立処たちどころ)” の例文
旧字:立處
天晴あつぱ一芸いちげいのあるかひに、わざもつつまあがなへ! 魔神まじんなぐさたのしますものゝ、美女びじよへてしかるべきなら立処たちどころかへさする。——
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其のわなへ入って能くノメ/\と文治郎の宅へ来たな、さア五十両の金を騙り取ろうなどとは申そうようなき大悪人、かく申さば立処たちどころひねり潰して仕舞うぞ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこで立処たちどころに余行を捨てて一向念仏に帰したのである。これぞ承安五年の春、法然四十三歳の時。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
実は御願おんねがい只今ただいま上りましたので御座ございますと、涙片手の哀訴に、私はただちにって、剃刀かみそり持来もちきたって、立処たちどころに、その娘の水のるような緑の黒髪を、根元から、ブツリ切ると
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
子供達は我意わがいを得たと云わぬばかりに、立処たちどころに賛成した。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さればこそ、嬢さんと聞くとひとしく、朝から台所で冷酒ひやざけのぐいあおり、魚屋と茶碗を合わせた、その挙動ふるまい魔のごときが、立処たちどころに影を潜めた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
忠「これは家伝の薬で功能は立処たちどころにある」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そして、その人、その時、はた明を待つまでもない、この美人たおやめの手、一たび我に触れなば、立処たちどころにその唄を聞き得るであろうと思った。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おその上、四国遍路に出る、その一人が円髷まるまげで、一人が銀杏返いちょうがえしだったのでありますと、私は立処たちどころしゃくを振って飛出とびだしたかも知れません。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
面倒はらん。先生が立処たちどころに手をいて、河野へ連れてお出でなすって構いません。早瀬が不可いけない、と云えば、断然お断りをするまでです。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、縁はすぐつながるよ。会のかえりに酔払って、今夜、立処たちどころに飛込むんだ。おでん、鍋焼、おごる、といって、一升買わせて、あの白い妾。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
辻町の何よりも早くここでしよう心は、立処たちどころに縄を切って棄てる事であった。瞬時といえども、人目にさらすに忍びない。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
情に堪えないで、そのまま抱緊だきしめでもしようものなら、立処たちどころにぱッと羽搏はばたきを打つ……たちまち蛇が寸断ずたずたになるんだ。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手を取って助けるのに、すがってうばかりにして、辛うじて頂上へ辿たどることが出来た。立処たちどころに、無熱池の水は、白き蓮華れんげとなって、水盤にふきあふれた。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
画工ゑかきさんは立処たちどころにコバルトのいたし、博士はかせむらさきてふつて、小屋こやうらの間道かんだううらはやしはいつたので。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
洛中らくちゅう是沙汰これさた。関東一円、奥州まで、愚僧が一山いっさんへも立処たちどころに響いた。いづれも、京方きょうがた御為おんため大慶たいけいに存ぜられる。此とても、お行者のお手柄だ、はて敏捷すばやい。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
内弟子にめる時元老が聞いた——「坊主、修業をして、舞台へ浪が出せるかな。」八郎が立処たちどころに、「いけなけりゃ、バケツに水をんで置いて打撒ぶちまくよ。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……儲けるどころか、対手方あいてかたに大分のかりが出来た、さあどうする。……で、損料……立処たちどころに損料を引剥ひっぱぐ。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ゆ、ゆめだか、うつつだかわかり兼ねます。礼吉が、いいかげん、五十近いこの年でありませんと、いきなり、ひっくりかえって、立処たちどころ身体からだが消えたかも分りません。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれ恐懼おそれて日光を見ず、もし強いて戸を開きて光明そのはだえに一注せば、渠は立処たちどころに絶して万事まむ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蝶、蜻蛉とんぼあり蚯蚓みみず、目を遮るに任せてこれを屠殺とさつしたが、馴るるに従うて生類を捕獲するすさみに熟して、蝙蝠こうもりなどは一たび干棹ほしざおふるえば、立処たちどころに落ちたのである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日本一の不所存もの、恩地源三郎が申渡す、向後一切いっせつ、謡を口にすること罷成まかりならん。立処たちどころに勘当だ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……汝等なんじら此処こゝに、立処たちどころ作品さくひんかげあらはれたるまぼろし姿すがたたいして、れいきをぢざるや……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かゆさは、香水で立処たちどころに去りましたが、息がつまる、余り暑いから、立って雨戸を一枚りました。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時に、脇指わきゆびに手を掛けはしたものの、鷲のために支へられて梢にまつた身体からだである。——殺しおほせるまでも、かれきずつけて地に落されたら、立処たちどころに五体が砕けよう。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
霊廟れいびょうの土のおこりを落し、秘符ひふの威徳の鬼を追ふやう、立処たちどころに坊主の虫歯をいやしたはることながら、路々みちみち悪臭わるぐささの消えないばかりか、口中こうちゅうの臭気は、次第に持つ手をつたわつて
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いましめは顕われ、しつけは見えた。いまその一弾指のもとに、子供等は、ひっそりとして、エンジンの音立処たちどころに高く響くあるのみ。そのしずかさは小県ただ一人の時よりも寂然ひっそりとした。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よしやその渾名あだなのごとき、横に火焔車かえんしゃを押しいだす天魔のおとしだねであろうとも、このに取っては、かまどの下をきつくべき、火吹竹に過ぎず、と知って、立処たちどころに心が融けると
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これえ消したが最後、立処たちどころに六道の辻に迷うだて。南無阿弥陀仏なんまいだ、御坊様、まだかね。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
滅相なことをおっしゃる、飛んでもない、こんな者をお邸へ入れますのは、疫病神を背負込しょいこむとおんなじです。ままよ、癪の虫を揉殺もみころして立処たちどころなおしてやる、まんざら嘘でもないようだ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
立処たちどころにこの部屋へお姿があらわれますからお休みなさりながらお待ちなさい、と机のわきに坐り込んで、煙草たばこもうとして、打棄うっちゃって、フイと立って蒲団を持出すやら、開放あけはなしましょう
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
棍元教の大先達が、自在棒を押取おっとって控えたからには、たなそこをめぐらさず、立処たちどころに退治てくれる。ものと、しなにっては、得脱成仏もさしてる。……対手あいてによっては、行方ぎょうりきが手荒いぞ。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あいつ、高慢だことの、ツンとしているのと、口でけなして何とかじゃないのかい。刺違えるならここで頼む。お互に怪我はしても、生命いのちに別条のない決闘なら、立処たちどころにしようと云うんだ。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
樹の間からいて出たような例の姿を、通りがかりに一見し、みまもり瞻り、つい一足歩行あるいた、……その機会はずみに、くだんの桃の木に隠れたので、今でも真正面まっしょうめんへちょっと戻れば、立処たちどころにまた消えせよう。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(早いな、われがような下根げこんな奴には、三年かかろうと思うた分別が、立処たちどころは偉い。おれを呼ぶからには工夫が着いたな。まず、褒美ほうびを遣る。そりゃ頂け、)と柿のへたを、色白な多一の頬へたたきつけた。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
弦光は案じ入って、立処たちどころに年を取ることとおばかり。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ると、立処たちどころこひせる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
当方立処たちどころ懐中ふところが大きくなった。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
只今ただいま立処たちどころに自殺します。)
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)