トップ
>
行燈
>
あんどん
ふりがな文庫
“
行燈
(
あんどん
)” の例文
新字:
行灯
唯
(
たゞ
)
ならぬ樣子を見て、平次は女を
導
(
みちび
)
き入れました。奧の一間——といつても狹い家、
行燈
(
あんどん
)
を一つ點けると、家中の用が足りさうです。
銭形平次捕物控:020 朱塗りの筐
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
行燈
(
あんどん
)
の光に照された、
古色紙
(
こしきし
)
らしい
床
(
とこ
)
の懸け物、懸け
花入
(
はないれ
)
の
霜菊
(
しもぎく
)
の花。——
囲
(
かこ
)
いの中には御約束通り、物寂びた趣が漂っていました。
報恩記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そっと帰って来て、
行燈
(
あんどん
)
の下で
頭巾
(
ずきん
)
を取ろうとした時にお銀様は眼が
醒
(
さ
)
めました。醒めてこの
体
(
てい
)
を見ると怪しまずにはおられません。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と
細字
(
さいじ
)
に
認
(
したた
)
めた
行燈
(
あんどん
)
をくるりと廻す。綱が禁札、ト捧げた
体
(
てい
)
で、
芳原被
(
よしわらかぶ
)
りの若いもの。別に
絣
(
かすり
)
の羽織を着たのが、板本を抱えて
彳
(
たたず
)
む。
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして武の案内で奥の一間に入りますと、ここは案外小奇麗になっていまして、
行燈
(
あんどん
)
の火が小さくして部屋の隅に置いてありました。
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
▼ もっと見る
前句は
新畳
(
あらだたみ
)
を敷いた座敷である、それを通して前々句を見るとそこには
行燈
(
あんどん
)
があり、その中から
油皿
(
あぶらざら
)
の心像がありありと目に見える。
連句雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
私は佗しい
行燈
(
あんどん
)
のしたで、姉のことを考えたり、母のことを思い出したりしながら、いつまでも大きな目をあけていることがあった。
幼年時代
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
行燈
(
あんどん
)
の明りを、
顎
(
あご
)
から逆にうけたのが怖ろしい
容貌
(
ようぼう
)
にみえた。しばらく、黙然として、うたた寝の美しい寝顔を見下ろしている……。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
紙帳の中へ引き入れられてある
行燈
(
あんどん
)
の、薄黄いろい光は、そういう男女を照らしていたが、男女を蔽うている紙帳をも照らしていた。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
小さな
猪牙
(
ちよき
)
船に
行燈
(
あんどん
)
をのせたうろうろ船が、こゝぞとばかり釘付けになり合つた見物人の船々の間を敏捷に漕ぎ廻つて、あきなひする。
花火の夢
(新字旧仮名)
/
木村荘八
(著)
行燈
(
あんどん
)
の
燈
(
ひ
)
で
草双紙
(
くさぞうし
)
のようなものを読んでいた。それは微熱をおぼえる初夏の
夜
(
よ
)
であった。そこは
母屋
(
おもや
)
と離れた
離屋
(
はなれ
)
の部屋であった。
水面に浮んだ女
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そのころ、まだ燈火の種類がさまざまだったので、花
瓦斯
(
ガス
)
が店の屋根にチカチカ燃ているかと思うと家の中は
行燈
(
あんどん
)
であったりする。
旧聞日本橋:06 古屋島七兵衛
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「それから
何
(
な
)
んだぜ。火がおこったら、
直
(
す
)
ぐに
行燈
(
あんどん
)
を
掃除
(
そうじ
)
しときねえよ。こんな
日
(
ひ
)
ァ、いつもより
日
(
ひ
)
の
暮
(
く
)
れるのが、ぐっと
早
(
はえ
)
えからの」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
行燈
(
あんどん
)
が一つ、
上
(
あが
)
り
端
(
ばた
)
に置いてあるだけで、そこらはうす暗い。その
半暗
(
はんあん
)
を乱して、パッ、奥の廊下を渡って来た風のような人影がある。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
行燈
(
あんどん
)
がまたたいた。油が少なくなったのだろう、行燈が生き物のように、明るく暗くまたたきをし、油皿で油の焦げる音がした。
おさん
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
昼あんどんといふのは、人を
賞
(
ほ
)
めた言葉ではない。
行燈
(
あんどん
)
は火をともして夜、部屋の中を明かるくする道具で、昼間は何の役にも立たない。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
「それがしが、さきほど手のひらに載せたのは、たしかに十枚の小判。
行燈
(
あんどん
)
のひかり薄しといえども、この山崎の眼光には狂いはない。」
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
もぬけの
殼
(
から
)
なりアナヤとばかり
蹴
(
け
)
かへして
起
(
た
)
つ
枕元
(
まくらもと
)
の
行燈
(
あんどん
)
有明
(
ありあけ
)
のかげふつと
消
(
き
)
えて
乳母
(
うば
)
が
涙
(
なみだ
)
の
聲
(
こゑ
)
あわたゞしく
孃
(
ぢやう
)
さまが
孃
(
ぢやう
)
さまが。
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
従来は
附木
(
つけぎ
)
だけはあったが「
早
(
はや
)
」なる形容詞を
冠
(
かぶ
)
せて通用させようとしても通用しなかった。「ランプ」を
行燈
(
あんどん
)
とも
手燭
(
てしょく
)
とも
翻訳
(
ほんやく
)
しない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
亭「はい/\明けますよ、これ婆さん、旦那様だよ、これサ寝惚けちゃアいけねえぜ、
行燈
(
あんどん
)
を提げてぐる/\廻っちゃアいけねえって事よ」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
格子戸
(
こうしど
)
のなかで、
旅籠屋
(
はたごや
)
らしい掛け
行燈
(
あんどん
)
を張り替えていた。頼む用事があって来た半蔵を見ると、それだけでは済まさせない。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
角刈の男は、
行燈
(
あんどん
)
の中に石油ランプを
嵌
(
は
)
め込んだのを提げて案内して来て、それを古畳の上に置いて、純一の前に膝を
衝
(
つ
)
いた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
行燈
(
あんどん
)
のすすけた灯が暗い部屋ににじみ出ていた。とこの間を背にして、座蒲団が置かれ、胴丸の
手焙
(
てあぶ
)
りにいけた炭火がいやに赤々と見えた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
家事に疲れた僅かの時間を
行燈
(
あんどん
)
のもとでひっそりと芸術にささげるのでは、女の才能が伸びる可能もまことにおぼつかない。
女性の歴史:文学にそって
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
階下
(
した
)
では、
老父母
(
としより
)
も才次夫婦も子供達も、
彼方此方
(
あちらこちら
)
の部屋に早くから眠りに就いて、
階子段
(
はしごだん
)
の下の
行燈
(
あんどん
)
が、深い闇の中に微かな光を放つてゐた。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
杯の廻りに日暮れ、情話のうちに夜も更けゆき、外ゆく人全く絶え、
行燈
(
あんどん
)
は油尽きて、影くらくなりて、ついに消えたり
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
板の上に四方を紙で張った、小さな
行燈
(
あんどん
)
みたいなものを拵え、中に蝋燭をともして、波打際から、沖へ押し流すのです。
女と帽子:――「小悪魔の記録」――
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
松を焚いて燈火とするための石の
平鼎
(
ひらがなえ
)
を用いていたのが、それからの二十四、五年間に
行燈
(
あんどん
)
からカンテラ、三分心・五分心・丸心のランプをへて
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
表の古びた
紅殻塗
(
べんがらぬり
)
の千本格子には「本願寺参詣人定宿××詰所」と書いた煤けた掛
行燈
(
あんどん
)
が薄暗い光を放つて掛つて居た。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
すれすれに横たわっていても指一つ触れるのではなかった。電気
行燈
(
あんどん
)
の
仄
(
ほの
)
かな光りのなかで、二人は仰むきに
臥
(
ね
)
ていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
又は
嚥下物
(
えんかぶつ
)
の不消化等に依る頭痛、嘔気等を訴えて家人に怪しまれ、仏壇、又は
行燈
(
あんどん
)
の油の減少せる等の事実と、想像とが結び付けられたる結果
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
お千代もお熊も夢中で蚊帳をころげ出して、台所から
行燈
(
あんどん
)
をつけて来ると、お由は寝床の上に
蜿打
(
のたう
)
って苦しんでいる。
半七捕物帳:55 かむろ蛇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それが戸の
隙間
(
すきま
)
から見えぬやうに忍び込んで
行燈
(
あんどん
)
の紙をしめらしてゐる。湯鑵の水はすつかりなくなつて、ついでに火鉢の火の気も淡くなつてゐる。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
未開
(
みかい
)
な
温泉宿
(
おんせんやど
)
では、
夜
(
よる
)
は
谷川
(
たにがわ
)
の
音
(
おと
)
が
聞
(
き
)
こえて
静
(
しず
)
かだった。
行燈
(
あんどん
)
の
下
(
した
)
で、
毛
(
け
)
ずねを
出
(
だ
)
して、
男
(
おとこ
)
どもが、あぐらを
組
(
く
)
んで、
下
(
した
)
を
向
(
む
)
いて
将棋
(
しょうぎ
)
をさしていた。
公園の花と毒蛾
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
季節でもないこの夜更けに、ボート遊びをしているような物好きもなく、暗い
川面
(
かわも
)
には、彼らの
外
(
ほか
)
に貸ボートの赤い
行燈
(
あんどん
)
は、一つも見当らなかった。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
知った者の一人もいない家の、
行燈
(
あんどん
)
か何かついた奥まった室に、やわらかな夜具の中に
緩
(
ゆっ
)
くり身体を延ばして安らかな眠りを待ってる気持はどうだね。
一利己主義者と友人との対話
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
燈芯
(
とうしん
)
のうすい
行燈
(
あんどん
)
の灯が破れた障子にうつる。土門をはいると野良着のままで
薪
(
まき
)
を割っている藤作の姿が見えた。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
百樹
(
もゝき
)
曰
(
いはく
)
、
余
(
よ
)
丁酉の夏
北越
(
ほくゑつ
)
に遊びて塩沢に在し時、近村に地芝居ありと
聞
(
きゝ
)
て京水と
倶
(
とも
)
に至りしに、寺の門の
傍
(
かたはら
)
に
杭
(
くひ
)
を
建
(
たて
)
て
横
(
よこ
)
に
長
(
なが
)
き
行燈
(
あんどん
)
あり、是に
題
(
だい
)
して
曰
(
いはく
)
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
しかも左の眼はつぶれて居つて口は左の方へ曲つてをる、この二人の後の方に
行燈
(
あんどん
)
が三つかためて置いてある。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
僕は台所へは顔も出さず、直ぐと母の寝所へきた。
行燈
(
あんどん
)
の
灯
(
ひ
)
も薄暗く、母はひったり枕に就いて
臥
(
ふ
)
せって居る。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
行燈
(
あんどん
)
の
灯影
(
ほかげ
)
にうずくまりつつ老眼の
脂
(
やに
)
を払い払い娘のもとへこまごまと書き
綴
(
つづ
)
っていたであろう
老媼
(
ろうおう
)
の姿が、その
二
(
ふ
)
たひろにも余る長い巻紙の上に浮かんだ。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
まず私はほどよい
行燈
(
あんどん
)
のあかりに照された座敷に人形のように坐ってた点茶の
太夫
(
たゆう
)
と、この菓子皿を手にうけて金魚みたいに浮いてきたかわいい子を思いだす。
小品四つ
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
「相模屋」と古めかしい字体で書いた
置
(
お
)
き
行燈
(
あんどん
)
の紙までがその時のままですすけていた。葉子は見覚えられているのを恐れるように足早にその前を通りぬけた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
のつそつしながら
煤
(
すす
)
びたる
行燈
(
あんどん
)
の横手の
楽落
(
らくがき
)
を
読
(
よめ
)
ば山梨県士族
山本勘介
(
やまもとかんすけ
)
大江山
(
おおえやま
)
退治の際一泊と
禿筆
(
ちびふで
)
の
跡
(
あと
)
、さては英雄殿もひとり旅の退屈に閉口しての
御
(
おん
)
わざくれ
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
鼻の先きへは多少の
白粉
(
おしろい
)
が施され、私の頭の上には
蝋燭
(
ろうそく
)
の
点
(
とも
)
った
行燈
(
あんどん
)
がくくり付けられ、手には団扇を持たされた上、さあ、近所へ行って見せて来いといわれた。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
かけ
飯
(
めし
)
も
汁
(
しる
)
も
兼帶
(
けんたい
)
の樣子なり其外
行燈
(
あんどん
)
は
反古張
(
ほごばり
)
の文字も分らぬ迄に黒み
赤貝
(
あかゞひ
)
へ
油
(
あぶら
)
を
注
(
つぎ
)
燈心
(
とうしん
)
は僅に一本を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
春
行燈
(
あんどん
)
の向こうからこちらへ背を向けて、うつらうつらとまどろんでいたと思ったればこそ、つい心を許して口ざみしさのあまりに読むともなく読みあげていたのを
右門捕物帖:28 お蘭しごきの秘密
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
この辺で俗伝に安珍清姫宅に宿り、飯を食えば
絶
(
はなは
)
だ
美
(
うま
)
し。
窃
(
ひそ
)
かに
覗
(
のぞ
)
くと清姫飯を盛る前必ず
椀
(
わん
)
を
舐
(
な
)
むる、その影
行燈
(
あんどん
)
に映るが蛇の相なり。怪しみ
惧
(
おそ
)
れて逃げ出したと。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
街子
(
まちこ
)
の父親は、貧しい町絵師でありました。
五月幟
(
ごがつのぼり
)
の下絵や、
稲荷
(
いなり
)
様の
行燈
(
あんどん
)
や、ビラ絵を
描
(
か
)
いて、生活をしているのでありました。しかし、街子はたいそう幸福でした。
最初の悲哀
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
立って金三郎は
撫川団扇
(
なつかわうちわ
)
バタバタと遣い散らし、軒の
燈籠
(
とうろう
)
の火を先ず消した。次いで座敷の
行燈
(
あんどん
)
の火も消した。庭の石燈籠の火のみが微かにこちらを照らすのであった。
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
“行燈”の意味
《名詞》
行 燈(あんどう, あんどん)
油を燃やして明かりとする照明具。
(出典:Wiktionary)
“行燈(
行灯
)”の解説
行灯、行燈(あんどん)は照明器具の一つ。ろうそくや油脂を燃料とした炎を光源とする。持ち運ぶもの、室内に置くもの、壁に掛けるものなど様々な種類がある。もともとは持ち運ぶものだったため「行灯」の字が当てられ、これを唐音読みして「あんどん」となった。携行用は後に提灯に取って代わられたため、据付型が主流となった。
(出典:Wikipedia)
行
常用漢字
小2
部首:⾏
6画
燈
部首:⽕
16画
“行燈”で始まる語句
行燈袴
行燈部屋
行燈型
行燈建
行燈形
行燈絵
行燈切籠