友染いうぜん)” の例文
友染いうぜんきれに、白羽二重しろはぶたへうらをかさねて、むらさきひもくちかゞつた、衣絵きぬゑさんが手縫てぬい服紗袋ふくさぶくろつゝんで、そのおくつた、しろかゞや小鍋こなべである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
娘さんの箪笥たんすが幾つも並んで焼けた所には、友染いうぜんの着物が、模様をそつくり濃淡で見せた灰になつて居たのが、幾重ねもあつたとか人は云ひました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
また彼女が妹の友染いうぜんの衣を縫ふ時、この片袖のつかない明日といふ日に目隱しされたやうに再び、この世を見ることが出來なくなりはすまいかなどと思つた。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
先刻さつきからいでゐた絽縮緬ろちりめんの羽織をまた着て、紺地こんぢ茜色あかねいろ大名縞だいみやうじまのおめし單衣ひとへと、白の勝つた鹽瀬しほぜの丸帶と、友染いうぜんの絽縮緬の長襦袢ながじゆばんとに、配合のい色彩を見せつゝ
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
なかいたやうな……藤紫ふじむらさきに、浅黄あさぎ群青ぐんじやうで、小菊こぎく撫子なでしこやさしくめた友染いうぜんふくろいて、ぎんなべを、そのはきら/\とつてた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
友染いうぜんの着物に白茶錦しらちやにしきの帯をむすびにして、まだ小い頃から蝶々髷てふ/\まげやら桃割もゝわれつて、銀のすゝきかんざしなどを挿して
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
手織縞ておりじま單衣ひとへ綿繻珍めんしゆちんの帶を締めて、馬鹿に根の高い丸髷まるまげに赤い手絡てがらをかけた人が、友染いうぜんモスリンの蹴出けだしの間から、太く黒い足を見せつゝ、うしろから二人を追ひ拔いて、停車場ステーシヨンけ込んだ。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
吃驚びつくりして、つて、すつとうへくと、かれた友染いうぜんは、のまゝ、仰向あふむけに、えりしろさをおほあまるやうに、がつくりとせきた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私は黒地の友染いうぜんの着物を着て出ました。模様の中に赤いともゑのあつたことを覚えて居ます。丁度ちやうどその日に私の家ではお祖母ばあさんが報恩講ほうおんかうと云ふ仏事を催して多勢の客を招いて居ました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
はつとしたくと、はづみでしろ花片はなびらは、ぱらりと、藤色ふぢいろ友染いうぜんにこぼれたが、こぼれたうへへ、そのてゝふたかたむけた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こゝろつて、おもはず、ひたつたひざが、うつかり、そでおも掻巻かいまき友染いうぜんれると、白羽二重しろはぶたへ小浪さゞなみが、あをみづのやうにえりにかゝつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これから土産みやげつてく、西片町にしかたまち友染いうぜんたちには、どちらがいかわからぬが、しかず、おのこのところつてせんには、と其處そこあんのをあつらへた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
足袋跣足たびはだしたとふ、今夜こんやは、もしや、あの友染いうぜんに……あの裾模樣すそもやう、とおもふけれども、不斷ふだん見馴みなれてみついた、黒繻子くろじゆすに、小辨慶こべんけい
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あゝ、あのやなぎに、うつくしにじわたる、とると、薄靄うすもやに、なかわかれて、みつつにれて、友染いうぜんに、鹿しぼり菖蒲あやめけた、派手はですゞしいよそほひをんなが三にん
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
義兄にいさんのうたほんをおみなさるのと、うつくしい友染いうぜん掛物かけもののやうに取換とりかへて、衣桁いかうけて、ながら御覧ごらんなさるのがなによりたのしみなんですつて。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これから出掛でかける西片町にしかたまちには、友染いうぜんのふつくりした、人形にんぎやうのやうなをんな二人ふたりある、それへ土産みやげにとおもつた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
萬歳まんざいつゞみはるかに、鞠唄まりうたちかうめあひこえ、突羽根つくばねたもとまつ友染いうぜんひるがへす。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うつくしさは、よるくもくらこずゑおほはれながら、もみぢのえだうらくばかり、友染いうぜんくれなゐちら/\と、櫛卷くしまき黒髮くろかみ濡色ぬれいろつゆしたゝる、天井てんじやうたかやまに、電燈でんとうかげしろうして、ゆらめくごと暖爐だんろほのほ
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何處どこ大商店だいしやうてん避難ひなんした……店員てんゐんたちが交代かうたい貨物くわもつばんをするらしくて、がたには七三しちさんかみで、眞白まつしろで、このなか友染いうぜん模樣もやう派手はで單衣ひとへた、女優ぢよいうまがひの女店員をんなてんゐん二三人にさんにん姿すがたえた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)