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芥
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あくた
ふりがな文庫
“
芥
(
あくた
)” の例文
海口の方から市街の河すじへさして、夜明け雲の下を、無数の
芥
(
あくた
)
を浮かべて
汐臭
(
しおくさ
)
い流れが、ひたひたと土手や石垣へ満ち初めていた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これすなわち僕の若返りの
工夫
(
くふう
)
である。要するに
脳髄
(
のうずい
)
のうちに折々
大掃除
(
おおそうじ
)
を行って、
煤
(
すす
)
、
埃
(
ごみ
)
、
芥
(
あくた
)
、
枯
(
か
)
れ
枝
(
えだ
)
等をみな払うことをしたい。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
そこには、ゴロンと二つの生首が転がり、二人分の滅茶滅茶になった血みどろな躰が、二三間先きに、
芥
(
あくた
)
のように、
棄
(
す
)
てられてあった。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
三太夫は胸へ込上げ、
老人
(
としより
)
のあせるほど、気ばかり
苛
(
いら
)
ちてものもいわれず、眼玉を据えて口をぱくぱく、
芥
(
あくた
)
に酔うたる
鮒
(
ふな
)
のごとし。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小草
(
おぐさ
)
が
数本
(
すほん
)
に、その一本を伝わって
倒
(
さかしま
)
に
這降
(
はいお
)
りる蟻に、去年の
枯草
(
かれぐさ
)
のこれが
筐
(
かたみ
)
とも見える
芥
(
あくた
)
一摘
(
ひとつま
)
みほど——これが其時の眼中の小天地さ。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
▼ もっと見る
がふとその時彼は赤茶色の
芥
(
あくた
)
の山のようなものを
見出
(
みいだ
)
して、その上にのしかかってみた。と思うまに激しいくさめの音が沈黙をやぶった。
作男・ゴーの名誉
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
秋も末に近く、瀬は
殆
(
ほとん
)
ど
涸
(
か
)
れてゐた。川上の紅葉が水のまにまに流れて来て、
蛇籠
(
じゃかご
)
の籠目や、瀬の
縁
(
ふち
)
に厚い
芥
(
あくた
)
となつて老いさらばつてゐた。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
縮れた竿の影や、崩れかけた煉瓦のさかさまに映っている泡の中で、
芥
(
あくた
)
や藁屑が船の
櫂
(
かい
)
にひっかかったまま、じっと腐るようにとまっていた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
藻の間を
掬
(
すく
)
った叉手を、父が
丘
(
おか
)
へほおりあげると、私は網の中から小蝦を拾った。藻と
芥
(
あくた
)
に濡れたなかに、小さな灰色の蝦がピンピン跳ねている。
父の俤
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
周の
穆王
(
ぼくおう
)
が美少年
慈童
(
じどう
)
の、紅玉を薄紙で包んだような、
玲瓏
(
れいろう
)
とした容貌を眺めた時、後室三千の
美姫
(
びき
)
麗人
(
れいじん
)
が、
芥
(
あくた
)
のように見えたということである。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
住吉
(
すみよし
)
を
移奉
(
うつしまつ
)
る
佃島
(
つくだじま
)
も岸の姫松の
少
(
すくな
)
きに
反橋
(
そりばし
)
のたゆみをかしからず
宰府
(
さいふ
)
は
崇
(
あが
)
め
奉
(
たてまつ
)
る名のみにして
染川
(
そめかわ
)
の色に
合羽
(
かっぱ
)
ほしわたし
思河
(
おもいかわ
)
のよるべに
芥
(
あくた
)
を
埋
(
うず
)
む。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかし、目を一たびそとへ向ければ、現実の社会の動きはとうとうと流れる大河のように、
塵
(
ちり
)
も
芥
(
あくた
)
ものみこんだままゆきつく方向へと流れている。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
渦巻の外側を流れる
芥
(
あくた
)
の如く、ぐるぐる問題のまわりを廻ってばかりいて、仲々その中心にとび込んで行けないのだ。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
母の傍にいる自分などは、恐らく青年の眼には、
塵
(
ちり
)
ほどにも、
芥
(
あくた
)
ほどにも、感ぜられてはいまいと思うと、美奈子は
烈
(
はげ
)
しい
淋
(
さみ
)
しさで胸が
掻
(
か
)
き
擾
(
みだ
)
された。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
田
(
た
)
に
棲
(
す
)
むもの、野に
棲
(
す
)
むもの、
鷸
(
しぎ
)
は四十八
品
(
ひん
)
と称し
候
(
そろ
)
とかや、僕のも
豈夫
(
あにそ
)
れ
調
(
てう
)
あり、
御坐
(
ござ
)
います
調
(
てう
)
あり、
愚痴
(
ぐち
)
ありのろけあり花ならば
色々
(
いろ/\
)
芥
(
あくた
)
ならば
様々
(
さま/″\
)
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
何分にも押しの強い人間で、親兄弟などに遠慮などをする人間ではございません。その上武術が相當にいけるので、私などは
芥
(
あくた
)
ほどにも思つて居りません。
銭形平次捕物控:304 嫁の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
拾われようとさ、また一年たって、サン・クルーの川の中かシーニュの島かで、古い腐った
芥
(
あくた
)
かおぼれた犬の
死骸
(
しがい
)
かの中で拾われようとさ、それが何だね。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
作者部屋というのはどんな所か知らないが、
他人
(
ひと
)
の子を
芥
(
あくた
)
か紙屑のように心得て、片っ端から抛り込むのは何という言い草であろう。実に失敬極まる奴だと思った。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
春の水の美くしく流れているところを見ると、この水の
水上
(
みなかみ
)
が
芥
(
あくた
)
や小石などの間から
湧
(
わ
)
いている水とは思えん、多分水上は柳の木のある辺から湧いているのであろう。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
着物のちりや
芥
(
あくた
)
を打ちはらって、大工たちが彼に声をかけたのだ。無事にすんだ
挨拶
(
あいさつ
)
であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
晴れた日が
幾日
(
いくにち
)
も続いて
乾
(
かわ
)
いた春であつた。
雪解時
(
ゆきげどき
)
にもかゝはらず清水は減つて、
上田橋
(
うへだばし
)
の
袂
(
たもと
)
にある水量測定器の白く塗られた杭には、からびた冬の
芥
(
あくた
)
がへばりついてゐた。
父の死
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
表には玉のごとく月のごとく、立派に紳士然たる顔を装っている人が、その心の中を探り見るに、土のごとく
芥
(
あくた
)
のごとく、いたって不潔なる魂情が隠れていることが分かります。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
捨てられた
芥
(
あくた
)
の中でもがき合っているだけなんだ。僕もつまり芥の中に掃き出された一人の犠牲者なんですよ。成程僕は誰よりも大村君とは親しいしどんなことでも相談し合って来た。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
我命にも換へて
最愛
(
いとをし
)
みし人は
芥
(
あくた
)
の如く我を
悪
(
にく
)
めるよ。恨は彼の骨に徹し、
憤
(
いかり
)
は彼の胸を
劈
(
つんざ
)
きて、ほとほと身も世も忘れたる貫一は、あはれ奸婦の肉を
啖
(
くら
)
ひて、この
熱膓
(
ねつちよう
)
を
冷
(
さま
)
さんとも思へり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
斯
(
かゝ
)
る
曲物
(
くせもの
)
を置きたりとて何の
障
(
さは
)
りにもなるまじけれど、その
芥
(
あくた
)
ある処に集り、
穢物
(
ゑぶつ
)
あるところに群がるの性あるを見ては、人間の往々之に類するもの多きを想ひ至りて
聊
(
いさゝ
)
か
心
(
むね
)
悪くなりたれば
秋窓雑記
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
その塵取の中には
芥
(
あくた
)
がはひつて居る。実にこまかいものである。それで全体の筆数はといふと、極めて少いもので、二分間位に書けてしまひさうな画である。これらも凡手段の及ぶ所でない。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
二人は
殆
(
ほと
)
んど口をきかなかつた。やがて真夜中が来たとき、彼等は舟を流れの中ほどに出しお
互
(
たがい
)
の身体をしつかりと結び付けて舟を静かに倒した。ごく低い水音がして
瀝青
(
れきせい
)
と
芥
(
あくた
)
の波が少し立つた。
水に沈むロメオとユリヤ
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
川面の處々に
洲
(
す
)
があツた。洲には枯葦が淋しく凋落の影を
示
(
み
)
せてゐて、
埃
(
ごみ
)
や
芥
(
あくた
)
もどツさり流寄ツてゐた。其の芥を二三羽の鴉が
啄
(
つゝ
)
き𢌞し、影は霧にぼかされてぽーツと浮いたやうになツて見えた。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
その縁先きまで押しよせてきている
黝
(
くろ
)
い水や、その上に漂っているさまざまな
芥
(
あくた
)
の間をすいすいと水を切りながら泳いでいる小さな魚や昆虫を一人で見ているうちに、ふと私の思いついたものは
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
川には水がまん/\とたたへて、その流れの早いことは、浮いてゐる
塵
(
ちり
)
や
芥
(
あくた
)
が矢を射るより早く流れ去るのを見ても分りました。おまけに、向ふ岸まで一たい何里あるか分らないほどの広さでした。
豆小僧の冒険
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
雀や
燕
(
つばめ
)
は
出産
(
しゅっさん
)
を気がまえて、
新巣
(
しんす
)
の
経営
(
けいえい
)
に
忙
(
せわ
)
しく、昨日も今日も
書院
(
しょいん
)
の
戸袋
(
とぶくろ
)
に
巣
(
す
)
をつくるとて、チュッ/\チュッ/\
喧
(
やかま
)
しく
囀
(
さえず
)
りながら、さま/″\の
芥
(
あくた
)
をくわえ込む。
蠅
(
はえ
)
がうるさい。
蚊
(
か
)
がうるさい。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
引く力
拒
(
こば
)
むちからもつかれはてて
芥
(
あくた
)
のごとく
棄
(
す
)
てられにしか
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
わが家や
芥
(
あくた
)
ながるる川下も美くしと見て
在
(
あ
)
りける君よ
舞姫
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
痛む乳を抱きしめた
水干
(
すいかん
)
の舞姫は、沖へ向って声をからしていた。浪に
漂
(
ただよ
)
う木片や
芥
(
あくた
)
を見ては馳けて行った。しぶきを浴びて、走り狂った。
日本名婦伝:静御前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と云う内にも、
襤褸切
(
ぼろぎれ
)
や、
爪
(
うり
)
の皮、ボオル箱の壊れたのはまだしもで、いやどうも、言おうようのない
芥
(
あくた
)
が目に浮ぶ。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
商店は残らず戸を閉め、宵の
中
(
うち
)
賑
(
にぎやか
)
な露店も今は道端に
芥
(
あくた
)
や
紙屑
(
かみくず
)
を散らして立去った後、ふけ渡った阪道には屋台の飲食店がところどころに残っているばかり。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
大根のチリ鍋は、とっくに煮詰って、
鍋底
(
なべぞこ
)
は潮干の潟に
芥
(
あくた
)
が残っているようである。台所へ出てみると、酒屋の小僧が届けたと見え、ビールが数本届いていた。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
岩、貝殻、石ッコロ、
芥
(
あくた
)
や海草で一杯である。道人は
跣足
(
はだし
)
で歩いて行く。ちっとも苦痛を感じないらしい。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
森はひょろひょろと
蹌踉
(
よろめ
)
きながら後ずさりし、
膿盆
(
のうぼん
)
のような海は時々
妬
(
ねた
)
まし気な視線をギラリと
投
(
なげ
)
かける。やがて、けちくさい
斑
(
まだ
)
らな
芥
(
あくた
)
と化した地球は、だんだんに遠ざかって行く——。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
彼女は多分その瓦斯燈の光りが消えて、参木の部屋の窓が開くまで動かぬだろう。彼女の見ている泥溝の上では、その間にも、泡の吹き出す黒い
芥
(
あくた
)
が徐々に寄り合いながら一つの島を築いていた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
浮びたる
芥
(
あくた
)
の中に一筋の船のあとあるたそがれの川
註釈与謝野寛全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
劉封はもと
螟蛉
(
めいれい
)
の子、山中の一城でも与えておかれればよいでしょう——と、まるであなたを
芥
(
あくた
)
のようにしか視ていない復命をしたものです
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
というよりも
芥
(
あくた
)
を永く溜めては置けない流水のように、新鮮で晴やかな顔が直ぐ後から生れ出て晴やかな顔つきになる。そしてもう別の店の前を掃くのであった。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
あるいはまた成功して虚栄の念に
齷齪
(
あくせく
)
するよりも、
溝川
(
どぶがわ
)
を流れる
芥
(
あくた
)
のような、
無知放埒
(
むちほうらつ
)
な生活を送っている方が、かえってその人には幸福であるのかも知れない。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
岸へ岸へと
支
(
つか
)
うるよう。しまった、潮が
留
(
とま
)
ったと、銑さんが驚いて言った。船べりは泡だらけ。
瓜
(
うり
)
の種、
茄子
(
なす
)
の皮、
藁
(
わら
)
の中へ木の葉が
交
(
まじ
)
って、船も出なければ
芥
(
あくた
)
も流れず。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いかにも自然で無理がない……
芥
(
あくた
)
などが引っかかると……」
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
芥
(
あくた
)
に流れて寄れる
月見草
(
つきみさう
)
の
蕊
(
しべ
)
なれ。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
(死骸の儀なれば、万一の場合は鳥辺山へお捨て下さろうとも、加茂川へ
芥
(
あくた
)
と共にお流し下さろうとも、決して、おうらみには存じませぬ)
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一時
(
いっとき
)
に枯れ死して、わざわざ、ふてくされに、汚い
芥
(
あくた
)
のようなその姿を
曝
(
さら
)
しているのであろう。
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
やや
水嵩
(
みずかさ
)
増して、ささ濁りの流勢は河原の上を
八千岐
(
やちまた
)
に分れ下へ落ちて行く、
蛇籠
(
じゃかご
)
に阻まれる花
芥
(
あくた
)
の渚の緑の色取りは昔に変りはないけれども、魚は少くなったかして、
漁
(
あさ
)
る子供の姿も見えない。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
芥
漢検準1級
部首:⾋
7画
“芥”を含む語句
塵芥
芥溜
芥子
芥川
芥子坊主
芥川龍之介
芥川竜之介
芥屑
芥子園画伝
芥子焼
白芥子
塵芥焼
芥子種
芥捨
芥田
芥子粒
芥箱
雛芥子
塵芥箱
芥子粉
...