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うか
ふりがな文庫
“
泛
(
うか
)” の例文
緑雨は恐らく最後のシャレの吐き
栄
(
ば
)
えをしたのを満足して、眼と
唇辺
(
くちもと
)
に会心の“Sneer”を
泛
(
うか
)
べて苔下にニヤリと
脂下
(
やにさが
)
ったろう。
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
彼
(
か
)
の
八
(
や
)
ツ
山
(
やま
)
の
沖
(
おき
)
に
並
(
なら
)
んで
泛
(
うか
)
ぶ
此
(
これ
)
も無用なる
御台場
(
おだいば
)
と
相俟
(
あひま
)
つて、いかにも
過去
(
すぎさ
)
つた時代の遺物らしく放棄された悲しい
趣
(
おもむき
)
を示してゐる。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
とグスはしまいには眼に哀願の色さえ
泛
(
うか
)
べて、そのくせ恐ろしい腕力で私の手を
鷲掴
(
わしづか
)
みにして放さなかった。が、その途端であった。
葛根湯
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
寄手
(
よせて
)
の浅野、小西などの軍は、遠く海から山越えで運送して来た大船三隻を
泛
(
うか
)
べ、それに砲を載せて
城楼
(
じょうろう
)
へ弾丸をうちこんだりした。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
棺
(
くわん
)
の上に刻まれた
其
(
その
)
小さな王子と王女との
寝像
(
ねざう
)
の痛いけなのに晶子は東京に残して来た子供等を思ひ
泛
(
うか
)
べて目を潤ませて居るらしい。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
▼ もっと見る
法水は大風な微笑を
泛
(
うか
)
べて、相手の独創力の欠乏を
憫
(
あわれ
)
んでいるかのごとく見えたが、すぐ卓上の紙片に、上図を描いて説明を始めた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そんな事を考えている
中
(
うち
)
に、
白髪
(
しらが
)
の老人が
職人尽
(
しょくにんづくし
)
にあるような
装
(
なり
)
をして、一心に
仮面
(
めん
)
を彫っている姿が眼に
泛
(
うか
)
ぶ。頼家の姿が浮ぶ。
修禅寺物語:――明治座五月興行――
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と同時に急に姉の泣き笑いの顔、それによく似た亡き母の面影までも二重になって千歳の眼に
泛
(
うか
)
んだ。千歳はおろおろ声になって
呼ばれし乙女
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
印南、茶山、蘭軒と倶に、墨田川に花見舟を
泛
(
うか
)
べた今川槐庵は、名は
𣫔
(
こく
)
、字は
剛侯
(
かうこう
)
である。わたくしは𣫔は毅ではないかと疑ふが
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
前には美しい瀬戸の内海が島々を
泛
(
うか
)
べているのを見ます。山陽とは、もとより山の南側を意味します。その北側を山陰と呼びます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
村落
(
むら
)
の
處々
(
ところ/″\
)
にはまだ
少
(
すこ
)
し
舌
(
した
)
を
出
(
だ
)
し
掛
(
か
)
けたやうな
白
(
しろ
)
い
辛夷
(
こぶし
)
が、
俄
(
にはか
)
にぽつと
開
(
ひら
)
いて
蒼
(
あを
)
い
空
(
そら
)
にほか/\と
泛
(
うか
)
んで
竹
(
たけ
)
の
梢
(
こずゑ
)
を
拔
(
ぬ
)
け
出
(
だ
)
して
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
さては「馬のす」の釣竿しらべている主のたたずまいに軒低く天井暗かりし震災以前の東京の町家の気配をさながらに目に
泛
(
うか
)
べられる人。
随筆 寄席風俗
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
「どうだ、大きな
盥
(
たらい
)
を
八個
(
やっつ
)
買ってそれに乗り、
呑気
(
のんき
)
に四方の景色を見ながら
水流
(
ながれ
)
に
泛
(
うか
)
んで下ったら、自然に黒羽町に着くだろう」
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
雨戸を抜け、月光の浸った夜気の中へ
泛
(
うか
)
み出して行く魂の波動を、いそいでごちゃまぜにして、遮り止めようとでもするように。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
是
(
こ
)
れ永楽帝の
懼
(
おそ
)
れ
憂
(
うれ
)
うるところたらずんばあらず。
鄭和
(
ていか
)
の
艦
(
ふね
)
を
泛
(
うか
)
めて遠航し、
胡濙
(
こえい
)
の
仙
(
せん
)
を
索
(
もと
)
めて遍歴せる、密旨を
啣
(
ふく
)
むところあるが如し。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
悲しそうな表情を
泛
(
うか
)
べるようになったので、私も新次がその女の子の守をしているのを見ると、ちょっとかわいそうになった。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
そのような僅かな胸さわぎがいかに彼にとって珍しく、むず
痒
(
がゆ
)
い快感によって思わず知らず
微笑
(
ほほえ
)
みを
泛
(
うか
)
ばせたことであろう。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
今来たらしい四郎次が、冷笑を
泛
(
うか
)
べながら言った。大人ぶった四郎次の顔を見ると、兵さんは
一寸
(
ちょっと
)
頭を下げた。四郎次は青年団の幹事である。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
食肉を常習とする支那で羊は牛ほど死を懼れぬ位の事は人々幼時より余りに知り切りいて、かえってその由の即答が王の心に
泛
(
うか
)
み出なんだのだ。
十二支考:06 羊に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
八字状に、蛋白色の空に引き、軟かそうな碧の肌が、麗わしく
泛
(
うか
)
び出た、やや遠くは八ヶ岳、近くは蝶ヶ岳が、雲の海に段々沈んでゆきそうだ。
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
惜しい事に今の詩を作る人も、詩を読む人もみんな、西洋人にかぶれているから、わざわざ
呑気
(
のんき
)
な
扁舟
(
へんしゅう
)
を
泛
(
うか
)
べてこの
桃源
(
とうげん
)
に
溯
(
さかのぼ
)
るものはないようだ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
勝永も涙を面に
泛
(
うか
)
べ「さり
乍
(
なが
)
ら、今日の御働き、大軍に打勝れた武勇の有様、
古
(
いにしえ
)
の名将にもまさりたり」と称揚した。
真田幸村
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
悄然
(
しょうぜん
)
として呟く
紺背広
(
こんせびろ
)
の技師の一歩前で、これはまた
溌剌
(
はつらつ
)
とした栖方の坂路を降りていく
鰐足
(
わにあし
)
が、ゆるんだ
小田原提灯
(
おだわらぢょうちん
)
の巻ゲートル姿で
泛
(
うか
)
んで来る。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
刑事がそう言って私に詰寄ると、
傍
(
そば
)
から橘が片頬に皮肉な、又得意そうな
得態
(
えたい
)
の知れぬ笑いを
泛
(
うか
)
べて刑事に報いた。
火縄銃
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
此処
(
ここ
)
よりして見てあれば、
織姫
(
おりひめ
)
の二人の姿は、
菜種
(
なたね
)
の花の中ならず、
蒼海原
(
あおうなばら
)
に描かれて、浪に
泛
(
うか
)
ぶらん
風情
(
ふぜい
)
ぞかし。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
銀色の
翅
(
つばさ
)
を閃かして飛魚の飛ぶ
熱帯
(
ねったい
)
の海のサッファイヤ、ある時は其面に紅葉を
泛
(
うか
)
べ或時は底深く日影金糸を
垂
(
た
)
るゝ山川の明るい
淵
(
ふち
)
の
練
(
ね
)
った様な
緑玉
(
エメラルド
)
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
方
(
ほう
)
何町とも知れぬ広大な屋敷内、大きな泉水があって、船が
泛
(
うか
)
んで、その船の中に、結構な女が五六人、一人は歌い、一人は踊り、三人は鳴物を受持ち
銭形平次捕物控:088 不死の霊薬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その純粋な
烈
(
はげ
)
しい悲嘆には心を動かされずにはいられない。だが、自分には今一滴の涙も
泛
(
うか
)
んでこないのである。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
その少女はつつましい微笑を
泛
(
うか
)
べて彼の座席の前で釣革に下がっていた。どてらのように身体に添っていない着物から「お姉さん」のような首が生えていた。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
ふいに
喋
(
しゃべ
)
るのが面倒臭くなったのだし、それに簡単な解決法が頭に
泛
(
うか
)
んだからである。そこで、言葉を切ったかと思うと、痴川は唐突に伊豆に武者振りついた。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
池内は緊張の下に、隠し切れない喜びの顔色を
泛
(
うか
)
べ乍ら、H警察署の召喚に応じた。今度は相手が検事だった。池内はすっかり自信ある態度で次のようにのべた。
旅客機事件
(新字新仮名)
/
大庭武年
(著)
以前は南方の島々には、焼いて掘り
窪
(
くぼ
)
めて舟にするような大木が多く、それを何隻か結び連ねて、
泛
(
うか
)
びやすくまた
覆
(
くつがえ
)
り難くする技術も、
夙
(
はや
)
く進んでいたかと思う。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
暗い空に向つて、遙かに響きを伝へて来る甲武線の電車の音を聞いてゐると、その中の人達や、或はそれの吐き出される明るい街々やが、ぱあつと眼に
泛
(
うか
)
んで来る。
散歩
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
千古不滅の雪に最後の
一瞥
(
いちべつ
)
を与え、疲れ果てて、そこここの温泉町を眼に
泛
(
うか
)
べながら、帰路に着く。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
夜は草木の上に眠れり。されど仰いでおほ空を見れば、
皎々
(
かう/\
)
たる
望月
(
もちづき
)
、黄金の船の如く、藍碧なる青雲の海に
泛
(
うか
)
びて、
焦
(
こが
)
れたるカムパニアの野邊に涼をおくり降せり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
南洲其の免れざることを知り相共に鹿兒島に
奔
(
はし
)
る。一日南洲、月照の宅を
訪
(
と
)
ふ。此の夜月色
清輝
(
せいき
)
なり。
預
(
あらかじ
)
め
酒饌
(
しゆせん
)
を
具
(
そな
)
へ、舟を薩海に
泛
(
うか
)
ぶ、南洲及び平野次郎一僕と從ふ。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
ともすると六区の池に投身があったり、子供が落ちたり、甚だ不縁起とあって、明治二十四、五年頃、池中へ大伝馬を
泛
(
うか
)
べ、衆僧を招いて盛んにお
施餓鬼
(
せがき
)
を行ったくらいだ。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
今こそまことに冴え冴えと冴えやかに冴えまさったあの眉間
傷
(
きず
)
に、
凄婉
(
せいえん
)
な笑みを
泛
(
うか
)
べつつ
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
然
(
しか
)
るに第二番目の絵になると、
皮膚
(
はだ
)
の色がやや赤味がかった紫色に変じて、全体にいくらか
腫
(
は
)
れぼったく見える上に、眼のふちのまわりに暗い色が
泛
(
うか
)
み
漂
(
ただよ
)
い、唇も
稍
(
やや
)
黒ずんで
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
が、それとともに、「一命に懸けても」と二人の前に誓った言葉が彼の心に
泛
(
うか
)
んできた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
時には出來
上
(
あが
)
ツた繪を幻のやうに
眼前
(
めつき
)
に
泛
(
うか
)
べて見て、
獨
(
ひとり
)
でにツこりすることもあツた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
綺麗に刈りならした芝生の中に立って正に打出されようとする白い球を凝視していると芝生全体が自分をのせて空中に
泛
(
うか
)
んでいるような気がしてくる。日射病の兆候でもないらしい。
ゴルフ随行記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
夫
(
それ
)
より
両国尾上町
(
りやうごくをのへちやう
)
、
京屋
(
きやうや
)
が
楼上
(
ろうじやう
)
に
集会
(
しふくわい
)
する事十
歳
(
とせ
)
あまり、
之
(
これ
)
を聞くものおれ
我
(
わ
)
れに語り、今は
世渡
(
よわた
)
るたつきともなれり、
峨江
(
がこう
)
初
(
はじめ
)
は
觴
(
さかづき
)
を
泛
(
うか
)
め、
末
(
すゑ
)
は
大河
(
たいが
)
となる
噺
(
はなし
)
も
末
(
すゑ
)
は
金銭
(
きんせん
)
になるとは
落語の濫觴
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
同じ年の夏、自由党員の納涼会を朝日川に催すこととなり、女子懇親会にも同遊を交渉し
来
(
きた
)
りければ、元老女史竹内、
津下
(
つげ
)
の両女史と
謀
(
はか
)
りてこれに応じ、同日夕刻より船を朝日川に
泛
(
うか
)
ぶ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
人
(
ひと
)
故
(
ゆえ
)
妻
(
つま
)
を逐はれて、心悲しく
遊
(
あそ
)
びに來た友達と、
曉
(
あかつき
)
深
(
ふか
)
く湖上に
泛
(
うか
)
んだ時である。
筑波ねのほとり
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
そうだ、私は突然母の
旧
(
ふる
)
いおつくりを思い出したのだった。すると、母の
俤
(
おもかげ
)
は母親がその
時時
(
ときとき
)
の流行を
逐
(
お
)
うて
著
(
き
)
ていた着物や、次から次へ変えた髪飾りに応じて変った顔をして
泛
(
うか
)
んで来た。
ある自殺者の手記
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
そんな薄倖な幼児の墓を私は何か一種の感動をもって
眺
(
なが
)
めているうちに、ふいと、一瞬くっきりと、自分の知らなかった頃の小梅の父の、その子の父親としての若い姿が
泛
(
うか
)
ぶような気がした。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
これらのことは、万寿丸ができて、海に
泛
(
うか
)
んでから初めてのことであった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
若い武士の唇にはしずかな微笑が
泛
(
うか
)
んだ。日は経っていった、彼の頬や
顎
(
あご
)
は濃い
髭
(
ひげ
)
で蔽われ、深い両眼は益々深く
落窪
(
おちくぼ
)
んだ。いまでは静坐にも馴れて、半日あまりは身動きもせずに坐っていられる。
松風の門
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
少し口元に微笑を
泛
(
うか
)
べながら、飛んでもないことを言いつづけた。
オパール色の手紙:――ある女の日記――
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
泛
漢検1級
部首:⽔
8画
“泛”を含む語句
泛子
泛々
山陰泛雪図
泛影樓
泛氷
泛淙
泛濫