)” の例文
伏して観る、朝廷陵替りょうたい綱紀こうき崩擢ほうさい、群雄国に乱るの時、悪党君をあざむくの日にあたりて、備、心肺ともにく、肝胆かんたんほとんど裂く。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
林檎のように種類の多いものは皮の色を見て味を判定することが出来ぬが、ただ緑色の交っている林檎はいという事だけはたしかだ。
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
そしてその味は夏蜜柑ほどっぱくなくて甘味あまみを有している。これは四、五月ごろに市場にあらわれ、サマー・オレンジと称している。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
それは外でもない、台所の隅つこにある糠味噌ぬかみその匂である。名香で痺れた鼻の感じは、糠味噌のつぱい匂を嗅ぐと不思議によくなる。
明微洞察めいびどうさつ神のごとく、世態人情のいもあまいも味わいつくして、善悪ともにそのまま見通しのきくうえに、神変不可思議しんぺんふかしぎ探索眼たんさくがんには
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
眼がくらんで来た。頭の中が乱れて来た。咽喉のどが乾いてい物を飲みたいと気が焦り出した。障子も見えなくなれば、畳も見えなくなった。
悪魔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
源吉はっぱい顔をしました。竹光で外から捜って、三度目に致命的な突きをくれるというのは、生身の人間を相手には出来ないことです。
茶を飲むと、いような塩はゆいような一種の味がする。少し妙だと思って、茶碗を下へ置いてゆっくり橋本の講釈を聞いた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ならばッぱくなるし——カミツレさうならばにがくするし——トつて——トつて砂糖さたうやなどでは子供こどもあまやかしてしまうし。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「憂鬱だな、講演というものはもう三日前から、食慾がなくなって了うし、胸はっぱくなるし、元気までなくなる、……」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
私は子供たちの真似まねをしてそれを一つずつこわごわ口に入れてみた。なんだかっぱかった。私はしかしそれをみんな我慢がまんをしてみ込んだ。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
が、口をくして何と説得しても「ンな考は毛頭ない、」とばかり主張いいはって、相談はとうとうそれきりとなってしまった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
克彦は口のくなるほど、同じことをくり返した。そして、やっとあけみの弱気をひるがえすことが出来たように思った。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
世間のいも甘いもかみ分けて、それをかおにも現わさず、かゆいところへ手が届きながらかず、そうしてそのき目が、時間がたつほど深刻に
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
するとあとで非常にのどかわいて何かいようなものが欲しくなった処へ桃の缶詰かんづめが出たから僕一人で殆ど半分ほど平らげた。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
地震学者だけが口をっぱくして説いてみても、救世軍の太鼓ほどの反響もない。そうして恐ろしい最後の審判の日はじりじりと近づくのである。
時事雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
さて、毎度、口のっぱくなるほど申し上げておりますが、芸人はまず芸です。まず自分の芸ができて、それからおのずと人気が出てくるのです。
初看板 (新字新仮名) / 正岡容(著)
ゆき子は歯茎はぐきつぱくしてかじつたが、林檎は案外柔らかくて、味もまづかつた。富岡も林檎をさくさくと噛つてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
一二万の町のはっぱくて、二三万台で漸く形が出来、四五万から先ず食えるが、十万でないと真正ほんとうのにはありつけないと悉皆すっかり統計を取っている。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
單に佛手柑の實がゆかつたといつては世の中をつくづく果敢はかなむだ頃の Tonka John の心は今思ふても罪のない鷹揚なものであつた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
庄造はつぱいやうな顔をして、口をとがらせて俯向うつむいてしまつた。母から云はせて福子をなだめる目算もくさんでゐたのが、すつかり外れてしまつたのである。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ばくするものは言ふ。芸者したものはいもあまいも知つてゐるはずなり。栄耀栄華えいようえいがの味を知つたもの故芝居も着物もさして珍らしくは思はぬはずなり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
対手あいてにならないが、次第わけは話そう。——それ、弁持の甘き、月府のきさ、誰某たれそれと……久須利苦生の苦きに至るまで、目下、素人堅気輩には用なしだ。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かせぎに身がはいらず質八しちばち置いて、もったいなくも母親には、黒米のからうすをふませて、弟には煮豆売りに歩かせ、売れ残りのくなった煮豆は一家のお惣菜そうざい
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
が、その門の下は、斜めにつき出した高いのきに、月も風もさえぎられて、むし暑い暗がりが、絶えまなく藪蚊やぶかに刺されながら、えたようによどんでいる。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
とうさんは自分じぶん子供こども時分じぶんと、あの巴且杏はたんきやう時分じぶんとを、別々べつ/\にしておもせないくらゐです。巴且杏はたんきやうすもゝよりおほきく、あぢすもゝのやうにくはありません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこで非常にい香のする、何でも大豆でつくった物を醗酵させた物質を箱からかけ、水少量を加えてひっかき廻した。これ程不味まずそうな物は見たことがない。
べには此花より取るものなれど、此花のみにては色を出さず、梅のにあひて始めて紅の色の成るなり。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
このごろの岩内の町には鼻をくしなければならないような事がそこいらじゅうにまくしあがっていた。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
私は何か香氣かうきあるものをはじめて味つた。飮むとあたゝかくて、新鮮な香り高い酒のやうだつた。そして後味あとあぢつぱく、腐敗して毒を呑まされたやうな氣持ちだつた。
渇したる時は水を択ばずというような訳でその草を引き抜いて根をんでみたところがごくっぱいです。それからその根を噛みつつ蕎麦そばの焼パンを喰いました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
下から突いたからめえへのめって湯を呑んだという騒ぎで、此の野郎と云うのが喧嘩のはじまりで、甚太っぽーの顳※こめかみを金次が喰取くいとってっぺいって吐出はきだしたのです
……だが彼は、私がいくら口をっぱくしてそれをいっても、頭からわかろうとはしないのです。
恐怖の正体 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
余計な心配をせずに、ひとまず東京へ帰ったらいいと、友達は口をくして、慰めてくれました。
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「貧しき者はつねになんじらとともにあり」とか、「父たちきブドウを食いたれば子等の歯うく」
まずひやし料理として山葵わさびクリームをかけた仔豚の蒸肉が出、それからあぶらっこい舌の焼けるような豚肉入りのキャベツ汁と、湯気が柱をなして立っている蕎麦粥が出た。
(新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
けれどもそれは意地悪女のっぱいみつから成ってる声だった。「人形をいただかないのかい。」
「待ち給へと言ふに! 先から風早が口をくして頼んでゐるのぢやないか、銭貰ぜにもらひかどに立つたのぢやない、人に対するには礼と云ふものがある、可然しかるべ挨拶あいさつを為たまへ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
大抵は白い様な髪を切りさげて体からいつもっぱい様な臭いを出して居るが、それはママして胸を悪くさせるものではなく、そのお婆さん特有の臭いとして小さい子供達や
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
貢さんがのぞいたのは薄暗うすぐら陰鬱いんうつな世界で、ひやりとつめたい手で撫でる様にあたる空気がえて黴臭かびくさい。一間程前けんほどまへに竹と萱草くわんざうの葉とがまばらにえて、其奥そのおくは能く見え無かつた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
梅ぼしとは、『おゝ!』(大須)といふ駄洒落だが、実は先年まで、観音堂の裏手に『大酸おおす』ならぬ『大あま』旭遊廓があつて、大須の繁盛したのは、半ばそのためであつた。
名古屋スケッチ (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
ふしぎなことであるが、おわきは家庭においては女性的言語をろうするものだろう。これを聞いて母親ごうつくはいような顔をしたが、父親なる禿は俄かに膝を乗出したのである。
長屋天一坊 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かの伊蘇普エソオポスが物語に、おのがえ取らぬ架上の葡萄をば、しといひきといふ狐の事あり。
一方では家の中で、退屈しきってる少佐が、一生懸命にフルートのっぱい音を吹きたてたり、または気を変えるために、途切れがちにハーモニュームをかき鳴らしたりしていた。
女性ばかりに、貞淑であれ! 節操を守れ! 男性を弄ぶな! そんなことを、幾何いくら口をくして説いても、妾はそれを男性の得手勝手だと思いますの。男性の我儘だと思います。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
口をくして、すすめてくれようと、よも、ここまで、足を向けようといたすはずがない——わたしには、よくわかる——そなたが、心をつくしてくれようとの気持はかたじけないが
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
米の飯やいもなども余りの物を、壺の中に貯えて作るからと、五島あたりでは説明しているが、やはりくなる前にいったん甘くなるので、アマリといったのではないかとも想像せられる。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
昔、釈迦牟尼しゃかむに、孔子、老子が人生の象徴酢瓶すがめの前に立って、おのおの指をつけてそれを味わった。実際的な孔子はそれがいと知り、仏陀ぶっだはそれをにがいと呼び、老子はそれを甘いと言った。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
さっきから台所でことことやっていた二十はたちばかりのの大きな女がきまりわるそうに夕食をはこんで来た。そのげたうすぜんにはした川魚をわん幾片いくへんかのえた塩漬しおづけの胡瓜きゅうりせていた。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
焦熱しょうねつ地獄じごくのような工場の八時間は、僕のような変質者にとって、むしろ快い楽園らくえんであった。焼け鉄のっぱい匂いにも、機械油の腐りかかった悪臭にも、僕は甘美かんびな興奮をそそられるのであった。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)