朝顏あさがほ)” の例文
新字:朝顔
椿つばきこずゑには、ついのあひだ枯萩かれはぎえだつて、そのとき引殘ひきのこした朝顏あさがほつるに、いつしろのついたのが、つめたく、はら/\とれてく。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なつになるとコスモスを一面いちめんしげらして、夫婦ふうふとも毎朝まいあさつゆふか景色けしきよろこんだこともあるし、またへいしたほそたけてゝ、それへ朝顏あさがほからませたこともある。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ふでぢくさきはうだけを小刀こがたななにかでいくつにもりまして、朝顏あさがほのかたちにげるといゝのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
狹苦せまくるしいにしてもきちんとした傭人部屋やとひにんべや周圍しうゐつち箒目はうきめれてみづでもつてたり、其處そこらでつく朝顏あさがほなへもらつてどんな姿なりにもはちうゑたりしてると奉公ほうこうつらくもおもはないのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
にははさながら花野はなのなり桔梗ききやう刈萱かるかや女郎花をみなへし我亦紅われもこう瑠璃るりける朝顏あさがほも、弱竹なよたけのまゝ漕惱こぎなやめば、むらさきと、と、薄藍うすあゐと、きまどひ、しづなびく。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その受口うけくちたまのやうにふくらめた酸醤ほゝづきをのせ、したからきましたら、かる酸醤ほゝづきがくる/\とひあがりました。そして朝顏あさがほなりのくだうへ面白おもしろいやうにちてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
もすそ濡縁ぬれえんに、瑠璃るりそらか、二三輪にさんりん朝顏あさがほちひさあはく、いろしろひとわきあけのぞきて、おび新涼しんりやうあゐゑがく。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つきのはじめにあきてば、あさ朝顏あさがほつゆはあれど、るゝともなき薄煙うすけむりのきめぐるもひでりかげほのほやまくろそびえて、やがあつさにくづるゝにも、熱砂ねつさみなぎつて大路おほぢはしる。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……かきはな、さみだれの、ふるのきにおとづれて、朝顏あさがほなへや、夕顏ゆうがほなへ……
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あかひたひあをほゝ——からうじてけむりはらつたいとのやうな殘月ざんげつと、ほのほくもと、ほこりのもやと、……あひだ地上ちじやうつゞつて、めるひともないやうな家々いへ/\まがきに、朝顏あさがほつぼみつゆかわいてしをれつゝ
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この朝顏あさがほ夕顏ゆふがほつゞいて、藤豆ふぢまめ隱元いんげん、なす、さゝげ、たうもろこしのなへ、また胡瓜きうり糸瓜へちま——令孃方れいぢやうがた愛相あいさうに(お)のをつけて——お南瓜たうなすなへ、……と、砂村すなむらせいぞろひにおよんだ、一騎當千いつきたうせん
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……昨夜ゆうべ戸外おもて舞靜まひしづめた、それらしい、銀杏いてふえだが、大屋根おほやねしたが、一坪ひとつぼばかりのにはに、瑠璃るりあはいて、もうちひさくなつた朝顏あさがほいろすがるやうに、たわゝにかゝつたなかに、一粒ひとつぶ
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
せままちまぐろしい電線でんせんも、ぎんいといたやうで、樋竹とひだけけた蜘蛛くもも、今朝けさばかりはやさしくえて、あを蜘蛛くも綺麗きれいらしい。そら朝顏あさがほ瑠璃色るりいろであつた。欄干らんかんまへを、赤蜻蛉あかとんぼんでる。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
苗屋なへやつた朝顏あさがほも、もうくよ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)