鹽梅あんばい)” の例文
新字:塩梅
頬邊ほつぺたは、鹽梅あんばいかすつたばかりなんですけれども、ぴしり/\ひどいのがましたよ。またうまいんだ、貴女あなたいしげる手際てぎはが。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「錢形の親分、飛んだ御苦勞だつたね。神田からわざ/\來て貰つたがそれにも及ばなかつたよ。宜い鹽梅あんばいに下手人の目星が付いてな」
勘次かんじはおしな病氣びやうきかゝつたのだといふのをいて萬一もしかといふ懸念けねんがぎつくりむねにこたへた。さうして反覆くりかへしてどんな鹽梅あんばいだといた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『さア、それは鹽梅あんばいだ!』とあいちやんは獨語ひとりごとひました、女王樣ぢよわうさま宣告せんこくされた死刑しけい人々ひと/″\を、如何いかにもどくおもつてたところでしたから。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
変だと思ってなおよく見ると、どうやら背中に刃物の突傷つききずがあるらしく、水死人にしては水も含んでいない様な鹽梅あんばいなのだ。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
うなると、狼狽うろたへる、あわてる、たしかに半分は夢中になツて、つまずくやらころぶやらといふ鹽梅あんばいで、たゞむやみと先を急いだが、さてうしても村道へ出ない。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
書物讀み弟子二十人計に相成、至極の繁榮はんえいにて、鳥なきさと蝙蝠かうもりとやらにて、朝から晝迄は素讀そどく、夜は講釋ども仕而、學者之鹽梅あんばいにてひとりをかしく御座候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
「どこかのお國では、そんな鹽梅あんばいに話してゐるのでございますかね?」老女は編む手を休めて、仰ぎながら訊ねた。
いろ/\な地方で産するものを鹽梅あんばいし、それに茶の中の茶ともいふべき『おひした』(味素)を加味して
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
車も一寸ちよつと逆行して方向を鹽梅あんばいしなければ登れぬところも有つて、山嘴さんし突端の逆行は餘り好い心持では無い。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
かれ非常ひじやう讀書どくしよこのんで、屡〻しば/\倶樂部くらぶつては、神經的しんけいてきひげひねりながら、雜誌ざつし書物しよもつ手當次第てあたりしだいいでゐる、んでゐるのではなく間合まにあはぬので鵜呑うのみにしてゐるとふやうな鹽梅あんばい
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
綾鶴 いゝ鹽梅あんばいに雨も小降りになつたやうでござんすな。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
いぬはまたなめた。其舌そのした鹽梅あんばいといつたらない、いやにべろ/\してすこぶるをかしいので、見物けんぶつ一齊いつせいわらつた。巡査じゆんさ苦笑にがわらひをして
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お秀坊の話が出なくても、俺はその事で今日は彼方此方飛廻らうと思つて居る。丁度宜い鹽梅あんばいだ、お前も精一杯手傳つてくれ
私は少し気懸りになって来たものですから、婆やにそれとなく近所の噂などを探らせて見ますと、どうやら怪我人はM医院の診察室で死んだ鹽梅あんばいなのです。
赤い部屋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
料理人クツク夫人ふじんつたときに、其後そのあとからなべげつけました、それでも鹽梅あんばいあたりませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「まつたく、缺點がない譯ではありませんが、なか/\よくやりますから。それはさうと、今朝はあなたの新らしい生徒さんとはどういふ鹽梅あんばいでいらつしやいましたか。」
構はずにずんずん話を仕掛けたら善いぢや無いかといつたつてそりやさうはいかぬ。兎に角自分から口火を切つた。どんな事で口火を切つてどんな鹽梅あんばいに進行させたかといつたつてそれも言へぬ。
炭焼のむすめ (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其時共は餘程面白次第に而、東湖先生も至極丁寧成事なることにて、彼宅へ差越申候と、清水せいすゐに浴候鹽梅あんばいにて心中一點の雲霞なく、唯清淨なる心に相成、歸路をわすれ候次第に御座候。御遠察可下候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
「からかつちやいけません、ね親分。こゝでお目にかゝつたのは、丁度いゝ鹽梅あんばいだ。ちよいと覗いてやつて下さい。大變な騷ぎが始まつたんで」
「ウン、僕もさっきから、何だか同じ所をグルグルまわっている様な鹽梅あんばいだよ。……君こちらへ来られない?」
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
鹽梅あんばいにも一わたしおほきくなつてれゝばいが、まつた斯麽こんなちひさな容體なりをしてるのは可厭いやだわ!
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
すぐりやんだものですから、鹽梅あんばいだ、とつてね、また、おまへさん、すた/\駈出かけだしてきなすつたよ。……へい、えゝ、お一人ひとり。——ほかにやとき友達ともだちだれずさ。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「親分、到頭萬七親分を口説くどき落しましたよ。船が停つたので、土手を追つかけると、よい鹽梅あんばいにすぐ追ひつきましてね」
妙な工合ぐあいで、だんまりで、Tは茶の間へ通る、細君は青い顔をしてあとからついて来る、といった鹽梅あんばいだ。
一人二役 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
くちなは料理れうり鹽梅あんばいひそかにたるひとかたりけるは、(おう)が常住じやうぢう居所ゐどころなる、屋根やねなきしとねなきがう屋敷田畝やしきたんぼ眞中まんなかに、あかゞねにてたるかなへ(にるゐす)をゑ、河水かはみづるゝこと八分目はちぶんめ
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「良い鹽梅あんばいに、よく晴れたね。そればかり心配して居たよ。八は燒跡の眞ん中に立つて、この竿を眞つ直ぐに押つ立ててくれ、曲げちや何んにもならねえよ」
絶えずうつむいて、目をふせて、口を利く時も、殿村を正視せず、まるでたたみと話しをしている様な鹽梅あんばいだ。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かたはらに、おの/\のがしるしてあつた。……神樂坂かぐらざかうらへ、わたし引越ひつことき、そのまゝのこすのはをしかつたが、かべだからうにもらない。——いゝ鹽梅あんばいに、一人ひとりあひがあとへはひつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「お、親分、よい鹽梅あんばいでした。直次郎の野郎が逃げ出さうとするので、大骨折で縛つて送つたところですが」
そして、暫く遠慮して居った銭湯へも行けば、床屋へも行く、飯屋めしやではいつもの味噌汁と香の物の代りに、さしみで一合かなんかを奮発するといった鹽梅あんばいであった。
二銭銅貨 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いへのかゝり料理れうり鹽梅あんばいさけあぢ、すべて、田紳的でんしんてきにて北八きたはち大不平だいふへいしかれども温泉をんせんはいふにおよばず、谿川たにがはより吹上ふきあげの手水鉢てうづばち南天なんてん一把いちは水仙すゐせんまじへさしたるなど、風情ふぜいいふべからず。
熱海の春 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いゝ鹽梅あんばいに、誰も萬屋茂兵衞なんか見た者はありませんよ。金太親分が十手を振り冠つて萬屋に乘込んで行くと、温かい味噌汁で、朝飯を三杯半食つてゐた——」
その様子が、どうやら、母親にしろ、妹にしろ、おれと同じ様に兄貴を疑っている鹽梅あんばいなのだ。兄貴は兄貴で、妙に青い顔をして黙り込んでいる。実に何とも形容の出来ない。
疑惑 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ちやう鹽梅あんばいに、貴下あなたがおひなさいましたやうな、大勢おほぜい御婦人ごふじんづれでも來合きあはせてくださればうございますけれどもねえ……でないと……畜生ちくしやう……だの——阿魔あま——だのツて……なんですか
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「それは宜い鹽梅あんばいぢやないか、自分が手鹽にかけて育てたお藤といふ娘に覺えがあるだらう」
それに、見た所私よりも風体のととのった若い男と話すことは、悪い気持もしないものですから、まあひまつぶしといった鹽梅あんばいで、変てこな会話を続けて行きました。こういう工合ぐあいにね。
モノグラム (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「いゝ鹽梅あんばいに眠たやうだ。お富、枕を持つて來な、——それから、行燈あんどん退かせるのだ」
蕗屋がそこへ辿りついた時も、いい鹽梅あんばいに、通りには犬の子一匹見当らなかった。彼は、普通に開けば馬鹿にひどい金属性の音のする格子戸を、ソロリソロリと少しも音を立てない様に開閉した。
心理試験 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「何? 錢形の平次が參つた、丁度宜い鹽梅あんばいだ、此方にも言ひたいことがある」
何が入っているのか、ひどく重そうな鹽梅あんばいである。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
こんな鹽梅あんばいでは、平次の鼻でも、疑はしいものは嗅ぎ出せさうもありません。
まるで狐につままれた様な鹽梅あんばいなのですよ。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「あの隙間は宜い鹽梅あんばいに出來てゐますよ。中の障子が丁度破れてゐるんだ」
銭形平次捕物控:180 罠 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「先ずこんな鹽梅あんばいさ」
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
申しあげて、——ところが、宜い鹽梅あんばいに、與茂吉は、許されて戻りました。娘のことで、主人を怨んでゐるといふ外には、疑ひやうはなく、——歸されると直ぐ、お通夜の皆樣のお相手をしてを
「なアーる、でも首尾しゆびよく下手人が擧がつて宜い鹽梅あんばいでしたね」
「番頭さん、丁度いゝ鹽梅あんばいだ。少し訊きたいことがあるが」
「そいつは良い鹽梅あんばいだ。金は何處に隱してあつたんだ」
「兄哥、加減が惡いさうだな、どんな鹽梅あんばいだ」