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あとさき
ふりがな文庫
“
前後
(
あとさき
)” の例文
つい、その
頃
(
ころ
)
、
門
(
もん
)
へ
出
(
で
)
て——
秋
(
あき
)
の
夕暮
(
ゆふぐれ
)
である……
何心
(
なにごころ
)
もなく
町通
(
まちどほ
)
りを
視
(
なが
)
めて
立
(
た
)
つと、
箒目
(
はゝきめ
)
の
立
(
た
)
つた
町
(
まち
)
に、ふと
前後
(
あとさき
)
に
人足
(
ひとあし
)
が
途絶
(
とだ
)
えた。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「その殺された甚助の後を追って、出て行ったお前さんにも疑いが掛らずには済むまい。もう少し
前後
(
あとさき
)
の様子を話して貰えまいか」
銭形平次捕物控:060 蝉丸の香炉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
源は
前後
(
あとさき
)
の考があるじゃなし、不平と
怨恨
(
うらみ
)
とですこし目も
眩
(
くら
)
んで、有合う
天秤棒
(
てんびんぼう
)
を振上げたから
堪
(
たま
)
りません——お隅はそこへ
什
(
たお
)
れました。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
前後
(
あとさき
)
に二人ずつ居りまして、
中乗
(
なかの
)
りが三人ぐらい居まして、
忽
(
たちま
)
ちに前橋まで此の筏が下りて参りますが、中々容易なものでは有りません。
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
とかく愚痴っぽい母親が、奥の
納戸
(
なんど
)
でゴツゴツした
手織縞
(
ておりじま
)
の着物を引っ張ったり畳んだりしていると、
前後
(
あとさき
)
の考えのない父親がこう言って主張した。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
「でしょう」などと
前後
(
あとさき
)
のない詞があって、貞之進は何を話すことか一向解せぬけれども、末の一段が何だか気に懸り、ことに泣通したということが
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
この鏡を取った
前後
(
あとさき
)
のお話しを申し上げた時、この珍らしい鏡というものを拝見に来ていた、沢山の
貴
(
たっと
)
い人々の内で、泣かぬ者は一人もありませんでした。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
そんなことをいっているとき、さっきの労働服を着たアメリカ軍が五人ばかり、
前後
(
あとさき
)
になって入ってきた。
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それ故その身の上ばなしも、
前後
(
あとさき
)
辻褄の合わぬことも多くって、私には何処までが真個なのか分らない。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
かような手続の
前後
(
あとさき
)
にまで
目角
(
めかど
)
を立てられる教育家の不心得の方がよほど
怪
(
け
)
しからん事かと存じます。
離婚について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
敬太郎は
前後
(
あとさき
)
を
綜合
(
すべあ
)
わして、何でもよほど
貴
(
たっ
)
とい、また大変珍らしい、今時そう
容易
(
たやす
)
くは手に入らない時代のついた
珠
(
たま
)
を、女が男から
貰
(
もら
)
う約束をしたという事が解った。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「何を生意気な」葉子は
前後
(
あとさき
)
なしにこう心のうちに叫んだが
一言
(
ひとこと
)
も口には出さなかった。敵意——
嫉妬
(
しっと
)
ともいい代えられそうな——敵意がその瞬間からすっかり根を張った。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彦兵衛、同時に
前後
(
あとさき
)
に気を使いながら突風に逆らって行くのだが、なかなか容易な業ではない。が、そこはよくしたもので、甚右衛門は絶えず音を立てているから、それを知辺に方向が定められる。
釘抜藤吉捕物覚書:08 無明の夜
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
列車は
前後
(
あとさき
)
が三等室で、
中央
(
まんなか
)
が一二等室、見ると後の三等室から、髪をマガレットに
束
(
つか
)
ねた夕闇に雪を
欺
(
あざむ
)
くような乙女の半身が現われた。今玉のような
腕
(
かいな
)
をさし伸べて戸の
鍵
(
ラッチ
)
をはずそうとしている。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
ところが源之進が余りの
醜男
(
ぶおとこ
)
なのに厭気がさし(長いこれからの浮世を、こんな男と一緒にくらさなければならないとは。厭だ厭だ)と思い詰め、
生
(
き
)
一本の娘の、
前後
(
あとさき
)
見ない感情からその席を
遁
(
の
)
がれ
猿ヶ京片耳伝説
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
御用あるにつきすぐと来たられべしと
前後
(
あとさき
)
なしの棒口上。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
岡部精一、吉田東伍二氏も
前後
(
あとさき
)
になつて死んで往つた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
西山
(
せいざん
)
に
沈
(
しづみ
)
しかば
惡漢
(
わるもの
)
共兩人
前後
(
あとさき
)
より引
挾
(
はさ
)
み御旅人
酒代
(
さかて
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
そのままには帰らないで、溝伝いにちょうど
戸外
(
おもて
)
に向った六畳の出窓の前へ来て、
背後向
(
うしろむき
)
に
倚
(
よ
)
りかかって、
前後
(
あとさき
)
を
眗
(
みまわ
)
して、ぼんやりする。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「今、いろ/\聽いてゐたんだが、もう一度お前の口から話しちやくれまいか。菱屋のことや、金藏の行方不明になつた
前後
(
あとさき
)
のことだよ」
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
誠に有難い事と心得まして、只私はえゝ何うも其の有難くばかり存じますので、へえ自然に申上げます事もその
前後
(
あとさき
)
に相成ります
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
熟々
(
しみじみ
)
奥様があの巡礼の口唇を見つめて
美
(
い
)
い声に聞惚れた御様子から、
根彫葉刻
(
ねほりはほり
)
御尋ねなすった御話の
前後
(
あとさき
)
を考えれば、あんな
落魄
(
おちぶれ
)
た女をすら、まだしもと御
羨
(
うらや
)
みなさる程に御思召すのでした。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
御用あるにつき直と来られべしと
前後
(
あとさき
)
無しの棒口上。
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「今、いろいろ聴いていたんだが、もう一度お前の口から話しちゃくれまいか。菱屋のことや、金蔵の行方不明になった
前後
(
あとさき
)
のことだよ」
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
……それが、
溝
(
どぶ
)
を
走
(
はし
)
り、
床下
(
ゆかした
)
を
拔
(
ぬ
)
けて、しば/\
人目
(
ひとめ
)
につくやうに
成
(
な
)
つたのは、
去年
(
きよねん
)
七月
(
しちぐわつ
)
……
番町學校
(
ばんちやうがくかう
)
が
一燒
(
ひとや
)
けに
燒
(
や
)
けた
前後
(
あとさき
)
からである。
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私
(
わたくし
)
が
愚昧
(
ぐまい
)
でございまして、それゆえ申上げますことも
前後
(
あとさき
)
に相成ります事でございまして、何かとお疑ぐりを受けますことに相成りましたが、なか/\何う致しまして
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
寂然
(
しん
)
として、
果
(
はて
)
は目を
瞑
(
つむ
)
って聞入った旅僧は、夢ならぬ顔を上げて、
葭簀
(
よしず
)
から街道の
前後
(
あとさき
)
を
視
(
なが
)
めたが、日脚を仰ぐまでもない。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そっと客間の障子を
開
(
ひら
)
き中へ
入
(
い
)
り、十二畳一杯に釣ってある蚊帳の
釣手
(
つりて
)
を切り払い、
彼方
(
あなた
)
へはねのけ、グウ/\とばかり
高鼾
(
たかいびき
)
で
前後
(
あとさき
)
も知らず
眠
(
ね
)
ている源次郎の
頬
(
ほう
)
の
辺
(
あた
)
りを
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「ところで、外に變つたことはありませんか、その
前後
(
あとさき
)
に」
銭形平次捕物控:226 名画紛失
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
加茂川の邸へはじめての客と見える、
件
(
くだん
)
の五ツ紋の
青年
(
わかもの
)
は、
立停
(
たちどま
)
って
前後
(
あとさき
)
を
眗
(
みまわ
)
して
猶予
(
ためら
)
っていたのであるが、今
牛乳屋
(
ちちや
)
に教えられたので振向いて
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
此方
(
こちら
)
はまだ年が若いから、何の気も附かず、是は全くお梅から届けたものと心得て、
前後
(
あとさき
)
の思慮も浅く、其の巾着の内へ、本堂
再建
(
さいこん
)
の普請金八十両というものを盗み出して押込み
闇夜の梅
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「それがわからないから、
前後
(
あとさき
)
のことを訊きたいのだよ」
銭形平次捕物控:225 女護の島異変
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
けれども、私だって、まるで夢を見たようなんですから、霧の中を探るように、こう
前後
(
あとさき
)
を
辿
(
たど
)
り辿りしないと、
茫
(
ぼう
)
として
掴
(
つかま
)
えられなくなるんですよ。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「どんな樣子でした、
前後
(
あとさき
)
のことを少し詳しく——」
銭形平次捕物控:251 槍と焔
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
急いで手拭を
懐中
(
ふところ
)
へ突込むと、若手代はそこいらしきりに
前後
(
あとさき
)
を
眗
(
みまわ
)
した、……私は書割の山の陰に
潜
(
ひそ
)
んでいたろう。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
藍
(
あい
)
がかった水の
流
(
ながれ
)
が、緩く
畝
(
うね
)
って、
前後
(
あとさき
)
の霞んだ処が、枕からかけて、
睫
(
まつげ
)
の上へ、自分と何かの
境目
(
さかいめ
)
へ
露
(
あらわ
)
れる。……
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ひとり境内に
彳
(
たたず
)
みしに、わッという声、笑う声、木の蔭、井戸の裏、堂の奥、廻廊の下よりして、五ツより八ツまでなる
児
(
こ
)
の五六人
前後
(
あとさき
)
に走り出でたり
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
楫
(
かじ
)
も
櫓
(
ろ
)
もない、舟に、
筵
(
むしろ
)
に乗せられて、波に流されました時、父親の約束で、海の中へ捕られて
行
(
ゆ
)
く、私へ供養のためだと云って、船の左右へ、
前後
(
あとさき
)
に
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、令夫人は仲通りの
前後
(
あとさき
)
を、芝居気の無い娘じみた
眗
(
みまわ
)
し方。で、
件
(
くだん
)
の番小屋の羽目を、奥の方へ誘い入れつつ
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あんまり思懸けない方がお見えなさいましたもんですから、私は
狼狽
(
とっち
)
てしまってさ。ほほほ、いうことも
前後
(
あとさき
)
になるんですもの、まあ、御免なさいまし。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ひとり
境内
(
けいだい
)
に
彳
(
たたず
)
みしに、わツといふ声、笑ふ声、木の蔭、井戸の裏、堂の奥、廻廊の下よりして、五ツより
八
(
や
)
ツまでなる
児
(
こ
)
の五、六人
前後
(
あとさき
)
に走り
出
(
い
)
でたり
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
早速
(
さそく
)
に一人が喜助と云う身で、若い妓の袖に
附着
(
くッつ
)
く、
前後
(
あとさき
)
にずらりと六人、列を造って練りはじめたので、あわれ、若い妓の素足の指は、
爪紅
(
つまべに
)
が震えて留まる。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
狭いが、
群集
(
ぐんじゅ
)
の
夥
(
おびただ
)
しい町筋を、斜めに
奴
(
やっこ
)
を連れて帰る——
二個
(
ふたつ
)
、
前後
(
あとさき
)
にすっと並んだ薄色の
洋傘
(
こうもり
)
は、大輪の
芙蓉
(
ふよう
)
の
太陽
(
ひ
)
を浴びて、冷たく輝くがごとくに見えた。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それと二人は
卓子
(
テエブル
)
を
挟
(
さしはさ
)
んで
斉
(
ひと
)
しく立上ったのが、一所になり
前後
(
あとさき
)
になって出ようとする、横合の椅子から
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前後
(
あとさき
)
を
眗
(
みまわ
)
しながら、
密
(
そっ
)
とその縄を取って
曳
(
ひ
)
くと、
等閑
(
なおざり
)
に土の割目に刺したらしい、竹の根はぐらぐらとして、縄がずるずると
手繰
(
たぐ
)
られた。慌てて放して、後へ
退
(
さが
)
った。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
先刻
(
さっき
)
中引けが過ぎる頃、伸上って
蔀
(
しとみ
)
を下ろしたり、仲の町の
前後
(
あとさき
)
を見て戸を閉めたり、揃って、
家並
(
やなみ
)
は残らず音も無いこの
夜更
(
よふけ
)
の空を、
地
(
じ
)
に引く腰張の暗い板となった。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、話の意味は通ぜずに、そのまま捻平のがまた
曳出
(
ひきだ
)
す……
後
(
あと
)
の車も続いて
駈
(
か
)
け出す。と二台がちょっと
摺
(
す
)
れ摺れになって、すぐ
旧
(
もと
)
の通り
前後
(
あとさき
)
に、流るるような月夜の車。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前後
(
あとさき
)
に次第に高くなって、白い
梟
(
ふくろ
)
、化梟、
蔦葛
(
つたかずら
)
が鳥の毛に見えます、その石段を
攀
(
よ
)
じるのは、まるで
幻影
(
まぼろし
)
の女体が捧げて、頂の松、電信柱へ、竜燈が
上
(
あが
)
るんでございました。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「話が
前後
(
あとさき
)
になったんだがね、……夢を見たのは、姉がもう行方知れずになってからです。」
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
初夜
(
しよや
)
過
(
す
)
ぎの
今頃
(
いまごろ
)
を
如何
(
いか
)
に
夏
(
なつ
)
の
川縁
(
かはべり
)
でも
人通
(
ひとどほ
)
りは
絶
(
た
)
えてない。
人
(
ひと
)
も
車
(
くるま
)
も、いづれ
列席
(
れつせき
)
したものばかりで、……
其
(
そ
)
の
前後
(
あとさき
)
の
車
(
くるま
)
の
中
(
なか
)
から、
彼
(
かれ
)
は
引外
(
ひきはづ
)
して、
此處
(
こゝ
)
に
入
(
はひ
)
つて
來
(
き
)
たのである。
月夜車
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
“前後”の解説
前後(ぜんご・まえうしろ)とは、六方位(六方)の名称の一つで、縦や奥行を指す方位の総称。この内、進む方向を前(まえ)、これと対蹠に退く方向を後(うしろ)という。
古くは「まへ」・「しりへ」とも呼ばれた。「へ」は方向を指し、「まへ」は目の方向、「しりへ」は背の方向である。
(出典:Wikipedia)
前
常用漢字
小2
部首:⼑
9画
後
常用漢字
小2
部首:⼻
9画
“前後”で始まる語句
前後左右
前後不覚
前後上下
前後不揃
前後不覺
前後夢中
前後忘却
前後漢書
前後疾走
前後の文章