汽笛きてき)” の例文
やがて、ピューと汽笛きてきが鳴って、車がつく。待ち合せた連中はぞろぞろがちに乗り込む。赤シャツはいの一号に上等へ飛び込んだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
にんうちのもっとも年下とししたへいは、そらかんがえていました。このとき、とおきたほううみ汽笛きてきおとがかすかにこえたのでありました。
不死の薬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
機関車きかんしゃの前へのこのこでてきてにげようともしないので、汽笛きてきをピイピイらしてやっといはらったというような話もあった。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
お光も小池と同じやうに、名も知れぬ神の宮の大銀杏おほいてふを見上げて言つた。ひよが二羽、銀杏の枝から杉の木に飛び移つて、汽笛きてきのやうな啼き聲を立てた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
私はとっさに、汽笛きてきをならし、制動機せいどうきに手をかけて、汽車をめようとしました。火夫かふたちもみな立上たちあがりました。むこうの汽車でも、汽笛きてきをならしています。
ばかな汽車 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
年齡としむにしたがつてみじかかんずる月日つきひがさういふあひだ循環じゆんくわんして、くすんでえることのおほ江戸川えどがはみづ往復わうふくする通運丸つううんまるうしえるやうな汽笛きてきみて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
発電所の煙突は、時間どおり、黒煙を吐いて怒濤どとうのように、海水を吐き入れていた。一時の汽笛きてきが鳴っても、職工たちは、わいわいとさわいで、就業にかかりそうもない。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時々豆腐屋とうふやすゞの音、汽笛きてきの音、人の聲などがハツキリと聞える。また待乳山まつちやまで鰐口が鳴ツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
の結果長吉ちやうきちはるむかうに明治座めいぢざ屋根やねを見てやがてやゝ広い往来わうらいへ出た時、の遠い道のはづれに河蒸汽船かはじようきせん汽笛きてきの音のきこえるのに、初めて自分の位置と町の方角とをさとつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ぽうと云ふ空洞うつろ汽笛きてきの音が響いて、いつの間にか汽船が一艘黒い煙を吐きながら、近くの沖へ来て碇泊ていはくしてゐるのに気がついたが、間もなく漕ぎ寄つた一艘の端艇はしけに、荷物や人を受取つて
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
長崎の茂木もぎみなとにかよふ船ふとぶとと汽笛きてきを吹きいだしたり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
たちま幽怪いうくわいなる夜陰やいん汽笛きてきみゝをゑぐつてぢかにきこえた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
時しもあれや、運河のうへ大西洋定期船たいせいやうていきせん汽笛きてきの聲。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ねむたげな桜並木なみき一声ひとこゑ汽笛きてきの音がつつ走りけり
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
工場こうば汽笛きてきが、あれるよ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
遠近をちこち汽笛きてきしばらく
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
やがて、あちらのやまを、海岸かいがんほうへまわるとみえて、一せい汽笛きてきが、たかそらへひびくと、くるまおとがしだいにかすかにえていきます。
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
驛名を書いた立札たてふだの雨風にさらされて黒く汚れたのが、雜草の生えた野天のてんのプラツトフオームに立つてゐる眞似事まねごとのやうな停車場ステーシヨンを、汽車は一せい汽笛きてきとゝもに過ぎ去つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
メレジスの小説にこんな話がある。——ある男とある女がしめし合せて、停車場ステーションで落ち合う手筈てはずをする。手筈が順に行って、汽笛きてきがひゅうと鳴れば二人の名誉はそれぎりになる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この時、だしぬけに汽笛きてきが、ヒョーとった。くだりのカーブにかかる合図あいずなのだ。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
佐渡丸さどまるととほり過がへり海わたる汽笛きてきかたみに高きひととき
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
このさむあさ、そんなにはやくからきるものはないだろう。みんなとこなかに、もぐりんでいて、そんな汽笛きてきおと注意ちゅういをするものはない。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まちなかあるいているむすめは、ただこのとき、汽笛きてきおとみみいたばかりです。それは、みなとまっている汽船きせんからいたふえおとであります。
気まぐれの人形師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あいづちをうつごとく、どこかの工場こうばから、正午しょうご汽笛きてきりひびきました。少年しょうねんは、これを機会きかいに、おかりたのでした。
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人々ひとびとが、外国人がいこくじんたすけたいというまごころが、あちらのふねつうじたとみえて、ふねから、汽笛きてきが、たびきこえました。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつまでたっても、ほかに、だれもがってこなかった。また、みみかたむけても、汽笛きてきおとさえきこえなかったのでした。
死と話した人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「二つの煙突えんとつが、どちらの工場こうじょう汽笛きてきはやいか、だれか、裁判さいばんするものをほしがっています。」と、やさしいほしは、みんなにかっていいました。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうど、このとき、一はやくかのじょ出発しゅっぱつをすすめるように、どこかのえきらす汽車きしゃ汽笛きてきおとが、あおざめた夜空よぞらに、とおくひびいたのでした。
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
星晴ほしばれのしたさむそらに、二つはたかあたまをもたげていましたが、このあさ昨日きのうどちらの工場こうじょう汽笛きてきはやったかということについて、議論ぎろんをしました。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
汽笛きてきって、工場こうじょうもんをでるころには、西にしやまはいるのでありました。ふと、達夫たつおあるきながら
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうち、おひるの汽笛きてきったので、二人ふたりは、くさうえからがって、あちらへあるいていきました。
町はずれの空き地 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、きゅうに、いままできこえなかった、とおくでる、汽笛きてきおとなどがみみにはいるのでした。
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると、つぎには、紫色むらさきいろ水平線すいへいせんのもりがるうみえました。どこか他国たこくみなとから、たくさんの貨物かもつをつんできたのであろうか、汽笛きてきをならして、はいってきたふねがあります。
心は大空を泳ぐ (新字新仮名) / 小川未明(著)
小舟こぶねちいさく、ちいさくなって、いつしかふねにこぎつくと、ひとふねも、同時どうじに、きあげられて、ふねは、れてゆくそら汽笛きてきらして、いずこへともなくってしまいました。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのばんのことであります。あちらには、みなとのあたりのそらをあかあかと燈火とうかひかりめていました。そして、汽笛きてきおとや、いろいろの物音ものおとが、こちらのまちほうまでながれてきました。
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ピョーと、汽笛きてきたかくひびいて、汽車きしゃがとまると、かれはおりなければならなかった。
赤いガラスの宮殿 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれが、いしさがしているときでした。トンネルのぐち汽笛きてきがしました。あわてて、かれは、ぴたりとトンネルの煉瓦れんがかべをつけると、すさまじいひびきをたてて汽車きしゃ通過つうかしました。
このとき、汽車きしゃ故障こしょうなおって、汽笛きてきらすと、ふたたびうごきしました。
窓の下を通った男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがて正午しょうごになると、ちかくの工場こうじょうから、汽笛きてきがきこえます。すると一どうやすめて、昼飯ひるめしべる用意よういをしました。それからの一時間じかんは、はたらく人々ひとびとにとって、なによりたのしかったのでした。
はたらく二少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ボーウと、たか汽笛きてきおとがしました。
昼のお月さま (新字新仮名) / 小川未明(著)