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睨
>
ね
ふりがな文庫
“
睨
(
ね
)” の例文
伊豆屋の若旦那が土左衛門になったと聴いて、橋場まで行って見ましたが、三輪の親分が
睨
(
ね
)
め廻しているから、諦めて返りましたよ。
銭形平次捕物控:321 橋場の人魚
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「おせっかいだっちゃありゃしない」荒木夫人は、
威
(
おど
)
しつけるようにいったけれど、あなたは、めげずに
睨
(
ね
)
めつけて、声を張りあげ
少年・春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
と
睨
(
ね
)
め廻した時は、さしも戦い
下手
(
べた
)
の同勢も、非を
覚
(
さと
)
って形を変え、五弁の花が
芯
(
しん
)
をつつむように、この敵ひとりを囲み込んでいた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
唄と囃が一時にやみ、風が落ちて海が
凪
(
な
)
いだような広間の上座から、播磨守が
癇
(
かん
)
を立てた
蒼白
(
あおじろ
)
んだ顔で次の間のほうを
睨
(
ね
)
めつけながら
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
彼は、奥歯をじっと噛んで、ますます殺気の
漲
(
みなぎ
)
る瞳で、門倉平馬の
睨
(
ね
)
め下ろす視線を、何のくそと、
弾
(
はじ
)
き返そうと
足掻
(
あが
)
くのだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
▼ もっと見る
何を
愚頭々々
(
ぐずぐず
)
していると云わぬばかりに、
此方
(
こちら
)
を
睨
(
ね
)
めつけ、時には気を
焦
(
いら
)
ッて、聞えよがしに
舌鼓
(
したつづみ
)
など鳴らして聞かせる事も有る。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
橋の袂や横町にあった番太郎、火の番かたわら駄菓子など売る家へ夢中で駆け付けて、さあなにから食おうと菓子箱を
睨
(
ね
)
め回す。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
戦争中の日本商人は仏頂面に客を
睨
(
ね
)
めまわしてその言葉を云い、終戦後の今日はモミ手をしてニコヤカにそれを言うであろう。
敬語論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
いかつい顔が、近くにいる兵士たちを
睨
(
ね
)
めまわしながらいった。ついでに彼は、孔子の門人たちの顔を、一人一人、穴のあくほど見つめた。
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
黄金丸が
睨
(
ね
)
め
付
(
つけ
)
し、
眼
(
まなこ
)
の光に恐れけん、その矢も
得
(
え
)
放
(
はな
)
たで、
慌
(
あわただ
)
しく枝に走り昇り、
梢
(
こずえ
)
伝ひに
木隠
(
こがく
)
れて、忽ち姿は見えずなりぬ。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
英国生れの貴婦人は真赤になつて上院議員を
睨
(
ね
)
めつけた。そして嫌ひな亜米利加でも、一番嫌ひな男とでも思つたらしかつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そして
執拗
(
しつよう
)
にじろじろ
睨
(
ね
)
めまわしている。私はぞっとした。私は
眩暈
(
めまい
)
を感じて倒れかかり、危く近所の土人の家に
辿
(
たど
)
りつき、休ませて貰った。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
而も河内介は、何となく気違いじみた、血走った眼をかゞやかして、並んでいる腰元共を、一人々々検査するように
睨
(
ね
)
め廻しているのである。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「こう、みんなも聴けよ」彼は、
周囲
(
まわり
)
の
南瓜面
(
かぼちゃづら
)
を、ずーッと
睨
(
ね
)
めまわした。「ありゃナ、クレーンが、動いている音さ!」
夜泣き鉄骨
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
炉の
隅
(
すみ
)
に転げて居る
白鳥
(
はくちょう
)
徳利
(
どくり
)
の寐姿
忌〻
(
いまいま
)
しそうに
睨
(
ね
)
めたる
眼
(
め
)
をジロリと注ぎ、
裁縫
(
しごと
)
に急がしき手を
止
(
とめ
)
さして無理な
吩附
(
いいつけ
)
、跡引き上戸の言葉は針
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
相手は
痩
(
や
)
せた
体躯
(
からだ
)
を持ち上げた
肱
(
ひじ
)
を二段に
伸
(
のば
)
して、手の平に胴を
支
(
ささ
)
えたまま、自分で自分の腰のあたりを
睨
(
ね
)
め廻していたが
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「あなたは今すぐお二階へお帰りになって頂戴」と彼女は鋭く繰り返して、憎しみをこめて私をまともに
睨
(
ね
)
めつけた。
妻
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
また始まった!——というように、栄三郎は顔をしかめて、思わず白い眼に
棘
(
とげ
)
を含ませて部屋じゅうを
睨
(
ね
)
めまわした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と眼に涙を
浮
(
うか
)
めてお竹と祖五郎が松蔭の顔をじろりと横目で
睨
(
ね
)
め上げるから、松蔭は気味悪くなり、下を向いている。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「あの田舎者め」明敬は宙を
睨
(
ね
)
めつけた、「余が
詫
(
わ
)
びる暇もなく、起上るといきなり無礼のなんのと怒りだし、はては先日の矢表のことまで云いだして、 ...
粗忽評判記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
部屋の中の火気に蒸されて、一層血色の
鮮
(
あざやか
)
になった初子が、ちょっと
睨
(
ね
)
める真似をしながら、こう弟を
窘
(
たしな
)
めると、民雄はまだ俊助の手をつかまえたまま
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
落ちないようにあおのきつつジロリジロリと左右を
睨
(
ね
)
めまわしながら女王気取りで、行きつ戻りつ致しておりますところはナカナカの奇観で御座います。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
もし昭青年がちょっとでも言葉に
詰
(
つ
)
まったら、いたく打ちのめし、引き
括
(
くく
)
って女と一緒に寺門
監督
(
かんとく
)
の上司へ
突出
(
つきだ
)
そうと、手ぐすね引いて
睨
(
ね
)
めつけています。
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
鬱勃
(
うつぼつ
)
たる野心と機智をもったこの男たちが、どんな気持ちで田舎侍の権官らの躍るにまかせる時代を
睨
(
ね
)
めたか、一足飛びに平民の世界がくるように思えていて
旧聞日本橋:16 最初の外国保険詐欺
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
伯父は気分でも悪かつたのか、始めから気むづかしい苦りきつた顔をして、太い銀の煙管で力強く
吐月峰
(
はひふき
)
を叩きながら、時々私の顔を
睨
(
ね
)
めつける様に見て居た。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
ある題を得たならば、その題を箱でふせて自分はその箱の上に上り、天地
乾坤
(
けんこん
)
を
睨
(
ね
)
めまわすがよい。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
他ならぬそれは紋十郎で、彼は
上座
(
かみざ
)
に
胡座
(
あぐら
)
を掻き、さっきからいかにも不機嫌そうに、ジロジロ座中を
睨
(
ね
)
め廻わしていたが、とうとうこの時怒鳴り出したのであった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「よいかな、お立会」と、弁士はもう一ぺん言つて、射抜くやうな目つきで聴衆を
睨
(
ね
)
めまはした。
ハビアン説法
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
其時
(
そのとき
)
荒坊主
(
あらばうず
)
岸破
(
がば
)
と
起上
(
おきあが
)
り、
舳
(
へさき
)
に
突立
(
つゝた
)
ツて、はつたと
睨
(
ね
)
め
付
(
つ
)
け、「いかに
龍神
(
りうじん
)
不禮
(
ぶれい
)
をすな、
此
(
この
)
船
(
ふね
)
には
文覺
(
もんがく
)
と
云
(
い
)
ふ
法華
(
ほつけ
)
の
行者
(
ぎやうじや
)
が
乘
(
の
)
つて
居
(
ゐ
)
るぞ!」と
大音
(
だいおん
)
に
叱
(
しか
)
り
付
(
つ
)
けたと
謂
(
い
)
ふ。
旅僧
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼れは汽車の中で自分のいい分を十分に考えようとした。しかし列車の中の沢山の人の顔はもう彼れの心を不安にした。彼れは敵意をふくんだ眼で一人一人
睨
(
ね
)
めつけた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
カムポスが札を置くとスイと立ちあがって、諸君と、室中を
睨
(
ね
)
めまわすように言ったのである。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
千柳
(
せんりゅう
)
、
松洛
(
しょうらく
)
、
小出雲
(
こいずも
)
合作『
夏祭浪花鑑
(
なつまつりなにわかがみ
)
』義平治殺しの場に、三河屋義平治その婿団七九郎兵衛を
罵
(
ののし
)
る
詞
(
ことば
)
に、おのれは親を
睨
(
ね
)
めおるか、親を睨むと平目になるぞよ、とある。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
嘉助はこつちを
睨
(
ね
)
め附けるやうにした。青年達は彼の興奮にすつかり驚いてしまつた。いつものやうに戲談で受けて、茶花して、わきへ逸らしてしまふことが出來なかつた。
続生活の探求
(旧字旧仮名)
/
島木健作
(著)
中隊長は、軍刀のつばのところへ左手をやって、いかつい眼で、集って来る百姓達を
睨
(
ね
)
めまわしていた。百姓達には少しも日本の兵タイを恐れるような様子が見えなかった。
パルチザン・ウォルコフ
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
上手を見「やい若衆、そんなに
睨
(
ね
)
めるな、人を睨めると手前
比目魚
(
ひらめ
)
になるぞ」といひ
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
「お前はな」と祖母は食べかけていた箸を下ろして
睨
(
ね
)
めつけるようにして私に言った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
宮なるよ!
姦婦
(
かんぷ
)
なるよ! 銅臭の
肉蒲団
(
にくぶとん
)
なるよ! とかつは驚き、かつは憤り、はたと
睨
(
ね
)
めて動かざる
眼
(
まなこ
)
には見る見る涙を
湛
(
たた
)
へて、唯
一攫
(
ひとつかみ
)
にもせまほしく肉の
躍
(
をど
)
るを
推怺
(
おしこら
)
へつつ
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
彼は折々突然に開き直って、いとも
鹿爪
(
しかつめ
)
らしく
唸
(
うな
)
り出すと
大業
(
おおぎょう
)
な
見得
(
みえ
)
を切って斜めの虚空を
睨
(
ね
)
め尽したが、おそらくその様子は誰の眼にも空々しく「法螺忠」と映るに違いないのだ。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
ぎょろりと周囲を
睨
(
ね
)
めまわした。おのずから身構えが出来ていた。そして、砂の凹みに足を進めたとき、彼はその目の前に
跼
(
かがま
)
っている若い女を発見した。一瞬眼をこらして見つめた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「
云
(
ゆ
)
はざらに」と
卯平
(
うへい
)
は
凝然
(
ぢつ
)
と
目
(
め
)
を
蹙
(
しか
)
めつゝ
少
(
すこ
)
し
壤
(
こは
)
れた
壁
(
かべ
)
の一
方
(
ぱう
)
を
睨
(
ね
)
めつゝいつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
騒然と色めき立った周囲の黒い影をはったと
睨
(
ね
)
めつけて、痛烈に言い叫びました。
旗本退屈男:04 第四話 京へ上った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
馬鈴薯は『チョッ』と舌打して自分を一
睨
(
げい
)
したが、矢張一言もなく、すぐ又石本を
睨
(
ね
)
め据ゑる。恐らく餘程石本の異彩ある態度に辟易してるのであらう。石本も亦敢て頭を下げなんだ。
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
泡鳴氏はたゞ単純な、えらがり屋であります。何時でも具足に身をかためて真向から人を
睨
(
ね
)
めつけてゐます。処が具足をとれば何でもないたゞの人よりは余程よはい木つ葉武者なのです。
妾の会つた男の人人
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
独語
(
ひとりごと
)
のように云って、お杉は
矗然
(
すっく
)
と
起
(
た
)
ち
上
(
あが
)
ったかと見る
中
(
うち
)
に、左右の人々を一々
睨
(
ね
)
め廻しながら、
彼女
(
かれ
)
はふらふらと歩き出した。
加之
(
しか
)
も今の
騒動
(
さわぎ
)
は忘れたように、
諷然
(
ひょうぜん
)
と表へ出て行った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
主人は、口を
特
(
こと
)
に結びて、
睨
(
ね
)
みつけ居たりしが、今、江戸川にて自ら釣りしといひし鮒を、魚屋より取りしと披露されては、堪へきれず、其の説の
終
(
おわ
)
るを待たず、怒気を含みて声荒々しく
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
「
止
(
や
)
めい、止めろ」と叫びざま、オォルを投げだすや、振返って、ぼくを
睨
(
ね
)
めつけ、「貴様、一人で、バランスを
毀
(
こわ
)
していやがる。そんなに女が気になるか」ぼくには一言もない
怒罵
(
どば
)
でした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
電車のただ乗りを発明する人と半農主義者とは同じ米を食っている。身のとろけるような艶な境地にすべての肉の欲を充たす人がうらやまれている時、道学先生はいやな眼つきで人を
睨
(
ね
)
め回す。
霊的本能主義
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
「誰の許しであなたは人の家へなんか入って来ました。家宅侵入罪ですよ。」と、お増はこわい目をして、磯野を外へ連れ出すつもりで、独りで入り込んで行ったお庄を
睨
(
ね
)
めつけながら
呶鳴
(
どな
)
った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
蝸牛
(
かたつむり
)
めが
答
(
こた
)
へて
云
(
い
)
つた、『
早
(
はや
)
い、
早
(
はや
)
い!』と
横目
(
よこめ
)
で
睨
(
ね
)
めて——
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
そういって、大きな目を
刮
(
む
)
いて、一座を
睨
(
ね
)
め回した。
仇討禁止令
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
睨
漢検1級
部首:⽬
13画
“睨”を含む語句
睨付
一睨
睨合
睨廻
睨返
睨視
睥睨
藪睨
睨附
白睨
睨着
八方睨
端睨
御睨
横睨
睨𢌞
睨上
睨殺
傲睨
下睨
...