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せど
ふりがな文庫
“
背戸
(
せど
)” の例文
建續
(
たてつゞ
)
く
家
(
いへ
)
は、なぞへに
向
(
むか
)
うへ
遠山
(
とほやま
)
の
尾
(
を
)
を
曳
(
ひ
)
いて、
其方此方
(
そちこち
)
の、
庭
(
には
)
、
背戸
(
せど
)
、
空地
(
あきち
)
は、
飛々
(
とび/\
)
の
谷
(
たに
)
とも
思
(
おも
)
はれるのに、
涼
(
すゞ
)
しさは
氣勢
(
けはひ
)
もなし。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
背戸
(
せど
)
の井戸端で
午
(
ひる
)
すぎから取りかかった鶏の解剖——それは大沢の表現だったが——のあと始末やら、畑の水まきやらで忙しかった。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
老婆の家の
背戸
(
せど
)
には、まだあの長い物干竿が立てかけてある。しかし、あの橋から飛び込む自殺者が助かった噂はもうきかなくなった。
身投げ救助業
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
シャヴァノンに着くまえに、わたしは雌牛を買う。そしてマチアがたづなをつけて、すぐとバルブレンのおっかあの
背戸
(
せど
)
へ引いて行く。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
しかしその
中
(
うち
)
に
家
(
うち
)
の外側を七分通り
巡
(
まわ
)
って、ちょうど台所の裏手に当っている
背戸
(
せど
)
の井戸
端
(
ばた
)
まで来ると、草川巡査はピタリと足を
佇
(
と
)
めた。
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
そしてそのまま林の奥にほそぼそと消えていたり、どうかすると思いがけず農家の
背戸
(
せど
)
のあたりまで近づいて来ていたりする。
雪の上の足跡
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
背戸
(
せど
)
に干した
雨傘
(
あまがさ
)
に、小犬がじゃれかかって、
蛇
(
じゃ
)
の目の色がきらきらする所に
陽炎
(
かげろう
)
が燃えるごとく
長閑
(
のどか
)
に思われる日もあった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
就中
(
なかんずく
)
彼の家は此新部落の最南端に一つ飛び離れて、直ぐ東隣は墓地、生きた隣は
背戸
(
せど
)
の方へ唯一軒、
加之
(
しかも
)
小一丁からある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
田面
(
たづら
)
の氷もようやく
融
(
と
)
けて、彼岸の種
蒔
(
ま
)
きも始まって、
背戸
(
せど
)
の桃もそろそろ笑い出した頃になると、次郎左衛門はそわそわして落ち着かなくなった。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
程よい道の曲り角で、下りると、私たちは子供のようにそこらの花畑や露助の家や農家の
背戸
(
せど
)
などを覗いてまわった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
そして卵のことをきくと、
背戸
(
せど
)
へいっておばさんに話してきてくれた。正九郎は勝手がちがって変な気持ちだった。
空気ポンプ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
四季刻々うつりかわる景色が
如何様
(
どんな
)
に面白く珍らしく見えたであろう!
背戸
(
せど
)
の
柳
(
やなぎ
)
緑の糸をかけそめて枯葦の間からぽつぽつ薄紫の芽がふく頃となれば
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
川と謂ツても、小川であツたが、自分の生れた村は、
背戸
(
せど
)
と謂はず、横手と謂はず、
縱
(
たて
)
に横に幾筋となく小川が流れてゐて、恰ど
碁盤
(
ごばん
)
の目のやうになツてゐた。
水郷
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
彼は最初
薪
(
まき
)
を採りに入って偶然と懇意になり、
角力
(
すもう
)
などを取って日を暮し、
素手
(
すで
)
で帰ってくると必ず一夜の中に、二三日分ほどの薪が家の
背戸
(
せど
)
に積んであった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
氏は
直
(
ただち
)
にそれを
予
(
よ
)
に
逓与
(
わた
)
して、わたしはこれは
要
(
い
)
らない、と云いながら、見つけたものが有るのか、ちょっと歩きぬけて、
百姓家
(
ひゃくしょうや
)
の
背戸
(
せど
)
の
雑樹籬
(
ぞうきがき
)
のところへ行った。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
背戸
(
せど
)
の方へ廻らんとするをお代がドタドタと庭口より走り出で「
何処
(
どこ
)
から来たのう」と自分が手紙を
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
背戸
(
せど
)
の方で娘たちの
賑
(
にぎ
)
やかな声が聞え、たそがれて来たこの縁先まで、
釜戸
(
かまど
)
の煙がながれて来た。
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
天幕の破れ目から見ゆる砂漠の空の星、
駱駝
(
らくだ
)
の鈴の音がする。
背戸
(
せど
)
の
田圃
(
たんぼ
)
のぬかるみに映る星、
籾磨歌
(
もみすりうた
)
が聞える。甲板に立って帆柱の
尖
(
さき
)
に仰ぐ星、船室で誰やらが
欠
(
あく
)
びをする。
星
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そして病人に
手拭
(
てぬぐひ
)
できつく
頬冠
(
ほゝかむ
)
りをさせて裏口まで連れ出した。
背戸
(
せど
)
には
小流
(
こながれ
)
が
可笑
(
をか
)
しさに
堪
(
たま
)
らぬやうに笑ひ声をたてて走つてゐた。医者は病人をその
縁
(
ふち
)
に立たせてかういつた。
茶話:06 大正十一(一九二二)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
晩秋の真夜中の風が、田圃を吹きわたして、
背戸
(
せど
)
口の戸をかすかにゆすぶっていた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
たそがれ、部屋の四隅のくらがりに何やら
蠢
(
うご
)
めき人の心も、死にたくなるころ、ぱっと灯がついて、もの皆がいきいきと、
背戸
(
せど
)
の小川に放たれた金魚の如く、よみがえるから不思議です。
喝采
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
話し声が近く聞こえると思うと、お菊の声も確かに聞きとれて、ふたりが
背戸
(
せど
)
からはいってくるようすがわかった。まもなくまっ黒な
洗
(
あら
)
い
髪
(
がみ
)
を振りかぶった若い顔が女房の後について来た。
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
故郷の家の
背戸
(
せど
)
によく
生
(
な
)
る柿の木があったので、目の前に柿の実の赤らんで行くのを見ていると、子供の頃の事まで思い出すと云って、新吉は朝日に光る梢をなつかしそうに仰ぎ見ていた。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
否、それがナカ/\然うじゃないんだよ。住めば都だからね。中国でも九州でも皆自分のところが世界の中心だと思っている。
彼処
(
あすこ
)
に田の草を取っている百姓でも太陽は毎朝自分の家の
背戸
(
せど
)
を
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
七日に、
背戸
(
せど
)
を見晴すガラス戸が出来上り、大満足です。二尺三寸の一枚ガラスをはめたから雨の日も外が床の中から見えます。きのうは、金物屋のおくさんが字を書いて呉れということでした。
獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
村落は悲しげに寄り合ひ、
蕭条
(
しようじよう
)
たる山の
麓
(
ふもと
)
で、人間の孤独にふるへてゐる。そして真暗な夜の空で、もろこしの葉がざわざわと風に鳴る時、農家の薄暗い
背戸
(
せど
)
の
厩
(
うまや
)
に、かすかに
蝋燭
(
ろうそく
)
の光がもれてゐる。
田舎の時計他十二篇
(新字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
春の水
背戸
(
せど
)
に田作らんとぞ思ふ 蕪村
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
背戸
(
せど
)
へ近づき、三蔵は訊ねてみた。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
春の水
背戸
(
せど
)
に田つくらんとぞ思ふ
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
名月や
背戸
(
せど
)
から客の二三人 枝動
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
酒屋の
背戸
(
せど
)
で。
野口雨情民謡叢書 第一篇
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
背戸
(
せど
)
に
起
(
おこ
)
る
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
……いや、また不思議に、町内の美しいのが、揃って、
背戸
(
せど
)
、庭でも散らず、名所の水の
流
(
ながれ
)
をも染めないで、皆他国の土となりました。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
母は父が庭へ出たり
背戸
(
せど
)
へ下りたりする元気を見ている間だけは平気でいるくせに、こんな事が起るとまた必要以上に心配したり気を
揉
(
も
)
んだりした。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ご
婚礼
(
こんれい
)
であった。わたしはきっとこの人たちがちょっとした音楽とおどりを
好
(
す
)
くかもしれないと思った。そこで
背戸
(
せど
)
へはいって、まっ先に出会った人に
勧
(
すす
)
めてみた。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
背戸
(
せど
)
には大きな溜池があって、蓮の枯葉が、師走の風にふるえていた。お浜は、ちょっと不吉なことを想像した。しかし、それを、口に出してまで言おうとはしなかった。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
年
(
とし
)
とったお
母
(
かあ
)
さんは
隣
(
となり
)
の
鶏
(
にわとり
)
が
今日
(
きょう
)
はじめて
卵
(
たまご
)
をうんだが、それはおかしいくらい
小
(
ちい
)
さかったこと、
背戸
(
せど
)
の
柊
(
ひいらぎ
)
の
木
(
き
)
に
蜂
(
はち
)
が
巣
(
す
)
をかけるつもりか、
昨日
(
きのう
)
も
今日
(
きょう
)
も
様子
(
ようす
)
を
見
(
み
)
に
来
(
き
)
たが
牛をつないだ椿の木
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
鳥追いの日が過ぎると
背戸
(
せど
)
の
樹
(
き
)
の下などに、その毎年の棒を積み重ねておくという。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
下
(
しも
)
の方を見ると、
吾家
(
わがいえ
)
も
半
(
なかば
)
水に浸って、繋いだ舟は
背戸
(
せど
)
の柳の幹の
半
(
なかば
)
に浮いて居る。手を翳して向うを見ると、水漫々として飛ぶ鳥の影もなく、濁浪渦まいて流れ行くのが月下に見える。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
が、紅葵の傍、向日葵の
花叢
(
はなむら
)
の中、または
戸毎
(
こごと
)
の入口の前、
背戸
(
せど
)
の外に出て、子供まじりに、毛深い男女のぽつんぽつんと佇んでいる姿を見ると、人種の血肉は争われないものだと観た。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
深夜だまって
背戸
(
せど
)
でお洗濯している、くるしい娘さんが、いま、いるのだ、それから、パリイの裏町の汚いアパアトの廊下で、やはり私と同じとしの娘さんが、ひとりでこっそりお洗濯して
女生徒
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
省作は例の手段で便所策を
弄
(
ろう
)
し、
背戸
(
せど
)
の桑畑へ出てしばらく召集を避けてる。はたして兄がしきりと呼んだけれど、はま公がうまくやってくれたからなお二十分間ほど骨を休めることができた。
隣の嫁
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
春の水
背戸
(
せど
)
に田つくらんとぞ思ふ
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
敷居の外の、
苔
(
こけ
)
の生えた
内井戸
(
うちいど
)
には、いま
汲
(
く
)
んだような
釣瓶
(
つるべ
)
の
雫
(
しずく
)
、——
背戸
(
せど
)
は桃もただ枝の
中
(
うち
)
に、真黄色に咲いたのは
連翹
(
れんぎょう
)
の花であった。
雛がたり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
下女のしらせで、暗い
背戸
(
せど
)
に出て見ると、豆のような
灯
(
ひ
)
が一つ遠くに見えた。下女はあれが連中だと云う。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
背戸
(
せど
)
から隣の家へそっと火を借りに行くなどということは、
勿論
(
もちろん
)
もう必要の無いことであるが、それでも昔
大歳
(
おおとし
)
の夜おそく、火種を
絶
(
たや
)
してしまった新嫁が、途法にくれて
門
(
かど
)
に出て立っていると
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
門
(
かど
)
、
背戸
(
せど
)
の
清
(
きよ
)
き
流
(
ながれ
)
、
軒
(
のき
)
に
高
(
たか
)
き
二本柳
(
ふたもとやなぎ
)
、——
其
(
そ
)
の
青柳
(
あをやぎ
)
の
葉
(
は
)
の
繁茂
(
しげり
)
——こゝに
彳
(
たゝず
)
み、あの
背戸
(
せど
)
に
團扇
(
うちは
)
を
持
(
も
)
つた、
其
(
そ
)
の
姿
(
すがた
)
が
思
(
おも
)
はれます。
雪霊記事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
実の熟する時分は起き抜けに
背戸
(
せど
)
を出て落ちた奴を拾ってきて、学校で食う。菜園の西側が
山城屋
(
やましろや
)
という質屋の庭続きで、この質屋に
勘太郎
(
かんたろう
)
という十三四の
倅
(
せがれ
)
が居た。勘太郎は無論弱虫である。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
道
(
みち
)
のゆく
手
(
て
)
には、
藁屋
(
わらや
)
が
小
(
ちひ
)
さく、ゆる/\
畝
(
うね
)
る
路
(
みち
)
に
顕
(
あら
)
はれた
背戸
(
せど
)
に、
牡丹
(
ぼたん
)
を
植
(
う
)
ゑたのが、あの
時
(
とき
)
の、
子爵夫人
(
ししやくふじん
)
のやうに
遥
(
はるか
)
に
覗
(
のぞ
)
いて
見
(
み
)
えた。
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
李
(
すもゝ
)
は
庭
(
には
)
から
背戸
(
せど
)
へ
續
(
つゞ
)
いて、
小
(
ちひ
)
さな
林
(
はやし
)
といつていゝくらゐ。あの、
底
(
そこ
)
に
甘
(
あま
)
みを
帶
(
お
)
びた、
美人
(
びじん
)
の
白
(
しろ
)
い
膚
(
はだ
)
のやうな
花盛
(
はなざか
)
りを
忘
(
わす
)
れない。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
背
常用漢字
小6
部首:⾁
9画
戸
常用漢字
小2
部首:⼾
4画
“背戸”で始まる語句
背戸口
背戸田
背戸庭
背戸畑
背戸畠
背戸續