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怖
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おそ
ふりがな文庫
“
怖
(
おそ
)” の例文
早鐘を
撞
(
つ
)
くような
動悸
(
どうき
)
だった、おちつこうとしても、跡を
跟
(
つ
)
けられてはいないかという
怖
(
おそ
)
れで、ついのめるような足早になっていた。
金五十両
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
奴らは
見張
(
みはり
)
をしていたのだ。生意気に「宮本だ」と、平常親より
怖
(
おそ
)
れ、また敬っている自分へ、冷たく云い放ったときも、あの眼だ。
眼
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
「きっと
太郎
(
たろう
)
は
海
(
うみ
)
のあっちへいって、
自分
(
じぶん
)
の
味方
(
みかた
)
を
連
(
つ
)
れてくるんだろう。そして、
仇
(
かたき
)
うちをするんだろう。そうすると
怖
(
おそ
)
ろしいな。」
雪の国と太郎
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
厚い唇を
怖
(
おそ
)
ろしくぎゆツと噛み締めた顔を見ると、私は一も二もなく観念して眼を足もとに落した。二人は一寸の間無言で相対した。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
「
怖
(
おそ
)
れるというではないが……いささか心がかりになる。今もその番町の親戚とやらにおるか、折もあらば聞き届けておくがよい」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
可哀
(
かわい
)
そうな
子家鴨
(
こあひる
)
がどれだけびっくりしたか!
彼
(
かれ
)
が
羽
(
はね
)
の
下
(
した
)
に
頭
(
あたま
)
を
隠
(
かく
)
そうとした
時
(
とき
)
、一
匹
(
ぴき
)
の
大
(
おお
)
きな、
怖
(
おそ
)
ろしい
犬
(
いぬ
)
がすぐ
傍
(
そば
)
を
通
(
とお
)
りました。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
我々が林中の木を一本一本に叙述するの
煩
(
はん
)
を避けて、自然を
怖
(
おそ
)
れて逃がれんとするがごとくもてなすと、ますます自然に近くなります。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
また
南洲
(
なんしゅう
)
自身についていえば、
見
(
み
)
ようによりては
外貌
(
がいぼう
)
が
怖
(
おそ
)
ろしい人のようにも思われ、あるいは子供も
馴染
(
なじ
)
むような
柔和
(
にゅうわ
)
な点もあった。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
といいつつ今にも倉地がそこに現われて来るかとひたすらそれを
怖
(
おそ
)
れるふうだった。葉子はわざと夫人の言葉を取り違えたように
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
こんなやつをこのままおくと、さきざきどんな
怖
(
おそ
)
ろしいことをしだすかわからない。今のうちに手早くかたづけてしまってやろう。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
あの
嶮
(
けわ
)
しい山中にさえ、近頃は、
茅
(
かや
)
の屋根に
篠
(
しの
)
すだれを垂れ、
夜
(
よる
)
見たらむしろ
怖
(
おそ
)
ろしげな遊女の宿が何軒もできているそうである。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
且つ誤るということの不利損失を
覚
(
さと
)
らしめるのが本来の目的で、つまりは笑われることを
怖
(
おそ
)
れる人情を利用した設計のようである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
腹も
空
(
へ
)
っていた。寒気は、夜が深まるにつれて、身に迫って
疼
(
いた
)
めつけて来た。口を
利
(
き
)
けば、残り少ない元気が消えてしまうのを
怖
(
おそ
)
れた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
何故つて、樂園だと思つてゐたその家から、私を追ひ出してしまつた災難といふのが、本當に不思議な
怖
(
おそ
)
ろしい性質のものでしたから。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
細君は顔色を変えて
怖
(
おそ
)
れた。王成は老婆に
義侠心
(
ぎきょうしん
)
のあることを説明して、
姑
(
しゅうとめ
)
として
事
(
つか
)
えなければならないといったので、細君も承知した。
王成
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
山は二段になっていて、頂上に本統の城の
趾
(
あと
)
があるという話であったが、其処は
怖
(
おそ
)
ろしくて、とても子供たちの行ける場所ではなかった。
簪を挿した蛇
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
夫婦は愛し合うと共に憎み合うのが当然であり、かかる憎しみを
怖
(
おそ
)
れてはならぬ。正しく憎み合うがよく、鋭く対立するがよい。
悪妻論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼は子供がいつの間にそんなことを云ふまでになつたかを信じられないやうな、また
怖
(
おそ
)
ろしいやうな気持で母への返事を書いた。
哀しき父
(新字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
承りしにより父彦兵衞の
外
(
ほか
)
に人殺有らば
教
(
をし
)
へて
呉
(
くれ
)
る樣にと涙を流して頼むに
付
(
つき
)
何故人も
怖
(
おそ
)
るゝ鈴ヶ森に夜中居たるやと尋ね候へば
父
(
ちゝ
)
の
骨
(
ほね
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「へエ——さう仰しやられると、滿更考へたことがないでは御座いませんが——、あまり事件が大きくて、私は
怖
(
おそ
)
ろしいやうな氣がします」
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
誰も通らない星あかりの
昏
(
くら
)
い通りを、墓地の方へ歩いてみる。
怖
(
おそ
)
ろしい事物には、わざと突きすすんでふれてみたいような荒びた気持ちだ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
しかしてたとへばしとやかなる淑女が、心に
怖
(
おそ
)
るゝことなけれど、
他人
(
ひと
)
の
過失
(
おちど
)
をたゞ聞くのみにてはぢらふごとく 三一—三三
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
激
(
げき
)
しているのでも無く、
怖
(
おそ
)
れているのでも無いらしい。が、何かと
談話
(
だんわ
)
をしてその
糸口
(
いとぐち
)
を引出そうとしても、夫はうるさがるばかりであった。
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
だって貴方は、
怖
(
おそ
)
れを知らぬ武人——その方にこよなく愛されて、それに貴方は、墺太利全国民の偶像だったのですものね。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「実は」と長左衛門は
怖
(
おそ
)
る怖る代官様の顔を見て、「あの子は訳あってあの太郎右衛門が拾い上げて、これまで育てて参りましたもので……」
三人の百姓
(新字新仮名)
/
秋田雨雀
(著)
あの美術のように、時として
怖
(
おそ
)
れを以て迫る場合はない。いつも器は愛を招く。どこまでも吾々に交わりたい
希
(
ねが
)
いが見える。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
或る日
主人
(
あるじ
)
われにも新しき
衣
(
きぬ
)
着よといひしが、そのをりその男の我を見て笑ひし顔、何となく
怖
(
おそ
)
ろしく、子供心にもうれしとはおもはざりき。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
僕がどんなにみじめだか、あなたにわかったらなあ! あなたが冷たくなったのが、僕は
怖
(
おそ
)
ろしい、あり得べからざることのような気がする。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
聞く者その
威容
(
いよう
)
に
怖
(
おそ
)
れ弁舌に
驚
(
おどろ
)
き
這々
(
ほうほう
)
の
体
(
てい
)
にて引き
退
(
さが
)
るを常としたりきと云っているもって春琴の勢い込んだ
剣幕
(
けんまく
)
を想像することが出来よう。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それは
丁度
(
ちやうど
)
罪悪の暗い
闇夜
(
あんや
)
に辛うじて仏の慈悲の光を保つてゐるやうに、又は恐ろしい心の所有者が闇の中に
怖
(
おそ
)
れ
戦
(
をのゝ
)
いてゐるかのやうに……。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
私は彼女が気が狂ったのではないかと、
怖
(
おそ
)
れながら肩の痛さに堪えて、彼女の気色を
覗
(
うかが
)
った。自分でも気がつくくらい、私の唇も慄えていた。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
支那
(
しな
)
産の
猫
(
ねこ
)
の小さくかわいいのを、少し大きな猫があとから追って来て、にわかに
御簾
(
みす
)
の下から出ようとする時、猫の勢いに
怖
(
おそ
)
れて横へ寄り
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
災難を
怖
(
おそ
)
れて、それをいたずらに回避することではなく、あくまでその災難にぶつかって、これにうち克ってゆくことです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
『さう、
眞箇
(
ほんとう
)
に!』
怖
(
おそ
)
れて
尻尾
(
しツぽ
)
の
先
(
さき
)
までも
顫
(
ふる
)
へてゐた
鼠
(
ねずみ
)
が
叫
(
さけ
)
びました。』
若
(
も
)
し
私
(
わたし
)
が
斯麽
(
こんな
)
事
(
こと
)
を
話
(
はな
)
したが
最期
(
さいご
)
!
私
(
わたし
)
の一
家族
(
かぞく
)
は
殘
(
のこ
)
らず
猫
(
ねこ
)
を
仇敵
(
かたき
)
に
念
(
おも
)
ふ。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
すると間もなく美留藻の姿は鏡の表から消え失せまして、今度は醜い、
怖
(
おそ
)
ろしい、骸骨のような化物の姿が現われました。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
たといついたにしても、病人が好い
博士
(
はかせ
)
の診断を
怖
(
おそ
)
れるように、彼はできるだけその感情から逃避するよりほかなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
この
怖
(
おそ
)
るべき
韃靼
(
だったん
)
族が一たび訓練を経て文明的に軍隊を組織したならば、
如何
(
いか
)
なる優勢の大軍をも編成し得ると思った。
三たび東方の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
それまでは数知れぬ
怖
(
おそ
)
れと気づかわしさとが
血管
(
ちくだ
)
の中を針の流れるように刺しまわって、小さな
瞬
(
めばたき
)
をするにも乳までひびくようでございましたが
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
さすがの僕も、今度こそは、
怖
(
おそ
)
ろしくなって眼を
瞑
(
つむ
)
った。氷山と鯨は、刻々にその距離を狭めていくようだ。
万事休矣
(
ばんじきゅうす
)
?
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
男らしい
洒落
(
しやらく
)
な性格の細君の
他
(
た
)
の一面には
怖
(
おそ
)
ろしく優しい所があつて、越して来て五
日
(
か
)
目に
風
(
かぜ
)
を引いて僕が寝て居ると
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
彼女は、じっと
眸
(
ひとみ
)
を
凝
(
こら
)
して、それが自分の
怖
(
おそ
)
れている
如
(
ごと
)
く、恋人の直也ではありはしないかと、闇の中を見詰めていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それで、現にそうした新しい感覚の源をなした当の
彼女
(
かのじょ
)
に会うのが、むしろ
怖
(
おそ
)
ろしくなって、できることなら会いたくない、と思ったほどであった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
今まで一挙一動を注視していたような気のするあの西班牙犬はじっと私の帰るところを見送っている。私は
怖
(
おそ
)
れた。
西班牙犬の家:(夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇)
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
彼女の手の荒れや顔の荒れを
怖
(
おそ
)
れ、それを防ぐようにいう貞時はもはや筒井の手も顔も、そうしてその心も彼自身のもののように思われるからだった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
気むずかしい苦り切ッた
怖
(
おそ
)
ろしい顔色をして
奥坐舗
(
おくざしき
)
の障子を開けると……お勢がいるお勢が……今まで残念口惜しいと
而已
(
のみ
)
一途に思詰めていた事ゆえ
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そうして学校へ着いてからも、他の見知らぬ生徒たちの間に一人ぼっちに取残されることを
怖
(
おそ
)
れ、授業の終るまで、母に教室のそとで待っていて
貰
(
もら
)
った。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そして彼がまだ話し出さないあいだ、私はしばらくなかば
憐
(
あわ
)
れみの、なかば
怖
(
おそ
)
れの情をもって彼を見まもった。
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
しかし、赤い野
薔薇
(
ばら
)
の実はいつまでも取られずにいる。最後になくなるのだろう。名前が
怖
(
おそ
)
ろしいのと、
心臓形
(
ハートがた
)
の実に毛がいっぱい
生
(
は
)
えているからである。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
中でも私の好きなのは、あくまで白く塗った
妖味
(
ようみ
)
豊かなろくろ首の女であった。
怖
(
おそ
)
ろしいのだが、見たいのだ。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
「そんなことはありません、余程あなたは世間を
怖
(
おそ
)
れているのですね、なあに、やってみるまでのことです」
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
怖
常用漢字
中学
部首:⼼
8画
“怖”を含む語句
恐怖
怖々
可怖
驚怖
怖気
畏怖
怖毛
物怖
怖怖
空怖
恐怖心
懼怖
恐怖症
怖気立
怖気付
大畏怖
利牙爪可怖
怖氣
怖畏
怖味
...