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蹴立
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けた
ふりがな文庫
“
蹴立
(
けた
)” の例文
たちまち私の
傍
(
そば
)
を近々と横ぎって、左右に雪の
白泡
(
しらあわ
)
を、ざっと
蹴立
(
けた
)
てて、あたかも水雷艇の荒浪を切るがごとく猛然として進みます。
雪霊続記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
馬鹿言え、
乃公
(
おれ
)
は国に帰りはせぬぞ、江戸に行くぞと云わぬばかりに、席を
蹴立
(
けた
)
てゝ出たことも、
後
(
のち
)
になれば
先方
(
さき
)
でも
知
(
しっ
)
て居る。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
看視人も早いが逃げる男も早く、二人の
蹴立
(
けた
)
てる水しぶきは、しだいに遠くなり、やがて根戸川の川口のほうへと、見えなくなっていった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
護送役人の
下知
(
げじ
)
に従いまして、遠島の罪人一同上陸致しますると、図らずも
彼方
(
あなた
)
に当りパッパッと
砂煙
(
すなけむり
)
を
蹴立
(
けた
)
って
数多
(
あまた
)
の人が逃げて参ります。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
敷石道を
蹴立
(
けた
)
てる靴音のその音波で、靄はうらうらと溶けていった。その裂け目からバラックの建物が浮き出してくる。道は間もなく橋にかかった。
猟奇の街
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
▼ もっと見る
彼はロドルフを
狡猾
(
こうかつ
)
漢だとし偽善の犬だとして、
臀
(
しり
)
を
蹴立
(
けた
)
てて追い出した。ロドルフはその仕返しに母を
煽動
(
せんどう
)
した。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
暫くは舞台の
端
(
はな
)
に立つて、鉛筆のやうに真直になつてゐたが、急に
履
(
くつ
)
音を
蹴立
(
けた
)
ててフロオマンの前へ出て来た。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
さんざんに銀子とやり合った果てに、
太々
(
ふてぶて
)
しく席を
蹴立
(
けた
)
てて
起
(
た
)
ち、
段梯子
(
だんばしご
)
をおりる途端に
裾
(
すそ
)
が足に絡み、三段目あたりから転落して、そのまま気絶してしまった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ランナア達はその五色の雪を身にあびて、それを
蹴立
(
けた
)
てて、
瘋癲
(
ふうてん
)
病院の運動会の様に、走りに走った。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
雪を
蹴立
(
けた
)
てて先へ行く人々の足もとから、銀の光が煙って、後から黒々と続く人影を吹きなぐった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はっ! とわれに返ったように、近江之介が畳を
蹴立
(
けた
)
てて喬之助のあとを追おうとした。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
つづいて
尻端折
(
しりはしおり
)
の
股引
(
ももひき
)
にゴム靴をはいた
請負師
(
うけおいし
)
らしい男の通った
後
(
あと
)
、
暫
(
しばら
)
くしてから、
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
と小包を提げた貧し
気
(
げ
)
な女房が
日和下駄
(
ひよりげた
)
で色気もなく砂を
蹴立
(
けた
)
てて
大股
(
おおまた
)
に歩いて行った。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
簀
(
す
)
の
子
(
こ
)
の
上
(
うへ
)
の
筵
(
むしろ
)
に
横
(
よこた
)
へて、
喪心
(
さうしん
)
したやうに
惘然
(
ばうぜん
)
として
立
(
た
)
つた。
彼
(
かれ
)
は
復
(
ま
)
た
卯平
(
うへい
)
の
糜爛
(
びらん
)
した
火傷
(
やけど
)
を
見
(
み
)
た。
彼
(
かれ
)
は
何
(
なに
)
を
思
(
おも
)
つたか
忙
(
いそが
)
しく
雪
(
ゆき
)
を
蹴立
(
けた
)
てゝ、
桑畑
(
くはばたけ
)
の
間
(
あひだ
)
を
過
(
す
)
ぎて
南
(
みなみ
)
の
家
(
いへ
)
に
走
(
はし
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
と
答
(
こた
)
へると
彼
(
かれ
)
は
莞爾
(
につこ
)
と
打笑
(
うちえ
)
み、こも/″\
三人
(
みたり
)
と
握手
(
あくしゆ
)
して、
其儘
(
そのまゝ
)
舷梯
(
げんてい
)
を
降
(
くだ
)
り、
先刻
(
せんこく
)
から
待受
(
まちう
)
けて
居
(
を
)
つた
小蒸滊船
(
こじやうきせん
)
に
身
(
み
)
を
移
(
うつ
)
すと、
小蒸滊船
(
こじやうきせん
)
は
忽
(
たちま
)
ち
波
(
なみ
)
を
蹴立
(
けた
)
てゝ、
波止塲
(
はとば
)
の
方
(
かた
)
へと
歸
(
かへ
)
つて
行
(
ゆ
)
く
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
濶葉樹
(
かつようじゅ
)
のすき間にちらついていた空は
藍青
(
らんせい
)
に変り、重なった葉裏にも黒いかげが漂っていた。進んで行く渓谷にはいち早く宵闇がおとずれている。足もとの水は
蹴立
(
けた
)
てられて白く泡立った。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
一間
(
いっけん
)
あまりも投げ飛ばしたまま、また砂けむりを
蹴立
(
けた
)
てて走って行きました。
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
新入港の船がテイジョ河口の三角浪を
蹴立
(
けた
)
てて滑りこんで、
山の手
(
バイロ・アルト
)
の家々の窓掛けを爽やかな異国の風がなぶると、週期的活気・海と陸との呼応・みなとのざわめきが坂の上の町一帯に充満して
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
ヂュリ いや、
朝
(
あさ
)
ぢゃ、
朝
(
あさ
)
ぢゃ。
速
(
はや
)
う
去
(
いな
)
しませ、
速
(
はや
)
う/\!
聞辛
(
きゝづら
)
い、
蹴立
(
けた
)
たましい
高調子
(
たかてうし
)
で、
調子外
(
てうしはづ
)
れに
啼立
(
なきだ
)
つるは、ありゃ
雲雀
(
ひばり
)
ぢゃ。
雲雀
(
ひばり
)
の
聲
(
こゑ
)
は
懷
(
なつか
)
しいとは
虚僞
(
いつはり
)
、なつかしい
人
(
ひと
)
を
引分
(
ひきわ
)
けをる。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
やがて、軍艦旗を翻した水雷艇が、白波を
蹴立
(
けた
)
てて近づいて来た。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
一同は畳を
蹴立
(
けた
)
てて奥の間へ進もうとした。
堺事件
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
忽
(
たちま
)
ち
私
(
わたし
)
の
傍
(
そば
)
を
近々
(
ちか/″\
)
と
横
(
よこ
)
ぎつて、
左右
(
さいう
)
に
雪
(
ゆき
)
の
白泡
(
しらあわ
)
を、ざつと
蹴立
(
けた
)
てて、
恰
(
あたか
)
も
水雷艇
(
すゐらいてい
)
の
荒浪
(
あらなみ
)
を
切
(
き
)
るが
如
(
ごと
)
く
猛然
(
まうぜん
)
として
進
(
すゝ
)
みます。
雪霊続記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
畳を
蹴立
(
けた
)
てゝ挨拶もせず出て
往
(
ゆ
)
き掛ると、見兼て
其所
(
そこ
)
へ出ましたのはお八重という女郎、其の時分だから検査と云うことがないから
梅毒
(
かさ
)
で鼻の障子が
失
(
なく
)
なって
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
乗着けてきて
繋
(
つな
)
がれた馬は、
厩前
(
うまやまえ
)
から武庫の方まではみだし、
昂
(
たか
)
ぶった
嘶
(
いなな
)
きや
蹄
(
ひづめ
)
で地面を
蹴立
(
けた
)
てる響きが、右往左往する家士や小者たちの物々しいざわめきを縫って
三十二刻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
つゞいて
尻端折
(
しりはしをり
)
の
股引
(
もゝひき
)
にゴム靴をはいた
請負師
(
うけおひし
)
らしい男の
通
(
とほ
)
つた
後
(
あと
)
、
暫
(
しばら
)
くしてから、
蝙蝠傘
(
かうもりがさ
)
と
小包
(
こづゝみ
)
を
提
(
さ
)
げた貧し
気
(
げ
)
な女房が
日和下駄
(
ひよりげた
)
で色気もなく砂を
蹴立
(
けた
)
てゝ
大股
(
おほまた
)
に歩いて行つた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
決然と畳を
蹴立
(
けた
)
てた多門へ、ひしゃげたような藤次郎の声が追いすがった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
水上署
(
すいじょうしょ
)
に事の次第を告げて、大型ランチの出動を促し、水上署の警官達と共に、自から数名の刑事を
率
(
ひき
)
いて、それに同乗し、夜明け前の隅田川の、黒い浪を
蹴立
(
けた
)
て、賊船にと急いだのである。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それと
同時
(
どうじ
)
に、
吾等
(
われら
)
陸上
(
りくじやう
)
の
一同
(
いちどう
)
は
萬歳
(
ばんざい
)
を
叫
(
さけ
)
ぶ、
花火
(
はなび
)
を
揚
(
あ
)
げる、
旗
(
はた
)
を
振
(
ふ
)
る、
日出雄少年
(
ひでをせうねん
)
は
夢中
(
むちう
)
になつて、
猛犬稻妻
(
まうけんいなづま
)
と
共
(
とも
)
に、
飛鳥
(
ひちやう
)
の
如
(
ごと
)
く
海岸
(
かいがん
)
の
砂
(
すな
)
を
蹴立
(
けた
)
てゝ
奔走
(
ほんさう
)
した。
實
(
じつ
)
に
此
(
この
)
島
(
しま
)
在
(
あ
)
つて
以來
(
いらい
)
の
大盛况
(
だいせいけう
)
※
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
『
己
(
おれ
)
が
見着
(
みつ
)
けて
持
(
も
)
つて
帰
(
かへ
)
る、
死骸
(
しがい
)
の
来
(
く
)
るのを
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
れ。』と
睨
(
にら
)
みつけて
廊下
(
らうか
)
を
蹴立
(
けた
)
てゝ
出
(
で
)
た——
帳場
(
ちやうば
)
に
多人数
(
たにんず
)
寄合
(
よりあ
)
つて、
草鞋穿
(
わらぢばき
)
の
巡査
(
じゆんさ
)
が
一人
(
ひとり
)
、
框
(
かまち
)
に
腰
(
こし
)
を
掛
(
か
)
けて
居
(
ゐ
)
たが、
矢張
(
やつぱり
)
此
(
こ
)
の
事
(
こと
)
に
就
(
つ
)
いてらしい。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
其
(
その
)
眞先
(
まつさき
)
に
砂塵
(
すなけむり
)
を
蹴立
(
けた
)
てゝ、
驅
(
かけ
)
つて
來
(
く
)
るのはまさしく
猛犬稻妻
(
まうけんいなづま
)
!
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
算を乱して
仰向
(
あおむけ
)
にどたりと倒れ、畳を
蹴立
(
けた
)
て、障子を
揺
(
ゆすぶ
)
り、さア殺せ、
苦
(
くるし
)
いわい、切ないわい、死ぬぞ、のたるぞ、と
泣喚
(
なきわめ
)
くに、手の附けようもあらざれば、持余したる折こそあれ、奥にて呼ぶ声
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蹴
常用漢字
中学
部首:⾜
19画
立
常用漢字
小1
部首:⽴
5画
“蹴”で始まる語句
蹴
蹴出
蹴飛
蹴落
蹴上
蹴鞠
蹴散
蹴込
蹴倒
蹴返