“幾片”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
いくひら55.6%
いくへん44.4%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
今も老人はその算当をしてしまって、幾片いくひらかの金を封じにかかると、その窓の下でバタバタと人の走る音がしました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
遅桜おそざくら幾片いくひらが、どこからか風に送られてくる。晩春、月はまだかさし、木々の芽のにおいはほのかだった。——と、誰か、徐々、膝拍子をたたきながら朗吟する者がある。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
復一は急いで眼口を閉じたつもりだったが、牡丹ぼたん桜の花びらのうすら冷い幾片いくへんかは口の中へ入ってしまった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
権利のないものに存在を許すのは実業家の御慈悲おじひである。無駄口をたたく学者や、蓄音機の代理をする教師が露命をつなぐ月々幾片いくへんの紙幣は、どこからいてくる。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)