そろ)” の例文
娘売らぬ親を馬鹿ばかだとは申しがたそろへども馬鹿ばか見たやうなものだとは申得まうしえられそろ婿むこを買ふ者あり娘を売る者あり上下じやうげ面白き成行なりゆきそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
仲介者はカイアヹエ君に手紙を送り「貴下が不名誉なりとせらるる所は我等の最早もはや立入るべからざる所にそろ」と云つてその任を辞した。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
一筆ひとふで示し上げ参らせそろ大同口だいどうこうよりのお手紙ただいま到着仕り候母様ははさん大へんおんよろこび涙を流してくり返しくり返しご覧相成り候」
遺言 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
この間などは「其後そのご別に恋着れんちゃくせる婦人も無之これなく、いずかたより艶書えんしょも参らず、ず無事に消光まかり在りそろ間、乍憚はばかりながら御休心可被下候くださるべくそろ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼の朝鮮征伐のみぎりこれは名産の薬用人参でそろと朝鮮人に騙されそれを真に受けてこれこそ貴い朝鮮人参だと信じて携え帰ったものらしい。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
折り入ってお話しいたしたきことこれありそうろうまま、ちょいと、お顔拝借いたしたく、むかし馴染なじみおわすれなされまじくそろ。お高祖頭巾より
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「先ほどは失礼いたしました。まことにむさくるしいところなれど一しょにおこし下されたくそろ。あとはおめもじのうえにて」
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
先ごろは、米まんじゅうたくさんに、またつみにも、衣しょうなど、まいどの贈りもの、礼のことばもおろか、ただ涙にそろ
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つねよりもおおぜいの人数にんずでござりましたから、さいしょはなか/\気が立っておりまして、「憂きも一と時うれしさも思ひさませば夢そろよ」
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
手「こゝは……其の節置わすれそろ懐中物此のものへおん渡し被下度候くだされたくそろ、此の品粗まつなれどさし上候あげそろまずは用事のみあら/\※」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
(中略)昨今のところでは何事も堪忍かんにんに堪忍、他日の勝利を期するのみにて只管ひたすら愚となり、変物となり居りそろ。(後略)
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
「海北の画驚目候めをおどろかしそろ、相違はあるまじく存候ぞんじそろ。さりながら素人の目と医者と土蔵とは真実あてにならぬ物と聞及きゝおよそろ。」
某が相果て候今日は、万治元戊戌年つちのえいぬのとし十二月二日に候えば、さる正保二乙酉きのととり十二月二日に御逝去ごせいきょ遊ばされそろ松向寺殿の十三回忌に相当致しおり候事に候。
流汗をふるいつつ華氏九十九度の香港ほんこんより申し上げそろ佐世保させほ抜錨ばつびょうまでは先便すでに申し上げ置きたる通りに有之これあり候。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
旧記によれば上覧芝居は二十八日とも記されているが、しかし本当は二十五日で、この時の西丸の賑やかさは「沙汰の限りにそろ」と林大学頭が書いている。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いて消えてそろよ、六部どの。われら世過ぎにせわしき身は、一夜の旅も、かてゆえに思うに任せず、廻国のついでに、おのずから、その武州何郡、何村に赴きたまわば
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何も、型のように、「一筆しめしあげ参らせそろ」から書きはじめなくとも、談話はなしをするように書けば、それで手紙になると知った時のお寅の驚きと喜びとはなかったとか。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
竹になりたや紫竹しちくだけ、元は尺八、中は笛、末はそもじの筆の軸……思いまいらせそろかしく。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
どれ、ちょっとお見せ、ははあ、学校生徒の父兄にあらずして十二歳以上の来賓は入場をお断わり申しそろ、狐なんて仲々うまくやってるね。僕はいけないんだね。仕方ないや。
雪渡り (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ゆうしは浪のうえ御帰おんかえ御館おんやかた首尾しゅび如何いかゞ此方こなたにてはわすれねばこそおもいださずそろかしく
松の操美人の生埋:01 序 (新字新仮名) / 宇田川文海(著)
朧気おぼろげながら逢瀬おうせうれしき通路かよいじとりめを夢の名残の本意ほいなさに憎らしゅう存じそろなどかいてまだ足らず、再書かえすがき濃々こまごまと、色好み深き都の若佼わこうど幾人いくたりか迷わせ玉うらん御標致ごきりょうの美しさ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一筆書き残しまいらせそろ。よんどころなく覚悟をきわめ申し候。不便ふびん御推ごすいもじ願い上げまいらせ候。平田さんに済み申さず候。西宮さんにも済み申さず候。お前さまにも済みませぬ。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
第二枚は、文士の首は前に落ちて居る処で、られたる首の跡から白い煙が立つて居る。その煙がまゐらせそろといふ字になつて居て、その煙の末に裸体美人がほのかに現はれて居る。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
女の弱き心につけ入りたもうはあまりにむごきお心とただ恨めしく存じ参らせそろわらわの運命はこの船に結ばれたるしきえにしやそうらいけん心がらとは申せ今は過去のすべて未来のすべてを
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「八五郎親分樣には、いよ/\御機嫌のよし、目出度く存じ參らせそろ
余は都会のよるを愛しそろ燦爛さんらんたる燈火の巷を愛し候。
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
いかに常食とはいたしそろ
希臘十字 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
「お犬にげそろ。」
鳥右ヱ門諸国をめぐる (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
おもひまゐらせそろ
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
むまじき事なりおとろふまじき事なりおとろへたる小生等せうせいらが骨は、人知ひとしらぬもつて、人知ひとしらぬたのしみと致候迄いたしそろまで次第しだいまるく曲りくものにそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
お瀧どのが一体逃去ったる義で御座り奉つりそろ、茂之助さんが大金をいだして身請に及び、かゝる処の一軒の家まで求め
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
然し御存じの如く小生は一度思い立ち候事そろことは成功するまでは決して中絶つかまつらざる性質に候えば嘔吐方おうとほうを再興致しそろも遠からぬうちと信じ居りそろ次第。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三斎公その時死罪を顧みずして帰参候は殊勝なりと仰せられ候て、助命遊ばされ候。伝兵衛はこの恩義を思そろて、切腹いたし候。介錯かいしゃく磯田いそだ十郎に候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
わたくし事にはあらで、やむにやまれぬ儀のそろて、さるものを斬り捨て、きょうをかぎり御恩土ごおんどを立ち退き候なり。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旅順陥落の翌々日、船渠せんきょ船舶等艦隊の手に引き取ることと相成り、将校以下数名上陸いたし、私儀も上陸つかまつそろ
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
……手切てぎれかもじも中にめて、芸妓髷げいしゃまげった私、千葉の人とは、きれいにわけをつけ参らせそろ
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どれ、ちょっとお見せ、ははあ、学校生徒の父兄にあらずして十二歳以上の来賓らいひんは入場をお断わり申しそろ、狐なんて仲々うまくやってるね。僕はいけないんだね。仕方ないや。
雪渡り (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かんしんいたし候ゆえ文して申遣もうしつかわし参らせそろ左候さそうらえば日にまし寒さに向い候えどもいよいよかわらせなく相くらされこのかたも安心いたしおり候ととさんともうしかかさんと申誠に誠に難有ありがたく………
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おんおもかげの変りたる時にこそ浅墓あさはかならぬわが恋のかわらぬ者なるをあらわしたけれと、無理なるねがいをも神前になげきこそろと、愚痴の数々まで記して丈夫そうな状袋をえらみ、封じ目油断なく
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
鳴く虫よりも、もの言わぬ螢がズンと身をこがしそろ。さて、小生こと明日みょうにち出発。埋蔵金を掘りにまいる所存、帰府のうえ、その財産をそっくり持参金として、おん身のもとへ押しかけるべくそろ
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
壁にも耳のあることにてござそろ、密事は、おん宿元にても、かるがるしく申されぬがよろしくそろ、くわしくお物語いたしたきけれど、おいそがしき由ゆえ、今宵は御遠慮申し上げまいらせ候、かしく
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「日曜日には教会にて素晴しきお説教を聴き申しそろ……」
「一とふでしめし上げ參らせそろ
おんゆるしのほど願い参らせそろ今は二人ふたりが間のこと何事も水のあわと相成りそうろうわらわは東京に参るべく候悲しさに胸はりさくばかりに候えど妾が力に及び難く候これぞ妾が運命とあきらめ申し候……されど妾決して自ら弁解いたすまじく候妾がかねておもいし事今はまことと相成り候妾を
まぼろし (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
えうするに娘が内職ないしよくするは親に関することなく妻が内職ないしよくは夫にくわんすることなし、一経営上けいえいじやう全くこれは別口べつくちのお話とも申すべきものにそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
「今度御光来の節は久し振りにて晩餐でも供したき心得に御座そろ寒厨かんちゅう何の珍味も無之候これなくそうらえども、せめてはトチメンボーでもと只今より心掛居候おりそろ。……」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十三年四月赤松殿阿波国あわのくにあわせ領せられ候に及びて、景一かげかずは三百石を加増せられ、阿波郡代あわぐんだいとなり、同国渭津いのつに住居いたし、慶長けいちょうの初まで勤続いたしそろ
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
貴君あなたの親御より十万円恩借おんしゃくありて、今年返済の期限きたり、万一延滞そろ節は所有地家蔵いえくらを娘諸共もろとも、貴殿へ差上候さしあげそろと申す文面の証書をしたゝめて、残し置き、拙者せっしゃは返金に差迫さしせま
(——おいも若きもうたいはやしそろ。これにてなくば、うき世なるまじく見えそろ
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
途中気懸りになって、そっとその封じ目を切って見たれば、==妹御へ、ひとつ、この馬士のはらわた一組参らせそろ==としたためられた——何も知らずに渡そうものなら、腹をかるる処であったの。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)