが
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
松の色と水の音、それは今全く忘れていた山と
渓
(
たに
)
の存在を
憶
(
おも
)
い出させた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
看
(
み
)
よ、看よ、木々の緑も、浮べる雲も、
秀
(
ひいづ
)
る峰も、流るる
渓
(
たに
)
も、
峙
(
そばだ
)
つ
巌
(
いはほ
)
も、
吹来
(
ふきく
)
る風も、日の光も、
鶏
(
とり
)
の鳴く
音
(
ね
)
も、空の色も、皆
自
(
おのづか
)
ら浮世の物ならで、我はここに
憂
(
うれひ
)
を忘れ、
悲
(
かなしみ
)
を忘れ、
苦
(
くるしみ
)
を忘れ
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
山が急なために、道は色々に折れて、
渓
(
たに
)
に沿いながら登って行く。アメリカの活動によく、広々した高原を見渡しながら、自動車が山腹を縫って走るところがあるが、丁度あのような所なのである。
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
髪ながきおんかげ
渓
(
たに
)
を深う落ち流に浮きぬしろがね色に
舞姫
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
ことごとく四十
八
(
や
)
渓
(
たに
)
を越えぬまに寂しくなりぬ千山の路
満蒙遊記:附 満蒙の歌
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
凍みひびく
夜
(
よ
)
の
渓
(
たに
)
がはの岩床の大岩床の
間近
(
まぢか
)
くに寝る
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
渓
(
たに
)
行く水はにわかに耳立ちて聞えぬ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
我が越後にも化石渓あり、
魚沼郡
(
うをぬまこほり
)
小出
(
こいで
)
の
在
(
ざい
)
羽川
(
はかは
)
といふ
渓
(
たに
)
水へ
蚕
(
かひこ
)
の
腐
(
くさり
)
たるを
流
(
ながし
)
しが一夜にして石に
化
(
くわ
)
したりと
友人
(
いうじん
)
葵亭翁
(
きていをう
)
がかたられき。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
親指が没する、
踝
(
くるぶし
)
が没する、
脚首
(
あしくび
)
が全部没する、ふくら
脛
(
はぎ
)
あたりまで没すると、もうなかなか
渓
(
たに
)
の方から流れる水の流れ
勢
(
ぜい
)
が分明にこたえる。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
樹
(
き
)
にでも、石にでも、当れば当れ、川にでも
渓
(
たに
)
にでも
陥
(
おち
)
らば陥れ、彼はそうした
必死的
(
デスペレエト
)
な気持で、獣のように風のように、たゞ走りに走った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そこで、あくる日、約束の時刻に行ってみると、果たして
渓
(
たに
)
の北方から
風雨
(
あらし
)
のような声がひびいて来て、草も木も皆ざわざわとなびいた。南の方も同様である。
中国怪奇小説集:04 捜神後記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「落ちれば、わしから先だ。しかしつまらん骨折りをやったものさ。……おおだいぶ
渓
(
たに
)
が狭くなったな」
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然し前年の場所へ行くは却って思出の種と避けて
渓
(
たに
)
の上へのぼりながら、途々「縁」に
就
(
つい
)
て朝田が説いた処を考えた、「縁」は実に「哀」であると沁み沁み感じた。
恋を恋する人
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
土地の者は魏法師の
詞
(
ことば
)
に従って、
藤葛
(
ふじかずら
)
を
攀
(
よ
)
じ
渓
(
たに
)
を越えて四明山へ往った。四明山の頂上の松の下に小さな
草庵
(
そうあん
)
があって、一人の老人が
几
(
つくえ
)
によっかかって坐っていた。
牡丹灯籠 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
遠州へは
信濃
(
しなの
)
から、伊勢の海岸へは
飛騨
(
ひだ
)
の奥から、寒い季節にばかり出てくるということも聴いたが、サンカの社会には特別の交通路があって、
渓
(
たに
)
の中腹や林の
片端
(
かたはし
)
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
やがて大きな沢や、幾つかの
渓
(
たに
)
を越えて、細い細い山途に差しかかると、山の
端
(
は
)
を離れて月の光りが渓川の水に
宿
(
やど
)
っている。二人は黙ったまんまで途を歩いている……
稚子ヶ淵
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
人夫の背負うていた私の写生箱は、いつか細引の
縛
(
いまし
)
めを逃れて、カラカラと左の
渓
(
たに
)
へ落ちた。ハッと思って下を
覗
(
のぞ
)
くと、幸いに十数間の下で樹の根に
遮
(
さえぎら
)
れて止まっている。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
渓
常用漢字
中学
部首:⽔
11画
“渓”を含む語句
渓流
渓水
渓谷
渓間
渓河
梅渓
渓々
渓川
耶馬渓
雪渓
牧渓
鳩渓
虎渓橋
茗渓
渓底
渓流石点々
渓蓀
渓橋
端渓
大槻磐渓
...