“たにそこ”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
谷底66.7%
谿底16.7%
渓底5.6%
澗底5.6%
溪底2.8%
壑底2.8%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
というと鉄砲組てっぽうぐみの中から五、六人、足軽あしがる十四、五人、山掘夫やまほり四、五人——小頭こがしら雁六がんろくも一しょについて、まだ朝露あさつゆのふかい谷底たにそこりていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
双眼鏡を肩に掛け、白いしなやかな手を振って、柔かな靴音をさせる紳士は参事官でした。俄然にわかに喇叭らっぱの音が谿底たにそこから起る。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
渓底たにそこから沸き上る雲のように、階下の群衆の頭の上を浮動して居る煙草たばこけむりの間を透かして、私は真深いお高祖頭巾の蔭から、場内にあふれて居る人々の顔を見廻した。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
雲根志うんこんし灵異れいいの部に曰、隣家となり壮勇さうゆうの者あり儀兵衛といふ。或時田上谷たがみだにといふ山中にゆき夜更よふけかへるに、むかうなる山の澗底たにそこより青く光りにじの如くのぼりてすゑはそらまじはる。
樵夫そまやとふてぼくさがす、このくら溪底たにそこぼく死體したいよこたはつてる、東京とうきやう電報でんぱうつ、きみ淡路君あはぢくんんでる、そしてぼくかれてしまう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
天地間てんちかん最早もはや小山某こやまなにがしといふかきの書生しよせいなくなる! とぼくおもつたときおもはずあしとゞめた。あたまうへ眞黒まつくろしげつたえだからみづがぼた/\ちる、墓穴はかあなのやうな溪底たにそこではみづげきしてながれるおとすごひゞく。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
杜陽とようげなんの二人は山道にかかっていた。足がかりのない山腹のいわから巌へ木をわたしてしつらえた桟道かけはしには、ところどころ深い壑底たにそこの覗かれる穴が開いていて魂をひやひやさした。
陳宝祠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)