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うしな
ふりがな文庫
“
喪
(
うしな
)” の例文
私は石狩本流の絶壁から墜落したトタンに、そうした記憶をスッカリ
喪
(
うしな
)
っていたのです。ええええ。事実ですとも事実ですとも……。
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
……母を
喪
(
うしな
)
った時も、暗い影はぞくぞくと彼のなかに流れ込んで来た。だが、それは
息子
(
むすこ
)
としてまだ悲しみに甘えることも出来たのだ。
死のなかの風景
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
お若は今までの激しい表情を
喪
(
うしな
)
つて、急に打ち
萎
(
しを
)
れました。見る/\大粒の涙が、その長い
睫毛
(
まつげ
)
を綴つて、ポトポトと疊を濡らします。
銭形平次捕物控:176 一番札
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
三人は救助されると、一せいに気を
喪
(
うしな
)
ってしまった。が、すぐ潜水服を脱がせて、手当を加えたので、間もなく息を吹きかえした。
地球発狂事件
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
東海に
郭純
(
かくじゅん
)
という孝子があった。母を
喪
(
うしな
)
って彼は大いに
哭
(
こく
)
した。その哭するごとに、鳥の群れがたくさん集まって来るのである。
中国怪奇小説集:07 白猿伝・其他(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
茶山の再び妻を
喪
(
うしな
)
つたのも亦此年である。行状に「配内海氏早亡、継室門田氏有内助之方、先歿、年七十、無子」と云つてある。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
七年前に父を
喪
(
うしな
)
った兄弟は、戸塚の下宿の、あの薄暗い部屋で相会うた。兄は、急激に変化している弟の兇悪な態度に接して、涙を流した。
東京八景:(苦難の或人に贈る)
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「この狐おんな、おっぺしゃんこ、卑劣漢、ふ、幾らでもあったのに、それからもっと気を
喪
(
うしな
)
うほど脅かしてやればよかった」
七日七夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
あれほど明快な頭脳の持主がそんなに簡単に理性を
喪
(
うしな
)
ってしまうもんだろうかね? 俺はやっぱりあいつが発狂してるとは思いたくないね。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
但
(
ただ
)
我が老いたる親
並
(
ならび
)
に
菴室
(
あんしつ
)
に在り。我を待つこと日を過さば、自ら心を
傷
(
いた
)
むる恨あらむ。我を望みて時に
違
(
たが
)
はば、必ず
明
(
めい
)
を
喪
(
うしな
)
ふ
泣
(
なみだ
)
を致さむ。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
小学校へ通っている頃病気のために父を
喪
(
うしな
)
い、母親の手内職ひとつで育てられ、入営後もその母親が独りで留守を守っていると云うことだが
指導物語:或る国鉄機関士の述懐
(新字新仮名)
/
上田広
(著)
殆
(
ほとん
)
ど同時に、院長の
某
(
なにがし
)
は年四十を
踰
(
こ
)
えたるに、先年その妻を
喪
(
うしな
)
ひしをもて再び彼を
娶
(
めと
)
らんとて、
密
(
ひそか
)
に一室に招きて切なる心を打明かせし事あり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
十四郎はまったく過去の記憶を
喪
(
うしな
)
っていて、あの明敏な青年技師は、一介の農夫にも劣る
愚昧
(
ぐまい
)
な存在になってしまった。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
尊氏へたいして、一歩前進を見せ、親房は亡くも、決して
素志
(
そし
)
を
喪
(
うしな
)
う南朝でないことを、つよく示されたものといえる。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私
(
わたくし
)
は
今
(
いま
)
やまた
軍艦
(
ぐんかん
)
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
のみならず
一度
(
いちど
)
喪
(
うしな
)
つたと
思
(
おも
)
つた
日出雄
(
ひでを
)
をも
國
(
くに
)
に
獻
(
さゝ
)
ぐる
事
(
こと
)
の
出來
(
でき
)
るやうになつた
事
(
こと
)
を
感謝
(
かんしや
)
します。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
たらば
蟹
(
がに
)
のような顔をした宿屋の主人は眼をしばだたいた。進んで同行しようと云うのであった。哀しみは、顧客を
喪
(
うしな
)
ったことだけではなかった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
二葉亭に接近してこの鋭どい
万鈞
(
ばんきん
)
の重さのある鉄槌に思想や信仰を粉砕されて、
茫乎
(
ぼうこ
)
として行く処を
喪
(
うしな
)
ったものは決して一人や二人でなかったろう。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
彼の心には、さなきだに人間らしい感情が乏しかったのに、それが刻一刻と薄れて、見る影もない廃残の身からは
日毎
(
ひごと
)
に何ものかが
喪
(
うしな
)
われて行った。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
彼女は、二十八の年に夫を
喪
(
うしな
)
つた。それを知つてゐるものでさへ、今が四十二であるとは誰も忘れてゐるであらう。
落葉日記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
民族的な兇暴性や原始性やは、謂わば生理的に女性としての機能をようやく
喪
(
うしな
)
わんとする初老の婦人の活力と同じに、既に絶点から下降し始めている。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
伏して
念
(
おも
)
う、
某
(
それがし
)
、
室
(
しつ
)
を
喪
(
うしな
)
って
鰥居
(
かんきょ
)
し、門に
倚
(
よ
)
って独り立ち、色に在るの
戒
(
かい
)
を犯し、多欲の
求
(
きゅう
)
を動かし、
孫生
(
そんせい
)
が両頭の蛇を見て決断せるに
傚
(
なら
)
うこと
能
(
あた
)
わず
牡丹灯籠 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
示されるものは公衆に
媚
(
こ
)
びる俗悪と、自己に利する粗製とのみではないか。多と美とは分れ、民と美とは離れ、工藝は質を失い美を
喪
(
うしな
)
ってきたのである。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
堯
(
たかし
)
の弟は
脊椎
(
せきつい
)
カリエスで死んだ。そして妹の延子も
腰椎
(
ようつい
)
カリエスで、意志を
喪
(
うしな
)
った風景のなかを死んでいった。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「
聖母
(
サンタ
)
マリア! 私は存じません!」こう答えるなり彼女は気を
喪
(
うしな
)
ってござ張りの床の上にバタリと卒倒した。
サレーダイン公爵の罪業
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
彼
自
(
みず
)
から曰く、「我れ
本
(
も
)
と一丈夫、
豈
(
あ
)
にその
元
(
こうべ
)
を
喪
(
うしな
)
うを忘れんや」と、彼は
自
(
みず
)
から死を決して徴命に応じたり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
兄の道太郎と共に早く両親を
喪
(
うしな
)
った彼女は、卒業後も、しばらく家で唯一の女手として兄の面倒を見ていた。
明暗
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
今日の日本では
所謂
(
いわゆる
)
知的な読者でさえ、作品と作家の生きかたというものの間にある必然について全く感覚を
喪
(
うしな
)
っている。これは、どういうことなのだろう。
今日の読者の性格
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
しかしわたくしは大正
壬戌
(
じんじゅつ
)
の年の夏森先生を
喪
(
うしな
)
ってから、毎年の
忌辰
(
きしん
)
にその墓を拝すべく弘福寺の墳苑に
赴
(
おもむ
)
くので、一年に一回向島の
堤
(
つつみ
)
を
過
(
よぎ
)
らぬことはない。
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
もはやそういった「健康」を
喪
(
うしな
)
ってしまったぼくは、復校してくる連中のひきおこす活動的な混乱、
喧騒
(
けんそう
)
にいやでも巻きこまれて、きっとやつらのその健康に
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
我を
司
(
つかさ
)
どるものの我にはあらで、先に見し人の姿なるを
奇
(
く
)
しく、怪しく、悲しく念じ煩うなり。いつの間に我はランスロットと変りて常の心はいずこへか
喪
(
うしな
)
える。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
暴馬
(
あれうま
)
は街はづれにて、立木に突きあたりて止まりぬ。車中よりは、
人々齡
(
よはひ
)
四十の上を一つ二つ
踰
(
こ
)
えたる貴人の驚怖のあまりに氣を
喪
(
うしな
)
はんとしたるを助け出だしき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
往事回顧すれば十五年、社中君を
喪
(
うしな
)
うてより又十年、今の学友或は之を知らざる者もあらん。記して以て君の言行の一
班
(
斑
)
を知らしめ、兼て天下国権論者の
警
(
いましめ
)
に供す。
故社員の一言今尚精神
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
母后についで背の君を
喪
(
うしな
)
った多至波奈姫が、太子生前の教を思い、推古天皇の御ゆるしを得て、太子の
御霊
(
みたま
)
の赴くであろうパラダイスを悲しみつつ描いたのである。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
愛子を
喪
(
うしな
)
った悲嘆の余りにわかに迷信深くなり、
売僧
(
まいす
)
の言葉を真に受けて、非常識に畜類を憐れむようになり、自身
戌年
(
いぬどし
)
というところから取り分け犬を大事に掛けた。
紅白縮緬組
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
翁未だ壮年の勇気を
喪
(
うしな
)
はざれど、生年限りあれば、かねて存命に石碑を建つるの志あり、我が来るを待ちて文を
属
(
しよく
)
せしめんとの意を
陳
(
のべ
)
ければ、我は快よく之を諾しぬ
三日幻境
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
安
後
(
のち
)
永楽七年に至りて自殺す。安等を
喪
(
うしな
)
いてより、南軍
大
(
おおい
)
に衰う。
黄子澄
(
こうしちょう
)
、
霊壁
(
れいへき
)
の敗を聞き、胸を
撫
(
ぶ
)
して
大慟
(
たいどう
)
して曰く、大事去る、
吾輩
(
わがはい
)
万死、国を誤るの罪を
贖
(
つぐな
)
うに足らずと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
肉親の兄弟でもあり、学問の上の知己でもあったこの二人の禅僧を
喪
(
うしな
)
って、兼良生来の勝気な性分もめっきり折れて来た。あの
勧修念仏記
(
かんじゅねんぶつき
)
を著したのはその年の秋のことである。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
孟軻
(
もうか
)
の語に、志士は
溝壑
(
こうがく
)
にあるを忘れず、勇士はその
元
(
こうべ
)
を
喪
(
うしな
)
うを忘れずと。余は昨今のごとき騒々しい世にありて、キンダマの保全法くらいは是非
嗜
(
たしな
)
み置かねばならぬと存ずる。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
鎮明嶺
(
ちんめいりょう
)
の下に住んでいる
喬生
(
きょうせい
)
という男は、年がまだ若いのにさきごろその妻を
喪
(
うしな
)
って、男やもめの心さびしく、この元霄の夜にも
燈籠
(
とうろう
)
見物に出る気もなく、わが家の
門
(
かど
)
にたたずんで
世界怪談名作集:18 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
瞿佑
(著)
風聞に
拠
(
よ
)
れば
総角
(
そうかく
)
の頃に早く
怙恃
(
こじ
)
を
喪
(
うしな
)
い、
寄辺渚
(
よるべなぎさ
)
の
棚
(
たな
)
なし
小舟
(
おぶね
)
では無く宿無小僧となり、
彼処
(
あすこ
)
の
親戚
(
しんせき
)
此処
(
ここ
)
の
知己
(
しるべ
)
と流れ渡ッている内、
曾
(
かつ
)
て侍奉公までした事が有るといいイヤ無いという
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
このころからして禁裏にも出入し、一人前の公卿として働くこととなり、三条西家の人々もようやく愁眉を開くこととなったのに、好事には魔多くして、十八歳のとき母を
喪
(
うしな
)
ったのである。
東山時代における一縉紳の生活
(新字新仮名)
/
原勝郎
(著)
農村富農から
藍玉
(
あいだま
)
仲買業や酒屋や山林業者やが派生して、必然的な道筋に添うて初期資本家を形成しても、他面彼らが依然たる封建制根底者的富農の資格を
喪
(
うしな
)
っていないこと、それどころか
新撰組
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
火災に
罹
(
かか
)
った上に親を
喪
(
うしな
)
うとか、子を
失
(
うしな
)
うとか、あるいは自分が急病にかかるとか、すなわち人生のあらゆる苦しみが、一時に
襲
(
おそ
)
い来たるときはこれぞ人生の実際の実際たるゆえんであって
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
満廷の群臣色を
喪
(
うしな
)
い汗を握る暇もなく、皇帝震怒、万雷一時に激発した。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
こんな風に第一線で
詞戦
(
ことばだたかひ
)
をする。双方が時時突貫を試みようとする。女はきい/\云ふ。男は罵る。子供は泣く。そのうち弱いものが二三人押し倒される。気を
喪
(
うしな
)
ふ。それを踏み付ける。
罵詈
(
あざ
)
ける。
防火栓
(新字旧仮名)
/
ゲオルヒ・ヒルシュフェルド
(著)
〔譯〕
己
(
おのれ
)
を
喪
(
うしな
)
へば
斯
(
こゝ
)
に人を
喪
(
うしな
)
ふ。人を喪へば斯に
物
(
もの
)
を喪ふ。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
予、往を顧み來を慮り、半夜惘然として吾れ我れを
喪
(
うしな
)
ふ。
人生終に奈何
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
喪
(
うしな
)
はれた美しい
日々
(
ひび
)
の
歌声
(
うたごえ
)
ではない
霙の中
(新字旧仮名)
/
森川義信
(著)
時を
喪
(
うしな
)
った
秋天
(
しゅうてん
)
のかけらを崩して
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
余ヤ
土陽僻陬
(
どようへきすう
)
ノ郷ニ生レ幼時早ク我父母ヲ
喪
(
うしな
)
ヒ後初メテ学ノ門ニ入リ好ンデ草木ノ事ヲ
攻
(
おさ
)
メ
復
(
また
)
歳華
(
さいか
)
ノ改マルヲ知ラズ其間斯学ノタメニハ我父祖ノ業ヲ廃シ我
世襲
(
せしゅう
)
ノ産ヲ傾ケ今ハ既ニ貧富地ヲ
易
(
か
)
ヘ
疇昔
(
ちゅうせき
)
ノ
煖飽
(
だんぽう
)
ハ亦
何
(
いず
)
レノ辺ニカ在ル
蟋蟀
(
こおろぎ
)
鳴キテ妻子ハ其衣ノ薄キヲ訴ヘ
米櫃
(
べいき
)
乏ヲ告ゲテ
釜中
(
ふちゅう
)
時ニ魚ヲ生ズ心情紛々
寧
(
いずくん
)
ゾ俗塵ノ外ニ
超然
(
ちょうぜん
)
タルヲ
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
“喪”の意味
《名詞》
(も)親しい人の死後、一定の期間、行いを慎み死者を弔うこと。
(出典:Wiktionary)
“喪”の解説
喪(も、英語:mourning)とは、身近な者や心を寄せる者、尊ぶべき者等の死を受けて、それを悲しむ者が一定期間中を過ごすことになる、日常生活とは異なる儀礼的禁忌状態であり、人間社会においておよそ普遍的な現象である。親族を亡くしたときに遺族が身を置く場合が最も一般的である。
(出典:Wikipedia)
喪
常用漢字
中学
部首:⼝
12画
“喪”を含む語句
沮喪
喪失
喪心
喪服
喪家
喪中
喪主
喪神
得喪
御大喪
阻喪
喪山
見喪
喪然
喪章
喪旗
服喪
喪屋
去喪
心喪
...