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一歩
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ひとあし
ふりがな文庫
“
一歩
(
ひとあし
)” の例文
友田は大急ぎで
一歩
(
ひとあし
)
先に外へ出て電車に乗り秋葉原の
乗替場
(
のりかへば
)
で後から女の来るのを待ち受け、其姿を見るや否や、いきなり近寄つて
男ごゝろ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
指頭
(
ゆびさき
)
も、
足尖
(
つまさき
)
も、感じがなくなった。何処も一様に真白になって、もう
一歩
(
ひとあし
)
も踏み出すことが出来ぬまでに四辺が分らなくなった。
越後の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
高坂は
旧
(
もと
)
来た
方
(
かた
)
を
顧
(
かえり
)
みたが、草の
外
(
ほか
)
には何もない、
一歩
(
ひとあし
)
前
(
さき
)
へ
花売
(
はなうり
)
の女、
如何
(
いか
)
にも身に
染
(
し
)
みて聞くように、
俯向
(
うつむ
)
いて
行
(
ゆ
)
くのであった。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お誘いするようにッて、松尾の
子息
(
むすこ
)
がくれぐれも言い置いて行きました。あの人は暮田正香と一緒に、けさ
一歩
(
ひとあし
)
先へ立って行きました。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その椅子からすぐ
一歩
(
ひとあし
)
の寢臺に腰をおろし、膝のうえに兩手をそろえて前屈みになって相手が口を切るのをじりじりしながら待ち受けた。
永遠の夫
(旧字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
▼ もっと見る
この四角な壁の
一側
(
ひとかわ
)
は長さどのくらいかねと尋ねると、へえ今
勘定
(
かんじょう
)
して見ましょうと云いながら、
一歩
(
ひとあし
)
二尺の割で、一二三四と歩いて行った。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この様子を見ると王は益々
勢
(
いきおい
)
込んで青眼の前に
一歩
(
ひとあし
)
進み寄りながら、一層厳格な顔をして
睨
(
にら
)
み付けて申しました——
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
一歩
(
ひとあし
)
づゝたしかに踏みしめて、堂の鼠にも聞かれないやうに足音を偸むのであつた。下りてしまつて彼は、どこへ行くべきか、全く目的はないのである。
夜烏
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
まず、初めは、「近頃流行の
安来節
(
やすぎぶし
)
」と手前口上で、
一歩
(
ひとあし
)
退
(
しざ
)
ると、えへんとやったものだ。さて、この海軍参謀、ちょんがらちょっぴりの小男でござい。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
とても
一歩
(
ひとあし
)
も往けません、旅人はしかたなく「宜しゅうございます」と、云って主人の
背後
(
うしろ
)
の方を見ました。
死人の手
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
再び伊之助と腐れ縁が結ばりまして、とんでもない事になるところを根岸の高根晋齋が
家
(
うち
)
へ引取られましてから、病気で
一歩
(
ひとあし
)
も外へ出たことがございません。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
『どこの藩か知らぬが、吾々より
一歩
(
ひとあし
)
でも迅いものがある以上、
此方
(
こっち
)
は、遅れて居るわけだ。追い越せっ』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一歩
(
ひとあし
)
、店を出ると、すぐ前川夫人につかまりそうな気がして、新子は会いに行く、勇気が出なかった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
怒りっぽい蟹は、
一歩
(
ひとあし
)
巣から外へ踏み出したかと思うと、じきにもう自分の敵を見つけているのだ。
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私たちは妹を
一歩
(
ひとあし
)
先に歩ませ、私がその後ろから右側を歩き、鬼頭さんは私の左側になって、手袋をはめて、かねて鬼頭さんが持って居た短刀を以て妹をつきました。
呪われの家
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
智恵子は
一歩
(
ひとあし
)
毎に顔が益々
上気
(
のぼせ
)
て来る様に感じた。何がなしに、吉野と昌作が
背後
(
うしろ
)
から
急足
(
いそぎあし
)
で
追駆
(
おつか
)
けて来る様な気がする。それが、
一歩
(
ひとあし
)
々々に近づいて来る……………
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
私達は、山に迫られ、
一歩
(
ひとあし
)
ごとに海が奈落になつて行く崖、潮見崎へ行く細道をつどうてゐた。
環魚洞風景
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
人の
足立
(
あしたて
)
がたき処あれば一
条
(
でう
)
の
道
(
みち
)
を
開
(
ひら
)
き、春にいたり雪
堆
(
うづだか
)
き所は
壇層
(
だん/\
)
を作りて
通路
(
つうろ
)
の
便
(
べん
)
とす。
形
(
かたち
)
匣階
(
はこばしご
)
のごとし。
所
(
ところ
)
の
者
(
もの
)
はこれを
登下
(
のぼりくだり
)
するに
脚
(
あし
)
に
慣
(
なれ
)
て
一歩
(
ひとあし
)
もあやまつ事なし。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
午刻
(
ひる
)
のほどより丸山に
赴
(
おもむ
)
ける稲垣の今に至りてなお帰らず、彼は一行の渡航費を持ちて行きたるなれば、その帰るまではわれら
一歩
(
ひとあし
)
も
他
(
た
)
に移す
能
(
あた
)
わず、
特
(
こと
)
に差し当りて佐賀に至り
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
紅裳のひとり
一歩
(
ひとあし
)
退きて、『人のけはひす』といふに、つとすゝみ出づれば、かなたは驚き惶て、裾たもとひるがへし奔せゆく。追風えならぬにほひ溢れたり。牆のもとにて影きえぬ。
『聊斎志異』より
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
それが
一歩
(
ひとあし
)
そとへ出るとどうぢや、まるつきり眼を刳りぬかれでもしたやうでねえか! ⦅ちえつ、ほんとに、カチカチに干からびた黒麺麭でそん畜生の歯が残らず折れてしまへばええ!⦆
ディカーニカ近郷夜話 後篇:02 降誕祭の前夜
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
前へ
一歩
(
ひとあし
)
、
後
(
うしろ
)
へ
一歩
(
ひとあし
)
、
躊躇
(
ためらい
)
ながら二階を降りて、ふいと縁を廻わッて見れば、部屋にとばかり思ッていたお勢が入口に柱に
靠着
(
もた
)
れて、空を
向上
(
みあ
)
げて物思い顔……はッと思ッて、文三立ち止まッた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
梅も大方は
散
(
ちり
)
尽
(
つ
)
くした頃であるが、名にし負う信濃路は二月の末から
降
(
ふり
)
つづく大雪で宿屋より外へは
一歩
(
ひとあし
)
も踏出されぬ位、日々炉を囲んで春の寒さに
顫
(
ふる
)
えていると、ある日の夕ぐれ、山の猟師が一匹
木曽の怪物:――「日本妖怪実譚」より
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
モン妻
鬪
(
たゝか
)
はう
爲
(
ため
)
になら、
一歩
(
ひとあし
)
でも
出
(
だ
)
させますな。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
喚めき叫びて、
一歩
(
ひとあし
)
も絶えて
後
(
うしろ
)
に退かず。 160
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
「
一歩
(
ひとあし
)
、
二歩
(
ふたあし
)
、
三歩
(
みあし
)
……。」
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
美女
一歩
(
ひとあし
)
に花が降り、
二歩
(
ふたあし
)
には微妙の
薫
(
かおり
)
、いま三あしめに、ひとりでに、楽しい音楽の聞えます。ここは極楽でございますか。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼はそのことを多吉夫婦に告げ、朝の食事をすますとすぐ
羽織袴
(
はおりはかま
)
に改めて、
茅場町
(
かやばちょう
)
の店へ勤めに通う亭主より
一歩
(
ひとあし
)
早く宿を出た。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「
一歩
(
ひとあし
)
ちがいで、まア
能
(
よ
)
う
御在
(
ござい
)
ました。不用心ですから
鍵
(
かぎ
)
をかけて、お湯へ行こうと思ったんですよ。お君さんも今夜はお早いんですか。」
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
はつと驚ろいた三四郎の足は、
早速
(
さそく
)
の歩調に
狂
(
くるひ
)
が出来た。其時透明な空気の
画布
(
カンヷス
)
の
中
(
なか
)
に
暗
(
くら
)
く
描
(
ゑが
)
かれた女の
影
(
かげ
)
は
一歩
(
ひとあし
)
前へ
動
(
うご
)
いた。三四郎も
誘
(
さそ
)
はれた様に前へ動いた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
一歩
(
ひとあし
)
妻に遅れて到着した鴎丸の一行が魚を運ぶやうに軽々と二人をつまみわけてしまふ……。
円卓子での話
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
私は何の気なしに
一歩
(
ひとあし
)
礦場
(
こうじょう
)
の中へ踏込んだ。やはり
四辺
(
あたり
)
に人の気はいがせなかった。私は不思議に思って怖る怖る誰かに
怒鳴
(
どな
)
られはせぬかと心に不安を感じながら
二歩
(
ふたあし
)
、
三歩
(
みあし
)
中へ入って行った。
暗い空
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
やう/\にして
空
(
そら
)
を見る所にいたりしに、谷底の雪中
寒
(
さむさ
)
烈
(
はげ
)
しく手足も
亀手
(
かゞまり
)
一歩
(
ひとあし
)
もはこびがたく、かくては
凍死
(
こゞえしぬ
)
べしと心を
励
(
はげま
)
し猶
途
(
みち
)
もあるかと
百歩
(
はんちやう
)
ばかり行たりけん、滝ある所にいたり四方を見るに
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
と怒りの声を振立てながら、
一歩
(
ひとあし
)
進んで
繰出
(
くりだ
)
す
槍鋒
(
やりさき
)
鋭く突きかける。
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
『怒つちや可けませんよ。——貴方方が齢の順で歩いてゐたんでせう? だから屹度あの順で死ぬんだらうつて言つたんです。はははは。上から見ると
一歩
(
ひとあし
)
一歩
(
ひとあし
)
お墓の中へ下りて行くやうでしたよ。』
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
二人
伴
(
ともな
)
ふ
一歩
(
ひとあし
)
に
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
岸本に言わせると、彼と節子とはまだ
一歩
(
ひとあし
)
踏出したばかりであった。ある意味から言えば、
漸
(
ようや
)
くこんな境地まで
漕付
(
こぎつ
)
けたばかりであった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
抱
(
だ
)
くと、
今度
(
こんど
)
は、
足
(
あし
)
が
突張
(
つツぱ
)
つて
動
(
うご
)
かない。
前
(
まへ
)
へ、
丁度
(
ちやうど
)
膝
(
ひざ
)
の
處
(
ところ
)
へ
重
(
おも
)
しが
掛
(
か
)
かる。が、それでも
腰
(
こし
)
を
据
(
す
)
ゑて、ギツクリ/\
一歩
(
ひとあし
)
二歩
(
ふたあし
)
づゝは
歩
(
ある
)
く。
廓そだち
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
婆さんは一向頓着しない様子で、頬冠の手拭を取つて額の汗をふきながら、見れば
一歩
(
ひとあし
)
二歩
(
ふたあし
)
おくれながら歩いてゐる。
買出し
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
折柄
(
おりから
)
柿落葉の時節で宿から
南郷街道
(
なんごうかいどう
)
へ出るまでは
木
(
こ
)
の葉で路が一杯です。
一歩
(
ひとあし
)
運ぶごとにがさがさするのが気にかかります。誰かあとをつけて来そうでたまりません。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
クツキリとした、輪廓の正しい、引緊つた顔を
真面
(
まとも
)
に西日が照す。
切
(
きれ
)
のよい眼を眩しさうにした。
紺飛白
(
こんがすり
)
の単衣に長過ぎる程の紫の袴——それが
一歩
(
ひとあし
)
毎に日に燃えて、静かな
四囲
(
あたり
)
の景色も活きる様だ。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
さいはひに、
火
(
ひ
)
の
粉
(
こ
)
でない。
私
(
わたし
)
は
柳川
(
やながは
)
を
恩人
(
おんじん
)
だと
思
(
おも
)
ふ——
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
る。もう
一歩
(
ひとあし
)
來
(
き
)
やうが
遲
(
おそ
)
いと、
最早
(
もはや
)
言
(
ことば
)
を
費
(
つひや
)
すにおよぶまい。
火の用心の事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「外国に来て困るのは、ほんとに困るんだからなあ」こんなことを
独
(
ひと
)
りで言って見て、
一歩
(
ひとあし
)
先に出て行った岡の後を追った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
思えばこの半月あまりは
一歩
(
ひとあし
)
も
戸外
(
そと
)
へ出ず
引籠
(
ひきこも
)
ってのみいた時に比べると、おのずと胸も開くような心持になり
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
進んで行けば苦悶が
除
(
と
)
れる様に思ふ。苦悶を
除
(
と
)
る為めに
一歩
(
ひとあし
)
傍
(
わき
)
へ
退
(
の
)
く事は夢にも案じ得ない。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
峠
(
たうげ
)
に
上
(
のぼ
)
つて、
案内
(
あんない
)
に
分
(
わか
)
れた。
前途
(
ぜんと
)
は
唯
(
たゞ
)
一條
(
ひとすぢ
)
、
峰
(
みね
)
も
谷
(
たに
)
も、
白
(
しろ
)
き
宇宙
(
うちう
)
を
細
(
ほそ
)
く
縫
(
ぬ
)
ふ、それさへまた
降
(
ふ
)
りしきる
雪
(
ゆき
)
に、
見
(
み
)
る/\、
歩
(
あし
)
一歩
(
ひとあし
)
に
埋
(
うづ
)
もれ
行
(
ゆ
)
く。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
まだ岸本は
一歩
(
ひとあし
)
動いたに過ぎない。しかしその一歩だけでも国の方へ近づいたことを思わせた。倫敦には岸本は九日ばかり船の出るのを待った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
母上は其の
夜
(
よ
)
の
夜半
(
よなか
)
、夢ではなく、確かにこんこんと云う
啼
(
な
)
き声を聞いたとの話。下女は日が暮れたと云ったら、どんな用事があっても、
家
(
うち
)
の外へは
一歩
(
ひとあし
)
も踏出さなくなった。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
自分は暗い所へ行かなければならないと思っていた。だから茶店の方へ逆戻りをし始めると自分の目的とは反対の
見当
(
けんとう
)
に取って返す事になる。暗い所から
一歩
(
ひとあし
)
立ち
退
(
の
)
いた意味になる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一歩
(
ひとあし
)
家の方へ踏出してみると復た堪え難い心に
復
(
かえ
)
った。三吉は自分の家の草屋根を見るのも苦しいような気がした。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“一歩”の意味
《名詞》
一つの歩み。一つの足の運び。
一つの段階。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
歩
常用漢字
小2
部首:⽌
8画
“一歩”で始まる語句
一歩一歩
一歩先
一歩毎
一歩金
一歩銀
一歩々々
一歩二歩