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ふりがな文庫
“
小家
(
こいえ
)” の例文
はたと、これに空想の
前途
(
ゆくて
)
を
遮
(
さえぎ
)
られて、驚いて
心付
(
こころづ
)
くと、
赤楝蛇
(
やまかがし
)
のあとを過ぎて、
機
(
はた
)
を織る
婦人
(
おんな
)
の
小家
(
こいえ
)
も通り越していたのであった。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
福地の
邸
(
やしき
)
の板塀のはずれから、北へ二三軒目の
小家
(
こいえ
)
に、ついこの頃「川魚」と云う看板を掛けたのがある。僕はそれを見て云った。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お
仙
(
せん
)
と云う下女が来て、
昨夕
(
ゆうべ
)
桂川
(
かつらがわ
)
の水が増したので門の前の
小家
(
こいえ
)
ではおおかたの荷を
拵
(
こしら
)
えて、預けに来たという話をした。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そしてそこいらの或
小家
(
こいえ
)
のところまで来ますと、さもかえるところまでかえったというように、その家のうしろの方へのそのそはいっていきました。
やどなし犬
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
と立ちつづく
小家
(
こいえ
)
の前で歌ったが金にならないと見たか歌いも
了
(
おわ
)
らず、元の
急足
(
いそぎあし
)
で
吉原土手
(
よしわらどて
)
の方へ行ってしまった。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
それもボルドーや、ツールーズや、リヨンなどに
比
(
くら
)
べては、ずっとびんぼうらしいあわれな
小家
(
こいえ
)
ばかりであった。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
素戔嗚は
言下
(
ごんか
)
に意を決すると、いきなり相手を引っ立てながら、あの牛飼いの若者がたった一人住んでいる、そこを余り離れていない
小家
(
こいえ
)
の方へ歩き出した。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
路次の中へ路次が通じて
迷図
(
めいず
)
のように紛糾した処には、一二年前まで私娼のいた
竹格子
(
たけごうし
)
の附いた
小家
(
こいえ
)
が雑然と
簷
(
のき
)
を並べていたが、今は皆禁止せられて、
僅
(
わず
)
かに残った家は
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
波濤
(
はとう
)
があの
小家
(
こいえ
)
を撃ち、庭の木々が
軋
(
きし
)
めく時、沖を過ぎる舟の中の、心細い舟人は、エルリングが家の窓から
洩
(
も
)
れる、小さい
燈
(
ともしび
)
の光を慕わしく思って見て通ることであろう。
冬の王
(新字新仮名)
/
ハンス・ランド
(著)
お島はその時、
貰
(
もら
)
い
子
(
ご
)
の小娘を手かけに
負
(
おぶ
)
って、裏の山畑をぶらぶらしながら、道端の花を
摘
(
つ
)
んでやったりしていた。この町でも場末の汚い
小家
(
こいえ
)
が、二三軒離れたところにあった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
扨
(
さ
)
て世捨人になったお若さんでげすが、伯父の晋齋に頼みまして
西念寺
(
さいねんじ
)
の
傍
(
わき
)
に庵室とでも申すような、膝を
容
(
い
)
れるばかりな
小家
(
こいえ
)
を借り、
此処
(
こゝ
)
へ独りで住んで行いすまして居りまする。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
二人は湖水にぴったり食っ付いている
小家
(
こいえ
)
を借りた。本当の村とは離れて、一列の家が水に沿うて立てられていて、それがしまいには離れ離れになっている、その一番
端
(
はし
)
の一軒である。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
そのとき、わたくしはふと、そのへんに一けん、
小家
(
こいえ
)
をみつけました。
ルンペルシュチルツヒェン
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
前に夏の部で評釈した句「
五月雨
(
さみだれ
)
や
御豆
(
みず
)
の
小家
(
こいえ
)
の
寝醒
(
ねざ
)
めがち」
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
気の置けない、のん気な
小家
(
こいえ
)
を立てさせましょう。10170
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
一、 門前の
小家
(
こいえ
)
もあそぶ冬至かな
凡兆
(
ぼんちょう
)
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
小家
(
こいえ
)
がちょっと両側に続いて、うんどん、お
煮染
(
にしめ
)
、
御酒
(
おんさけ
)
などの店もあった。が、
何処
(
どこ
)
へも休まないで、
車夫
(
わかいしゅ
)
は坂の下で
俥
(
くるま
)
をおろした。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これは初め商売を始めようと思って
土著
(
どちゃく
)
したのではなく、唯
稲葉
(
いなば
)
という家の門の片隅に
空地
(
くうち
)
があったので、そこへ
小家
(
こいえ
)
を建てて住んだのであった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そういう
小家
(
こいえ
)
の曲り角の汚れた
板目
(
はめ
)
には売薬と
易占
(
うらない
)
の広告に
交
(
まじ
)
って至る
処
(
ところ
)
女工募集の
貼紙
(
はりがみ
)
が目についた。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
人に
見棄
(
みす
)
てられた家と、葉の落ち尽した
木立
(
こだち
)
のある、広い庭とへ、沈黙が抜足をして尋ねて来る。その時エルリングはまた昂然として頭を挙げて、あの
小家
(
こいえ
)
の中の
卓
(
たく
)
に
靠
(
よ
)
っているのであろう。
冬の王
(新字新仮名)
/
ハンス・ランド
(著)
彼はずるずる若者を引きずりながら、とうとう目ざす
小家
(
こいえ
)
まで来た。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
鶯
(
うぐいす
)
のあちこちとするや
小家
(
こいえ
)
がち 蕪村
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
寝息も聞えぬ
小家
(
こいえ
)
あまた、水に臨んだ岸にひょろひょろとした細くって低い柳があたかも墓へ手向けたもののように
果敢
(
はか
)
なく植わっている。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
今一つは無縁坂の中程にある
小家
(
こいえ
)
である。それは札も何も出ていなかったが、売りに出たのを聞いて見に行った。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
川添いの
小家
(
こいえ
)
の裏窓から、いやらしい姿をした女が、
文身
(
ほりもの
)
した
裸体
(
はだか
)
の男と酒を
呑
(
の
)
んでいるのが見える。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
鶯
(
うぐいす
)
のあちこちとするや
小家
(
こいえ
)
がち
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
麓路
(
ふもとじ
)
は
堤防
(
どて
)
とならびて、
小家
(
こいえ
)
四五軒、
蒼白
(
あおじろ
)
きこの夜の色に、氷のなかに
凍
(
い
)
てたるが、
透
(
すか
)
せば見ゆるにさも似たり。月は峰の松の
後
(
うしろ
)
になりぬ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
茂った竹藪や
木立
(
こだち
)
の蔭なぞに古びた
小家
(
こいえ
)
の続く場末の町の
小径
(
こみち
)
を歩いて行く時、自分はふいと半ば枯れかかった杉垣の間から、少しばかり草花を植えた小庭の竹竿に
夏の町
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
渋江氏が亀沢町に来る時、五百はまた長尾一族のために、
本
(
もと
)
の
小家
(
こいえ
)
を新しい邸に
徙
(
うつ
)
して、そこへ一族を
棲
(
すま
)
わせた。
年月
(
ねんげつ
)
は
詳
(
つまびらか
)
にせぬが、長尾氏の二女の人に嫁したのは、亀沢町に来てからの事である。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
片側は、右のその物置に、ただ戸障子を
繋合
(
つなぎあ
)
わせた
小家
(
こいえ
)
続き。で、一二軒、八百屋、駄菓子屋の店は見えたが、
鴉
(
からす
)
も
居
(
お
)
らなければ犬も居らぬ。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
当時凌雲閣の近処には依然としてそういう
小家
(
こいえ
)
がなお数知れず残っていたが、震災の火に焼かれてその跡を絶つに及び、ここに玉の井の名が俄に
言囃
(
いいはや
)
されるようになった。
寺じまの記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「お遊びな、
一所
(
いつしよ
)
にお遊びな。」とせまりて勧めぬ。
小家
(
こいえ
)
あちこち、このあたりに住むは、かたゐといふものなりとぞ。風俗少しく異なれり。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし柳畠にはもう別荘らしい門構もなく、また堤には一本の桜もない。両側に立ち続く
小家
(
こいえ
)
は、堤の上に板橋をかけわたし、日満食堂などと書いた
納簾
(
のれん
)
を飜しているのもある。
寺じまの記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
小家
(
こいえ
)
あちこち、このあたりに住むは、かたいというものなりとぞ。風俗少しく異なれり。
児
(
こ
)
どもが親達の家富みたるも
好
(
よ
)
き
衣
(
きぬ
)
着たるはあらず、大抵
跣足
(
はだし
)
なり。
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その
木陰
(
こかげ
)
に
土弓場
(
どきゅうば
)
と
水茶屋
(
みずぢゃや
)
の
小家
(
こいえ
)
は幾軒となく低い
鱗葺
(
こけらぶき
)
の屋根を並べているのである。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
この
川沿
(
かわぞい
)
は、どこもかしこも、蘆が生えてあるなれど、
私
(
わし
)
が
小家
(
こいえ
)
のまわりには、また
多
(
いこ
)
う茂ってござる。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
門口
(
かどぐち
)
に柳のある新しい二階家からは三味線が聞えて、水に添う低い
小家
(
こいえ
)
の
格子戸外
(
こうしどそと
)
には
裸体
(
はだか
)
の亭主が涼みに出はじめた。長吉はもう来る時分であろうと思って
一心
(
いっしん
)
に橋向うを眺めた。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
かつ
溝川
(
みぞがわ
)
にも、井戸端にも、傾いた軒、崩れた壁の
小家
(
こいえ
)
にさえ、
大抵
(
たいてい
)
皆、
菖蒲
(
あやめ
)
、
杜若
(
かきつばた
)
を植えていた。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その理由は
啻
(
ただ
)
に男女相思の艶態に恍惚たるがためのみに
非
(
あら
)
ず、人物と調和せるその背景が常に
清洒
(
せいしゃ
)
なる
小家
(
こいえ
)
の
内外
(
ないがい
)
を描き、
格子戸
(
こうしど
)
小庭
(
こにわ
)
欞子窓
(
れんじまど
)
より
枕
(
まくら
)
屏風
(
びょうぶ
)
長火鉢
(
ながひばち
)
箱梯子
(
はこばしご
)
竈
(
かまど
)
等に至るまで
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
紅
(
くれない
)
の
曙
(
あけぼの
)
、緑の暮、花の
楼
(
たかどの
)
、柳の
小家
(
こいえ
)
に
出入
(
ではいり
)
して、遊里に
馴
(
な
)
れていたのであるが、
可懐
(
なつか
)
しく尋ね寄り、用あって
音信
(
おとず
)
れた、
往
(
ゆ
)
くさきざきは、残らず
抱
(
かかえ
)
であり、
分
(
わけ
)
であり
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
此方
(
こなた
)
は土管、
地瓦
(
ちがわら
)
、川土、材木などの問屋が人家の間に
稍
(
やや
)
広い店口を示しているが、堀の幅の狭くなるにつれて次第に
貧気
(
まずしげ
)
な
小家
(
こいえ
)
がちになって、夜は堀にかけられた
正法寺橋
(
しょうほうじばし
)
、
山谷橋
(
さんやばし
)
、
地方橋
(
じかたばし
)
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
薄
(
うっす
)
りと
廂
(
ひさし
)
を包む
小家
(
こいえ
)
の、紫の
煙
(
けぶり
)
の中も
繞
(
めぐ
)
れば、低く裏山の根にかかった、
一刷
(
ひとはけ
)
灰色の
靄
(
もや
)
の間も通る。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
むかし土手の下にささやかな門をひかえた
長命寺
(
ちょうめいじ
)
の堂宇も今はセメント
造
(
づくり
)
の
小家
(
こいえ
)
となり、境内の石碑は一ツ残らず取除かれてしまい、
牛
(
うし
)
の
御前
(
ごぜん
)
の社殿は
言問橋
(
ことといばし
)
の袂に移されて人の目にはつかない。
水のながれ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
砂山を細く開いた、両方の
裾
(
すそ
)
が向いあって、あたかも二頭の恐しき獣の
踞
(
うずくま
)
ったような、もうちっとで荒海へ出ようとする、
路
(
みち
)
の
傍
(
かたえ
)
に、
崖
(
がけ
)
に添うて、一軒漁師の
小家
(
こいえ
)
がある。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は
唯
(
ただ
)
古びた貧しい
小家
(
こいえ
)
つづきの
横町
(
よこちょう
)
なぞを通り
過
(
すぎ
)
る時、ふと路のほとりに半ば崩れかかった寺の門を見付けてああこんな処にこんなお寺があったのかと思いながら、そっとその
門口
(
もんぐち
)
から
境内
(
けいだい
)
を
窺
(
うかが
)
い
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
するとその豆腐の桶のある
後
(
うしろ
)
が、
蜘蛛
(
くも
)
の巣だらけの藤棚で、これを
地境
(
じざかい
)
にして壁も
垣
(
かき
)
もない
隣家
(
となり
)
の
小家
(
こいえ
)
の、
炉
(
ろ
)
の
縁
(
ふち
)
に、膝に手を置いて
蹲
(
うずくま
)
っていた、
十
(
とお
)
ばかりも年上らしいお
媼
(
ばあ
)
さん。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ついて右へ廻ると
粋
(
いき
)
な格子戸の内に御神燈を
釣
(
つる
)
したのがあるが、あらず、左へ向うと、いきなり縁側になって、奥の石垣が
見透
(
みとお
)
される板屋根の
小家
(
こいえ
)
がある、そこが引越先であった。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
右手に
大溝
(
おおどぶ
)
があって、雪を
被
(
かつ
)
いで
小家
(
こいえ
)
が並んで、そして三階
造
(
づくり
)
の大建物の裏と見えて、ぼんやり
明
(
あかり
)
のついてるのが見えてね、
刎橋
(
はねばし
)
が幾つも幾つも、まるで
卯
(
う
)
の花
縅
(
おどし
)
の
鎧
(
よろい
)
の袖を、こう
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
径
(
こみち
)
を挟んで、水に臨んだ一方は、人の
小家
(
こいえ
)
の
背戸畠
(
せどばたけ
)
で、大根も葱も植えた。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
意気な
小家
(
こいえ
)
に
流連
(
いつづけ
)
の朝の
手水
(
ちょうず
)
にも、砂利を含んで、じりりとする。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小
常用漢字
小1
部首:⼩
3画
家
常用漢字
小2
部首:⼧
10画
“小家”で始まる語句
小家来