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傍
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わき
ふりがな文庫
“
傍
(
わき
)” の例文
寝床の敷いてある六畳の方になると、東側に六尺の
袋戸棚
(
ふくろとだな
)
があって、その
傍
(
わき
)
が
芭蕉布
(
ばしょうふ
)
の
襖
(
ふすま
)
ですぐ隣へ
往来
(
ゆきかよい
)
ができるようになっている。
変な音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と客の前から、いきなり座敷へ飛込んで、
突立状
(
つったちざま
)
に
指
(
ゆびさ
)
したのは、床の間
傍
(
わき
)
の、
欞子
(
れんじ
)
に据えた
黒檀
(
こくたん
)
の机の上の立派な卓上電話であった。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
寒い時分で、私は仕事机の
傍
(
わき
)
に
紫檀
(
したん
)
の
長火鉢
(
ながひばち
)
を置いていたが、彼女はその
向側
(
むこうがわ
)
に
行儀
(
ぎょうぎ
)
よく坐って、両手の指を火鉢の
縁
(
ふち
)
へかけている。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
が、私はよく勝手を知っていたので、庭の目隠しの下から手を差し込んで
木戸
(
きど
)
の
鍵
(
かぎ
)
を外し、便所の
手洗鉢
(
てあらいばち
)
の
傍
(
わき
)
から家の中に
這入
(
はい
)
った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
井戸の
傍
(
わき
)
を通ると、釣瓶も釣瓶
繩
(
たば
)
も流しに手繰り上げてあツて、其がガラ/\と
干乾
(
ひから
)
びて、其處らに石
灰
(
ばい
)
が薄汚なくこびり付いてゐた。
昔の女
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
▼ もっと見る
帽子に着いている血の
染
(
しみ
)
と、急拵えの石の
竈
(
かまど
)
と、その
傍
(
わき
)
に落ちていたセリ・インデヤ人の毒矢とを見れば、ジョン少年の運命は知れる。
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
其証拠とも云う
可
(
べ
)
きは寝床の用意既に整い、寝巻及び肌着ともに寝台の
傍
(
わき
)
に
出
(
いだ
)
しあり
猶
(
な
)
お
枕頭
(
まくらもと
)
なる
小卓
(
ていぶる
)
の上には
寝際
(
ねぎわ
)
に
飲
(
のま
)
ん為なるべく
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
山三郎は石塔の際へ馬を
止
(
とゞ
)
めて居る。圖書は山三郎はまだ
来
(
きた
)
らんと心得てぱっ/\と土煙を立って参りますと、
傍
(
わき
)
から声を掛けまして
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それも道理であつて見れば
傍
(
わき
)
から妾の慰めやうも無い訳、嗚呼何にせよ目出度う早く帰つて来られゝばよいと、口には出さねど女房気質
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
僕は
傍
(
わき
)
を向いて聞かない振をしていた。誰を仲間に入れるとか入れないとか云って、
暫
(
しばら
)
く相談していたが、程なく皆出て行った。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
大使の家族に礼をした時、ガロエイ卿と夫人とは無愛想に首を曲げただけで、マーガレット嬢は
傍
(
わき
)
を向いてしまったのである。
秘密の庭
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
小僧は火の気のない帳場格子の
傍
(
わき
)
に坐って、懐手をしながら、コクリコクリ
居睡
(
いねむ
)
りをしていた。時計がちょうど七時を打った。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
勇んで——さうだ、彼は、ちよつと自分の姿を
傍
(
わき
)
から眺めて見ると、あまり勇みたち過ぎてゐる自分が癪に触るほどだつた。
陽に酔つた風景
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
このお客様なんぞは
傍
(
わき
)
で聞いておりまして、そんなことを言ってはよくなかろうぜと気をつけて上げたくらいでございます。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして桃色の緞帳のかかった舞台の
傍
(
わき
)
にある弁士出入口のカーテンをかかげて、説明者が現われるのであるが、我々と同期のファンにとっては
牛込館:映画館めぐり(十)
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
こんな恰好で神宮を出でたつと道路の
傍
(
わき
)
に、年の頃二十
計
(
ばか
)
りの若者が羽織を着、膝を付けて、信長に声を掛けられるのを待って居る様子である。
桶狭間合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
日記にはその日の記事の
傍
(
わき
)
に紙切れが丹念に貼りつけてある。小さな伝票用紙である。俳句は走り書きにしたためてあって、極めて読みにくい。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
「おや何かしらん」と
怪
(
あやし
)
みつつ
漸々
(
ようよう
)
にその
傍
(
わき
)
へ
近付
(
つかづ
)
いて見ると、岩の上に若い女が
俯向
(
うつむ
)
いている、これはと思って横顔を
差覘
(
さしのぞ
)
くと、
再度
(
ふたたび
)
喫驚
(
びっくり
)
した。
テレパシー
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
象は、あわてて麹町一丁目の詰番所
傍
(
わき
)
の
空地
(
あきち
)
へ引込んで
葭簀
(
よしず
)
で囲ってしまい、ご通路の白砂を敷きかえるやら、
禊祓
(
みそぎはら
)
いをするやら、てんやわんや。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その時この店の持主池田
何某
(
なにがし
)
という男に事務員の竹下というのが附き
随
(
したが
)
い、コック場へ通う帳場の
傍
(
わき
)
の戸口から出て来る姿が、酒場の鏡に映った。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
気がつくと、おみつ、幸七、小僧と、それに近所の弥次馬が加わって、勝手元から両
傍
(
わき
)
の小路まで人の垣根が出ていた。
釘抜藤吉捕物覚書:03 三つの足跡
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
肝心の犯罪捜査を外れた
傍
(
わき
)
道に種々の揷話を生んだものだが、この、漫画に出てくる「ジャック」、舞台や仮装舞踏会の彼の
扮装
(
ふんそう
)
は、かならずその
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
一週
(
ひとまはり
)
すれば二里半にあまるといふ天然の大牧場、そここゝの小松の
傍
(
わき
)
には
臥
(
ね
)
たり起きたりして居る牝牛の群も見える。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
その話すところに由ると、潮来で遊んで閘門の
傍
(
わき
)
に繋いで置いた自分の船に帰つて来たまでは覚えてゐるが、あとは知らない、ちつとも知らない……。
船路
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
風間光枝は、
挨拶
(
あいさつ
)
をかえして、入口を入った左の
隅
(
すみ
)
のところにある応接椅子に腰を下ろした。その
傍
(
わき
)
に、別な部屋へいくらしい扉があって、閉っていた。
什器破壊業事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
病気で寝ていた房枝の母親が玄関
傍
(
わき
)
の三畳から出て応待した。併し婆さんはそれどころでないという様子だった。
街底の熔鉱炉
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
一刻も早く人通りのある往来へ出て了おうと焦りながら、針金を
亙
(
わた
)
した低い柵を越えて、ようやく池の
傍
(
わき
)
へ出た。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
はずかしめられ悲しみに沈んでいる者のように、彼は人家のすぐ
傍
(
わき
)
に寄って、ただ当てもなくまっすぐに歩いて行った。一度も後ろを振り返らなかった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
わたしが
傍
(
わき
)
を向いていたのは、せいぜい二分か三分に過ぎなかったが、そのあいだ兄と妹はどう相談をしたのか、網棚の上にあげてある
行李
(
こうり
)
をおろし始めた。
深見夫人の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼は
周章
(
あわて
)
て、上を向くと、鼻血は、鼻の
傍
(
わき
)
から、スーッと赤黒い線を残して、耳の裏に、遁げ込んで行った。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
そしてたいへん慌てながら、
傍
(
わき
)
に化粧をしてゐた、おめかし屋のイソクソキ(
啄木鳥
(
きつつき
)
のこと)にむかつて
小熊秀雄全集-14:童話集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
モオラン(Morning-run)と称する、朝の
駆足
(
かけあし
)
をやって帰ってくると、森さんが、合宿
傍
(
わき
)
の六地蔵の通りで背広を着て、
俯
(
うつむ
)
いたまま、何かを探していました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
おつかさまは、
和
(
やはら
)
かな調子で云ひきかせて、
傍
(
わき
)
にあつた駄菓子を紙に包んで、彼女の前にやつた。
夜烏
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
今だにあの
傍
(
わき
)
を通るにやあ、あらたかな十字架で、前もつて魔よけをしてからでなきやあ、誰ひとり近よる者もねえ、あの納屋を棲家にしをつてな、その悪魔の野郎め
ディカーニカ近郷夜話 前篇:03 ソロチンツイの定期市
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
ふと行きあったりすると、セエラは
傍
(
わき
)
を向いてしまいますし、アアミンガアドはアアミンガアドで、妙にかたくなってしまって、言葉をかけることも出来ませんでした。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
その一身に
体
(
たい
)
している一剣になぜ成りきらないか。なぜ
傍
(
わき
)
を見るか。なぜそこに澄みきらないか。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
主筆は例の如く少し曲つた広い背を
此方
(
こつち
)
に向けて、
暖炉
(
ストーブ
)
の
傍
(
わき
)
の窓際で新着の雑誌らしいものを読んで居る。「何も話して居なかつたナ。」と思ふと、野村は少し安堵した。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そうしたら、電車に別れて、あの辺特有の、今ならば霜解けの
非道
(
ひど
)
い、
鋪装
(
ペイヴ
)
してない歩道
傍
(
わき
)
の土を踏まなければなりません。ベニイの家は、その近くから始まっています。
踊る地平線:10 長靴の春
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
版で
摺
(
す
)
ってあるという。(板の字の
傍
(
わき
)
に棒が引いてあるから、これはハンと音で読むのである)
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
アルトヴェル氏は、暖炉の
薪架
(
まきだい
)
に片足をかけて、もじもじしながら
傍
(
わき
)
をむいて
低声
(
こごえ
)
でいった。
犬舎
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
そうして二人ともタッタ今血を見た人間とは思えぬ
沈着
(
おちつ
)
いた態度で、街道の
傍
(
わき
)
に立止まった。
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「すると!」と博士が
傍
(
わき
)
からいった「あんたは今夜私の実験室へこられなかったのですね」
危し‼ 潜水艦の秘密
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
寄附金といわれて我知らずどきまぎしたが「
大略
(
あらまし
)
集まった」と
僅
(
わずか
)
に答えて直ぐ
傍
(
わき
)
を向いた。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
殊
(
こと
)
に便所は座敷の
傍
(
わき
)
の細い
濡椽
(
ぬれえん
)
伝いに
母家
(
おもや
)
と離れている様な具合、当人も
頗
(
すこぶ
)
る気に入ったので
直
(
すぐ
)
に
家主
(
やぬし
)
の
家
(
うち
)
へ行って相談してみると、
屋賃
(
やちん
)
も思ったより
安値
(
やす
)
いから非常に喜んで
暗夜の白髪
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
読みさしの本を
傍
(
わき
)
に置いて何か考えていると、思わずつい、うとうととする拍子に夢とも、
現
(
うつつ
)
ともなく、
鬼気
(
きき
)
人に迫るものがあって、カンカン明るく
点
(
つ
)
けておいた筈の
洋燈
(
ランプ
)
の
灯
(
あかり
)
が
女の膝
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
先に
除
(
よ
)
けてか林の
傍
(
わき
)
の
草原
(
くさはら
)
を濡れつゝ
來
(
きた
)
る
母子
(
おやこ
)
あり
母
(
をや
)
は三十四五ならんが貧苦に
窶
(
やつ
)
れて四十餘にも見ゆるが脊に
三歳
(
みつ
)
ばかりの子を負ひたり
後
(
うしろ
)
に歩むは
六歳
(
むつ
)
ばかりの女の子にて下駄を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
谷の
傍
(
わき
)
の山道をうろ/\としてゐますと、一
疋
(
ぴき
)
の
大蛇
(
だいぢや
)
が向うへ出てきましたので、びつくりして、そこの岩陰にかくれてをりますと、大蛇は神主のゐることを知らないものゝやうに
蛇いちご
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
その下にある中庭の
直
(
す
)
ぐ
傍
(
わき
)
の、薄暗い廊下を通って、小使部屋の前にくると内で
蕭然
(
しょんぼり
)
と、小使が一人でさも退屈そうに居るから、弟も通りがかりに、「おい淋しいだろう」と
談
(
はな
)
しかけて
死体室
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
「妙な物を見付けましたよ、旦那、死体の
傍
(
わき
)
の血の中にこれが落ちていました」
銭形平次捕物控:024 平次女難
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
所
(
ところ
)
が
不圖
(
ふと
)
傍
(
わき
)
を
見
(
み
)
ると
自分
(
じぶん
)
の
身長
(
せい
)
くらゐもある
大
(
おほ
)
きな
菌
(
きのこ
)
が
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
るのに
氣
(
き
)
がつくや、
早速
(
さつそく
)
其兩面
(
そのりやうめん
)
と
後
(
うし
)
ろとを
見終
(
みをは
)
つたので、
次
(
つぎ
)
には
其頂
(
そのいたゞ
)
きに
何
(
なに
)
があるかを
能
(
よ
)
く
檢査
(
けんさ
)
する
必要
(
ひつえう
)
が
起
(
おこ
)
つて
來
(
き
)
ました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
傍
常用漢字
中学
部首:⼈
12画
“傍”を含む語句
近傍
路傍
傍若無人
傍人
傍観
其傍
片傍
傍目
傍輩
傍聞
傍題
傍眼
両傍
傍岡
直傍
傍見
御傍
傍聴
傍視
傍々
...