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簪
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かんざし
ふりがな文庫
“
簪
(
かんざし
)” の例文
「隱したつて駄目だよ、證據は銀流しの
簪
(
かんざし
)
だ。柳橋で藝妓の
奴
(
やつこ
)
を殺したのを手始めに、四人まで手にかけた、お前は鬼のやうな女だ」
銭形平次捕物控:004 呪ひの銀簪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
故老の話では四五十年前にも一度あったが、その時は女たちが
簪
(
かんざし
)
に小さな
短冊
(
たんざく
)
をつけて、魔よけにしたと云って、その歌を引いてある。
簪につけた短冊
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
堂とは一町ばかり
間
(
あわい
)
をおいた、この樹の
許
(
もと
)
から、桜草、
菫
(
すみれ
)
、山吹、植木屋の
路
(
みち
)
を開き
初
(
そ
)
めて、
長閑
(
のどか
)
に春めく蝶々
簪
(
かんざし
)
、娘たちの
宵出
(
よいで
)
の姿。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蒼白い靄に
埋
(
うず
)
もれながら、すぐ窓下の冬薔薇の木は、
凋
(
しぼ
)
んだ花と満開の花とを
簪
(
かんざし
)
のように着けながら、こんもりと茂って居るのでした。
西班牙の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「どうも申訳が
御在
(
ござい
)
ません。どうぞ御勘弁を……。」とばかり前髪から滑り落ちる
簪
(
かんざし
)
もそのままにひたすら
額
(
ひたい
)
を畳へ
摺付
(
すりつ
)
けていた。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
自分が等々力の妻君から貰ったという紫水晶の
簪
(
かんざし
)
を見せびらかしつつ、甘木柳仙宅襲撃の仕事を見逃がしてくれるように頼み込む。
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「長居していると、麓に待たせておいた
轎舁
(
かごか
)
きが、ひょっと登って来るかもしれない。オオ女の櫛、
簪
(
かんざし
)
も路銀の足し、そいつも拾って」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
母が頭から銀の
簪
(
かんざし
)
をぬいて燈心を掻き立てている姿の幻のようなものを想い出すと同時にあの燈油の濃厚な匂いを聯想するのが常である。
追憶の冬夜
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
士
(
さむらい
)
は、
鍔
(
つば
)
を売り、女は、
簪
(
かんざし
)
を売って献金し、十三ヶ月に渡って、食禄が頂戴できないまでに窮乏してしまった。そして、彼は隠居をした。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
この点にいたると婦人は
侮
(
あなど
)
るべからざる強いところがある。日ごろは一つの
柔
(
やさ
)
しき飾りに過ぎぬ「
簪
(
かんざし
)
も
逆手
(
さかて
)
に
持
(
も
)
てば恐ろしい」。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
幅の狭い茶色の帯をちょっきり
結
(
むすび
)
にむすんで、なけなしの髪を
頸窩
(
ぼんのくぼ
)
へ片づけてその
心棒
(
しんぼう
)
に鉛色の
簪
(
かんざし
)
を刺している。そうして
襷掛
(
たすきがけ
)
であった。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何とかいう先生が無理矢理に切ろうとしたらこの男、
簪
(
かんざし
)
を武器にして手ひどく抵抗した。あちこちですすり泣きの声も聞えた。
私の子供時分
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
その時、由子は、
紅玉
(
ルビー
)
色の、硝子の、
薔薇
(
ローズ
)
カットの施こされた
簪
(
かんざし
)
をお千代ちゃんのたっぷりした束ね髪の横に見たのであった。
毛の指環
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
町が
狭隘
(
せま
)
いせいか、犬まで大きく見える。町の屋根の上には、天幕がゆれていて、
桜
(
さくら
)
の
簪
(
かんざし
)
を差した
娘
(
むすめ
)
達がゾロゾロ歩いていた。
風琴と魚の町
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
お銀様は頭を
自棄
(
やけ
)
に振って、銀の
簪
(
かんざし
)
を机の上へ振り落しました。振り落したその簪をグイと掴んで、呪いの息を写真の
面
(
おもて
)
に吹きかけました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
女は
櫛
(
くし
)
だの
笄
(
こうがい
)
だの
簪
(
かんざし
)
だの
紅
(
べに
)
だのを大事にしました。彼が泥の手や山の獣の血にぬれた手でかすかに着物にふれただけでも女は彼を叱りました。
桜の森の満開の下
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
大連
(
だいれん
)
でみんなが
背嚢
(
はいのう
)
を調べられましたときも、銀の
簪
(
かんざし
)
が出たり、女の着物が出たりして恥を掻く中で、わたくしだけは
大息張
(
おおいばり
)
でござりました。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
簪
(
かんざし
)
をさした
蛇
(
へび
)
と原子爆弾の原理とが仲よく組合わされていた幼年の日の夢を、今更のようになつかしく思い見る次第である。
簪を挿した蛇
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「うるさいのね、さあ、これでいいの」彼女は柚木が本気に自分を見入っているのに満足しながら、
薬玉
(
くすだま
)
の
簪
(
かんざし
)
の垂れをピラピラさせて云った。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
このあいだも旧友の一人に
逢
(
あ
)
って、その細君が小娘の頃、ひらひらの
簪
(
かんざし
)
などを挿して、
長煙管
(
ながキセル
)
をくわえていたことを思い出しておかしかった。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
十一娘はそこで別れて帰ることにして、金の
釵
(
かんざし
)
をとって三娘にやった。三娘も
髻
(
もとどり
)
の上にさした緑の
簪
(
かんざし
)
をぬいて返しをした。
封三娘
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
「——向う山で鳴く鳥は、ちゅうちゅう鳥かみい鳥か、
源三郎
(
げんざぶろう
)
の土産、なにょうかにょう貰って、
金
(
きん
)
ざし
簪
(
かんざし
)
もらって……」
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
何々屋
(
なになにや
)
の
後家
(
ごけ
)
さんが、
帯
(
おび
)
を
縫
(
ぬ
)
ってやったとか。
酒問屋
(
さけとんや
)
の
娘
(
むすめ
)
が、
舞台
(
ぶたい
)
で
揷
(
さ
)
した
簪
(
かんざし
)
が
欲
(
ほ
)
しさに、
親
(
おや
)
の
金
(
かね
)
を十
両
(
りょう
)
持
(
も
)
ち
出
(
だ
)
したとか。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
朱縮緬の帯止をこて/\巻付けて、仕入物の
蒔絵
(
まきえ
)
の櫛に
鍍金足
(
めっきあし
)
に土佐玉の
簪
(
かんざし
)
で、何処ともなく厭味の女が、慣れ/\しく
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
山吹の真白なじくも押出して、いちょうがえしへかけた。五月の節句には
菖蒲
(
しょうぶ
)
の葉を前髪に結んだり、
矢羽根
(
やばね
)
に切ったのを
簪
(
かんざし
)
にさしたものだった。
旧聞日本橋:22 大門通り界隈一束(続旧聞日本橋・その一)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
その繁き葉の一つ一つは
簪
(
かんざし
)
の脚のように必ず二本の葉が並んで、これを幾千万の夫婦の
偕老
(
かいろう
)
の表象だとも見立て得べく
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
図510・511はI嬢で、年は十二位。花
簪
(
かんざし
)
を示し、環の内側には赤い縮緬をくっつける。これはこの年頃の少女には、非常に一般的な髷である。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
申べしと云ばお
菊
(
きく
)
も
得心
(
とくしん
)
して出たりけり
扨
(
さて
)
大岡殿
(
おほをかどの
)
利兵衞に
對
(
むか
)
ひ如何に利兵衞
其方
(
そのはう
)
櫛
(
くし
)
簪
(
かんざし
)
を
證據
(
しようこ
)
として與兵衞
供々
(
とも/″\
)
吉三郎を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
十四
日
(
か
)
の
朝
(
あさ
)
僕
(
ぼく
)
は
支度
(
したく
)
も
匆々
(
そこ/\
)
に
宿
(
やど
)
を
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
した。
銀座
(
ぎんざ
)
で
半襟
(
はんえり
)
、
簪
(
かんざし
)
、
其他
(
そのた
)
娘
(
むすめ
)
が
喜
(
よろこ
)
びさうな
品
(
しな
)
を
買
(
か
)
ひ
整
(
とゝの
)
へて
汽車
(
きしや
)
に
乘
(
の
)
つた。
湯ヶ原より
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
千浪は大きく
頷首
(
うなず
)
いて、髪から、
簪
(
かんざし
)
を抜き取った。そして、大次郎の口もとから眼を離さずに、横ざまに片手をさし伸べて、
行燈
(
あんどん
)
の
灯立
(
ほた
)
ちを
均
(
な
)
らした。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
友染
(
いうぜん
)
の着物に
白茶錦
(
しらちやにしき
)
の帯を
矢
(
や
)
の
字
(
じ
)
結
(
むす
)
びにして、まだ小い頃から
蝶々髷
(
てふ/\まげ
)
やら
桃割
(
もゝわれ
)
を
結
(
ゆ
)
つて、銀の
薄
(
すゝき
)
の
簪
(
かんざし
)
などを挿して
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
わたしは一倍も高い
櫃台
(
デスク
)
の外から
著物
(
きもの
)
や
簪
(
かんざし
)
を差出し、
侮蔑
(
さげすみ
)
の中に銭を受取り、今度は脊長けと同じ
櫃台
(
デスク
)
の前へ行って、長わずらいの父のために薬を買った。
「吶喊」原序
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
危うく「坊主に
簪
(
かんざし
)
さし場がない、畑に蛤掘ってもない」と傍らの小木魚叩いて歌いだしてしまうところだった。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
……長い
袖
(
そで
)
のあるキモノを着ましてね、髪に桜の花の
簪
(
かんざし
)
をさして、いつも眼を伏せて微笑ばかりしていました。
キャラコさん:05 鴎
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そして拭き掃除がすんでしまうと、
手摺
(
てす
)
りにもたれて、お互いに髪を
讃
(
ほ
)
め合ったり、
櫛
(
くし
)
や
簪
(
かんざし
)
の話をしていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
三十本十銭の筆だの、金の
簪
(
かんざし
)
と時計の鎖と羽織の紐と指輪二つとで五十銭という金ぴかがぞろりと並んだ。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
籠の天井は七色の絹の糸の網で、寵を
吊
(
つ
)
るす
紐
(
ひも
)
は皆
簪
(
かんざし
)
の玉にする程の大きな真珠がつないでありました。
孝行鶉の話
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
〽青
簾
(
すだれ
)
川風肌にしみじみと汗に濡れたる(枕がみ袖たもと) 合
鬢
(
びん
)
のほつれを
簪
(
かんざし
)
のとどかぬ(愚痴も惚れた同士命と腕に堀きりの櫛も洗い髪幾度と風に吹けりし)
ながうた勧進帳:(稽古屋殺人事件)
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
中には
雑踏
(
ひとごみ
)
に紛れて知らない男を
罵
(
ののし
)
るものも有った。慾に目の無い町の商人は、
簪
(
かんざし
)
を押付け、
飲食
(
のみくい
)
する物を売り、多くの労働の
報酬
(
むくい
)
を一晩に
擲
(
なげう
)
たせる算段をした。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
隣りの細君が
御召縮緬
(
おめしちりめん
)
に純金の
簪
(
かんざし
)
をと聞きて大いに心を悩まし、急に我もと注文して後によくよく吟味すれば、
豈
(
あに
)
計らんや、隣家の品は綿縮緬に
鍍金
(
めっき
)
なりしとぞ。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
さりとて何等の武器をも持たぬ
彼女
(
かれ
)
は、
咄嗟
(
とっさ
)
の
間
(
あいだ
)
に思案を定めて、頭に
挿
(
さ
)
している銀の
簪
(
かんざし
)
を抜き取った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そして銀のピラピラ
簪
(
かんざし
)
を前の方に飾ったものでございますが、
鼈甲
(
べっこう
)
の櫛笄が灯影に栄え銀簪がちらちらひかる様子は、何と申しましても綺麗なものでございました。
帯の巾が広すぎる
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
すみ子は真赤な帯を胸高に〆めて、何かキラキラする
簪
(
かんざし
)
をさしていた。私と並んで坐って、前に見て知っているので、番組をひろげては得意そうに色々と説明した。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
結いたての日本髪(ごくありきたりの髷だったが、何という名だか園は知らなかった)の根にさした銀の平打の
簪
(
かんざし
)
を抜いて、その脚でするすると一方を切り開いた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
簪
(
かんざし
)
をつまみ出し、香水の瓶をちよつと鼻の先に当てて匂ひを嗅ぐと、礼も言はずに戸棚の中に
蔵
(
しま
)
つた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
返事を差し上げないこともおそれおおいことであると思われて、斎宮の女御は苦しく思いながら、昔のその日の儀式に用いられた
簪
(
かんざし
)
の端を少し折って、それに書いた。
源氏物語:17 絵合
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
簪
(
かんざし
)
だの、鬼灯だの、太白飴だの、葡萄餅だの、竹かんろだの、あやめ団子だの……そうした
果
(
は
)
かない、こまこました、縁日々々した露店が透きなくならんだのである。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
それが髪をまん中から割って、忘れな草の
簪
(
かんざし
)
をさして、白いエプロンをかけて、自働ピアノの前に立っている所は、とんと
竹久夢二
(
たけひさゆめじ
)
君の画中の人物が抜け出したようだ。
葱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お濱さんは
裏口
(
うらぐち
)
から廻つて、貢さんの
居間
(
ゐま
)
の
縁
(
えん
)
に腰を掛けて居た。眉の
上
(
うへ
)
で前髪を一文字に
揃
(
そろ
)
へて切下げた、
雀鬢
(
すゞめびん
)
の
桃割
(
もヽわれ
)
に結つて、
糸房
(
いとぶさ
)
の附いた大きい
簪
(
かんざし
)
を挿して居る。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
『さうなの』と、つね子さんは大へん感心をしまして、赤い鼻緒の草履と赤い花
簪
(
かんざし
)
とを買つてやりました。子兎は赤い鼻緒の草履をはいて、赤い花簪をさして嬉しさうに
つね子さんと兎
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
“簪”の解説
簪(かんざし、釵)は、結髪後に束ねた髪に挿して髪型を保持したり髪飾りに用いる日本の伝統的な装身具である。
英語ではen: hair slide、Hair stickと訳されるが、日本の伝統的装飾具であるためen: Kanzashiでも通用する。
(出典:Wikipedia)
簪
漢検1級
部首:⽵
20画
“簪”を含む語句
銀簪
金簪
玉簪花
花簪
櫛簪
一本簪
金釵玉簪
簪屋
簪纓
玉簪
簪花
菊簪
草簪
花簪児
蝶簪
金釵環簪
簪草
鳳簪
簪揷
簪船
...