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どうか諸君も共に、この文明的運動の新手あらてとなって我々の働きに一臂いっぴの力を添えられんことを我輩は希望してまぬ(拍手大喝采)。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
私の個性は或るみがたい力に促されて、新たなる存在へ躍進しようとする。その力の本源はいつでも内在的である。内発的である。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
咽喉のどから流れるままに口の中で低唱ていしやうしたのであるが、れによつて長吉ちやうきちみがたい心の苦痛が幾分いくぶんやはらげられるやうな心持こゝろもちがした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
けれども、此方こちらの請求をれて下さらなければむを得んので、実は事は穏便の方が双方の利益なのですから、更に御一考を願ひます
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
むを得ず、ポーはジヨン、アランといふ煙学者えんがくしやに養はれることになりました。がポーは間もなくそこを離れてしまつたのです。
ポーの片影 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これは我が国風こくふうでもあり、第一には武士道の感化でもあろうが、それだけに我がかたき討なるものが甚だ単調になるのはむを得ない。
かたき討雑感 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
子供こどもには、はなしたあとでいろ/\のことはれて、わたくしまたむことをずに、いろ/\なことこたへたが、それをこと/″\くことは出來できない。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
いささか幻滅の悲哀を感じながら、むを得ず昨夜のスケッチを牛太郎に見せると、まあ、若太夫さんでしょう、ということになった。
ヒウザン会とパンの会 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
腕も抜群ですが、何よりの特色はその軽捷けいしょうな身体で、もう一つの特色は、妨げる者は殺さずんばまない、鬼畜のごとき残虐性でした。
既に幾たびも君が学資に窮して、休学のむを得ざらんとするごとに、常にフランス文の手紙がそって、行届ゆきとどいた仕送しおくりがあったではないか。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いまだほどへざるに悲鳴み、これに代えてさらに怖るべき物のを聞き出でたるがごとく、恐怖の流れ、みなぎり脈打つがごとき間。
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
今日けふは少し装置が狂つたので晩の実験はめだ。是から本郷の方を散歩して帰らうと思ふが、君どうです一所にあるきませんか」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
理由なくママをはずかしめ、木村さんを苦しめたと云ってパパを非難してまないので、「そういうことに娘が立ち入って貰いたくない」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
初めてほっとして、嬢は深い深い溜息をいた。一昨日伯爵夫人を追跡したことから、むを得ず警察局員に手錠をかけてもらったこと。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
それが彼女から取上げられて、家庭の不幸は生じたのであるが、それはやはり女の労働の軽減と、比例していたのだからむを得ない。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
妻にして貞操を破るとすればたちまち家庭の不和を生ぜずにはむまい。子女の教育についても母が正義の規範を示す資格を欠くことになる。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
むを得ず二束三文に売り飛ばすと、あとは商品を仕入れる余裕がないから、屑屋同様になって店を仕舞うという有様であった。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
これなりとは聞召きこしめしたりけれど、いきおい既に定まりて、削奪の議を取る者のみ充満みちみちたりければ、高巍こうぎの説も用いられてみぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
知られで永くみなんこと口惜くちをしく、ひとつには妾がまことの心を打明け、且つは御身の恨みの程を承はらん爲に茲まで迷ひ來りしなれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
むなく帰省して見れば、両親は交々こもごも身の老衰を打ちかこち、家事を監督する気力もせたれば何とぞ家居かきょして万事を処理しくれよという。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
一、死して後むの四字は、言簡にして義広し。堅忍果決にして、確乎かっことして抜くべからざるものは、これをきて術なきなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
彼が躊躇ちゅうちょするのを見た長老ルバックの従者が、怒って棒切を投げつけ、彼の左の目を傷けた。むを得ず、彼は鱶の泳いでいる水の中に跳び込んだ。
南島譚:01 幸福 (新字新仮名) / 中島敦(著)
〔譯〕雲煙うんえんむことを得ざるにあつまる。風雨ふううは已むことを得ざるにる。雷霆らいていは已むことを得ざるにふるふ。こゝに以て至誠しせい作用さようる可し。
母は薄暗い行燈あんどうのかげでつづれをさしたり、網のつくろいをしたりすると、お光は学校めて後も矢張やっぱり手習読書をせっせと勉強する。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
されば管理部は終にわれら従軍者のために宿舎を与へざりしなり。宿舎を与へられざればむなく従軍者自ら周旋して宿舎を借りたるなり。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
どうもそれはむを得ないことだと思った、それに我輩が誰れが何といって来ても芝居や映画等に同意しなかったものだから
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
四宮理学士の絞殺も同一手段で行われたのであったが、学士が女史の犯跡はんせきを握っていたので、むをず殺害したものらしい。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
但しこは彼が、好みて我より隱れしにあらず、むをえざるにいづ、人間のまとよりもその思ふところ高ければなり 四〇—四二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
やはり海の中で物を失ったと一つ事であるからむなくそのままにしてだんだん進んで、どうか今夜はテントのある辺まで着きたいもんだ
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
寒月君が「ちとてらうような気味にもなりますからめに致します。四百六十五行から四百七十三行を御覧になると分ります」
仮令たとえ親戚から離れ、人から爪弾つまはじきせられ、全く自分一人に生きなければ成らないような時が来ようとも、彼としてはそれもむを得なかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
酋長は最初軍事的であるが後には政治的になつて来て、自分でその慾望に応じて獲得することをめて、他の人々から支給をうけるやうになる。
社会的分業論 (新字旧仮名) / 石川三四郎(著)
むをず、まつ東面とうめんはうあなひらかうとして、草原くさはらけてると、其所そこけの小坑せうかうがある。先度せんど幻翁げんおう試掘しくつして、中止ちうししたところなのだ。
皆自ら薦むるに急にして押し合ひ、一人も朗読の機会を得ずしてむ。一人ありて短き句を唱へて、抜足しつゝ過ぎ去る。
クロッツ家を訪うと、女中が出て来て、皆さんが留守ですからといって拒絶したが、警察からだときいて、むなくプライスたちの自由に任せた。
恐ろしき贈物 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
五形と書くゲンゲの方なら、一望の野を美しくするかと思うが、作者が御形と書いている以上、やはりハハコグサのながめと解してむべきであろう。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
わたくしにはむに已まれぬ訴えが胸にあるのです。この若い時代から一味の滋液が流れてわたくしの心に入ります。
此の如きの輩もと学術の何たるを知らざるものすべからくその面に唾すべしといへどもまた勢のむべからざるなきに非ず。
史論の流行 (新字旧仮名) / 津田左右吉(著)
彼等が悟を説くや、到底城見物の案内者が、人を導きて城の外濠そとぼり内濠をのみ果てしなくめぐり廻りて、つひに其の本丸に到らずしてめる趣きあるなり。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
ただ、いつの場合も、病後の静養か、仕事のためが多かったから、むを得ざる旅であったとも云えない事はない。
解説 趣味を通じての先生 (新字新仮名) / 額田六福(著)
印度洋のかの不可思議ふかしぎな色をして千劫せんごう万劫まんごうむ時もなくゆらめくなぞの様な水面すいめん熟々つくづくと見て居れば、引き入れられる様で、吾れ知らず飛び込みたくなる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「どうもそのね、北原君はむを得ない仕事があって忙しいんで、困ってる。麦酒は明日あしたにしてもらえんかね。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
アヽ、諸君、——僕の言を借用なさらぬは、必竟ひつきやう僕が平素の不徳に依るですから、むを得ないです、が、先生を間諜かんでふと認めたのは、僕の観察では無い
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
決して立腹しないから真実のところを打ち明けてくれ、と、パトロンは頻りに妹を責めるので、むなく吉川さんとの関係を白状してしまったそうですわ。
青い風呂敷包 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
(七一)これふるにかならさざるところもつてし、これとどむるにあたはざるところもつてするものあやふし。
自分じぶん收入以上しうにふいじやうくらしをして、むをぬから借金しやくきんつゞけてると事態じたいであるからして、左樣さやう状態じやうたいくににはかねさぬとふのが英米えいべい立前たてまへである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
もしまたむに已まれない思いや心持があって、しかもそれが書けないのだとわかったら、それはむしろ一行の文章すら出来なかったのが不思議なのである。
文章を作る人々の根本用意 (新字新仮名) / 小川未明(著)
(『無量寿経むりょうじゅきょう』に曰く、「生死しょうじの流転、休止くしあることなし」と。また曰く、「生死窮まりむことなし」と)
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
そして Ob がゼロであることをめる以前に Db がゼロとなって、解法不能となるのでなければ
むを得ず気の毒ながらも深傷ふかでを負わしたが、一体何う云う仔細でまア水司又市を敵と探す者か、此方こちら手負ておいで居るからせつない、これ娘お前泣かずに訳を云え
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)