“届(とゞ)” の例文
旧字:屆
と親仁(おやぢ)が喚(わめ)くと、婦人(をんな)は一寸(ちよいと)立(た)つて白(しろ)い爪(つま)さきをちよろちよろと真黒(まツくろ)に煤(すゝ)けた太(ふと)い柱(はしら)を楯(たて)に取(と)つて、馬(うま)の目(め)の届(とゞ)かぬほどに小隠(こがく)れた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
小包(こづゝみ)が届(とゞ)いた時、一応着(き)て見て、面白くないから、戸棚へ入れて置いた。それを与次郎が、勿体ないから是非着(き)ろ/\と云ふ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
大病(たいびやう)でも自分で死ぬと覚悟(かくご)をし、医者(いしや)も見放(みはな)した事も知つて居(を)り、御看病(ごかんびやう)は十分に届(とゞ)き、自分も最(も)う死ぬと諦(あきら)めが附(つ)いてしまつても、とろ/\と病気(びやうき)労(づか)れで寝附(ねつ)いた時に
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
然(しか)るに今月(こんげつ)の初旬(はじめ)、本國(ほんごく)から届(とゞ)いた郵便(ゆうびん)によると、妻(つま)の令兄(あに)なる松島海軍大佐(まつしまかいぐんたいさ)は、兼(かね)て帝國軍艦高雄(ていこくぐんかんたかを)の艦長(かんちやう)であつたが、近頃(ちかごろ)病氣(びやうき)の爲(た)めに待命中(たいめいちゆう)の由(よし)、勿論(もちろん)危篤(きとく)といふ程(ほど)の病氣(びやうき)ではあるまいが
「あの手紙届(とゞ)いて。」
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「代助はまだ帰(かへ)るんぢやなからうな」と父(ちゝ)が云つた。代助はみんなから一足(ひとあし)後(おく)れて、鴨居(かもゐ)の上(うへ)に両手が届(とゞ)く様な伸(のび)を一つした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
車(くるま)の左右(さいう)に手(て)の届(とゞ)く、数々(かず/\)の瀧(たき)の面(おもて)も、裏見(うらみ)る姿(すがた)も、燈籠(とうろう)の灯(ともし)に見(み)て、釣舟草(つりぶねさう)は浮(う)いて行(ゆ)く。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
君(きみ)はあれから奥州(あうしう)の塩竈(しほがま)まで行(い)つたか、相変(あひかは)らず心に懸(か)けられて書面(しよめん)を贈(おく)られて誠に辱(かたじ)けない、丁度(ちやうど)宴会(えんくわい)の折(をり)君(きみ)の書状(しよじやう)が届(とゞ)いたから、披(ひら)く間(ま)遅(おそ)しと開封(かいふう)して読上(よみあ)げた所が、皆(みんな)感服(かんぷく)をしたよ
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
贏(か)ち得た所は物寂(さ)びてゐる。奈良の大仏(だいぶつ)の鐘(かね)を撞(つ)いて、其余波(なごり)の響(ひゞき)が、東京にゐる自分の耳に微(かす)かに届(とゞ)いたと同じ事である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
仰(あふ)いで見(み)ると松(まつ)の樹(き)はもう影(かげ)も見(み)えない、十三夜(や)の月(つき)はずつと低(ひく)うなつたが、今(いま)下(お)りた山(やま)の頂(いただき)に半(なか)ばかゝつて、手(て)が届(とゞ)きさうにあざやかだけれども、高(たか)さは凡(およ)そ計(はか)り知(し)られぬ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
中々(なか/\)届(とゞ)いたもので、土間(どま)を広(ひろ)く取つて、卓子(テーブル)に白いテーブル掛(かけ)が懸(かゝ)つて、椅子(いす)が有(あ)りまして、烟草盆(たばこぼん)が出て居(を)り、花瓶(くわびん)に花を挿(さ)し中々(なか/\)気取(きど)つたもので、菓子台(くわしだい)にはゆで玉子(たまご)に何(なに)か菓子が有(あ)ります
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「国(くに)から、金(かね)が届(とゞ)いたから、取(と)りに来(き)て呉れ玉へ。今此所(こゝ)に持つてゐないから。それからまだ外(ほか)に話す事もある」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
開(ひら)いたが、飛(と)びはしない、で、ばさりと諸翼(もろつばさ)搏(はう)つと斉(ひと)しく、俯向(うつむ)けに頸(くび)を伸(の)ばして、あの長(なが)い嘴(くちばし)が、水(みづ)の面(も)へ衝(つ)と届(とゞ)くや否(いな)や、小船(こぶね)がすら/\と動(うご)きはじめて、音(おと)もなく漕(こ)いで出(で)る。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
然(さ)うよ。梅「へえゝ巧(うま)く出来(でき)てゐますね。×「お前(まへ)何(ど)うして眼(め)が明(あ)いたんだ。梅「へえ実(じつ)は二十一日(にち)断食(だんじき)をしました、一心(しん)が届(とゞ)いたものと見えます。×「ムヽウ、まゝ此位(このくらゐ)な目出度(めでた)い事はないぜ。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それから荷物を平岡の宅(うち)へ届(とゞ)けた上に、万事奇麗に片付く迄手伝をするんだと云はれた時は、えゝ承知しました、なに大丈夫ですと気軽に引き受けて出て行つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『あツ、』と叫(さけ)んで、背後(うしろ)から飛蒐(とびかゝ)つたが、最(も)う一足(ひとあし)の処(ところ)で手(て)が届(とゞ)きさうに成(な)つても、何(ど)うしても尾(を)に及(およ)ばぬ……牛(うし)は急(いそ)ぐともなく、動(うご)かない朧夜(おぼろよ)が自然(おのづ)から時(とき)の移(うつ)るやうに悠々(いう/\)とのさばり行(ゆ)く。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
好(よ)い菓子では有(あ)りませんけれども、萬事(ばんじ)届(とゞ)いて居(を)ります。
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
晩食(ばんめし)の時(とき)、丸善から小包(こづゝみ)が届(とゞ)いた。箸(はし)を措(お)いて開(あ)けて見ると、余程前に外国へ注文した二三の新刊書であつた。代助はそれを腋(わき)の下(した)に抱(かゝ)へ込(こ)んで、書斎へ帰つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
目(め)の届(とゞ)く限(かぎ)り不残(のこらず)岩(いは)で、次第(しだい)に大(おほき)く水(みづ)に浸(ひた)つたのは唯(ただ)小山(こやま)のやう。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
月(つき)が破廂(やぶれひさし)から影(かげ)を落(おと)したやうに届(とゞ)いて居(ゐ)た。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)