)” の例文
旧字:
人の北を枕としてぬるを嫌うは、死人を常に北に向けて枕せしむると、北方は陰にして死をつかさどるというとよりきたりしなり。
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
しかしマタイの言葉によれば、「殿みや幔上まくうへより下まで裂けて二つになり、又地ふるひて岩裂け、墓ひらけて既にねたる聖徒の身多くよみがへ
続西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
殊に『松林はやしは眠り、谷はね』というあたりは、ほんとにありありと谷が眠っているように感じられ、思わず『謹聴!』と声がかかる
いやしくも一国の宰相でありながら、夜は更けてね、朝はつとに起きいで、時務軍政を見、その上、細かい人事の賞罰までにいちいち心を
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「かくの如く人もね臥してまた起きず、天の尽くるまで目覚めず睡眠ねむりを醒まさざるなり」とは、死後陰府よみにおける生活を描いたもので
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
この夜お登和嬢は一縷いちるのぞみを抱いてねぬ。小山ぬしの尽力その甲斐かいあらば大原ぬしは押付婚礼おしつけこんれいのがれてたちまち海外へおもむき給わん。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
妻はなくて美しき娘あり。また一匹の馬を養う。娘この馬を愛してよるになれば厩舎うまやに行きてね、ついに馬と夫婦になれり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「われはねまし、されどは踊らでやまず。」恋をしながら踊らずにいられぬという、なさけない矛盾が彼をさいなんだ……
酔過ゑひすごしてねたるなれば、今お村が僵れ込みて、おのかたへに気を失ひ枕をならべて伏したりとも、心着こゝろづかざるさまになむ。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「芭蕉の句の『馬にねて残夢月遠し茶のけむり』というのがその茶粥を炊く煙だそうですが、一体何んなもんですか?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
教授はそれを好機としてぜひとも一度は日本式の旅館へ泊ってみたいと申し出られ、自分ひとりでその夜を蒲団ふとんの上にね、味噌汁みそしるで朝食をとられました。
また一度、偶然ある好からぬ者に対して議論をしたことがある。その時の話に、彼は殺されるのが当然で、まさにその肉をくらいその皮にぬべしと言った。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
いかなる野末の草にね、露に濡れて居るだろう。半日のうちに戻って来ると、あれ程堅く云い残した言葉を思えば、きっと何か変事があったに相違ない。
二人の稚児 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その夜は南条と共にこの家に枕を並べてね、翌朝早々に兵馬は王子へ帰りました。帰って見ればあの事件。
ことにこの街のわかい六騎は温ければすなどり、風の吹く日は遊び、雨にはね、空腹ひもじくなれば食ひ、酒をのみては月琴を弾き、夜はただ女を抱くといふ風である。
水郷柳河 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
病床にねずして、深くそのゆえを考うるに、始めて知る天地の間もとより自然の大勢あり。冥々の間に循環し、しかしてその潜運黙移つねに人意の表に出ず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
一 女は常に心遣こころづかひして其身を堅くつつしみまもるべし。朝早く起き夜は遅くね、昼はいねずして家の内のことに心を用ひ、おりぬいうみつむぎおこたるべからず。又茶酒など多くのむべからず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
自分が飯持て行かぬとて小言こごといはれぬだけが近衛よりはましならんか。十日の夜は重なりあひてぬ。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
武男が母は昔気質かたぎの、どちらかといえば西洋ぎらいの方なれば、寝台ねだいねてさじもて食らうこと思いも寄らねど、さすがに若主人のみは幾分か治外の法権をけて
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そうしてなしを作り、墨絵をかきなぐり、めりやすを着用し、ひるの貝をぶうぶうと鳴らし、茣蓙ござね、芙蓉ふようの散るを賞し、そうして水前寺すいぜんじの吸い物をすするのである。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
さは云へ身の衰へくを思ひさふらふてつかねむりをも得たき願ひに夜は何時いつも氷を頂きてね申しさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
彼方かなたに隠れ、此方こなたに現はれ、昼ね、夜起きて、抜けつ潜りつ日を重ね行くうちに、いつしか思ひの外なる日田ひたの天領に紛れ入りしかば、よきついでなれと英彦山ひこさんに紛れ入り
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しとしとと来た雨の夜泊の船中で、ねがてたとまの雫の音を聞いていると翁の胸はしきりに傷んだ。翁は拾って来た娘の家の庭の小石を懐から取出して船燈のかげで検めみる。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
夕に床にかんとする時、三人の天使わが床にやすみいたり。一人はすそに二人は枕辺まくらべにありて、中央に聖母マリアありぬ。マリアわれにのたまいけるは、ねよ、ためろうなかれと。
「吾が行へをぬ夢に見る」で、あり/\と分つて後追駈けたものであらうかも知れぬ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
はげしく物思ひてねざりし夜の明方近く疲睡を催せし貫一は、新緑の雨に暗き七時のねやおそはるる夢の苦くしきりうめきしを、老婢ろうひよばれて、覚めたりと知りつつうつつならず又睡りけるを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼は三十人の壮士をすぐって、武器をたずさえ、糧食を背負い、巌窟がんくつね、野原で食事をして、十日あまりも進むうちに、宿舎を去ること二百里、南のかたに一つの山を認めた。
恋と小袖は一模様、身に引き締めて抱いてねてこそなつかしいということが思われて、どうかして一と目なりとも彼女の姿が見たいと思って、私は折々女の勤めている家の前を
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
一〇八まどかみ松風まつかぜすすりて夜もすがら涼しきに、一〇九みち長手ながてつかうまねたり。
「夜もけた。さらばおれはこれから看経かんきんしょうぞ。和女おことは思いのまにまにねよ」
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
しょく尽きてこうおしめども、更尽きて客はねたり。寝ねたるあとにエレーンは、合わぬ瞼の間より男の姿の無理にひとみの奥に押し入らんとするを、幾たびか払い落さんとつとめたれどせんなし。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まして我はねてだに、うれしき夢見るべき目あてもあらぬはかなき身なれば、むしろ眠らずして、このまま一夜を闇黒のうちに過すべきか、むしろこの一夜の永久なる闇黒界にならんことを
一夜のうれい (新字新仮名) / 田山花袋(著)
明日あすよりはたばこやめむとひつつねあさあけに先づ吸ふ「さつき」のけむり
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
彼は家というものももはや失い、主として山野にね、山野に彷徨して、虫けらを食って生存しているのだが、時々、里へ出現ましまして座像化したり、立像化したりをやらかすのである。
沼畔小話集 (新字新仮名) / 犬田卯(著)
エリスはまだねずとおぼしく、炯然けいぜんたる一星の火、暗き空にすかせば、明らかに見ゆるが、降りしきるさぎのごとき雪片に、たちまちおおわれ、たちまちまたあらわれて、風にもてあそばるるに似たり。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その時神に対するイエス御自身の信仰が磐石ばんじゃくの力となって、「汝ら何ぞ騒ぎかつ泣くか、幼児は死にたるにあらず、ねたるなり」との確信に満ちた御言みことばを発せられたのです(五の三九)。
やまと恋ひらえぬにこころなくこの洲の崎にたづ鳴くべしや(文武天皇)
万葉集の恋歌に就て (新字旧仮名) / 三好達治(著)
神経の痛みに負けて泣かねども幾夜いくよねねば心弱るなり (アララギ)
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「垂仁紀」に天皇狭穂姫さほひめ皇后の膝を枕にね小蛇御頸にまとうと夢みたまいし段に似、長摩納が王を殺さんとして果さなんだところは、『吉野拾遺』、宇野熊王が楠正儀くすのきまさのりを討ち果せなんだ話に類す。
葉マキ虫の葉をつゞりてぬる如く、一同皆蒲団ふとんくるまりて一睡す。
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
世の中のさわぎならねどをぞねぬあなかま風の竹に鳴る夜は
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
より燈影ほかげの漏るゝ見ゆ、伯母はねずあるなり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
あくどしや少し恋しとなす人をたゆまずねず思ふと云ひぬ
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
君なくてちり積もりぬる床なつの露うち払ひいく夜ぬらん
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
足さすり手さすりぬる夜寒よさむかな
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
枕もとに妻ねである夜長かな
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
たびたびにねざめて
おもひで (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
「われはねまし、されどは踊らでやまず。」この文句の語る憂鬱で北国的な、誠実で不器用な感覚の重苦しさを、彼は実によくっている。
それからも、野に臥し、山にね、野鼠の肉をくらい、草の根をかみ、あらゆる危険と辛酸に試されたあげく、やっと青州府の城下にたどりついた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毎夜狂言見にきたるかえりには、ここに来てかくは云うなりけり。案じてそれまではねたまわず。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)