大家たいか)” の例文
その点では一二の大家たいか先生の方が、はるかに雑俗の屎臭ししうを放つてゐると思ふ。粗密は前にも書いた通り、気質の違ひによるものである。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしも何んだかそれらの大家たいかの真似をしているように思われるのもいやですから、なるべく人にも吹聴しないようにしていたのですが
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
毎日毎日、あすの計画で胸が一ぱいでした。あなたは、展覧会にも、大家たいかの名前にも、てんで無関心で、勝手な画ばかり描いていました。
きりぎりす (新字新仮名) / 太宰治(著)
東京とうきやうてから、自分じぶんおもひつゝもみづかかなくなり、たゞ都會とくわい大家たいか名作めいさくて、わづか自分じぶん畫心ゑごころ滿足まんぞくさしてたのである。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
たか大家たいかと云はれてたさに無暗むやみ原稿紙げんかうしきちらしては屑屋くづや忠義ちうぎつくすを手柄てがらとは心得こころえるお目出めでたき商売しやうばいなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
ヌエは三ぱうの壁に書棚を掛けて、其れをクラシツクと現代大家たいかの作と自分と同じ程の青年作家の物とに区別して居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「はあ。自信があります。し僕でいけないようなら、先生を頼みます。先生は学校の方よりもその方が大家たいかです」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
引取ひきともと主人しゆじん五兵衞方へあらためて養子にぞつかはしける然ば昨日迄きのふまでに遠き八丈の島守しまもりとなりし身が今日は此大家たいかの養子となりし事實に忠義の餘慶よけい天よりさいはひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大家たいか家夫わかいものを尽して力たらざれば掘夫ほりてやとひ、幾十人の力をあわせて一時に掘尽す。事を急に為すは掘る内にも大雪下れば立地たちどころうずたかく人力におよばざるゆゑなり。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
大革命だいかくめいともなづけられるくらゐだ、防腐法ばうふはふ發明はつめいによつて、大家たいかのピロウゴフさへも、到底たうてい出來得できうべからざることみとめてゐた手術しゆじゆつが、容易たやすられるやうにはなつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
大家たいかの生れでさすがに品位も備わり、濶達で古いことをよく記憶していた。中島広足ひろたりとは姻戚であった。翁の夫人がたしか広足の娘であったように聞いていた。
「ところで、いつ、ぼくが、かえだまといれかわったのか、わかるかね。きみは魔術の大家たいかだ。そのくらいのことは、ぼくが説明しなくても、わかるはずだね。」
虎の牙 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
故に斬新なる句を見る人は熟吟熟考して後に褒貶ほうへんすべし。これ大家たいかの上にも免れざる一弊なりとす。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
この人は長崎に開業して居て立派な門戸をはって居る大家たいかであるから、中々入門することは出来ない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
秀吉ひできちは、よくようすをくと、そこへいけば、毎日まいにちのように、有名ゆうめい音楽おんがくや、人気にんきのある大家たいかうたけるので、ぜひ奉公ほうこうをして、そこで勉強べんきょうしようと、決心けっしんしました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いやこれは実に驚いたと言って呆気あっけに取られ、その事をその近所での一番大家たいかドルジェ・ギャルポ(金剛王)という人のうちに行って私の事をすっかり話したとのことで
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
越前えちぜんきたしょうあるじ柴田権六勝家しばたごんろくかついえの腹心だ——おお、鏃師やじりしの鼻かけ卜斎ぼくさいとは、よくもたくみにけたりな、まことは、鬼柴田おにしばたつめといわれた上部八風斎かんべはっぷうさいという軍師ぐんし築城ちくじょう大家たいか
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大家たいか高堂かうだうとゞかず、したがつてねずみおほければだけれども、ちひさな借家しやくやで、かべあなをつけて、障子しやうじりさへしてけば、けるほどでないねずみなら、むざとははひらぬ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
る処には人数にんずを略してゑがけり)右は大家たいかの事をいふ、小家のまづしきは掘夫ほりてをやとふべきもつひえあれば男女をいはず一家雪をほる。吾里にかぎらず雪ふかき処はみなしかなり。
英国きっての人口の稠密ちょうみつな地方だというに一列車が乗客を載せたまま、熟練な化学実験の大家たいか空々くうくうたる瓦斯ガスにでも変化してしまったかのように、影も形も見えなくなったのだ。
そういったのは、鉱物学の大家たいか、真鍋博士だった。前には三吉と大辻とがひかえている。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
片側は広く開けて野菜圃やさいばたけでも続いているのか、其間に折々小さい茅屋ぼうおくが点在している。他の片側は立派な丈の高い塀つづき、それに沿うて小溝が廻されている、大家たいかの裏側通りである。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
最初に悟浄ごじょうが訪ねたのは、黒卵道人こくらんどうじんとて、そのころ最も高名な幻術げんじゅつ大家たいかであった。あまり深くない水底に累々るいるいと岩石を積重ねて洞窟どうくつを作り、入口には斜月三星洞しゃげつさんせいどうの額が掛かっておった。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
彼も文学青年なのだが、彼はまだ別に何にも書いてゐない。なのに、聞けば大家たいか巡りは相当やるさうである。そして各所で成績を挙げるらしいのだが、無理もない、私も二三度ダマされた。
我が生活 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
煌々こうこうと無数に臨時燈をかかげ、その真昼のような明るさの中に、青磁色無地、剣かたばみを大きく染め残した式幕で門前を廻らし、その左右に高張りを立てて、静まりかえった大家たいかを見た。
自殺を買う話 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
展覧会で一、二度褒美ほうびもらい少し名前が売れ出したと思うともう一廉ひとかど大家たいかになりすました気でおおいに門生を養い党派を結び新聞雑誌を利用して盛んに自家吹聴ふいちょうをやらかす。まるで政治運動です。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私などもあまり飛び出さないと大家たいかと見られるであろう。
教育と文芸 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先生は、あんなに有名な大家たいかなのに、それでも、私たちの家よりも、お小さいくらいのお家に住まわれて居られました。あれで、本当だと思います。
きりぎりす (新字新仮名) / 太宰治(著)
藤森氏の文は大家たいかたる宇野氏になん痛痒つうやうも与へぬであらう。だから僕は宇野氏の為にこの文をさうする必要を見ない。
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
大革命だいかくめいともなづけられるくらいだ、防腐法ぼうふほう発明はつめいによって、大家たいかのピロウゴフさえも、到底とうてい出来得できうべからざることをみとめていた手術しゅじゅつが、容易たやすられるようにはなった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
古山博士は、古美術研究の大家たいかで、三年ほどまえから、この美術館の館長をつとめていました。美術館も港区にあり、博士のうちからは、一キロぐらいのちかさでした。
妖星人R (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
女主人をんなあるじにてなか/\の曲者くせものなり、「小僧こぞうや、紅葉さんの御家へ參つて……」などと一面識いちめんしきもない大家たいかこえよがしにひやかしおどかすやつれないから不思議ふしぎなり。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ひるすぎになって、西京さいきょう大家たいか大坪道禅おおつぼどうぜん馬術ばじゅつ母衣流ほろながしの見ごとなしきをはじめとし、一門の騎士きしあぶみをならしてをあらそい、ほかに剣道組けんどうぐみから数番の手合てあわせが開始されたが
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕はこの人の詩を読まないが散文詩ばかりを書いて近年巴里パリイの若い詩人の人気を一身に集めて居る大家たいかだ。この夏詩人王に選挙せられたが、真面目まじめな選挙で無いと云ふ批難を少数の識者から受けて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
抛下はうかす、吾家ごかの骨董羹。今日こんにちきつし得て珍重ちんちようならば、明日みやうにち厠上しじやうに瑞光あらん。糞中の舎利しやり大家たいかよ。(五月三十日)
いままで、書いて来たものは、みんなだめだ。いい気なものだったよ。てんでなっちゃいないんだ。生活が、だらしなかったんだね。ひとりで大家たいか気取りで、徹夜なんかしてさ。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
季唐はもとより徽宗きそう以来の大家たいかではあり、晩年にも長巻や大作を描いて、いよいよ北宋画のそうたる巨腕を示したが、その門から出た蕭照も、年もうて名声を博し、その作品は、李唐以上に
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
でも、新聞でもあんなに、ひどくほめられるし、出品の画が、全部売り切れたそうですし、有名な大家たいかからも手紙が来ますし、あんまり、よすぎて、私は恐しい気が致しました。
きりぎりす (新字新仮名) / 太宰治(著)
が、言水が他の大家たいかと特に趣を異にするのは、此処ここにあると云はざるを得ないのである。言水通称は八郎兵衛はちろべゑ紫藤軒しとうけんと号した。享保きやうはう四年歿。行年ぎやうねんは七十三である。(一月十五日)
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
竹田が刻意励精はさる事ながら、俗人を感心させるには、かう云ふ事にまさるものなし。大家たいかの苦心談などと云はるるうち、人の悪き名人が、凡下ぼんげの徒を翻弄ほんらうする為に仮作したものも少くあるまい。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)