顔色かおいろ)” の例文
旧字:顏色
みつは、少年しょうねんのたおれているところへきました。ると、その顔色かおいろさおになっています。そして、くるしそうにいきをしていました。
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
『いや今日こんにちは、おおきみ今日きょう顔色かおいろ昨日きのうよりもまたずッといいですよ。まず結構けっこうだ。』と、ミハイル、アウエリヤヌイチは挨拶あいさつする。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
源兵衞は何うして知れたかと思って、顔色かおいろを変え、突いていた手がぶる/″\震える様子ゆえ、喜一郎はえみを含みまして、物柔らかに
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
見た所、顔色かおいろもすぐれないようだから、あるいはまだ快癒がはかばかしくないのかと思ったが、話して見ると、格別、病人らしい容子ようすもない。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
何方どっちが負けそうなとう事は双方の顔色かおいろを見てわかるから、勝つ方の手を誉めて負ける方を悪くさえ云えば間違いはない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「え?」と云って彼女は彼の顔色かおいろを窺った。そしてこうつけ加えた。「あなた何か変なことを考えては被居らなくって?」
恩人 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そのとき中内工学士なかうちこうがくし顔色かおいろがかすかに動搖どうようしたのを、警部けいぶはすばやくがついていた。それらの電気でんきメッキでは、青酸加里せいさんかり溶液ようえき使用しようされる。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
煙草たばこ甲板かんぱんで吸うと、船員たちが顔色かおいろをかえた。——たったそれだけのことで、竹見は万事をさとったのである。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
蛾次郎がじろうは、卜斎ぼくさい顔色かおいろが、だんだんやわらいでくるのを見ると、あまッたれたような調子ちょうしでしゃべりだしてくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女房の顔色かおいろ見てなんかいたら、男になって売り出すことは出来はしないわよ。金五郎さん、しっかりおしよ
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
だのにきょうにかぎってそんなことをいいだしたものですから、林太郎の顔色かおいろはみるみる変わりました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
でも、やはりしっかりと立って、顔色かおいろひとつ変えず、銃剣肩に、まっすぐにまえをにらんでいました。
女は死人しにんのような顔色かおいろになって、口をいたままで聞いている。男の言う事が分らない。分らせたくない。冷やかな、恐しいある物がのどを締めつけているようである。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
母は黙って此方こちらを向いた。常は滅入ったような蒼いかおをしている人だったが、其時此方こちらを向いた顔を見ると、ぼッあかくなって、眼にうるみを持ち、どうも尋常ただ顔色かおいろでない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
はしなくも話頭はなしがみずから犯した罪に、すこしでも触れると、すぐにビクつき、あるいは顔色かおいろが変わり、あるいは声がふるえ、あるいはその言うことに辻褄つじつまが合わなくなり
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
だが、越前が、皆の顔色かおいろを見ているから、表情を変えぬようにとはいえなかったし、中座して、それを一同に伝えて、越前守の眼を警戒させるには、既に遅くなりすぎていた。
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
熱いもぬるいも知らぬような風に飲んだ。顔色かおいろえない、気が何かにねばっている。自分に対して甚しく憎悪ぞうおでもしているかとちょっと感じたが、自分には何も心当りも無い。で
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
思わずふりかえった人びとは、玄関げんかん不気味ぶきみな人かげをみて、ぎょっと顔色かおいろをかえた。
翌朝よくちょうはようやく出勤しゅっきん時間にまにあうばかりにおきた。よほど顔色かおいろがわるかったか
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「八つぁんじゃねえぜ、一ぺえやったようないい顔色かおいろをして、どこへきなさる」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「へへエ。いっこう顔色かおいろわるくないようだが、それでどこかわるいだかや。」
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「あなた、どうかなさいましたか。たいそう顔色かおいろわるいようですね。」
夢占 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「ときどきおそろしい電気でんきとおると、わたし顔色かおいろさおになるのだ。みんなこの傷口きずぐち針線はりがねでつつかれたあとさ。」といいました。
電信柱と妙な男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
夫のあだを討とうという一心でござりますから、顔色かおいろの変ったのを見せまいと、一角の寝床へそっと来て、顔を横に致しまして
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
顔色かおいろ蒼白あおじろく、姿すがたせて、しょっちゅう風邪かぜやすい、少食しょうしょく落々おちおちねむられぬたち、一ぱいさけにもまわり、ままヒステリーがおこるのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これもやはり東京人の僕には妙にどくな言葉だった。しかし彼はいつのにか元気らしい顔色かおいろに返り、彼の絶えず愛読している日本文学の話などをし出した。
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おっかさんも顔色かおいろをかえました。おとっつあんは手みじかに、じつはこれこれだと、林太郎がいなくなったわけを話しました。するとおっかさんはもう涙声なみだごえになり
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
とたんに、射手いて山県蔦之助やまがたつたのすけは、つるをはなした右手めてをそのまま、サッと顔色かおいろをかえてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
所が珍らしい/\とばかりで、宝をもらったとかんがえ一寸ちょいとも顔色かおいろに見えない。昨日は誠に有難うといってその翌朝よくあさ内儀かみさんが花をもって来てれた。私はその取次とりつぎをしてひとひそかに感服した。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
東助とヒトミは、恐ろしさに顔色かおいろを紙のように白くして、たがいにきあった。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かえりみて自分の生活をみると、じつになさけないとらわれのである。わずかに手をうごかすにも足を動かすにも、あとさきを考えねばならぬ。かりそめにものをいうにも、人の顔色かおいろを見ねばならぬ。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
と、平静へいせい顔色かおいろもどつてこたえた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
そのとき、あお顔色かおいろ少年しょうねんが、つかれているらしく、おもそうなあるきつきをして、あちらからきました。つばめは、それと同時どうじに、りました。
つばめと魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
之を聞くと園八郎は額へ青筋を出しまして顔色かおいろを変え、袴の間へギュッと手を入れて肩を張らし、曲淵甲州公の顔をじっと見詰めて居りましたが
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたしの周囲には王氏を始め、座にい合せた食客しょっかくたちが、私の顔色かおいろうかがっていました。ですから私は失望の色が、寸分すんぶんも顔へあらわれないように、気を使う必要があったのです。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ると、まるで空々そらぞらしい無理むり元気げんきして、いて高笑たかわらいをしてたり、今日きょう非常ひじょう顔色かおいろがいいとか、なんとか、ワルシャワの借金しゃっきんはらわぬので、内心ないしんくるしくあるのと、はずかしくあるところから
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ヒョイと浦賀の海岸で島にあって、イヤ誠にお久振ひさしぶり、時に何か日本にかわった事はないかと尋ねた所が、島安太郎が顔色かおいろを変えて、イヤあったとも/\大変な事が日本にあったと云うその時、私が
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その手紙をきおさめながら、こういった石見守の顔色かおいろ尋常じんじょうでない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見る見る顔色かおいろがおだやかになった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「やあ、おまえさんの顔色かおいろさおじゃ。まあ、その傷口きずぐちはどうしたのだ。」と、電信柱でんしんばしらかおてびっくりしました。
電信柱と妙な男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
首ばかり極彩色ごくざいしきが出来上り、これから十二一重ひとえを着るばかりで、お月の顔を見てにこりと笑いながら、ジロリと見る顔色かおいろ遠山えんざんまゆみどりを増し、桃李とうりくちびるにおやかなる
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
現に指揮官のM大尉なぞは、この隊の先頭に立った時から、別人のように口数くちかずの少い、沈んだ顔色かおいろをしているのだった。が、兵は皆思いのほか、平生の元気を失わなかった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのとき、子供こどもらはうらめしそうに、こちらをたが、いずれも顔色かおいろあおく、手足てあしがやせて、草履ぞうりきずってあるくのも物憂ものうそうなようすであった。
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
あの顔色かおいろ蒼白あおじろい主人は、使に立ったものの話によると、「それほどこの画がお気に入ったのなら、喜んで先生にお貸し申そう。しかし手離すことだけは、ごめんこうむりたい」
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
此の頃は様子がちがって意見らしい事をいえば顔色かおいろが違うからいうだ、私は段々年を取り惣吉はまだ子供なり、役には立たねえから、お前も堅くって今まで人に云われる事もなかっただから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けれど、殿とのさまは、毎日まいにち食事しょくじのときにちゃわんをごらんになると、なんということなく、顔色かおいろくもるのでごさいました。
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると彼は私の逡巡しゅんじゅんに早くも気がついたと見えて、今まではかまの膝の上に伏せていた視線をあげると、半ば歎願するように、ず私の顔色かおいろを窺いながら、前よりやや自然な声で
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
文治郎殿がお失策しくじりで中々お聞入れがないから、手前に代ってお詫をしてくれと、何事にも恐れぬ文治郎殿が驚かれ、顔色かおいろ変えて涙を浮べ頼みに参ったから直様すぐさま出ましたが、どうか御了簡遊ばして
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ござをかしてくれれば、一つあげるよ。」と、勇二ゆうじが、いいました。小山こやまは、きゅうに、たのしそうな顔色かおいろになりました。
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
その一人がどう思ったか、途端にこちらを見返りながら、にやりと妙に笑って見せた。千枝子はそれを見た時には、あたりの人目にも止まったほど、顔色かおいろが変ってしまったそうだ。
妙な話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)