らく)” の例文
新字:
雨風あめかぜの患のない、人目にかゝる惧のない、一ばんらくにねられさうな所があれば、そこでともかくも、かさうと思つたからである。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
濟まない。どうぞ堪忍してくれ。どうせなほりさうにもない病氣だから、早く死んで少しでも兄きにらくがさせたいと思つたのだ。
高瀬舟 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
それが、これまで起されたり、抱き上げられたりしたことがないほど優しいのだ。私は、頭を枕か腕かにもたせて、らくになつた。
われこと奉公ほうこうにやればぜね借金しやくきんくなるし、よきことだつて輕業師かるわざげでもしつちめえばそれこそらくになつちあんだが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おななかにもらくなれば、此樣こんことしておくる、ゆめさらいたこゝろではけれど言甲斐いひがひのないおふくろさだめしつまはじきするであらう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
東京とうきやうはまださむいでせう」と老師らうしつた。「すこしでも手掛てがゝりが出來できてからだと、かへつたあともらくだけれども。をしことで」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうすることで少くとも問題の僕に於ける意味は違つて來るんだからね。らくになる、といふと語弊があるが……。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
向う葛西領の敵手むこう北條氏綱ほうじょううじつな氏康うじやす父子が陣を取り、此方こっち里見安房守義弘さとみあわのかみよしひろ太田新おおたしんろう康資やすもと同苗おなじく美濃守資正入道みのゝかみすけまさにゅうどうらくさいなどすこぶる処のものが籠城をして
「こいつをらく切拔きりぬけないぢや東京とうきやうめないよ。」と、よく下宿げしゆく先輩せんぱいつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「そりや然うだとも!………世の苦勞があるから、偶時たまにア亡くなツた人のことも思はないじやないけども正直しやうじき家作かさくでも少しあツたら、此うしてゐた方が幾ら氣らくだか知れやしない。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
〔譯〕人は須らく忙裏ばうりかんめ、苦中くちゆうらくを存ずる工夫をくべし。
變化へんげしてらくとならむとやすらむ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
持て御出なさる樣子是から先は松原で寂寞さびしい道だ見ればまだ御年も行ぬ御若衆御一人にては不用心どう駕籠かごに乘て御出なせへと云に半四郎は大にこまり夫は/\御前方御深切にさう云てくださるゝが私しはどうも駕籠がきらひなりれども生質うまれつき仕合に足が達者で日に廿里三十里はらく歩行あるきますから先駕籠はよしに仕ませうと草鞋わらぢひも
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ロチスター氏と外科醫に支へられてゐるメイスンは可なりらくに歩いてゐるらしい。彼等は馬車の中に彼を助け乘せ、カァターがそれにつゞいた。
も十おきるのに、大變たいへんらくなんですとさ。ところ貴方あなたこの日本全國につぽんぜんこく鰹船かつをぶねかずつたら、それこそたいしたものでせう。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
らくになつたとおよろこびなさろうか、れともをりふしははなきの饒舌おしやべりのさわがしいひとなくなつたで、すこしはさびしいくらゐおもしてくださろうか
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ともに身體からだやすましてらくをさせようとふ、それにもしうとたちのなさけはあつた。しかしはくのついた次男じなんどのには、とん蝶々てふ/\菜種なたねはな見通みとほしの春心はるごころ納戸なんどつめがずにようか。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかしそれは世間でらくをしてゐた人だからでございます。
高瀬舟 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
その時分じぶんちゝきてゐたし、うち都合つがふわるくはなかつたので、抱車夫かゝへしやふ邸内ていない長屋ながやまはして、らくくらしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「いや、さかんだな。」と、火鉢ひばちを、鐵火てつくわにおめしまたはさんで、をかざしながら莞爾につこりして、「後藤君ごとうくん、おらくに——みなみなよ、おれわり一杯いつぱいやらう。」殿樣とのさま中間部屋ちうげんべやおもむきがある。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれかれこれこれかげになりてのお指圖さしづ古參こさん婢女ひとあなどらず明日きのふわすれしやうらくになりたるはじようさまの御情おなさけなり此御恩このごおんなんとしておくるべききみさまにめぐはゞ二人共々ふたりとも/″\こゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二人は話をはじめましたが、それを聞いてすつかり氣がらくになりました。
それでもあなたは一御主人ごしゆじんさまにりて釆配さいはいをおとりなさらずはかなふまじ、いままでのやうなおらく御身分ごみぶんではいらつしやらぬはづおさへられて、さればまこと大難だいなんひたるおぼしめせ。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おびうすくてらくなもの。……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしんならきことありともかならず辛抱しんぼうしとげて一人前にんまへをとこになり、とゝさんをもおまへをもいまらくをばおまをします、うぞれまでなんなりと堅氣かたぎことをして一人ひとり世渡よわたりをしてくだされ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)