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ふりがな文庫
“
夜更
(
よふけ
)” の例文
だがその行先は
暫
(
しばら
)
く
秘中
(
ひちゅう
)
の秘として
預
(
あずか
)
ることとし、その
夜更
(
よふけ
)
、大学の法医学教室に起った怪事件について述べるのが順序であろう。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
哲郎は何かたべ物でも買って往きたいと思いだしたが、さて何を買って好いやら、この
夜更
(
よふけ
)
に何があるものやらちょと思いだせなかった。
青い紐
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
七十幾つとか言つても、まだ飛んだ達者な婆さんでしたが、
夜更
(
よふけ
)
に急にお産があるといふ使で出かけたつきり、堀へ
落
(
お
)
ちて死んでゐたのを
銭形平次捕物控:160 二つの刺青
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と云う……人を見た声も様子も、通りがかりに、その何となく
悄
(
しお
)
れたのを見て、下に水ある橋の
夜更
(
よふけ
)
、と
爺
(
おやじ
)
が案じたほどのものではない。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
女は全身のなまなましいからだから放つ紙のような白さを、
夜更
(
よふけ
)
の冴えた電燈にさらしながら、ながい間見つめているうちに
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
▼ もっと見る
よく芸者などが客や
朋輩
(
ほうばい
)
の
噂
(
うわさ
)
をしていました。夜は仕事をしまった男たちが寄って来て、歌うやら騒ぐやら、
夜更
(
よふけ
)
まで
賑
(
にぎ
)
やかなことでした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
この
夜更
(
よふけ
)
に、この寒さに、こんな所を通る人はあるまいと思うのに、折しもコツコツと歩道を踏んで来る人影がありました。
計略二重戦:少年密偵
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
妻は
夜更
(
よふけ
)
に彼を外に誘った。一歩家の外に出ると、白い
埃
(
ほこり
)
をかむったトタン屋根の四五軒の平屋が、その屋根の上に
乾
(
かわ
)
ききった星空があった。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
今まで多少静まっていた
暴風雨
(
あらし
)
が、この時は
夜更
(
よふけ
)
と共に
募
(
つの
)
ったものか、真黒な空が真黒いなりに活動して、瞬間も休まないように感ぜられた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
主「ごまかして時々出掛けるね、併し今夜は小言を云いません、
夜更
(
よふけ
)
の事だから、
向後
(
きょうご
)
たしなみませんといけませんよ」
文七元結
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その
夜更
(
よふけ
)
である。土藏の裏手へ一つの影が忍び込んで來た。それは其日の夕方警察の留置場から出された周三であつた。
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
夜更
(
よふけ
)
である。宮庭の宴会から細君の手を執つて帰つて来たモリエエルの顔は
蒼醒
(
あをざ
)
めて居る。薄暗い楽屋の板間で突然アルマンの手に
縋
(
すが
)
る男がある。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
「えらい濟んまへんなあ。そやけどなあ、そないえらさうに云はんかてよろしおまつしやろ。
夜更
(
よふけ
)
でも夜あけでも、人を泊めるのが宿屋の商賣だつせ。」
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
父はこの淀井を伴い、田崎が先に
提灯
(
ちょうちん
)
をつけて、蟲の
音
(
ね
)
の雨かと疑われる
夜更
(
よふけ
)
の庭をば、二度まで巡回された。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
(こんな
夜更
(
よふけ
)
に暗がりの庭に私を出で立たせるやうな落着けない、興奮した氣分をかもしたのには、無論この二つの事情があづかつてゐるのではあるが。)
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
案事
(
あんじ
)
けれどもお菊が
情
(
なさけ
)
に
惹
(
ひか
)
されて毎夜々々通ひはなすものゝ何時も
泊
(
とま
)
る事なく
夜更
(
よふけ
)
て歸りけるが今夜も
最早
(
もはや
)
丑刻
(
やつ
)
過
(
すぎ
)
頃馬喰町へぞ歸りける然るに
先刻
(
さき
)
より樣子を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
もう繁った笹に霜が降ったころです、こんなに
夜更
(
よふけ
)
にお帰りにならずに、暁になってからにおしなさい、といって、女が男の帰るのを惜しむ心持の歌である。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
そうかと思うと二、三日風呂にも行かず
夜更
(
よふけ
)
まで机へすがったきりでコツコツ何か書いたり読んだりする。
まじょりか皿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
お小夜はまた例の三郎のことに
屈托
(
くったく
)
してか、とぎれとぎれにとうん……とうんと杵を
卸
(
おろ
)
してる。力の弱い音に
夜更
(
よふけ
)
の米搗、寂しさに馴れてる耳にも哀れに悲しい。
新万葉物語
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
時節は
五月雨
(
さみだれ
)
のまだ
思切
(
おもいきり
)
悪く
昨夕
(
ゆうべ
)
より
小止
(
おやみ
)
なく降りて、
欞子
(
れんじ
)
の
下
(
もと
)
に四足踏伸ばしたる
猫
(
ねこ
)
懶
(
ものう
)
くして
起
(
た
)
たんともせず、
夜更
(
よふけ
)
て酔はされし酒に、
明
(
あけ
)
近くからぐつすり眠り
そめちがへ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
気にする人も絶えてない
夜更
(
よふけ
)
に、ぽつり/\と二つの人影が寄りそうて、ピツタリ一つになつて行く
世帯休業
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
夜更
(
よふけ
)
から
暁方
(
あけがた
)
へかけて、こうして
扮装
(
みなり
)
を変えて毎夜のように尋ねてみるが、ついぞ
出会
(
でっくわ
)
し申さぬ。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その
夜更
(
よふけ
)
になって、布引氏の上にも鳥井青年の上にも、申合わせた様に、非常な事件が起った。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
雲根志
(
うんこんし
)
灵異
(
れいい
)
の部に曰、
予
(
よ
)
が
隣家
(
となり
)
に
壮勇
(
さうゆう
)
の者あり儀兵衛といふ。或時
田上谷
(
たがみだに
)
といふ山中に
行
(
ゆき
)
て
夜更
(
よふけ
)
て
皈
(
かへ
)
るに、むかうなる山の
澗底
(
たにそこ
)
より青く光り
虹
(
にじ
)
の如く
昇
(
のぼり
)
てすゑは
天
(
そら
)
に
接
(
まじは
)
る。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
夜更
(
よふけ
)
まで、その講義録の中の数行が目にちらついて消えなかった。それは次の文字である。
夢の殺人
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
その中一名は宿屋に入って鶏の足を暖め、
夜更
(
よふけ
)
に時を作らせて、まだ暗い中に出立させた。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
彼は
夜更
(
よふけ
)
の電燈の下に彼の勉強を怠らなかつた。同時に又彼が以前書いた十何篇かの論文には、——
就中
(
なかんづく
)
「リイプクネヒトを憶ふ」の一篇にはだんだん
物足
(
ものた
)
らなさを感じ出した。
或社会主義者
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「それにしても……」と、私はその
夜更
(
よふけ
)
、一人で帰途を急ぎつつ、考へにふけつた。私の未だ無経験な頭には、その時、ふと、次の如き詩句が強い力で湧き起つて来るのだつた。
アリア人の孤独
(新字旧仮名)
/
松永延造
(著)
暗
(
やみ
)
の
夜更
(
よふけ
)
にひとりかへる
渡
(
わた
)
し
船
(
ぶね
)
、
殘月
(
ざんげつ
)
のあしたに渡る夏の朝、雪の日、
暴風雨
(
あらし
)
の日、
風趣
(
おもむき
)
はあつてもはなしはない。
平日
(
なみひ
)
の並のはなしのひとつふたつが、手帳のはしに殘つてゐる。
佃のわたし
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
夕日
(
ゆふひ
)
の
沈
(
しづ
)
む
頃
(
ころ
)
、
櫻木大佐
(
さくらぎたいさ
)
も
武村兵曹
(
たけむらへいそう
)
も、
痛
(
いた
)
く
疲
(
つか
)
れて
皈
(
かへ
)
つて
來
(
き
)
たが、
終日
(
しうじつ
)
延氣
(
のんき
)
に
遊
(
あそ
)
んだ
吾等
(
われら
)
兩人
(
りやうにん
)
の
顏
(
かほ
)
の、
昨日
(
きのふ
)
よりは
餘程
(
よほど
)
勝
(
すぐ
)
れて
見
(
み
)
へるとて、
大笑
(
おほわら
)
ひであつた。
此
(
この
)
夜
(
よ
)
も
夜更
(
よふけ
)
まで
色々
(
いろ/\
)
の
快談
(
くわいだん
)
。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
又
夜更
(
よふけ
)
まで所々をうろついて珍らしい光明面と闇黒面とを味ふのである。パリイのやうな大都会にはこの両面があつて、吾々のやうな局外の観察者には無限の興味を感ぜさせるのである。
病院横町の殺人犯
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
どうしてこんな
夜更
(
よふけ
)
にとたずねると、ぜひお話したいことがあって来たという。
顎十郎捕物帳:20 金鳳釵
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
夜
(
よ
)
に入つてから、ト或る山の下へ来た。山の上は町で、家が家に
負
(
おぶ
)
さつたやうに
累
(
かさ
)
なり合つてゐて、
燈火
(
あかり
)
が星のやうに見える。もう
夜更
(
よふけ
)
だのに、何処でか奏楽の
音
(
ね
)
がして、人通りが絶えない。
椋のミハイロ
(新字旧仮名)
/
ボレスワフ・プルス
(著)
たとえ警察の力を
藉
(
か
)
りないとしても、この
夜更
(
よふけ
)
ではどう捜す方法もない。
劇団「笑う妖魔」
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
『おかしいな? 伝馬の者が、こんな
夜更
(
よふけ
)
にこっそり訪ねて来るなんて』
魚紋
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
高次郎氏の師匠はさらにこの歌集の巻末に、加藤君はある夜役所の帰りに突然私の所へ来て、雑誌に出た自身の歌を全部清書したいからと云い、端座したまま
夜更
(
よふけ
)
までかかって清書をし終えた。
睡蓮
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
その悲壮な泣き声が、古い洋館の
夜更
(
よふけ
)
の闇を物凄く
顫
(
ふる
)
わせるのだった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
『
發
(
た
)
つ四五日前にも、』と信吾は言葉を次いだ。『突然
訪
(
や
)
つて來て大分
夜更
(
よふけ
)
まで遊んで行つた。今度の問題に就いちや別段話もなかつたが、(俺も二十七ですからねえ。)なんて言つてゐたつけ。』
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
小説的かも知れんけれど、
八犬伝
(
はつけんでん
)
の
浜路
(
はまじ
)
だ、
信乃
(
しの
)
が
明朝
(
あした
)
は立つて了ふと云ふので、親の目を忍んで
夜更
(
よふけ
)
に
逢
(
あ
)
ひに来る、あの
情合
(
じやうあひ
)
でなければならない。いや、妙だ! 自分の身の上も信乃に似てゐる。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
彼は何をしにこんな
夜更
(
よふけ
)
、新聞社の屋上に上ってきたのだったか。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
彼
(
かれ
)
は
秋
(
あき
)
の
大豆打
(
だいづうち
)
といふ
日
(
ひ
)
の
晩
(
ばん
)
などには、
唐箕
(
たうみ
)
へ
掛
(
か
)
けたり
俵
(
たはら
)
に
作
(
つく
)
つたりする
間
(
あひだ
)
に二
升
(
しよう
)
や三
升
(
じよう
)
の
大豆
(
だいづ
)
は
竊
(
ひそか
)
に
隱
(
かく
)
して
置
(
お
)
いてお
品
(
しな
)
の
家
(
うち
)
へ
持
(
も
)
つて
行
(
い
)
つた。さうして
豆熬
(
まめいり
)
を
噛
(
かじ
)
つては
夜更
(
よふけ
)
まで
噺
(
はなし
)
をすることもあつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ある
夜更
(
よふけ
)
すでに三時に近づいてをり客は私と男と二人であつた。
いづこへ
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
この
夜更
(
よふけ
)
に、わたしの眠をさましたものは何の
気配
(
けはひ
)
か。
詩集夏花
(新字旧仮名)
/
伊東静雄
(著)
夜更
(
よふけ
)
らしいしずかな趣が想像される。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
夜更
(
よふけ
)
の逗子の町は
閑寂
(
ひっそり
)
していた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その時刻のことは、はっきりしなかったが、とにかく、かなり
夜更
(
よふけ
)
になって、新田先生は、ごうんごうんという遠雷のような響を耳にした。
火星兵団
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
夜更
(
よふけ
)
の事とて
誰
(
たれ
)
も知らず、
朝
(
あした
)
になりて
見着
(
みつ
)
けたる、お春の
身体
(
からだ
)
は冷たかりき、蜘蛛の
這
(
は
)
へりし跡やらむ、縄にて
縊
(
くび
)
りし如く青き
条
(
すぢ
)
をぞ
画
(
ゑが
)
きし。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
その島田は以前と違って、大抵は
宅
(
うち
)
にいない事が多かった。彼の帰る時刻は何時も
夜更
(
よふけ
)
らしかった。従って日中は滅多に顔を合せる機会がなかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夜更
(
よふけ
)
が急に
籐椅子
(
とういす
)
の上に
滑
(
すべ
)
り
堕
(
お
)
ちている。隣の椅子で親切な友人はギラギラした眼の少女と話しあっている。(お
腹
(
なか
)
がすいたな、何か食べに行かないか)
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
電車もなくなって仕舞ったので、慶三は
人力車
(
くるま
)
の上から
夜更
(
よふけ
)
の風に吹かれながら、更に再びお千代と怪しい男との間に潜んだ情交の真相を知らんと苦しんだ。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
夜
常用漢字
小2
部首:⼣
8画
更
常用漢字
中学
部首:⽈
7画
“夜”で始まる語句
夜
夜半
夜中
夜叉
夜具
夜鷹
夜寒
夜明
夜業
夜着