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のきば
ふりがな文庫
“
軒端
(
のきば
)” の例文
美奈子が宮の下の
賑
(
にぎ
)
やかな通を出はずれて、段々
淋
(
さみ
)
しい
崖
(
がけ
)
上の道へ来かゝったとき、丁度道の左側にある理髪店の
軒端
(
のきば
)
に
佇
(
たたず
)
みながら
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「さあ、
御
(
お
)
あたり。さぞ御寒かろ」と云う。
軒端
(
のきば
)
を見ると青い煙りが、突き当って
崩
(
くず
)
れながらに、
微
(
かす
)
かな
痕
(
あと
)
をまだ
板庇
(
いたびさし
)
にからんでいる。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
なんだかうっとうしい晩だけれど、
軒端
(
のきば
)
を伝う雨の
雫
(
しずく
)
に静かに耳を傾けていると、思いなしかそれがやさしい
囁
(
ささや
)
きのように聞えて来る。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
これは疑いもなく
軒端
(
のきば
)
スズメの省略であって、他には紛れる語がない故に、
暫
(
しば
)
らく言い馴れて後に、後を切って簡単にしたものである。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「なに、佐々木殿が見えたと」つかつかと彼は玄関へ出てきたのである、そしてほの明るい
夕暗
(
ゆうやみ
)
の
軒端
(
のきば
)
に、その人の影を透かして見て
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
空蝉
(
うつせみ
)
が何かのおりおりに思い出されて敬服するに似た気持ちもおこるのであった。
軒端
(
のきば
)
の
荻
(
おぎ
)
へは今も時々手紙が送られることと思われる。
源氏物語:06 末摘花
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
注意してよく見ると、ところどころの柱から黒い綱が二本ずつだるまさんの頭のところで別れて、家の
軒端
(
のきば
)
につながれているのであった。
おじいさんのランプ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
軒端
(
のきば
)
の松をながめながら、待っていても甲斐のないこの家で、狐やふくろうを友としてさびしくきょうまで過してまいりました。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
穉拙
(
ちせつ
)
な句である。春雨の夕方、庭先か
軒端
(
のきば
)
かに来て雀が啼き交している。それが何羽いるか、数を算えて見たというに過ぎない。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
その花のさかり、青葉のさかりは、荒れ朽ちた
軒端
(
のきば
)
の感じに混って奥の部屋の縁先にある古い
硝子戸
(
ガラスど
)
に迫って来るかのように映っていた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
雪
(
ゆき
)
が
降
(
ふ
)
って、
田
(
た
)
や、
畑
(
はたけ
)
をうずめてしまうと、すずめたちは、
人家
(
じんか
)
の
軒端
(
のきば
)
近
(
ちか
)
くやってきました。もう、
外
(
そと
)
に
落
(
お
)
ちている
餌
(
え
)
がなかったからです。
温泉へ出かけたすずめ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
さながら人なき家の如く堅くも表口の障子を閉めてしまった土弓場の
軒端
(
のきば
)
には折々時ならぬ
病葉
(
わくらば
)
の
一片
(
ひとひら
)
二片
(
ふたひら
)
と
閃
(
ひらめ
)
き落ちるのが殊更に
哀
(
あわれ
)
深く
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
緑蔭にほの白く匂う
空木
(
うつぎ
)
の花もすでに朽ち、さすや
軒端
(
のきば
)
のあやめぐさ、男節句の祝い日がすぎて、まだ幾日も経たぬある日のことであります。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
好機
逸
(
いっ
)
すべからずとて、
遂
(
つい
)
に母上までも
欺
(
あざむ
)
き参らせ、親友の招きに応ずと言い
繕
(
つくろ
)
いて、一週間ばかりの
暇
(
いとま
)
を乞い、翌日家の
軒端
(
のきば
)
を立ち
出
(
い
)
でぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
お
禮
(
れい
)
も
何
(
なに
)
といひかぬるを、よう
似合
(
にあふ
)
のうと
笑
(
わら
)
ひながら、
雪灯
(
ぼんぼり
)
手
(
て
)
にして
立出
(
たちいで
)
給
(
たま
)
へば、
蝋燭
(
ろうそく
)
いつか三
分
(
ぶん
)
の一ほどに
成
(
な
)
りて、
軒端
(
のきば
)
に
高
(
たか
)
し
木
(
こ
)
がらしの
風
(
かぜ
)
。
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
虫かごにはまだ少し早いが、そのかわり
軒端
(
のきば
)
の先には涼しい回りとうろうがつるされて、いずこの縁台も今を繁盛に浮き世話のさいちゅうでした。
右門捕物帖:06 なぞの八卦見
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
彼女は、窓の外の、
軒端
(
のきば
)
で笑っているような、
雀
(
すずめ
)
の朝の声をきくまいとした。
蒲団
(
ふとん
)
をひきかぶるようにして、外は、霜柱が鋭いことであろうと思った。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
侍女五 ……時得て咲くや江戸の花、浪
静
(
しずか
)
なる品川や、やがて
越来
(
こえく
)
る川崎の、
軒端
(
のきば
)
ならぶる神奈川は、早や程ヶ谷に程もなく、暮れて戸塚に宿るらむ。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
といって、そのまま引返す気にもなれないので、うじうじしながら、とうとう女の家の
軒端
(
のきば
)
をくぐってしまった。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
というので安兵衞が
酌
(
しゃく
)
をする、伊之助は痛む方の足を出し盃を口元まで持って参りますと、不思議な事には
軒端
(
のきば
)
から一陣の風がドッと吹き入りますると
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
夢
(
ゆめ
)
から
夢
(
ゆめ
)
を
辿
(
たど
)
りながら、
更
(
さら
)
に
夢
(
ゆめ
)
の
世界
(
せかい
)
をさ
迷
(
まよ
)
い
続
(
つづ
)
けていた
菊之丞
(
はまむらや
)
は、ふと、
夏
(
なつ
)
の
軒端
(
のきば
)
につり
残
(
のこ
)
されていた
風鈴
(
ふうりん
)
の
音
(
おと
)
に、
重
(
おも
)
い
眼
(
め
)
を
開
(
あ
)
けてあたりを
見廻
(
みまわ
)
した。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
そのなかでは朝から晩までから
竿
(
ざお
)
の音がいそがしく鳴りひびき、つばめや岩つばめが
軒端
(
のきば
)
をかすめて飛び、さえずり、屋根の上には
鳩
(
はと
)
がいく列もならんで
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
城内の者は、もとより、
軒端
(
のきば
)
に宿る小鳥たち、天井裏に巣くう
鼠
(
ねずみ
)
、のこらずぐっすり眠って居ります。聞いている者は、誰も無い。さあ、おっしゃって下さい。
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
庭の
風情
(
ふぜい
)
は
添
(
そは
)
りけれど、
軒端
(
のきば
)
なる
芭蕉葉
(
ばしようば
)
の
露夥
(
つゆおびただし
)
く夜気の侵すに
堪
(
た
)
へで、やをら内に入りたる貫一は、障子を
閉
(
た
)
てて
燈
(
ひ
)
を
明
(
あか
)
うし、
故
(
ことさら
)
に床の間の置時計を見遣りて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
室の
軒端
(
のきば
)
に
飜
(
ひるがえ
)
っているのは、東海道五十三次の賑わいを、眼前に見る如く、江戸時代以来、伝統の敬神風俗を、この天涯の一角に保存する如く、浮世絵式風景を
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
大海を思わせるような大きい
軒端
(
のきば
)
の線のうねり方、——特にそれを斜め横から見上げた時の力強い感じ
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
古寺の
軒端
(
のきば
)
からも
玉雫
(
たまだれ
)
が落ちて
瓔珞
(
ようらく
)
の音をたてる。外はしめやかな時雨。柴の乾きがよいので、炉では焚火の色が
珊瑚
(
さんご
)
を見るよう。お絹は飽かずに語りつづける。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして縁側の
軒端
(
のきば
)
に吊しておいた。宵のうちには鈴を振るような音がよく聞こえたが、しかしどうかするとその音がまるで反対の方向から聞こえるように思われた。
厄年と etc.
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
この道幅の狭い
軒端
(
のきば
)
のそろわない、しかもせわしそうな
巷
(
ちまた
)
の光景がこの琵琶僧とこの琵琶の音とに調和しないようでしかもどこかに深い約束があるように感じられた。
忘れえぬ人々
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
デモ土蔵の白壁はさすがに
白
(
しろい
)
だけに、見透かせば見透かされる……サッと
軒端
(
のきば
)
近くに羽音がする、
回首
(
ふりかえ
)
ッて観る……何も
眼
(
まなこ
)
に
遮
(
さえぎ
)
るものとてはなく、
唯
(
ただ
)
もう
薄闇
(
うすぐら
)
い
而已
(
のみ
)
。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
軒端
(
のきば
)
から
青竹
(
あをだけ
)
の
棚
(
たな
)
に
添
(
そ
)
うて
敷
(
し
)
いてある
筵
(
むしろ
)
を
渡
(
わた
)
つて
徐
(
おもむろ
)
に
廻
(
まは
)
る。
彼等
(
かれら
)
はそれをお
山廻
(
やままは
)
りといふのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
寝鎮
(
ねしずま
)
った家の
軒端
(
のきば
)
や、締め忘れた
露次
(
ろじ
)
に身をひそめて、掘割ぞいの鋪道に注意力をあつめていた。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そこからは、比叡の山の青葉若葉の
萌
(
も
)
えたつような色どりの中に
文殊楼
(
もんじゅろう
)
の
軒端
(
のきば
)
が白々とみえる。
現代語訳 平家物語:02 第二巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
心も無く
軒端
(
のきば
)
の松を
寂
(
さび
)
しき庵の友として眺めしほどに、憶ひぞ出でし松山の、浪の景色はさもあらばあれ、世の
潮泡
(
しほなわ
)
の跡方なく成りまし玉ひし新院の御事胸に浮び来りて
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
簾
(
すだれ
)
を
捲
(
ま
)
きあげた
軒端
(
のきば
)
から見える空には、淡い雲の影が遠く動いていた。星の光も水々していた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
しかして来年の計を為し貯蓄を有するもの
幾干
(
いくばく
)
かある、来月に備うる貯蓄を有せざる家何ぞ多きや、人類の過半数は
軒端
(
のきば
)
に
餌
(
え
)
を求むる雀のごとく、山野に食を探る熊のごとく
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
或日
軒端
(
のきば
)
にけたたましい音がするので、何事かと思って見上げましたら、親雀が気が狂ったかのように羽ばたきして、くるくる廻ります。ただ事ではないと思って、書生さんを呼びました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
文政十年亥の八月廿日隣駅六日町の
在
(
ざい
)
、
余川
(
よかは
)
村の農人太左エ門の
軒端
(
のきば
)
に、両頭の蛇いでたるを
捕
(
とら
)
ふ。長さ一尺にたらず、その
頭
(
かしら
)
二ツ
並
(
なら
)
びて枝をなすのみ。いろもかたちも常の蛇にかはらず。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
中に入ると人々の混雜が、雨の
軒端
(
のきば
)
に陰にしめつたどよみを響かしてゐた。表から
差覗
(
さしのぞ
)
かれる障子は何所も
彼所
(
かしこ
)
も開け放されて、人の着物の黒や縞が
塊
(
かた
)
まり合つて椽の外にその端を垂らしてゐた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
軒端
(
のきば
)
には、雀がちゅんちゅんと、間をおいて鳴きかわしている。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
男はちょっと
軒端
(
のきば
)
から空を見上げたが
東海道五十三次
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ほととぎす鳴きすぐ宿の
軒端
(
のきば
)
かな
六百句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
軒端
(
のきば
)
もる
雨夜
(
あまよ
)
の
夢
(
ゆめ
)
もともすれば
命の鍛錬
(旧字旧仮名)
/
関寛
(著)
あるいは
軒端
(
のきば
)
を伝って飛ぶ。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
軒端
(
のきば
)
を見れば
息吹
(
いぶき
)
のごとく
詩集夏花
(新字旧仮名)
/
伊東静雄
(著)
ふるさとの
軒端
(
のきば
)
なつかし
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
軒端
(
のきば
)
で雀の
のきばすずめ
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
箸にかける白い飯粒も、
軒端
(
のきば
)
の星も、すべてが、終りのものである。内匠頭は、今日の朝と夕べとが、百年の隔たりがあるように思えた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
このとき、すずめが、
軒端
(
のきば
)
の
方
(
ほう
)
から二
羽
(
わ
)
飛
(
と
)
んできて、こまどりの
止
(
と
)
まっている、
下
(
した
)
の
方
(
ほう
)
の
枝
(
えだ
)
に
止
(
と
)
まって、
話
(
はなし
)
をしていたのです。
美しく生まれたばかりに
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
青い空から、まともに落ちて来る日が、
軒端
(
のきば
)
を
斜
(
はす
)
に、硝子を通して、
縁側
(
えんがわ
)
の手前だけを明るく色づけて、書斎の戸口までぱっと暖かに射した。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
軒
常用漢字
中学
部首:⾞
10画
端
常用漢字
中学
部首:⽴
14画
“軒”で始まる語句
軒
軒下
軒燈
軒先
軒昂
軒並
軒輊
軒行燈
軒前
軒家