しやく)” の例文
成程こんな女のしやくで、高輪の宿に一と晩を明かしたら、江戸のトバ口で蔭膳を三日据ゑられるといふ、川柳の馬鹿もある程のことです。
……とその大湯おほゆ温泉をんせんで、おしろひのはなにもない菜葉なつぱのやうなのにしやくをされつゝ、画家ゑかきさんがわたしたちにはなしたのであつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひさりであなたにお目にかゝつてそのおしやくいたゞくのはお祖師様そしさまあはせでございませう、イエたんとはいたゞきません。
ふさ燗瓶かんびんあげしやくをした。銀之助は会社から帰りに何処どこかで飲んで来たと見え、此時このときすでにやゝよつて居たのである。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
いやなおひとにはおしやくをせぬといふが大詰おほづめのきまりでござんすとておくしたるさまもなきに、きやくはいよ/\面白おもしろがりて履歴りれきをはなしてかせよさだめてすさましい物語ものがたりがあるに相違さういなし
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はやく酒殽さかなをつらねてすすめまゐらすれば、八四万作しやくまゐれとぞおほせらる。かしこまりて、美相びさう若士わかさぶらひ膝行ゐざりよりて八五瓶子へいじささぐ。かなたこなたにさかづきをめぐらしていと興ありげなり。
二人前半四郎の方へすゑければ後藤ははしらしばつけ置たる盜人のなはときコレ汝爰へ來てしやくをせよと茶碗ちやわんを出しければ彼曲者かのくせものはヘイ/\と云ながら怖々こは/\酒をつぐに後藤は大安坐おほあぐらをかいて酒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
細長い酒瓶さけがめと、大きなさかづきでした。ピチ公はおしやくをしてやりました。そして彼が一杯飲むと、眼瞼まぶたをぱちぱち動かしてみせました。二杯目には、鼻の頭をひくひく動かしてみせました。
金の猫の鬼 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
「さあ、どうぞ兄さん、何にもお口に合ふものがございませんで……。」と彼女は何時の間にか帯をしめ直して、くつきりと身じまひを見せながら客におしやくを始めた時はもう夕方だつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
富岡は、赤いイブニングを着た女が気に入つた。その女のしやくでビールを飲んだ。ビールが、こんなに美味うまいものとは思はなかつた。雨の降つてゐない、香ばしく乾いた夜気は、久しぶりに爽快だつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
しやくさせませうか
極楽とんぼ (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
自分の家へ歸つて、一と風呂浴びて來て、久しぶりで一本、女房のしやくで始めたところへ、我慢のならぬガラツ八が顏を出しました。
ところが、今日けふくわい眞面目まじめなんだよ。婦人をんなたちはおしやくたのでもなければ、取卷とりまきでもない、じつ施主せしゆなんだ。」
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さ、おべよ、おまへいて芽出度めでたいからおいはひだよ、わたしがおしやくをしてげよう……お猪口ちよこ其処そこらアね。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
なし茶碗ちやわんつぎした打鳴うちならし呑ける程にむねに一物ある寶澤はしやくなど致し種々とすゝめける婆は好物かうぶつの酒なれば勸めに隨ひ辭儀じぎもせず呑ければ漸次しだいよひ出て今は正體しやうたいなく醉臥ゑひふしたり寶澤熟々此體このてい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
平民へいみんかとへばうござんしようかとこたふ、そんなら華族くわぞくわらひながらくに、まあ左樣さうおもふてくだされ、お華族くわぞく姫樣ひいさまづからのおしやく、かたじけなく御受おうけなされとて波々なみ/\とつぐに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もう一人の女はお梅と言つて二十歳くらゐ、これは一寸樣子は良いが、しやくをするより外に能はありません。ところで、もう一人
もりにかけとはかぎらない。たとへば、小栗をぐりがあたりいもをすゝり、柳川やながはがはしらをつまみ、徳田とくだがあんかけをべる。おしやくなきがゆゑに、あへ世間せけんうらまない。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
相手あひて差置さしおき伯父九郎兵衞の前は道連みちづれの人が尋ねて參りしと申おきしに藤八はやがて酒宴の席をのぞき見れば二ツまげの後家のそばに居るともゑもんつきたる黒の羽織を着せし者と其そばに居る花色はないろ布子ぬのこしやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
中硝子なかがらす障子しやうじごしに中庭なかにはまつ姿すがたをかしと絹布けんぷ四布蒲團よのぶとんすつぽりと炬燵こたつうちあたゝかに、美人びじんしやく舌鼓したつゞみうつゝなく、かどはしたるひろひあれは何處いづこ小僧こそうどん雪中せつちゆうひと景物けいぶつおもしろし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
芸妓げいぎくおしやくのから子供を多くお呼び被成なさるのがおすきだとさ。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
一昨日は三月の晦日みそかで、夜中近くまで弟の金次郎を相手に帳面を調べ、それからめいのお豊のしやくで珍しく一杯呑んで寢たのは子刻こゝのつ(十二時)過ぎ。
なだ銘酒めいしゆ白鶴はくつるを、白鶴はくかくみ、いろざかりをいろもりむ。娘盛むすめざかり娘盛むすめもりだと、おじやうさんのおしやくにきこえる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此湯呑このゆのみでおあがんなさいまし、おしやくをしませう。
「氣がきかないお樂だな。お前のところには、おあさとかいふ娘があつた筈ではないか。しやくも大事なおもてなしだ、平常着ふだんぎのまゝで構はぬ、出せ/\」
もつとも、あつしのところの居候は女の子だから、少しは役に立ちますよ。煙草も買つてくれるし、使ひ走りもしてくれるし、頼めばおしやくもしてくれる」
美しいおつたにおしやくをさせて、ビードロの盃になみ/\と注いだ赤酒。くちびるまで持つて行つて、フト下へ置きました。
元は水茶屋に奉公してゐたお靜ですが、さすがに夫の留守に、子分の酒のしやくまでしてやるのをはゞかつたのでせう。
「俵屋の金之助の傳言ことづてを持つて來たのだよ、まア、一つしやくをしてくれ、呑みながらゆつくり話さうぢやないか」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
しやくは醗酵し過ぎたやうな大年増、萬兵衞のめかけでお常といふ、昔は隨分美しくもあつたでせうが、朝寢と美食と、不精と無神經のために、見事に脂肪が蓄積して
「ちよいと待つてくれ、俺達は御用に來てゐるんだ。此處で師匠のしやくで呑んでゐちや、天道てんたう樣に濟まねえ」
「お夏は、おしやくをしながら、あちこちと歩いてゐました。それから、直次郎と品吉は、お茶やお菓子やお料理を配つて、最初から坐るひまもなかつたやうです」
「この振袖は、月見の晩、年を取つてた方のおしやくの着てゐたものに相違あるまい」
しやくが良いからすつかり醉つてしまつて、日の暮れたのも知らずに居ましたよ」
「滅多に召し上がりません。——でも昨夜ゆうべはよく/\面白くなかつたんでせう。私を呼んで一本つけさして、しやくには及ばないと言つて、其處の柱にもたれて、一人で呑んでいらつしやいました」
「お富、——あれほど言つて置いたぢやないか、しやくをして上げな」
「内藤新宿の喜之字屋といふお茶屋からも、是非にと頼まれて行つたが、これも何んにも出なかつた。おしやくに雇入れた若い娘は、人買の手から入れた可哀想なのが多く、人は知らなくても、天道樣は見通しで」
「その代りしやくでもしたのか」
しやくは?」