さが)” の例文
旧字:
仕方がないから、のそのそ出てきて実はこれこれだと清に話したところが、清は早速竹の棒をさがして来て、取って上げますと云った。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かあさんが、くずさんのおうちをきいておいてくださったので、きよは、おれいにいくのに、そうさがしてあるかなくともよかったのです。
雪の降った日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから床の上に腹這はらばいになり、両手を寝台の下につっこんでかじのように動かす。ないことがわかっている壺をさがしてみるのである。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「中島君、安い月給取りの口は別として、金持の未亡人でもさがしたら、どうだ。君は女に好かれる性質たちだから、きっと成功するぜ。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
恐ろしさのあまり、わたしはナイフを草むらに落してしまったが、それをさがすどころではなかった。ずかしくてならなかったのだ。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「二人をこんな目に会わせて、故郷を立退かせるようにしたのもそいつの仕業しわざなんだ、早くさがし出してあかりを立ててみてえものだ」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
十番首を自邸で上げられて以来、源助町は躍起やっきにならざるを得なかった。剣士達は毎日毎夜、隊を組んで喬之助をさがし歩いている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
丹後の人此国のさかひをいづれば風雨たちまちやむゆゑに、丹後の人や居るとさがすなりといへりと。南𧮾子なんけいし此事にあひたりとて記せり。
我々の是から資料をさがし求めて、由来を明らかにしてみたいと思うことの一つは、鹿島の事触ことふれと呼ばれた下級神人の巡歴である。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その御同情ごどうじょうふかいこと、またその御気性ごきしょう素直すなおなことは、どこの世界せかいさがしても、あれ以上いじょう御方おかたまたとあろうとはおもわれませぬ。
ではい。一所いつしよさがしにかけやうとふと、いや/\山坂やまさか不案内ふあんない客人きやくじんが、やみ夜路よみちぢや、がけだ、たにだで、かへつて足手絡あしてまとひにる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
兄の家来が一人ひとりあるその家来に、只の枕をして見たいからもって来いといったが、枕がない、どんなにさがしてもないと云うので、不図ふと思付おもいついた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
王子おうじうえのぼってたいとおもって、とう入口いりぐちさがしたが、いくらさがしても、つからないので、そのままかえってきました。
それでは塩原しほばらのことをくはしく知つてゐる人がありませうかとつて聞いたところが、いといふ。何処どこさがしてもわからない。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
夕食の席で、民やが斯様こんな話をした。今日きょう午後猫をさがして居ると、八幡下で鴫田しぎたの婆さんと辰さんとこの婆さんと話して居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
絵を描く場所をさがしながらそんな見知らぬ小径をさまよっているらしい彼女のことを、何となく気づかわしく思っていた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「あたしスペインのマンテラが欲しいんですけれど、いまパリー中のどこをさがしてもないんですって。つまんないわ。」
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
何でやいうたら、異性の相手さがそ思たら僕以外にもなんぼでもあるけど、同性の相手やったらお姉さんの代りになる人外にちょっとあれしません。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その辺を余程捜して見ましたけれども何分雪の中の道のない所で落したものですからどこへさがしに行って見ようもない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「おい、もう一家をさがさう。つかれついでだ。今日ぢゆうさがしてしまつて、それからゆつくり落ちつかうぢやないか。」
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
ランプのありかを求めさがす為めであつた。けれども何処に置かれて居るのやら、それはどうしても見つからなかつた。
たえ子はその晩、やつと/\電車でんしやに間に合つた。勿論どこをさがしても話をするやうな家はなかつた。何処でも戸をしめてゐたり、火を落してゐたりした。
復讐 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
『それがお手数とあれば、われわれが勝手に引っ捕えます故、暫時ざんじ、お住居の中をさがす事、御用捨にあずかりたい』
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『承知しました。多分瀬川君のところに有ませうから、行つて話して見ませう——もし無ければ、何処どこさがして見て、是非一冊贈らせることにしませう。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ず、河堀をさがしに行くとスモオキング・ルウムで、これも丸坊主になりたての頭で、煙草たばこかしていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
このあいだ紙入かみいれを落したとき十二文の見料けんりょうを出して訊くと、水に縁があり、木に縁があるところをさがせというから、一生懸命ドブを引っ掻き廻していると
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
面白おもしろげなる顔色がんしよく千番せんばんに一番さがすにも兼合かねあひもうすやらの始末しまつなりしにそろ度々たび/″\実験じつけんなれば理窟りくつまうさず、今もしかなるべくと存候ぞんじそろ愈々いよ/\益々ます/\しかなるべくと存候ぞんじそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
おそらく世界じゅうのどこをさがしても、あんな心持ちの悪いふた晩を過ごしたのち、なおたった一人であの部屋に寝ようという人がたくさんあるはずはない。
さういふ時にこれまで学んだ自然科学のあらゆる事実やあらゆる推理を繰り返して見て、どこかに慰藉になるやうな物はないかとさがす。併しこれも徒労であつた。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
みんなはさがしあぐんで、だんだんと土間に突っ立ったり、かまどの前にしゃがんだりしはじめた。大して心配なことはあるまい、という気持が、大抵の人の顔に現れていた。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
くまなくさがしましたが、火星人は、まるで消えてしまったように、どこにも姿が見えないのでした。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかし凡ての仏教辞典にも、あらゆる人名辞彙じいにも上人の名はありませんでした。私は甲州の郷土史にも名をさがしたのです。しかし一行一字の収穫もありませんでした。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そこで右衛門督朝忠に勅して、検非違使をしてさがし求めしめ、又延光をして満仲みつなか、義忠、春実はるざね等をして同じくうかがひ求めしむといふことが、扶桑略記の巻二十六に出てゐる。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
折角せつかく御越おこしやさかい、山中やまぢうさがしましたがたつたぽんほか見附みつかりまへなんので、えらどんこととす」
茸の香 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
彼は内心ひやひやしながら、さがすように捜さないようにあたりの人々を見まわしていた。
お時儀 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この菊塢きくう狂歌きやうかしゆ発句ほつくあり、(手紙と其書そのしよ移転ひつこしまぎれにさがしても知れぬは残念ざんねんにもかくにも一個いつこ豪傑がうけつ山師やましなにやらゑし隅田川すみだがは」と白猿はくゑんが、芭蕉ばせうの句をもじりて笑ひしは
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
臓品のありかをさがしたいから証拠人になつて来て貰ひたいと云はれて、一儀もなく自分で出て来たときの心持では、どこの隅隅からでも引つ張り出さずにおくものかと云ふ気組で居たのであつたが
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
池上いけがみ本門寺の下寺の庭、馬込界隈かいわい百姓家ひゃくしょうやの庭、大森は比較的ひかくてき暖かいので芭蕉を植えるのに、育ちも悪くはないから、こくめいにさがし歩いてあそこで一本、ここで二本というふうにけてもらったり
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
制作は、苦しみの中に強く楽しみをさがしています。
「川地課長、やうやくさがし出しましたよ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
こういって、自分のをさがしにかかった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
泳ぎ子の潮たれながら物さが
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
長いことさがしたナイフの
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「淋しかろうが、そなたは一人で、暫らくここに留守している気で待っていてくれるように。拙者はこれから清吉をさがして参る」
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
先生は二分も三分も「ウォーズウォース」を敲いている。そうしてせっかくさがして貰った「ウォーズウォース」をついに開けずにしまう。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
山城の相楽さがらき郡は後にはサガラカと呼んでいたが、是も当て字を見れば同一の音だったらしい。緩やかにさがしてゆけば同じ例は増加し得る。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
丹後の人此国のさかひをいづれば風雨たちまちやむゆゑに、丹後の人や居るとさがすなりといへりと。南𧮾子なんけいし此事にあひたりとて記せり。
「いやなものはしかたがない。さあうちへおがり。先方せんぽうわたしからよくいっておく。またわたしがよいところをさがしてあげるから。」
海へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「しかしそういつまで人の家に働いていたって仕様がないじゃないか。まだそう悲観する年でもないし、さがせばいくらでもあるものだよ。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
長与は如何どうしたろうかと心配したものゝ、とてさがけに行かぬ。間もなく日が暮れて夜になった。もう夜になっては長与の事は仕方しかたがない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)