にげ)” の例文
火の中に尾はふたまたなる稀有けうの大ねこきばをならしはなをふきくわんを目がけてとらんとす。人々これを見て棺をすて、こけつまろびつにげまどふ。
外の所で愈々突留めた上は、此方の者だ、先がにげようとも隠れようとも其ンな事は平気だ、隠れたら公然と御用で以て蹈込む事も出来る
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
見てにげ出し御奉行所へ駈込かけこまんと心懸こゝろがけてぞ居たりける又宅番に當りし長屋の者共代々かはる/″\に來りてはひまに任せてうはさをなすに當座利合りあひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
アヽ解つた、お前此頃松公まつこうにげを打たれたと云ふから、其で其樣そんなに自棄糞やけくそになつてるんだね。道理で目の色が變だと思つた。オヽ物騷々々!
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
村方むらかたの家々にてはあわてゝ戸を閉じ子供は泣く、老人はつえを棄てゝにげるという始末で、いやもう一方ひとかたならぬ騒ぎでございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
仮令たとえ一寸にげても何とか口を開かねば、只知らぬ存ぜぬでは、突張れない羽目となって来た。その機微を察した署長はどうしてそれを見逃そうぞ。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
き散らしてあったお金をそのままにして置いて、檀那衆がおにげなさると、お辰さんはそれを持っておかえりなさいました
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
三田は手拭をひつつかむと、にげるやうに地下室の洗面場へ下りて行つた。臺所の連中からも、一齊に冷かされた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
其れが僕と背中合せの席での事である。田舎ゐなか廻りの汽車でボギイ車でないからにげ出すべき廊も附いて居ない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ぢやあ僕見てゝやらうや、にげてくとこを、かあちやん、いつかとうさまの入つしやる時、つりに来ようネ。
鼻で鱒を釣つた話(実事) (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
小間癪こましゃくれて先の知れぬ所へゆくいやだと吼顔ほえづらかいてにげでも仕そうな様子だから、買手の所へ行く間一寸ちょっと縛っておいたのだ、珠運しゅうんとかいう二才野郎がどういう続きで何の故障こしょう
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
けれども、づれも不合格者ばかりであつた。始めのうちは体裁のにげ口上で断わつてゐたが、二年程前からは、急に図迂づう々々しくなつて、屹度相手にけちを付ける。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
魔法の馬の支度をして置きます。それに乗って、連れておにげなさい。それならわたしに出来ます。
それがし高坂弾正かうさかだんじやうと申して、信玄公被管ひくわんの内にて一の臆病者也、仔細は下々しもじもにて童子わらべこどものざれごとに、保科ほしな弾正やり弾正、高坂弾正にげ弾正と申しならはすげに候、我等が元来を申すに
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いけどしつかまつった、学芸記者がれない軽口のにげ口上で、帽子を引浚ひっさらうと、すっとは出られぬ、ぎっしり詰合って飲んでいる、めいめいが席を開き、座を立って退口のきぐちを譲って通した。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
をんな逆上のぼせをとこことなれば義理ぎりにせまつてつたので御座ござろといふもあり、なんのあの阿魔あま義理ぎりはりをらうぞ湯屋ゆやかへりにをとこふたれば、流石さすがふりはなしてにげこともならず
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今まではお前にもかくして置いたが、の窟の奥には大切な宝がしまってある。何か大事が出来しゅったいして、お前がうしても此処ここに居られないような場合になったら、れを持出もちだしてにげるがい。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『お前は、泣いてゐた子供をいたはらずに、馬へ乗つてにげようとしたな』
子供に化けた狐 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
如何にも一般の家庭では男子の権利がまだかたよって強い今日、男が微弱な妻を圧服する事は容易でありそうなものですのに、妻ににげを打たれるというのは男の敗北として恥ずべき一大事でしょう。
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
「御苦労/\」と川地は首肯うなづきつゝおのがポケットの底深くをさめ「れがれば大丈夫だ、早速告発の手続に及ぶよ、実に不埒ふらちな奴だ、——が、彼奴やつ、何処か旅行したさうだが、にげでもしたのぢやなからうナ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
殺戮互に行ひて卑怯のにげを思ふ無く
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
火の中に尾はふたまたなる稀有けうの大ねこきばをならしはなをふきくわんを目がけてとらんとす。人々これを見て棺をすて、こけつまろびつにげまどふ。
ぬすみ出して連てにげたに相違なし元はたゞとつて來たものだ不殘みんな渡しても損にはならねへサア/\渡せ/\とたちかゝる故此方こなたは侍士一人なれども女房を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うせ云われるくらいなれば色になって、うしてずうっと、二人で下総へにげると云うようないきな世界なら、なんと云われても云われ甲斐がありますが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
三日四日にかへりしもあれば一にげいでしもあらん、開闢以來かいびやくいらいたづねたらばゆび内儀かみさまが袖口そでくちおもはるゝ、おもへばおみね辛棒しんぼうもの、あれにむごあたつたらば天罸てんばつたちどころに
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
第一此罪人を男か女かとお考えなさい、アノ傷で見ればしぬる迄に余ほど闘った者ですが女ならアレほど闘う中に早く男に刃物を奪取うばいとられて反対あべこべに殺されます、又背中の傷はにげた証拠です
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
時計とけいよりはむし宗助そうすけ叙述じよじゆつはうおほくの興味きようみつて、泥棒どろぼうはたしてがけつたつてうらからにげげるつもりだつたらうか、またげる拍子ひやうしに、がけからちたものだらうかとやう質問しつもんけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
鉄砲は笑ってにげる。成斎は追い附いて、鞭で頭を打つ。「ああ、痛い、先生ひどいじゃありませんか」と、鉄砲はつぶやく。弟子らは面白がって笑った。こういう事はほとんど毎日あった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
横町の小児こども足搦あしがらみの縄を切払うごときはおろかなこと、引外してにげるはずみに、指が切れて血が流れたのを、立合のひとあやしんで目を着けるから、場所を心得て声も懸けなかったほど、思慮の深い女賊は
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうせ御自分でこの中をおにげなさるのだから。
あるにまかせて古き箱にいれ、もいれおきしに、二三日すぎていつにげゆきしやあたりをたづねしかどをらざりしとぞ。
一人二人づつ無理にお宿を申ても此有樣に皆樣が門口よりしてにげゆかれ今日は貴方あなたをお止め申しいさゝか父が藥のしろになさんと存じて御無理にもお宿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其の勢いに驚きのくらいの力かと安田はとてかなわぬと思って抜刀ぬきみを持ってばら/\にげると、弥次馬に、農業を仕掛けて居た百姓衆が各々おの/\すきくわを持って
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もうここをおにげなさるの。7230
あるにまかせて古き箱にいれ、もいれおきしに、二三日すぎていつにげゆきしやあたりをたづねしかどをらざりしとぞ。
あとさがって傷口を押えると、額から血がダラ/\流れて真赤になり、真実ほんとうの金太郎の様になります。続いてにげたらと隠れていた捕者の上手な富藏とみぞうと云う者が
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おびもせざる女片手かたて小児せうに背負せおひ提灯ちやうちんさげ高処たかきところにげのぼるは、ちかければそこらあらはに見ゆ、いのちとつりがへなればなにをもはづかしとはおもふべからず。
みるよります/\おどろきはせいりければ狼二疋にげさりけり、あたりをみれば母はゐろりのまへにこゝかしこくひちらされ、片足かたあしはくひとられてしゝゐたり。