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危
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あやぶ
ふりがな文庫
“
危
(
あやぶ
)” の例文
宮は
危
(
あやぶ
)
みつつ彼の顔色を
候
(
うかが
)
ひぬ。常の如く戯るるなるべし。その
面
(
おもて
)
は
和
(
やはら
)
ぎて一点の怒気だにあらず、
寧
(
むし
)
ろ
唇頭
(
くちもと
)
には笑を包めるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
段を
上
(
のぼ
)
ると、
階子
(
はしご
)
が
揺
(
ゆれ
)
はしまいかと
危
(
あやぶ
)
むばかり、
角
(
かど
)
が欠け、石が抜け、土が崩れ、足許も定まらず、よろけながら
攀
(
よ
)
じ
上
(
のぼ
)
った。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二葉亭の作を読んで文才を疑う者は恐らく決してなかろうと思うが、二葉亭自身は常に自己の文才を
危
(
あやぶ
)
んで神経的に文章を気に病んでいた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
勝平の鉄のような
腕
(
かいな
)
が何となく頼もしいように思えた。
逗子
(
ずし
)
の停車場から自動車で、危険な海岸伝いに帰って来ることが何となく
危
(
あやぶ
)
まれ出した。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
我足の尼寺の
築泥
(
ついぢ
)
の外に通ふこと愈〻繁く、我情の迫ること愈〻切に、われはこの
通路
(
かよひぢ
)
の行末いかになるべきかを
危
(
あやぶ
)
まざること能はざるに至りぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
▼ もっと見る
教育にあたるのが男であるから、いくぶんおとなしさが少なくなりはせぬかと思われて、その点だけを源氏は
危
(
あやぶ
)
んだ。
源氏物語:08 花宴
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
何処
(
どこ
)
まで歩いて行っても道は狭くて土が黒く湿っていて、大方は
路地
(
ろじ
)
のように行き止りかと
危
(
あやぶ
)
まれるほど曲っている。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「そんでお
内儀
(
かみ
)
さん、どの
位
(
くれえ
)
したもんでがせうね
錢
(
ぜに
)
は、たんと
出
(
で
)
んぢやはあ
仕
(
し
)
やうねえが」
勘次
(
かんじ
)
は
危
(
あやぶ
)
むやうにいつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
自分は点頭して得心の意を示した。母は自分の顔を見て
危
(
あやぶ
)
む風で「おまえ泊れるかい夜半時分に泣出しちゃ困るよ」
守の家
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
... 知らぬから
未
(
ま
)
だ合点が行かぬと云う丈の事」判事は目科の横鎗にて再び幾分の
危
(
あやぶ
)
む念を浮べし如く「今夜
早速
(
さっそく
)
牢屋へ行き
篤
(
とく
)
と藻西太郎に
問糺
(
といたゞ
)
して見よう」
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
(二)みどりが気分が悪いと云ったときに彼が非常に
狼狽
(
ろうばい
)
したのは、彼が
牌
(
こま
)
に塗りつけた毒物がみどりを犯したのではないかと
危
(
あやぶ
)
んだせいではあるまいか。
麻雀殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
作者はその驚くべき人物を、
果
(
はた
)
してよく扱いこなせるかどうかを
自
(
みずか
)
ら
危
(
あやぶ
)
む程であるが、そこがまた本篇執筆について作者が一層興味を感じている
所以
(
ゆえん
)
でもある……
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
僅に残つた親友の大川をはじめ二三の人々は、亨一の将来を気づかひ、あの儘にしておけば彼は屹度終りを全くすることが出来なくなると云つて、其前途を
危
(
あやぶ
)
んだ。
計画
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
お葉は
弛
(
ゆる
)
んだ帯を結び直して、
店口
(
みせぐち
)
に
有合
(
ありあ
)
う下駄を突ッ掛けると、お清はいよいよ
危
(
あやぶ
)
んで又
抑留
(
ひきと
)
めた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかし先生は果して志村を
率
(
ゐ
)
て行くであらうか。わたくしは頗これを
危
(
あやぶ
)
んだ。何故と云ふに、剛強の人は柔順の人を喜ぶ。先生の門下には
竹内立賢
(
たけのうちりふけん
)
の如き寵児がある。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
その場を体よく、夫の視線避けけるも、
書中
(
なか
)
の子細の
危
(
あやぶ
)
まるるを、先づ秘かにと思へるなるべし。
移民学園
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
けれどもまだ
危
(
あやぶ
)
んで汽車は一と息に乘り通してはいけないといふ條件での上であつた。
赤い鳥
(旧字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
勘定の
危
(
あやぶ
)
まれた二階の客の、銀貨銅貨取り混ぜた払ひを
検
(
あらた
)
めて、それから新らしい客の通した
麦酒
(
ビール
)
と鮒の
鉄砲和
(
てつぱうあへ
)
とを受けてから、一寸の
閑
(
ひま
)
を見出したお文は、
後
(
うしろ
)
を向いてかう言つた。
鱧の皮
(新字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
あの
時
(
とき
)
ばかりは、いかに
武運
(
ぶうん
)
に
恵
(
めぐま
)
まれた
御方
(
おんかた
)
でも、
今日
(
きょう
)
が
御最後
(
ごさいご
)
かと
危
(
あやぶ
)
まれました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
諸将これを
危
(
あやぶ
)
みて
言
(
ものい
)
えども、王
聴
(
き
)
かず。
次
(
つ
)
いで
蕭県
(
しょうけん
)
を略し、
淮河
(
わいか
)
の守兵を破る。四月平安
小河
(
しょうか
)
に営し、燕兵
河北
(
かほく
)
に
拠
(
よ
)
る。
総兵
(
そうへい
)
何福
(
かふく
)
奮撃して、燕将
陳文
(
ちんぶん
)
を
斬
(
き
)
り、平安勇戦して燕将
王真
(
おうしん
)
を囲む。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それほど弱々しい人で、しかも水いじりは
勿論
(
もちろん
)
、針を持つことさえ
覚束
(
おぼつか
)
ないというほど手の
煩
(
わずら
)
いに
附纏
(
つきまと
)
われているような人で、どうしてこのまま家庭の人と成ることが出来ようかと
危
(
あやぶ
)
まれた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
但
(
ただ
)
し
白鳥
(
はくてう
)
君には髭が無いけれどマス君には
後
(
うしろ
)
へ
撥
(
は
)
ねた
頤髭
(
あごひげ
)
がある。見物人には一撃の
下
(
もと
)
にマス君が
敗
(
やぶ
)
られ
相
(
さう
)
に
危
(
あやぶ
)
まれたが、
併
(
しか
)
しマス君は見掛に寄らず最後まで勇敢に戦つて立派に名誉を
恢復
(
くわいふく
)
した。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
ご亭主は、私の、あの嘘を半ばは
危
(
あやぶ
)
みながらも、それでもかなり信用していてくれたもののようで、夫が帰って来たことも、それも私の何か差しがねに依っての事と単純に合点している様子でした。
ヴィヨンの妻
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私が
光
(
ひかる
)
に
危
(
あやぶ
)
みますのは異性に最も近い所で開く性の
目覚
(
めざめ
)
です。
遺書
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
『さうか。』と云ツたが、楠野君はまだ何となく
危
(
あやぶ
)
む樣子。
漂泊
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
かえって双方の解釈の共に誤っていることも
危
(
あやぶ
)
まれる。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
危
(
あやぶ
)
むといふやうにして女は言つた。
モウタアの輪
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
此
(
こ
)
の
吹雪
(
ふゞき
)
に、
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つて
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
ようと、
放火
(
つけび
)
か
強盜
(
がうたう
)
、
人殺
(
ひとごろし
)
に
疑
(
うたが
)
はれはしまいかと
危
(
あやぶ
)
むまでに、さんざん
思
(
おも
)
ひ
惑
(
まど
)
つたあとです。
雪霊続記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
何処
(
どこ
)
まで歩いて行つても道は
狭
(
せま
)
くて土が黒く
湿
(
しめ
)
つてゐて、
大方
(
おほかた
)
は
路地
(
ろぢ
)
のやうに
行
(
ゆ
)
き
止
(
どま
)
りかと
危
(
あやぶ
)
まれるほど
曲
(
まが
)
つてゐる。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
欧化気分がマダ残っていたとはいえ、沼南がこの極彩色の夫人と衆人環視の中でさえも
綢繆
(
ちゅうびゅう
)
纏綿
(
てんめん
)
するのを苦笑して
窃
(
ひそ
)
かに沼南の名誉のため
危
(
あやぶ
)
むものもあった。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
兎に角
筋道
(
すじみち
)
丈け話してしまおう。おれはその為にわざわざ出かけて来たんだから。君は何だかおれの精神状態を
危
(
あやぶ
)
んでいる様子だが、その点は心配しなくてもいい。
疑惑
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
これではいよいよ入場がむずかしいかも知れないと
危
(
あやぶ
)
みながら、入口の窓口へ行って訊いてみると、若い女が窓から首を出して、会員以外でも入場させないことはない
米国の松王劇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
允成は抽斎の徳に
親
(
したし
)
まぬのを見て、前途のために
危
(
あやぶ
)
んでいたので、抽斎が旅に立つと、すぐに徳に日課を授けはじめた。手本を与えて
手習
(
てならい
)
をさせる。日記を附けさせる。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
こうしたつれづれな生活に何年も
辛抱
(
しんぼう
)
することができるであろうかと源氏はみずから
危
(
あやぶ
)
んだ。
源氏物語:12 須磨
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
逗子の停車場から自動車で、危険な海岸伝ひに帰つて来ることが何となく
危
(
あやぶ
)
まれ出した。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
「
爺
(
ぢい
)
くんねえか」
與吉
(
よきち
)
は
危
(
あやぶ
)
むやうにいつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その、
貴下
(
あなた
)
、その
貴下
(
あなた
)
、霊魂が何だか分らないから、迷いもする、悟りもする、
危
(
あやぶ
)
みもする、安心もする、拝みもする、信心もするんですもの。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
路地はどうかすると横町同様
人力車
(
くるま
)
の通れるほど広いものもあれば、
土蔵
(
どぞう
)
または人家の
狭間
(
ひあわい
)
になって人一人やっと通れるかどうかと
危
(
あやぶ
)
まれるものもある。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
重太郎は
斯
(
こ
)
うも考えた。けれども、自分の姿を見れば
直
(
ただ
)
ちに追跡する警官等が、
其
(
その
)
理屈を
肯
(
き
)
いて
呉
(
く
)
れるや否やを
危
(
あやぶ
)
んだ。警官等は自分の敵であると彼は
一図
(
いちず
)
に信じていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その上発覚を
危
(
あやぶ
)
む理智において欠けています。存外やりかねないことです。彼は風呂焚きですからね。死体を隠す必要に迫られた場合、考えがそこへ行くのはごく自然ですよ。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
既にして二、三のこれに同意を表するものも出来たので、
五百
(
いお
)
は
危
(
あやぶ
)
みつつこの議を
納
(
い
)
れたのである。比良野
貞固
(
さだかた
)
は初め昌庵に反対していたが、五百が意を決したので、
復
(
また
)
争わなくなった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
薄
(
すすき
)
の霜に入残る、有明月の消え行く
状
(
さま
)
、
覗
(
のぞ
)
いている顔が
彼方
(
かなた
)
へ、
茅萱
(
ちがや
)
の骨に隠れんとした、お鶴は続けさまに呼び留められ、あえて
危
(
あやぶ
)
む様子もなく
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
浅草寺境内
(
せんさうじけいだい
)
の
弁天山
(
べんてんやま
)
の池も既に
町家
(
まちや
)
となり、また赤坂の溜池も
跡方
(
あとかた
)
なく
埋
(
うづ
)
めつくされた。それによつて私は将来
不忍池
(
しのばずのいけ
)
も
亦
(
また
)
同様の運命に陥りはせぬかと
危
(
あやぶ
)
むのである。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
この女は狐か狸の
変化
(
へんげ
)
ではないかと
危
(
あやぶ
)
まれたが、女はいつまでも立去りさうにもしないので、亭主はなんだか薄気味悪くもなつて来て、今更とんだことを云つたと後悔した。
小夜の中山夜啼石
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ただ、このお芝居で、私の最も
危
(
あやぶ
)
んだのは、これらのドラマチックな方面ではなくて、最も現実的な併し全体から見ては極めて
些細
(
ささい
)
な、少し
滑稽味
(
こっけいみ
)
を帯びた、一つの点であった。
二銭銅貨
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「下剤を用ゐて見てはいかがでせう。」これは父が
危
(
あやぶ
)
みつつ問ふのであつた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
要するに、麗しき
婦
(
おんな
)
は塔婆の影である。席に見えないとすると、坊主、坊主が別亭へ侵入して、蚊帳を乱していはしないかと
危
(
あやぶ
)
んだためなのであった。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
片側
(
かたかわ
)
は樹と竹藪に蔽われて昼なお暗く、片側はわが歩む道さえ崩れ落ちはせぬかと
危
(
あやぶ
)
まれるばかり
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
今度こそはその
蝋燭
(
ろうそく
)
のひかりが何かの不思議を照し出すのではないかとも
危
(
あやぶ
)
まれて、夫婦は一面に云ひ知れない不安をいだきながらも、いはゆる怖いもの見たさの好奇心も手伝つて
影を踏まれた女:近代異妖編
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
平生
(
へいぜい
)
金銭に
無頓着
(
むとんじゃく
)
であった抽斎も、これには頗る当惑して、
鋸
(
のこぎり
)
の音
槌
(
つち
)
の響のする中で、
顔色
(
がんしょく
)
は次第に
蒼
(
あお
)
くなるばかりであった。五百は
初
(
はじめ
)
から兄の指図を
危
(
あやぶ
)
みつつ見ていたが、この時夫に向っていった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
“危”の意味
《名詞》
(キ)危ないこと。
(出典:Wiktionary)
危
常用漢字
小6
部首:⼙
6画
“危”を含む語句
危険
危殆
危險
危急
危篤
危懼
危難
危惧
危機
危気
危坐
危急存亡
安危
危害
危機一髪
危巌
御危篤
危地
草茅危言
危険々々
...