手早てばや)” の例文
壁にかけてある制服を下ろすと、手早てばやこれに着換えました。それから一散いっさんに家を飛び出して更けた真夜中の街路に走り出でました。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
私は、出てしまふ決心をしました時にたゞ二つのこときり考へませんでした。手早てばやく、そして、誰にも知れないようにといふことでございます。
おまけに先刻さつき手早てばや藝當げいたうその效果きゝめあらはしてたので、自分じぶん自分じぶんはらまり、車窓しやさうから雲霧うんむうもれた山々やま/\なが
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あひだに、風呂敷ふろしきは、手早てばやたゝんでたもとれて、をんな背後うしろのものをさへぎるやうに、洋傘かうもりをすつとかざす。とかげが、またかごはなうつすいろへつつうつる。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
陪審人ばいしんにんひとつが鉛筆えんぴつきしらせました。つことをゆるされないにもかゝはらずあいちやんは、法廷ほふていまはつて背後うしろき、すきねらつて手早てばやくそれをりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
手に持っているむしろが、えないうちに、手早てばやく自分は、ゆかのむしろをひろい上げた。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
はこび片付るゆゑ文右衞門が宅番する者一人もなし因てお政は是ぞ天の助けと大いによろこ此暇このひま逃出にげいだして御奉行大岡越前守樣の番所へ駈込訴訟かけこみそしようをなさんと手早てばやく支度にこそは及びけれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼は手早てばやく浴衣をぬいで真裸になり、と走り出て、芝生の真中に棒立ちに立った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ははほうへはかずに、四畳半じょうはんのおのが居間いま這入はいったおせんは、ぐさまかがみふたはずして、薄暮はくぼなかにじっとそのまま見入みいったが、二すじすじえりみだれたびんを、手早てばやげてしまうと
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
さけんで、手早てばやく二のをつがえて、いっそうつよきしぼってはなしましたが、これもはねかえってました。もうあとには一ぽんしかのこってはおりません。むかではずんずん近寄ちかよってました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
手早てばやりておわすあそばしたかととりすがりてるゝ燒野やけの雉子きゞす我子わがこならねどつながるえんとてはゝをんなこゝろよわくオヽおたかいなたかどのかなんとして此樣このやうところたづねてれましたとおろ/\なみだこゑきゝけてや膝行出いざりいづる儀右衞門ぎゑもんはくぼみしにキツとにらみてコレなに
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
白痴あはう泣出なきだしさうにすると、うらめしげに流盻ながしめながら、こはれ/\になつた戸棚とだななかから、はちはいつたのを取出とりだして手早てばや白痴あはうぜんにつけた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
萬望どうぞ、おゆるしをねがひます』とあいちやんは消魂けたゝましいこゑさけんで、ふたゝ手早てばや彼等かれらひろげました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
手早てばやささの葉をほどくと、こわいのがしやつちこばる、つつみの端をおさへて、草臥くたびれた両手をつき、かしこまつてじっと見て
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わし手早てばや草鞋わらじいたから、早速さツそく古下駄ふるげた頂戴ちやうだいして、えんからとき一寸ちよいとると、それれい白痴殿ばかどのぢや。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いえなん貴僧あなた。おまいさん後程のちほどわたし一所いつしよにおべなさればいゝのに。こまつたひとでございますよ。)とそらさぬ愛想あいさう手早てばや同一おなじやうなぜんこしらえてならべてした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いけはひつくりかへつてもらず、羽目板はめいたちず、かべやぶれ平時いつものまゝで、つきかたちえないがひかり眞白まつしろにさしてる。とばかりで、何事なにごとく、手早てばやまた障子しやうじめた。おとはかはらずきこえてまぬ。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
坊主ばうず手早てばやひろる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)