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抱
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かか
ふりがな文庫
“
抱
(
かか
)” の例文
このとき、
盲目
(
もうもく
)
の
母親
(
ははおや
)
の
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
きながら、十五、六の
娘
(
むすめ
)
が、
雪道
(
ゆきみち
)
を
歩
(
ある
)
いていきました。
母親
(
ははおや
)
は
三味線
(
しゃみせん
)
を
抱
(
かか
)
えていました。
旅芸人
(
たびげいにん
)
です。
雪消え近く
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
吉原江戸町三丁目佐野槌屋の
抱
(
かか
)
え遊女
黛
(
まゆずみ
)
、美貌無双孝心篤く、父母の年忌に廓中そのほか出入りの者まで
行平鍋
(
ゆきひらなべ
)
を一つずつ施したり
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
御米は特別の
挨拶
(
あいさつ
)
もしなかった。小六はそのまま
起
(
た
)
って六畳へ
這入
(
はい
)
ったが、やがて火が消えたと云って、火鉢を
抱
(
かか
)
えてまた出て来た。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と、いいのこして、忍剣は
禅杖
(
ぜんじょう
)
をひっ
抱
(
かか
)
え、
小文治
(
こぶんじ
)
は
槍
(
やり
)
の石突きをトンと下ろして、ともにまッ暗な間道のなかへとびこんでいった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僕は
膝
(
ひざ
)
を
抱
(
かか
)
へながら、洋画家のO君と話してゐた。赤シヤツを着たO君は
畳
(
たたみ
)
の上に
腹這
(
はらば
)
ひになり、のべつにバツトをふかしてゐた。
O君の新秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
着物を
抱
(
かか
)
えてすぐに帰って来る事もあれば、深夜、酔って帰って来て、「すまねえ」なんて言って、けろりとしていることもある。
花火
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
蟾蜍
(
がま
)
のような大きい腹を
抱
(
かか
)
えて、顔は青く心は暗く、初産の恐怖は絶えず胸を痛めて、何がなし一刻も早く身二つになれかしと祈った。
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
花下
(
かか
)
にある五
萼片
(
がくへん
)
は
宿存
(
しゅくそん
)
して
花後
(
かご
)
に残り、八
片
(
へん
)
ないし多片の
花弁
(
かべん
)
ははじめ
内
(
うち
)
へ
抱
(
かか
)
え込み、まもなく開き、
香
(
かお
)
りを放って花後に
散落
(
さんらく
)
する。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
といいながら、
箱
(
はこ
)
をあけますと、中からかわいらしいお
人形
(
にんぎょう
)
さんやおもちゃが、たんと出てきました。
娘
(
むすめ
)
はだいじそうにそれを
抱
(
かか
)
えて
松山鏡
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
「困ったよ、」と、U氏は両手で頭を
抱
(
かか
)
えて首を掉り掉り苦しそうに髪の毛を掻き
揉
(
むし
)
った。「君はYから何も聞かなかったかい?」
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
怪囚人は、しっかりと少年を
抱
(
かか
)
えていて、はなさなかった。そして仮面をかぶった自分の顔を見られまいと、顔をそっぽに向けていた。
時計屋敷の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
夜
(
よ
)
が明けて旧正月がやって来たが、木之助にとってはそれは奇妙な正月だった。三十年来正月といえば胡弓を
抱
(
かか
)
えて町へ行った。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
と僕は赤くなって詰問しようとすると、次のベルがなって、再び僕らはハンドルを執らせられる——と、Rが、
蓮根
(
れんこん
)
や
牛蒡
(
ごぼう
)
を
抱
(
かか
)
えて現れ
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
が
忽
(
たちま
)
ち、
何
(
なに
)
か
恐
(
おそろ
)
しいことでも
急
(
きゅう
)
に
思
(
おも
)
い
出
(
だ
)
したかのように、
彼
(
かれ
)
は
頭
(
かしら
)
を
抱
(
かか
)
えるなり、
院長
(
いんちょう
)
の
方
(
ほう
)
へくるりと
背
(
せ
)
を
向
(
む
)
けて、
寐台
(
ねだい
)
の
上
(
うえ
)
に
横
(
よこ
)
になった。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「ではうばをお
召
(
め
)
し
抱
(
かか
)
えになり、お湯をおつかわせ申す女たちをもおおきになって、それらの者にお
任
(
まか
)
せになればよろしゅうございます」
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
藤原は、目玉ランプを
抱
(
かか
)
えて、綱敷き天神みたいに、ホーサーの、巻き重ねてある上にすわっていた。やがて小倉もやって来た。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
そして自ら
嘲
(
あざけ
)
るように笑って、
終
(
しまい
)
にはもう腹を
抱
(
かか
)
えて
転
(
ころ
)
げるほど笑ったかと思うと、悲しげな涙がその後からさめざめと流れた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
乃公
(
わし
)
の打診は何処をたゝいても患者の
心臓
(
しんぞう
)
にピーンと響く、と云うのが翁の自慢である。やがて翁は箱の様なものを
抱
(
かか
)
えて来た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
酔漢が一升徳利を
抱
(
かか
)
えて暴れているのもいい。群集からこぼれ出て路端に傍若無人に立小便をしている男も見逃してやりたい。
祇園の枝垂桜
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
脈搏
(
みゃくはく
)
ガ微弱デ、一分間ニ九十以上百近クモ打ッテイル。僕ハ裸体ニナッテ浴槽ニハイリ、妻ヲ
抱
(
かか
)
エテ浴室ノ板ノ間ニ
臥
(
ね
)
カシタ。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「お駒さん、
確
(
しっか
)
りするんだ。あれは、お前の
姉
(
あね
)
さんのお
才
(
さい
)
だよ、
玉屋小三郎
(
たまやこさぶろう
)
の
抱
(
かか
)
え、一時は全盛を
謳
(
うた
)
われた
玉紫花魁
(
たまむらさきおいらん
)
だ。怖がることはない」
銭形平次捕物控:021 雪の精
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それがいやならとび出すしかないし、とび出せないなら恋のしたい男のその精神も一しょに自分の方へ
抱
(
かか
)
えこまなくちゃ。私ならそうする。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
『
蚊相撲
(
かずもう
)
』という狂言に
近江
(
おうみ
)
の国から出て来た男を
抱
(
かか
)
えると、それが蚊の
精
(
せい
)
であったというのがあるが、大方近江に蚊は名物なのであろう。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
彼女は千枝太郎の胸に顔をすり付けて、
遣
(
や
)
る瀬ないように身もだえして泣いた。男は女を
抱
(
かか
)
えたままで、明るい月の下に黙って立っていた。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
部屋の扉がすうつと
開
(
あ
)
いた。花屋は欝金草の鉢をいくつも
抱
(
かか
)
へて
會釋
(
ゑしやく
)
しながら博學の君の讀書を妨げて眞に相濟まずといふ。
欝金草売
(旧字旧仮名)
/
ルイ・ベルトラン
(著)
矢頃
(
やごろ
)
あまりに近かりしかば、銃をすてて熊に
抱
(
かか
)
えつき雪の上を
転
(
ころ
)
びて、谷へ下る。
連
(
つれ
)
の男これを救わんと思えども力及ばず。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
間違えて偽の方に用をお言いつけになったりして、……笑いましたにも、笑いましたにも……みんなで腹を
抱
(
かか
)
えましたっけが
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それを見たヒョロ子は、イキナリ豚吉をうしろから
抱
(
かか
)
えて、ヒョイと馬車の屋根に乗せまして、自分も飛び上がりました。
豚吉とヒョロ子
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
三鳥山人
(著)
相変らず菰をかむり、竹の杖をつき、
面桶
(
めんつう
)
を
抱
(
かか
)
えた、乞食のわたしが、庄内川の方へ辿って行きましたのは、それから五日後の夜のことでした。
怪しの者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
新之助はんも、乗り気で、それやろ、といやはるし、あてはあてで、芸者衆を五六人
抱
(
かか
)
えて、そこで、
置屋
(
おきや
)
もやる考えだす
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
両手
(
りょうて
)
で頭を
抱
(
かか
)
えて
書物
(
しょもつ
)
の
挿絵
(
さしえ
)
に見入っている時でも——
台所
(
だいどころ
)
のいちばんうす暗い
片隅
(
かたすみ
)
で、自分の小さな
椅子
(
いす
)
に
坐
(
すわ
)
って、夜になりかかっているのに
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「それはよい都合じゃ。わしの仕えている殿様は、お前のような若者なら幾人でもお召し
抱
(
かか
)
えになるのじゃ。わしの殿様に奉公する気はないか。」
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そういう悲しい思出は数ある楽しかったことよりも深く、博士が腕に
抱
(
かか
)
えて帰京なされた、遺骨の
重味
(
おもみ
)
と共に終世お忘れにならないことでしょう。
大塚楠緒子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
棒火矢の
抱
(
かか
)
え
打方
(
うちかた
)
は、天砲の天頂打ちとおなじ理合であろう。明日、天砲の試し射ちをしてみるがいい。半十郎もやる。
ひどい煙
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
マットン博士はしずかにフラスコから水を
呑
(
の
)
み
肩
(
かた
)
をぶるぶるっとゆすり腹を
抱
(
かか
)
えそれから
極
(
きわ
)
めて
徐
(
おもむ
)
ろに述べ始めました。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
欝金
(
うこん
)
の
風呂敷
(
ふろしき
)
に
包
(
つつ
)
んで、
膝
(
ひざ
)
の
上
(
うえ
)
に
確
(
しっか
)
と
抱
(
かか
)
えたのは、
亭主
(
ていしゅ
)
の
松江
(
しょうこう
)
が
今度
(
こんど
)
森田屋
(
もりたや
)
のおせんの
狂言
(
きょうげん
)
を
上演
(
じょうえん
)
するについて、
春信
(
はるのぶ
)
の
家
(
いえ
)
へ
日参
(
にっさん
)
して
借
(
か
)
りて
来
(
き
)
た
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
知行所の者どもがこの用人
抱
(
かか
)
え
入
(
い
)
れに反対で、夢酔に止めさせてくれと頼んだから夢酔がかけあってやると、たった五両の鼻グスリに目がくらんで
安吾史譚:05 勝夢酔
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
川ぞいの道を街へはいるまで、私たちは一つの傘の中にはいり、私はうしろから彼女の肩を
抱
(
かか
)
えるようにして歩いた。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
大きな耳掃除の道具を
抱
(
かか
)
えたゴルフの紳士、登山、競馬、テニス、野球、少女歌劇、家族温泉等であるかも知れない。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
私は急ぎの用を
抱
(
かか
)
えている
身
(
からだ
)
だから、こうして
安閑
(
あんかん
)
としてはいられない。なんとこの小僧に頼んで、一匹の馬で
遣
(
や
)
ってもらおうじゃございませんか。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ある時にはそのさびしい坂道の上下から、立派な馬車や
抱
(
かか
)
え
車
(
ぐるま
)
が続々坂の中段を目ざして集まるのにあう事があった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それでも大通りへ出る横町のあたりは小さな店が並んで、夕飯前には風呂敷を
抱
(
かか
)
えた武家の妻女たちが、八百屋や魚屋やそうした店の前に群れていた。
早耳三次捕物聞書:03 浮世芝居女看板
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
松代は、
遣
(
や
)
る
瀬
(
せ
)
なさそうに、嘉津子の頭を自分の胸へぐっと
抱
(
かか
)
えた。嘉津子は母親の胸の中で静かに
歔欷
(
すすりなき
)
を始めた。
栗の花の咲くころ
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
抱
(
かか
)
えは二人あったけれど、芸道には熱心らしかったけれど、渋皮のむけたような子はいなかった。道太はというと、彼は
口髭
(
くちひげ
)
がほとんど真白であった。
挿話
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
友よ、友よ、君たちはいる、にこやかに新しい書物を
抱
(
かか
)
えながら、涼しい風の電車の
吊革
(
つりかわ
)
にぶらさがりながら、たのしそうに、そんなに爽やかな姿で。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
デスクに肘をのせ、頭を
抱
(
かか
)
えるようにして眼をつぶると、外庭の植込みの方で何やら話しあっている所員たちの弾んだ話声が途切れ途切れに聞えていた。
宇宙爆撃
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
地方から来る代議士が議会の開期間東京で
妾
(
しょう
)
を
抱
(
かか
)
えるというような事は今は
何人
(
なんぴと
)
も見て怪まないほどになった。
鏡心灯語 抄
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
しかし
誰人
(
たれびと
)
が不正の
名利
(
めいり
)
を
抱
(
かか
)
えて、心のうちに満足を覚ゆるか。
世人
(
せじん
)
に向かっては大きな顔もしようなれ、自己に
顧
(
かえり
)
みてはなはだ不安の念を抱くや疑いない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
長十郎は「はっ」と言って、両手で忠利の足を
抱
(
かか
)
えたまま、床の
背後
(
うしろ
)
に
俯伏
(
うつぶ
)
して、しばらく動かずにいた。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
でケメトスは、飛び方の
長
(
おさ
)
として王様から
抱
(
かか
)
えられ、宮殿のうちの立派な部屋に住むこととなりました。
彗星の話
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
抱
常用漢字
中学
部首:⼿
8画
“抱”を含む語句
抱擁
引抱
抱合
介抱
一抱
召抱
抱込
辛抱
抱妓
二抱
掻抱
抱上
三抱
相抱
五抱
抱緊
抱占
懐抱
御抱
抱付
...