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差俯向
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さしうつむ
ふりがな文庫
“
差俯向
(
さしうつむ
)” の例文
ものいう目にも、見えぬ目にも、二人
斉
(
ひと
)
しく涙を
湛
(
たた
)
えて、
差俯向
(
さしうつむ
)
いて黙然とした。人はかかる時、世に我あることを忘るるのである。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と逃げもすれば
殴飛
(
はりとば
)
す勢いで、市四郎は拳を固めて
扣
(
ひか
)
えて居ます。松五郎お瀧の両人は多勢に云い
捲
(
まく
)
られ、何も云わず
差俯向
(
さしうつむ
)
いて居ました処へ
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ト云ッて
差俯向
(
さしうつむ
)
いた、文三の懸けた
謎々
(
なぞなぞ
)
が解けても解けない
風
(
ふり
)
をするのか、それともどうだか
其所
(
そこ
)
は判然しないが、ともかくもお勢は
頗
(
すこぶ
)
る無頓着な
容子
(
ようす
)
で
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
夫人はフッと言葉を切ると、そのまま堪え兼ねた様に
差俯向
(
さしうつむ
)
いて
了
(
しま
)
った。
花束の虫
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
何
(
なん
)
にもならないで、ばたりと力なく墓石から下りて、腕を
拱
(
こまぬ
)
き、
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、じっとして立って居ると、しっきりなしに蚊が
集
(
たか
)
る。
星あかり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
ト
吃
(
どもり
)
ながら言ッて文三は
差俯向
(
さしうつむ
)
いてしまう。お勢は不思議そうに文三の容子を
眺
(
なが
)
めながら
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
と
差俯向
(
さしうつむ
)
き暫らく涙に沈み居たるが、漸く気を取直して
面
(
おもて
)
を
擡
(
あ
)
げ、袂から銭入を取出し
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
何
(
なん
)
にもならないで、ばたりと
力
(
ちから
)
なく
墓石
(
はかいし
)
から
下
(
お
)
りて、
腕
(
うで
)
を
拱
(
こまぬ
)
き、
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、ぢつとして
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
ると、しつきりなしに
蚊
(
か
)
が
集
(
たか
)
る。
星あかり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ああわるう御座ンした……」と文三は
狼狽
(
あわ
)
てて
謝罪
(
あやま
)
ッたが、
口惜
(
くちお
)
し涙が承知をせず、両眼に一杯
溜
(
たま
)
るので、顔を揚げていられない。
差俯向
(
さしうつむ
)
いて「私が……わるう御座ンした……」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「加うるに君が居ても差支えない。諸君のような人ばかりなら、
幾人
(
いくたり
)
居たって私は心配も
何
(
なんに
)
もしないが。」と梓は
愁然
(
しゅうぜん
)
として
差俯向
(
さしうつむ
)
く。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(
貴僧
(
あなた
)
はほんとうにお優しい。)といって、
得
(
え
)
も
謂
(
い
)
われぬ色を目に
湛
(
たた
)
えて、じっと見た。
私
(
わし
)
も
首
(
こうべ
)
を
低
(
た
)
れた、むこうでも
差俯向
(
さしうつむ
)
く。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
若旦那
(
わかだんな
)
、
氣疲
(
きつか
)
れ、
魂倦
(
こんつか
)
れ、
茫
(
ばう
)
として
手
(
て
)
もつけられず。
美少年
(
びせうねん
)
の
拔
(
ぬ
)
けたあとを、
夫婦
(
ふうふ
)
相對
(
あひたい
)
して
目
(
め
)
を
見合
(
みあは
)
せて、いづれも
羞恥
(
しうち
)
に
堪
(
た
)
へず
差俯向
(
さしうつむ
)
く。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
含羞
(
はなじろ
)
む
瞼
(
まぶた
)
を染めて、玉の
項
(
うなじ
)
を
差俯向
(
さしうつむ
)
く、ト見ると、
雛鶴
(
ひなづる
)
一羽、松の羽衣
掻取
(
かいと
)
って、
曙
(
あけぼの
)
の雲の上なる、
宴
(
うたげ
)
に召さるる風情がある。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(
貴僧
(
あなた
)
は
真個
(
ほんとう
)
にお
優
(
やさ
)
しい。)といつて、
得
(
え
)
も
謂
(
い
)
はれぬ
色
(
いろ
)
を
目
(
め
)
に
湛
(
たゝ
)
へて、ぢつと
見
(
み
)
た。
私
(
わし
)
も
首
(
かうべ
)
を
低
(
た
)
れた、むかふでも
差俯向
(
さしうつむ
)
く。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
顔を上げた私と、枕に
凭
(
もた
)
れながら、
熟
(
じっ
)
と眺めた母と、顔が合うと、坊や、もう
復
(
なお
)
るよと言って、涙をはらはら、
差俯向
(
さしうつむ
)
いて
弱々
(
よわよわ
)
となったでしょう。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、横へ取ったは
白鬼
(
はっき
)
の面。端麗にして威厳あり、眉美しく、目の優しき、その
顔
(
かんばせ
)
を
差俯向
(
さしうつむ
)
け、しとやかに手を
支
(
つ
)
いた。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
胸越しに半面を
蔽
(
おお
)
うて
差俯向
(
さしうつむ
)
く時、すらりと投げた
裳
(
もすそ
)
を引いて、足袋の爪先を柔かに、こぼれた
褄
(
つま
)
を寄せたのである。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
樹立
(
こだ
)
ちに薄暗い石段の、石よりも
堆
(
うずたか
)
い
青苔
(
あおごけ
)
の中に、あの
蛍袋
(
ほたるぶくろ
)
という、
薄紫
(
うすむらさき
)
の
差俯向
(
さしうつむ
)
いた
桔梗
(
ききょう
)
科の花の
早咲
(
はやざき
)
を見るにつけても、何となく
湿
(
しめ
)
っぽい気がして
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
恐怖
(
おそれ
)
と、
涙
(
なんだ
)
と、
笑
(
えみ
)
とは、ただその深く
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、眉も目も、房々した前髪に隠れながら、ほとんど、顔のように見えた真向いの島田の
鬢
(
びん
)
に包まれて、
簪
(
かんざし
)
の穂に
顕
(
あらわ
)
るる。
革鞄の怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
日
(
ひ
)
の
光
(
ひか
)
りやゝ
弱
(
よわ
)
く、
衣
(
きぬ
)
のひた/\と
身
(
み
)
に
着
(
つ
)
く
処
(
ところ
)
に、
薄
(
うす
)
い
影
(
かげ
)
が
繊細
(
かほそ
)
くさして、
散乱
(
ちりみだ
)
れた
桜
(
さくら
)
の
花
(
はな
)
の、
背
(
せ
)
に
頸
(
くび
)
にかゝつたまゝ、
美女
(
たをやめ
)
は、
手
(
て
)
を
額
(
ひたひ
)
に
当
(
あ
)
てゝ、
双六盤
(
すごろくばん
)
に
差俯向
(
さしうつむ
)
いて
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
お夏は襟を
啣
(
くわ
)
えるようにして、
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、
颯
(
さっ
)
と顔を
赧
(
あか
)
らめたが、何にもいわないで
莞爾
(
にっこり
)
した。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「はい、」といったッきり、愛吉はしばらく
差俯向
(
さしうつむ
)
いていたが、思出したように
天窓
(
つむり
)
を上げて
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「内に拓さんという方がございます、花を欲しいと存じましたのも、
皆
(
みんな
)
その人のためなんですから。」と死を極めたものの、かえってかかることを
憚
(
はばか
)
らず言って
差俯向
(
さしうつむ
)
く。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
といったが小さな声、男の腕に肩をもたせて
伏目
(
ふしめ
)
に胸に
差俯向
(
さしうつむ
)
く、お鶴はこの時立っていた。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ここが痛うございますよ。」と両手を組違えに二の腕をおさえて、
頭
(
つむり
)
が重そうに
差俯向
(
さしうつむ
)
く。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(貴下を直したいために)といわんは、渠の良心の許さざりけむ、
差俯向
(
さしうつむ
)
きてお貞は黙しぬ。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
硝子盃
(
コップ
)
で、かわりをして、三杯ぐっと飲んだが、しばらく
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、ニコリとなって、
胡坐
(
あぐら
)
を直して、トンと袴をたたくと、思出したように、
衝
(
つ
)
と
住居
(
すまい
)
から楽屋へ帰った。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自然
(
おのず
)
から気が映ってなったらしく、女の児と
同一
(
おなじ
)
ように目を
瞑
(
ねむ
)
って、男の児に何かものを言いかけるにも、なお深く
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、いささかも室の外を
窺
(
うかが
)
う
気色
(
けしき
)
は無かったのである。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
先達
(
せんだつ
)
の女房に、片手、手を
曳
(
ひ
)
かれて登場。姿を
粛
(
しずか
)
に、深く
差俯向
(
さしうつむ
)
き、面影やややつれたれども、さまで
悪怯
(
わるび
)
れざる態度、
徐
(
おもむろ
)
に廻廊を進みて、床を上段に昇る。昇る時も、
裾捌
(
すそさば
)
き
静
(
しずか
)
なり。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
梓は聞いて物をもいわず
差俯向
(
さしうつむ
)
いたにも
係
(
かかわ
)
らないで、竜田は
凜
(
りん
)
として姿を調え
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前垂の膝を堅くして——
傍
(
かたわら
)
に柔かな髪の
房
(
ふっさ
)
りした島田の
鬢
(
びん
)
を重そうに
差俯向
(
さしうつむ
)
く……襟足白く冷たそうに、
水紅色
(
ときいろ
)
の
羽二重
(
はぶたえ
)
の、無地の
長襦袢
(
ながじゅばん
)
の肩が
辷
(
すべ
)
って、寒げに脊筋の抜けるまで、
嫋
(
なよ
)
やかに
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
撫肩
(
なでがた
)
の懐手、すらりと襟を
辷
(
すべ
)
らした、
紅
(
くれない
)
の
襦袢
(
じゅばん
)
の袖に片手を包んだ
頤
(
おとがい
)
深く、清らか
耳許
(
みみもと
)
すっきりと、湯上りの
紅絹
(
もみ
)
の
糠袋
(
ぬかぶくろ
)
を
皚歯
(
しらは
)
に
噛
(
か
)
んだ趣して、頬も白々と
差俯向
(
さしうつむ
)
いた、
黒繻子
(
くろじゅす
)
冷たき雪なす
頸
(
うなじ
)
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夫人はこれを聞くうちに、
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、両方引合せた
袖口
(
そでくち
)
の、
襦袢
(
じゅばん
)
の花に
見惚
(
みと
)
れるがごとく、打傾いて
伏目
(
ふしめ
)
でいた。しばらくして、さも身に染みたように、肩を震わすと、
後毛
(
おくれげ
)
がまたはらはら。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
といいかけて
差俯向
(
さしうつむ
)
く、額に乱れた前髪は、歯にも
噛
(
か
)
むべく
怨
(
うら
)
めしそう。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
太
(
いた
)
く
便
(
たより
)
を失ったが、暑さは暑し弱い身の、
日向
(
ひなた
)
に立っていられる
数
(
すう
)
ではないから、
止
(
や
)
むことを得ず、思い切って気の進まないのを元の処へ
引返
(
ひっかえ
)
すと、我にもあらずおずおずして、
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、姫と
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とまた
差俯向
(
さしうつむ
)
く肩を越して、按摩の手が、それも物に震えながら、はたはたと
戦
(
おのの
)
きながら、背中に
獅噛
(
しが
)
んだ
面
(
つら
)
の
附着
(
くッつ
)
く……門附の
袷
(
あわせ
)
の
褪
(
あ
)
せた色は、
膚薄
(
はだうす
)
な胸を透かして、
動悸
(
どうき
)
が筋に映るよう、あわれ
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前刻
(
さっき
)
から
多時
(
しばらく
)
そうやっていたと見えて、ただしくしく泣く。
後
(
おく
)
れ毛が揺れるばかり。慰めていそうな貴婦人も、
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、無言の処で、
仔細
(
しさい
)
は知れず……
花室
(
はなむろ
)
が夜風に冷えて、
咲凋
(
さきしお
)
れたという風情。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
急
(
きふ
)
に
幅
(
はゞ
)
のある
強
(
つよ
)
い
聲
(
こゑ
)
。
按摩
(
あんま
)
は
其
(
そ
)
の
時
(
とき
)
、がつくりと
差俯向
(
さしうつむ
)
く。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
女は
頤
(
おとがい
)
深く、優しらしい眉が前髪に透いて、ただ
差俯向
(
さしうつむ
)
く。
革鞄の怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
よく/\であつたと
見
(
み
)
えて、
恥
(
はづか
)
しさうに
差俯向
(
さしうつむ
)
く。
一席話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
とまた声が曇って、黙って
差俯向
(
さしうつむ
)
いた主税を見て
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
差俯向
(
さしうつむ
)
きて床の上に起直りていたり。
一景話題
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と生返事、胸に手を置き、
差俯向
(
さしうつむ
)
く。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
差俯向
(
さしうつむ
)
くと、
仄
(
ほの
)
かにお妙の足が白い。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前髪がふっくり揺れて…
差俯向
(
さしうつむ
)
く。
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二人は黙って
差俯向
(
さしうつむ
)
く。……
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
差俯向
(
さしうつむ
)
いた肩が震えた。
女客
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
差
常用漢字
小4
部首:⼯
10画
俯
漢検1級
部首:⼈
10画
向
常用漢字
小3
部首:⼝
6画
“差俯”で始まる語句
差俯