“利:き” の例文
“利:き”を含む作品の著者(上位)作品数
芥川竜之介42
中里介山39
夏目漱石36
吉川英治30
泉鏡花17
“利:き”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語10.6%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)3.1%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆2.0%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
叔父は枡屋善作ますやぜんさく(一説によれば善兵衛ぜんべえ)と云う、才覚さいかくいた旅籠屋はたごやである。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そうしてこの二つの言葉は文芸界専有の術語でその他の方面には全く融通のかないものであるかのごとく取扱われております。
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その未来が朝鮮へ行けば、あらゆる準備をして自分を待っていそうな事をいう彼は、すぐまた前言を取り消すような口もいた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのために節子が家中の誰とも口をかないほど機嫌きげんの悪い顔を見せようとは、どうあっても彼には考えられなかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
考えていると、だんだんつまあらなくなったので、私はむくりと起き上ってこっちもあんまり口をかないでもどって来た。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
一人は、胡麻塩髯ごましおひげ胸にるゝ魁偉おおきなアイヌ、名は小川おがわヤイコク、これはあまり口がけぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
薬籠持やくろうもちの国公は律義りちぎなだけで気がかず、子分のデモ倉あたりは、気が早くって腰が弱いからいけない。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そういうわけでなければ女のことだろう。敵をたずねて歩く奴と、女の尻を追い廻す奴ほど、気のかない奴はないものじゃ」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それを小説や戯曲ばかり幅をかせてゐるやうにひられるのは少くとも善良なる僕等には甚だ迷惑と言はなければならぬ。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しばらくもがいた後に、ようやく咽喉のどの自由だけが出来たから、さいぜんから叫びつづけているが、身の自由はかない。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いつやむか、見当のつかない雪を見てくよくよしているよりも、白鳥号に乗って、ゆめの国にでも遊んだほうが気がいている。
小鳥のように、ちょこちょこした、気のいた小男が、一人の男の顔をそっていたが、「わたしがエピナッソーだよ」と答えた。
祖父そふにいたっては自分の前ばかりに気を取られて、自由の片手かたてでしじゅうさらから口へがつがつ運んでいた。
男 だつて、お前、口をいたこともなし、一度や二度、多勢の中で顔を見たぐらゐぢや、さう特別に覚えてゐるわけがないさ。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
勝代は待ちかねた薬瓶を兄から渡されると、すぐに手の平に薬を移して、「このくらいの分量でくじゃろうか」と兄に訊いた。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
あきれた野郎だ、そんなことをしたら呑む下から醒めるだらう。それより鼻の穴から呑んで見ねえ、飛んだきが良いぜ」
そこでその生徒は立ち上って、ロビンソン・クルウソオか何かの一節を、東京の中学生に特有な、気のいた調子で訳読した。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その上彼の縄を解くと、ほとんど手足もかない彼へ、手ん手に石を投げつけたり、慓悍ひょうかんな狩犬をけしかけたりした。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
識れる者は恐くは、貫一も鰐淵も一つに足腰のかずなるまで撃〓うちのめされざりしを本意無ほいなく思へるなるべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
uneasy(不安)と云う語は漠然ばくぜんたる心の状態をあらわすようであるが実は非常に鋭敏なよくく言葉であります。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
最初のは田舎染いなかじみた御婆さんだけで、これは御仙と千代子の服装に対して遠慮でもしたらしく口数を多くかなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それのみならず、ある場合に私を鷹揚おうようかただといって、さも尊敬したらしい口のき方をした事があります。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「女はどうしても器量が好くないと損ね。いくら悧巧りこうでも、気がいていても、顔が悪いと男にはきらわれるだけね」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
摺硝子すりガラスの戸がててある玄関へ来て、ベルを二三度押して見たが、ベルがかないと見えて誰も出て来なかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「浜の弟も、酒で鼻が真紅まっかになってら。こんらの酒じゃ、もうかねえというこんだ。金にしてよっぽど飲むらあ。」
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その上僕の時代の学生や若者は、擬似恋愛をするような女友達もなく、良家の娘と口をくようなチャンスは殆んどなかった。
老年と人生 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
帽子あたまも靴も艶々てらてらと光る、三十ばかりの、しかるべき会社か銀行で当時若手のけものといった風采ふう
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
毛唐を一人でも斬れば斬るほど幅がく、まして毛唐に向って、いくさをしかければしかけるほど、その大名の威勢があがる。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
けれども、今の米友としては、その活法を、ここでお雪ちゃんに施してみようとの機転もかないほどに狼狽を極めておりました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
熱田神宮の門前の茶屋でも、小娘に向って、「姉さん、ここの神様は何の御信心にくの」とたずねてテレてしまったことがある。
道庵先生はよけいな口をいたために、この会が果ててから、遠藤老人に誘われて芝浦へ出漁せねばならぬことになりました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
見ればキリリとして甲掛こうがけ脚絆きゃはんの旅の人。口のき方も道中慣れがしていると見えて、ハキハキしたものです。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さすがに、心のいた給仕人は、手早く一室にかつぎ込んだが、列席の人々の動揺は、どうともすることが出来なかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
さも成功の自信があるようなことを言う、子供だけれど目はしがよくくのだからよくいくかもしれないと源氏は思っていた。
源氏物語:03 空蝉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
別に無愛想になるわけでもないが、むしろ、わざとらしく、投げやりな調子をみせ、不必要に馴れ馴れしい口をくのである。
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
そこが気転のかしどころで、はい/\と言つて二つ返事で買ひ戻しておけば、客は少からぬ好意をもつて店を見る事になる。
その変化が起ると病人にいたような具合に見えるから、お医者さんは利目を見せるためにどんな薬にもツァーツクを入れる。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ソーニャはソーニャで、父親に当り散らすばかりか、あたしにまでぷりぷりして、これでもう二週間も口をいてくれません。
もっともこんなお婆さんには、あの方のような気のいた愛人なんかはありませんが、あのお話で、つまらない世間的な道徳などは
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
四十過ぎの、いつも地味な恰好かっこうをして、ぼそぼそと口をく女だけれども、その時はよほどびっくりしたのだろう。
庭の眺め (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
父が死んで自由がくようになってからも、そう勝手な時に好きな所へ行く機会は不幸にして僕の母には与えられなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それより以上口をくには、余り禅というものの知識に乏しかったので、黙ってまた宜道に伴れられて一窓庵へ帰って来た。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「実は宿やどが出まして、御話を伺うんですが会社の方が大変忙がしいもんですから」と今度は少しいたろうという眼付をする。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
節子は縁側に出て、独りで悄然しょんぼりと青い萩にむかい合って、誰とも口をきたくないという様子をしていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
アノ只今ただいまから団子坂へ参ろうと存じて、という言葉にまで力瘤ちからこぶを入れて見ても、まや薬ほどもかず
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そして彼が左手きであることも、種々な場合の刀痕とうこんを総括して、動かぬところと専門家の間に断定されていた。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
予食べて見るに味わい絶佳だから、間違いはその方の不調法ながら旨い物を食わせた段感賞すと減らず口いて逃げて来た。
長州は国をして反幕の主動者となっているが、そこへ行くと薩摩は、国が遠いだけに、長州よりも隠身いんしんの術がく。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
気をかして、女は剃刀の手を休め、客をして月明の諏訪のうみをながめ飽かしめんとした好意を、竜之助は断わって、
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
芝居の方でも、これは悪いところへ、よけいな口をいてくれたものだと心配し、見物の方ではようやく腹にえ兼ねていると、
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と言ったきり、恐怖と、失策とにおびえて、しばし口がけないで動顛しておりましたが、これが竜之助であったから仕合せでした。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「でもなんだか、そんなくちくやうですと。……あの、どんな、一寸ちよいとどんなふうをとこでせう?」
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
暫らくは、誰もが口をかなかった。運転手が、ブル/\ふるえ出したのが、ほの暗い提灯の光の中でも、それとわかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
次郎は彼女が恭一とばかり仲よくするのが癪で、ろくに口をいたこともなかったが、内心では、彼女が非常に好きだった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
第一だいゝち肝要かんえうなはくちくかな、御身おみさくこゑすか、ものをふかな。』
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
妹のかなそうな様子にくらべて、見るからに温和おとなしそうな、混血児あいのこにも似ぬしとやかさを感じました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
当然、それへ対するには、遠望もき、応変も自由な、そしてまた、どこへでも兵力を急派できる高地に司令部を持たねばならない。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔から小さかった袖を、さらに一段と細くし、腕にぴたりと附くようになったのを、気がいているとしていた時代もあったらしい。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
まあなにから申さうむねがもめてくちかれぬとてまたもや大湯呑おほゆのみことさかんなり。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はつ口惜くやしくかなしくなさけなく、くちかれぬほど込上こみあぐなみだ呑込のみこんで
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
暫く誰も口をかなかった。その沈黙が、痛いほど私の背にのしかかって来た。その瞬間、投げやりな調子で、誰かが冗談を言った。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
妻君が袋戸ふくろどの奥からタカジヤスターゼを出して卓の上に置くと、主人は「それはかないから飲まん」という。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
本人の娘はむすめで、これもどうしていいか当惑したまま、そこに坐って口もかずに母親の騒ぐのをただ傍見しているばかりである。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
見通しもかないほどひろい原野の夕暮れは、ひとときッと輝いて、あとはたちまち時雨しぐれるようなうす墨であった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「うん。一通ひととおりわからぬこともないが、これでは平井の気には入るまい。足下そっかは気がかないのだ。」
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一時は口もけないほどになって、手に持った鏡台をあぶなく取落そうとしたのを、我慢して、差図された部屋まで持ち込み、やっと、
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
けれど身体がかず、右の腕は打ち折られて用をなさなくなっていますから、気が立つだけで、仕返しをするの力は絶対にありません。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ここには善良な村民が、腕っぷしのく若いのを集めて置いて、万一に備える――とまで七兵衛がたどりついているうちに
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
雛妓こどもたちが、やっと、相顧みてささやき合うたのも無理のないところでしたが、その死人が、やがてまた口をき出しました、
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
また智恵ちゑがあるつてくちかれないからとりとくらべツこすりや、五分ごぶ五分のがある、それはとりさしで。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
世間のさういふ老僧などに屡〓見る對手を見下したやうな尊大な口のきやうや、僧侶に共通の俗人を諭すやうな言葉尻の臭味もない。
湖光島影:琵琶湖めぐり (旧字旧仮名) / 近松秋江(著)
しかしおとなしいたかちゃんは私にばかりでなく、そういうかん気のお竜ちゃんに対しても、すべて控え目にしていた。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
王子は嬉しいやら悲しいやらで、口もけないほどでありましたが、しばらくすると、いろいろなことを一緒に言ってしまわれました。
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
杜子春は早速その問に答えようとしましたが、ふと又思い出したのは、「決して口をくな」という鉄冠子のいましめの言葉です。
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
くちかないでフイとかどを、ひとからふりもぎる身躰からだのやうにづん/\出掛でかけた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
相当に腕がいたので暮しに事を欠くということがなかったのだが、ふと眼をわずらって殆ど失明するまでになった。
遍路 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それは折々私のった薬がよくいた事もあるからですが、その薬は私の友達の広岡修造という医師から貰った薬も大分あります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
今日きょうはどんな御馳走ごちそう我々われわれわしてくれるか。』と、無暗むやみはばかせたがる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
つまり上と下へ火のくように鉄板の四角な箱を拵えて前を開き戸にしておけばその中で西洋料理は何でも出来るのです。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
たるは三十許さんじふばかりきし女中風ぢよちゆうふうと、いま一人ひとり十八じふはち
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「済みませんわね、こんな時にお邪魔に上って。丹生さん、あなたが気がかないのよ、玄関で失礼すればよかったのに」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
安さんは一応云うだけの事を云ってしまったんだから、口をかないはずであるが、自分は先方に対して、何とか返事をする義務がある。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
正己はようやく人の言葉を覚える年ごろであるが、なかなかのかない気で、ちょっとした子供らしい戯れにも兄には負けていなかった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お庄には若い夫婦の傍にいつけて、理窟っぽくなっているこの女の幅をかすほど、煮物や汁加減つゆかげんが巧いとは思えなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
三千代みちよくちしたのは、どんな機会はづみであつたか、今では代助の記憶に残つてゐない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
けれども一旦くちしてからは、矢っ張り詩や小説と同じ様に、二人ふたりはすぐ心安こゝろやすくなつて仕舞つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
月夜で、見通しのく限り、その一町半の間には紆余曲折うよきょくせつも無かったところに、女の影が見えません。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
父は火鉢のとこに坐ツて、煙草を喫しながらジロリ/″\由三の樣子を瞶めて、ちよツくら口をかうともしない。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
この聯想はただ軽く気をかして云ったもののようにもおもえるが、繰返して読めば必ずしもそうでないところがある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
母は十分に口がけなくなッたので仕方なく手真似で仔細しさいを告げ知らせた。告げ知らせると平太の顔はたちまちに色が変わッた。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
この人は年はまだ二十四であったが、なかなかのけ者で、商売上の掛け引き万端、それはきびきびしたものであった。
この前笑覧会というものがあって阿波あわ鳴戸なるとのお弓の涙だなんてびんに水を入れたものを見せるなどは気がかない。
煎餅おせんやおこしのたらしもかで、皆々みな/\いておにはすとおどかしてゞもやう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこは例の附け届けを十分にたっぷり薬をかしてあるので断りもならず精々如才じょさいなくあつかっていた。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ちょうど僕も暇だったし、早めに若槻の家へ行って見ると、先生は気のいた六畳の書斎に、相不変あいかわらず悠々と読書をしている。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お島を懲しておかなければならぬような報告が、この数日のあいだに養家から交渉に来た二三の顔きの口から、父親の耳へも入っていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
またくだんの黒兎に鬼寄住し鳥銃もかず銀もしくは鋼の弾丸を打ち懸けて始めてこれを打ち留め得と信ぜらると
「話さない? 話せばいいのに。いったい小野が来たと云うのに何をしていたんだ。いくら女だって、少しは口をかなくっちゃいけない」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「御母さんお重も早く片づけてしまわないといけませんね」と自分は母に忠告がましい差出口をいた事さえあった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「幽霊も由公にまで馬鹿にされるくらいだから幅はかない訳さね」と余のみ上げを米噛こめかみのあたりからぞきりと切り落す。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)