)” の例文
ぎっしり詰った三等車に眠られぬまま、スチームに曇るガラス窓から、見えぬうかがったり、乗合と一、二の言をかわしなどする。
雪の武石峠 (新字新仮名) / 別所梅之助(著)
春はまだ浅き菜畠、白きとり日向あさるを、水ぐるままはるかたへの、窻障子さみしくあけて、わらべひとり見やれり、の青き菜を。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かほどまでにのものからの影響を瑕瑾かきんとしていましめているわたくしのこころには、もはや、わたくしというものは無くなって
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ここに大日下の王四たび拜みて白さく、「けだしかかる大命おほみこともあらむと思ひて、かれ、にも出さずて置きつ。こは恐し。大命のまにまに獻らむ」
午時ひるもややかたぶきぬれど、待ちつる人は来らず。西に沈む日に、宿り急ぐ足のせはしげなるを見るにも、かた七九のみまもられて心へるが如し。
朝日あさひかげたまだれの小簾をすにははぢかヾやかしく、むすめともはれぬ愚物ばかなどにて、慈悲じひぶかきおや勿体もつたいをつけたるこしらごとかもれず、れにりてゆかしがるは
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いやしき恋にうき身やつさば、姫ごぜの恥ともならめど、このならわしのにいでんとするを誰か支うべき。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
五万両と大書した白い紙を胸の辺りへ付けた磔柱は小僧や手代の手によって直ぐに門口からり去られたが、不安と恐怖は夕方まで取り去ることが出来なかった。
郷介法師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
神が鳴鏑なりかぶらの矢をさがしに、大野の中に入って行かれると、火をもって焼きめぐらされて、出るみちがわからなくなった。鼠来て云ひけるは、内はほらほらはすぶすぶ。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
顔をのぞき込むがごとくに土間に立った、物腰のしとやかな、婆々は、客の胸のあたりへその白髪頭しらがあたまを差出したので、おもてを背けるようにして、客はかたながめると
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その声はふるえている。兄は静かに書をふせて、かの小さき窓のかたへ歩みよりてを見ようとする。窓が高くてが足りぬ。床几しょうぎを持って来てその上につまだつ。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
友の眠に就きし後、われは猶やゝ久しく出窓に坐して、かたを眺め居たり。こゝよりはたゞに廣こうぢの隈々くま/″\迄見ゆるのみならず、かのヱズヰオの山さへ眞向まむきに見えたり。
………空はどんよりと曇って居るけれど、月は深い雲の奥にまれて居るけれど、それでも何処どこからか光がれて来るのであろう、は白々と明るくなって居るのである。
母を恋うる記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
我里は木曾の谷の、名に負ふ神坂みさかの村の、さかしき里にはあれど、見霽みはらしのよろしき里、美濃の山近江おうみの山、はろばろに見えくる里、恵那えなの山近くそびえて、胆吹山いぶきやま髣髴ほのかにも見ゆ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
鳰鳥にほどり葛飾かづしか早稲わせにへすともかなしきをてめやも 〔巻十四・三三八六〕 東歌
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ほしいままにづべくもあらず。さるほどに浜子の部屋または勝手などに折々聞ゆる笑い声も。なかなかにかんしゃく玉の発裂はれつするもととなり。ともすれば天井とにらめくらをして。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
動くこと好まぬさがのわれ老いてかどさへも出で得ずなりぬ八月二十八日
枕上浮雲 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
しのびこしそのかなしきをに立てていを寝んものか母は知るとも
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
かどの ひかりまぶしき 高きところに 在りて 一羽
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
たなばたやすだれなる香炉かうろうのけぶりのうへの天の河かな
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
くにまでも晒すやうな……不忠、不孝なわたくし……
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
つち照斑てりふ蒲公英たなの花、芽ぐむのつつましき
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
に立ちて氷柱つららの我が家わびしと見
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
立出てまどをひらけばの方は
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
門のへわが出で行くは
玻璃のに風はあらけれ
一点鐘 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
浮べる舟のねや
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
春はまだ浅き菜畑、白きとり日向あさるを、水ぐるままはるかたへの、窻障子さみしくあけて、女のわらはひとり見やれり、の青き菜を。
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
姫たち顔見合せて、「また欠唇いぐちのをこなるわざしけるよ。」とささやくほどに、なる笛の音絶えぬ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ここに出づる所を知らざる間に、鼠來ていはく、「内はほらほら、はすぶすぶ」と、かく言ひければ、其處そこを踏みしかば、落ち隱り入りし間に、火は燒け過ぎき。
今は三七二老いてむろにも出でずと聞けど、我が為には三七三いかにもいかにも捨て給はじとて、馬にていそぎ出でたちぬ。道はるかなれば夜なかばかりに蘭若てらに到る。
再びせきとしたれば、ソと身うごきして、足をのべ、板めに手をかけて眼ばかりと思う顔少し差出だして、かたをうかがうに、何ごともあらざりければ、やや落着きたり。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かりしはそののさまなり、くるま用意よういなにくれと調とゝのへさせてのち、いふべきことあり此方こなたへと良人をつとのいふに、いまさらおそろしうて書齋しよさいにいたれば、今宵こよひより其方そなた谷中やなかうつるべきぞ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
棧敷さじきの餘りに暑き故なるべしと答へつゝ、我は起ちて劇場のに走り出でぬ。
「山のかひそことも見えず一昨日をとつひも昨日も今日も雪の降れれば」(同・三九二四)を作り、大伴家持は、「大宮の内にもにも光るまでらす白雪見れど飽かぬかも」(同・三九二六)を作って居る。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
窓のの梅の実ややにそだちけり物のいのちをたのもしと見る
枕上浮雲 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
さくら咲くあかるきには立ちにけりわがきぬしわにはかにしる
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
さながらなりや微草をぐさ
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
土を啄む網の
短歌集 日まはり (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
男ごころよひたぶる恋ふと、下ふかく燃ゆる思の、えは堪へね、なほし堪ふると、遊びつつ遊び彫りけむ、くるしくも寂びて寂びけむ、には見せずも。
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
姫たち顔見合せて、「また欠唇いぐちのおこなるわざしけるよ」とささやくほどに、なる笛の音絶えぬ。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
おもき物いみも既にてぬ。絶えて兄長このかみおもてを見ず。なつかしさに、かつ此の月頃のおそろしさを心のかぎりいひなぐさまん。ねぶりさまし給へ。我もの方に出でんといふ。
再びせきとしたれば、ソと身うごきして、足をのべ、板めに手をかけて眼ばかりと思ふ顔少し差出さしいだして、かたをうかがふに、何ごともあらざりければ、やや落着おちつきたり。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つとちてやの出給いでたまふを、ひすがりてそでをとれば、はなさぬか不埒者ふらちもの振切ふりきるを、お前樣まへさまどうでも左樣さやうなさるので御座ござんするか、わたし浮世うきよものになさりまするおか、わたくし一人ひとりもの
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この二柱の神は、拆くくしろ五十鈴いすずの宮いつき祭る。次に登由宇氣とゆうけの神、こはつ宮の度相わたらひにます神なり。次に天の石戸別いはとわけの神、またの名は櫛石窻くしいはまどの神といひ、またの名はとよ石窻の神といふ。
はやり風はげしくなりし長崎の夜寒よさむをわが子に行かしめず
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
には桜さかるをわがへい室咲むろざきの薔薇ばらははやもしぼめり
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
今一度都門のに出でなむと望みし願ひあだなるに似たり
枕上浮雲 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
窓のにつづく草土手
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ごころよ、ひたぶる恋ふと、下ふかく燃ゆる思の、えは堪へね、なほし堪ふると、遊びつつ、遊び彫りけむ、くるしくもびつつびけむ、には見せずも。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)