“渓底”のいろいろな読み方と例文
旧字:溪底
読み方割合
たにそこ66.7%
たにぞこ33.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
人を馬鹿ばかにしているではありませんか。あたりの山では処々ところどころ茅蜩殿ひぐらしどの、血と泥の大沼になろうという森をひかえて鳴いている、日はななめ渓底たにそこはもう暗い。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
渓底たにそこから沸き上る雲のように、階下の群衆の頭の上を浮動して居る煙草たばこけむりの間を透かして、私は真深いお高祖頭巾の蔭から、場内にあふれて居る人々の顔を見廻した。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
雪の深い、うつろ渓底たにぞこへ、吊されて下りたように悪寒おかんが身を襲って来た。頭の中で鉛を煮るように、熱く、重く、苦しくなった。手足の脉々みゃくみゃくは、飛び上るようにずきりずきり打ち初めた。
悪魔 (新字新仮名) / 小川未明(著)