日盛ひざか)” の例文
従来これまでに無い難産なんざんで、産のが附いてから三日目みつかめ正午まひる、陰暦六月の暑い日盛ひざかりにひど逆児さかごで生れたのがあきらと云ふおそろしい重瞳ぢゆうどうの児であつた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
けれども、ふゆ鳥打帽とりうちばうかむつた久留米絣くるめがすり小僧こぞうの、四顧しこ人影ひとかげなき日盛ひざかりを、一人ひとりくもみねかうして勇氣ゆうきは、いまあいする。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また、あつ日盛ひざかりには、らくらしているような人々ひとびとは、みんな昼寝ひるねをしている時分じぶんにも、はたけこえをかけてやりました。
大根とダイヤモンドの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すなわち日盛ひざかりの意味だったのをわすれて、昼寝をヒノツリといい、八朔の日をヒノツリの取上げという人さえあった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
門野かどのさん。僕は一寸ちよつと職業をさがしてる」と云ふや否や、とり打帽をかぶつて、かささずに日盛ひざかりのおもてへ飛び出した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
この暑い日盛ひざかりを、当てもなく歩いても仕様がないと思っていた鷺太郎は、結局一日をぽかんと暮してしまった。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
日盛ひざかりになったから熊本城はほんの通り抜け丈けにして、町へ出ると直ぐに乗合自動車で水前寺すいぜんじへ駈けつけた。池の畔の料亭へ上り込んで思うさま涼を入れた。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と、いって、おかあさんは、あのみちあつ日盛ひざかりにとお人々ひとびとをかぞえあげました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
夏も七月の暑い日盛ひざかりに開けはなった窓の前で、年とった女中頭が真白に輝いている精製糖せいせいとうの棒を打ち砕いて、キラキラする破片かけらにしているとき、その上をまいまい飛び回っている蠅のようだ。
しかし日盛ひざかりの暑さにはさすがにうちを出かねて夕方になるのを待つ。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
りしらむ日盛ひざかりの都大路みやこおほぢ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
日盛ひざかりごろで、あたりは、しんとして、つよなつ日光にっこうが、や、くさうえにきらきらときらめいているばかりでした。
泣きんぼうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すぐ翌日よくじつであつた。がこれちつ時間じかんおそい。女中ぢよちうばん買出かひだしに出掛でかけたのだから四時頃よじごろで——しかし眞夏まなつことゆゑ、片蔭かたかげ出來できたばかり、日盛ひざかりとつてもい。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あるなつ日盛ひざかりに、二人ふたりして、なが竿さをのさきへ菓子袋くわしぶくろくゝけて、おほきなかきしたせみりくらをしてゐるのを、宗助そうすけて、兼坊けんばうそんなにあたまらしけると霍亂くわくらんになるよ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しか日盛ひざかりの暑さにはさすがにうちを出かねて夕方ゆふかたになるのを待つ。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
乞食こじきは、きたならしいふうをして、だれもとおらない、日盛ひざかりごろを往来おうらいうえあるいていたのです。すると、あたまうえで、つばめがいていました。
長ぐつの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
眞夏まなつ日盛ひざかりの炎天えんてんを、門天心太もんてんこゝろぷとこゑきはめてよし。しづかにして、あはれに、可懷なつかし。すゞしく、まつ青葉あをば天秤てんびんにかけてになふ。いゝこゑにて、ながいてしづかきたる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さむふゆも、また、あつなつ日盛ひざかりもいとわずにはたらきました。そして、自分じぶんいえのためにくしました。
海のかなた (新字新仮名) / 小川未明(著)
いま、くるま日盛ひざかりを乘出のりだすまで、ほとんくちにしたものはない。直射ちよくしやするひかりに、くるまさかなやんでほろけぬ。洋傘かうもりたない。たてふゆ鳥打帽とりうちばうばかりである。わたしかた呼吸いきあへいだ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なつになると、つばめがんできました。そして、そのかわいらしい姿すがた小川おがわみずおもてうつしました。またあつ日盛ひざかりごろ、旅人たびびと店頭みせさきにきてやすみました。そして、四方よもはなしなどをしました。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
櫻山さくらやま夏鶯なつうぐひすれつゝ、岩殿寺いはとのでら青葉あをば目白めじろく。なつかしや御堂みだう松翠しようすゐ愈々いよ/\ふかく、鳴鶴なきつるさきなみあをくして、新宿しんじゆくはまうすものゆきく。そよ/\とかぜわたところ日盛ひざかりもかはづこゑたからかなり。
松翠深く蒼浪遥けき逗子より (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けれど、おとこ根気こんきよく、日盛ひざかりをかさをかぶって、黄色きいろふくろげて
薬売り (新字新仮名) / 小川未明(著)