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跨
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また
ふりがな文庫
“
跨
(
また
)” の例文
我を忘れてばらばらとあとへ
遁帰
(
にげかえ
)
ったが、気が付けば例のがまだ居るであろう、たとい殺されるまでも二度とはあれを
跨
(
また
)
ぐ気はせぬ。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小者
(
こもの
)
の事なので、頼朝は、そうかと、気にもかけない容子で、いつもの朝の如く、りんどうの鞍へ
跨
(
また
)
がって、野へ駒を
調
(
な
)
らしに出た。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
両岸から
鉄線
(
はりがね
)
で
吊
(
つ
)
ったあぶなげな仮橋が川を
跨
(
また
)
げて居る。橋の口に立札がある。
文言
(
もんごん
)
を読めば、曰く、五人以上同時に
渡
(
わた
)
る可からず。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
一旦
(
いったん
)
、師匠の家へ行った以上、どういうことがあろうとも、年季の済まぬ
中
(
うち
)
にこの家の敷居を
跨
(
また
)
いではならんといったではないか。
幕末維新懐古談:18 一度家に帰り父に誡められたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
声を和らげ、
微笑
(
えみ
)
をつくつた其様子を見て、マアなんといふ深切な人だかと
嬉
(
うれ
)
しく、早速敷居を
跨
(
また
)
ぎ
升
(
まし
)
た。主人はいよ/\笑顔になり
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
▼ もっと見る
お前は、毒菓子から
目印
(
めじるし
)
の赤い飾り種を
削
(
けづ
)
り取り、懷ろ紙か何かに包んで持つて來る途中、小窓を
跨
(
また
)
ぐとき敷居にこぼしたことだらう。
銭形平次捕物控:223 三つの菓子
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「そこいらから始まるんだな、苦みや甘みや辛みを、一つ一つあじわいながらな」と木内は云った、「あんたは敷居を
跨
(
また
)
いだのさ」
へちまの木
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
堺筋
(
さかいすじ
)
今橋の事務所から、一と
跨
(
また
)
ぎの距離なので帽子も
被
(
かぶ
)
らずに昇降機に走り込み、電車通りを横切って向う角の三越へ
駈
(
か
)
け付けた。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
床屋
(
とこや
)
の
伝吉
(
でんきち
)
が、
笠森
(
かさもり
)
の
境内
(
けいだい
)
へ
着
(
つ
)
いたその
時分
(
じぶん
)
、
春信
(
はるのぶ
)
の
住居
(
すまい
)
で、
菊之丞
(
きくのじょう
)
の
急病
(
きゅうびょう
)
を
聞
(
き
)
いたおせんは
無我夢中
(
むがむちゅう
)
でおのが
家
(
いえ
)
の
敷居
(
しきい
)
を
跨
(
また
)
いでいた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
所謂一人の
跨
(
また
)
に入りて万人の頭を越ゆるもので、平将門は摂政藤原忠平の家人となって、遂に東国に割拠する迄の素地を作った。
「特殊部落」と云う名称について
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
白斑
(
ぶち
)
の大きな木馬の
鞍
(
くら
)
の上に小さい主人が、両足を
蹈
(
ふ
)
ん張って
跨
(
また
)
がると、白い房々した
鬣
(
たてがみ
)
を動かして馬は前後に揺れるのだった。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
と、ありがたい事には力三は平気な顔で兄と
居相撲
(
すわりずまふ
)
か何か取つて、大きな声で笑つて居た。お末はほつと安心して敷居を
跨
(
また
)
いだ。
お末の死
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
溝
(
どぶ
)
と云ふ溝からはいづれも濁つた雨水の流れもせずに溢れてゐるのみか、道の上にも
跨
(
また
)
ぎ兼ねるやうな
溜水
(
たまりみづ
)
の、幾個所と知れぬ其の面に
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
「中の島」を
跨
(
また
)
いでいるポン・ド・パッシイの二階橋の階上を貨物列車が爽やかな息を吐きながらしず/\パッシイ街の方へ越えて行く。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
カブア家はヤルートとアイリンラプラプとの両地方に
跨
(
また
)
がる古い豪家で、マーシャル古譚詩の中にはしばしば出て来る名前だそうである。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
代助は、一つ店で別々の品物を買った後、平岡と連れ立って
其所
(
そこ
)
の敷居を
跨
(
また
)
ぎながら互に顔を見合せて笑った事を記憶している。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
春婦たちは船を
繋
(
つな
)
いだ黒い縄を
跨
(
また
)
ぎながら、樽の間へ消えてしまった。後には踏み
潰
(
つぶ
)
されたバナナの皮が、濡れた羽毛と一緒に残っていた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
小櫻姫
(
こざくらひめ
)
の
通信
(
つうしん
)
は
昭和
(
しょうわ
)
四
年
(
ねん
)
春
(
はる
)
から
現在
(
げんざい
)
に
至
(
いた
)
るまで
足掛
(
あしかけ
)
八
年
(
ねん
)
に
跨
(
また
)
がりて
現
(
あら
)
われ、その
分量
(
ぶんりょう
)
は
相当
(
そうとう
)
沢山
(
たくさん
)
で、すでに
数冊
(
すうさつ
)
のノートを
埋
(
うず
)
めて
居
(
お
)
ります。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
しかし
巻揚機
(
ウインチ
)
の滑車の鈎について上つて来たのは弾薬箱ではなくて、二十一インチの素晴しく大きな魚雷で、その上に
中原
(
なかはら
)
が
跨
(
また
)
がつてゐた。
怪艦ウルフ号
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
「そんならわけはねえ。ここからひと
跨
(
また
)
ぎだ。これからすぐ行って見よう。さあ、乗んねえ、乗んねえ、かついで行ってやる」
顎十郎捕物帳:18 永代経
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「しかし依然として酒も飲まず煙草も吸わず、カフェーの敷居も
跨
(
また
)
ぎません。習い性となってしまって、立派な
石部金吉
(
いしべきんきち
)
に育ち上りました」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
少し
狼狽
(
ろうばい
)
して、庸三は出て見たが、「二度と
己
(
おれ
)
の家の
閾
(
しきい
)
を
跨
(
また
)
ぐな」と
尖
(
とが
)
った声を浴びせかけて、ぴしゃりと障子を締め切った。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
床屋は言ひ付けられたやうに
翌
(
あく
)
る日の午過ぎ、その姿で恐る/\公爵邸の
閾
(
しきゐ
)
を
跨
(
また
)
ぐと、
昨日
(
きのふ
)
の
使者
(
つかひ
)
が出て来て一
室
(
ま
)
に案内した。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
項
(
えり
)
には銀の輪を掛け、手には鋼鉄の
叉棒
(
さすぼう
)
を握って一
疋
(
ぴき
)
の
土竜
(
もぐら
)
に向って力任せに突き刺すと、土竜は身をひねって彼の
跨
(
また
)
ぐらを
潜
(
くぐ
)
って逃げ出す。
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
それが——と思うと、やにわにテエブルの角を
跨
(
また
)
いで、しばらく適度に苦心
惨憺
(
さんたん
)
したのち、その十
法
(
フラン
)
札を挟んで悠々と持って行ってしまった。
踊る地平線:06 ノウトルダムの妖怪
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
お
品
(
しな
)
は
漸
(
やうや
)
く
商
(
あきなひ
)
を
覺
(
おぼ
)
えたといつて
居
(
ゐ
)
たのはまだ
其
(
そ
)
の
夏
(
なつ
)
の
頃
(
ころ
)
からである。
初
(
はじ
)
めは
極
(
きま
)
りが
惡
(
わる
)
くて
他人
(
たにん
)
の
閾
(
しきゐ
)
を
跨
(
また
)
ぐのを
逡巡
(
もぢ/\
)
して
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
長い旅から帰った巡礼のようにして留守宅の敷居を
跨
(
また
)
いだ岸本は、漸くのことで自分の子供等の側に休息らしい休息を見つけるように成った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その証拠と云うのは、乾板のある場所で廻転した際と、
枯芝
(
かれしば
)
を
跨
(
また
)
ぎ越した時と——その二つの場合に、
利足
(
ききあし
)
がどっちの足か吟味してみるんだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
崖下の
黯
(
くろ
)
い水も、何か
喚
(
わめ
)
きながら、高股になって、石を
跨
(
また
)
ぎ、抜き足して駈けている。崖の端には、車百合の赤い花が、ひときわ明るく目立つ。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
但し『浮雲』は二葉亭の思想動揺の過程に
跨
(
また
)
がって作られてるから、第一編と第二編と第三編と、各々箇立していて一貫する脈絡を欠いている。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
引かせた
副馬
(
そえうま
)
に
跨
(
また
)
がって少し歩ませてみては、いいかげんで馬上から飛び下りて、一行と共に談笑しながら
徒歩立
(
かちだ
)
ちになるという行進ぶりです。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
伊兵衞「御一緒に参りましょう、
生垣
(
いけがき
)
が低うございますから、
跨
(
また
)
いで逃出しでもなさると
私
(
わたくし
)
がしくじりますから……若旦那何処へいらっしゃる」
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
これは両方ともそうはっきり水と油と違うように違うわけのものではありませぬので、これに対して両方に
跨
(
また
)
いでいる。
古陶磁の価値:――東京上野松坂屋楼上にて――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
伸子は、淋しい暗い裏通りを、一
跨
(
また
)
ぎで自分の家へ戻ってきた。襖をあけると直ぐ、老人が真面目に不安そうに訊ねた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「
鹿角
(
かづの
)
打ったる
冑
(
かぶと
)
を冠り
紺糸縅
(
こんいとおどし
)
の
鎧
(
よろい
)
を着、十文字の
鎗
(
やり
)
提
(
ひ
)
っさげて、鹿毛なる
駒
(
こま
)
に打ち
跨
(
また
)
がり悠々と歩ませるその人こそ甚五衛門殿でございました」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「ふん、
厚
(
あつ
)
かましいお前さんの云ひさうなことだ。さうだらうと思つてゐた。お前さんが
閾
(
しきゐ
)
を
跨
(
また
)
いだときに、それは、もう
跫音
(
あしおと
)
で分つたからね。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
天明三年、信州と上州とに
跨
(
また
)
がる浅間山が爆発して熔岩を押しだし、それが利根川の下流まで流れ溢れ、私の村の近くは火石の原と化したのである。
たぬき汁
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
かぼちゃの
蔓
(
つる
)
を
跨
(
また
)
ぎ越え、すえ葉も枯れて
生垣
(
いけがき
)
に汚くへばりついている朝顔の実一つ一つ取り集めている
婆
(
ばば
)
の、この種を植えてまた来年のたのしみ
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
広巳は肆の者には眼もやらないで、肆の左側の通りぬけになった
土室
(
どま
)
を通って往った。そこに腰高障子が入っていて、その敷居を
跨
(
また
)
ぐと
庖厨
(
かって
)
であった。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
或日五百は使を
遣
(
や
)
って貞白を招いた。貞白はおそるおそる日野屋の
閾
(
しきい
)
を
跨
(
また
)
いだ。兄の非行を
幇
(
たす
)
けているので、妹に
譴
(
せ
)
められはせぬかと
懼
(
おそ
)
れたのである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
宮内はまだ、そこに死んでいるのではなかった、大刀を
杖
(
つえ
)
に、棟を
跨
(
また
)
いで突っ起ったが、乱髪を一とふり振った。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
そうして
平生
(
いつも
)
のように私の頭を撫でようとなされずに、ドスンドスンと私の琴を
跨
(
また
)
ぎ越して、お床の間に置いてある鹿の角の
刀掛
(
かたなかけ
)
の処にお出でになって
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
これが
乃
(
すなは
)
ち取りも直さず、中世紀末の大冒険家、地獄煉獄天国の三界を
跨
(
また
)
にかけたダンテ・アリギエリでさへ
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
その枝に
跨
(
また
)
がって、魚心堂先生に昼夜の別はない、夜中だというのに、いま
悠々
(
ゆうゆう
)
と糸を垂れていらっしゃる。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
水の
溜
(
たま
)
ってる面積は五、六町内に
跨
(
また
)
がってるほど広いのに、排水の落口というのは僅かに三か所、それが又、皆落口が小さくて、溝は七まがりと
迂曲
(
うきょく
)
している。
水害雑録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
かう気のついた彼は、すぐに
便々
(
べんべん
)
とまだ湯に浸つてゐる自分の愚を責めた。さうして、
癇高
(
かんだか
)
い小銀杏の声を聞き流しながら、柘榴口を外へ勢ひよく
跨
(
また
)
いで出た。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
約束の広小路で車は下りたが、料理屋待合船宿皆貞之進には
馴染
(
なじみ
)
のないものばかりで、どこの敷居を
跨
(
また
)
ごうかということが、車の上からの問題でまだ決しない。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
まず大きな牡猴がいかめしく緩歩し老若の大群随い行くに、児猴は母の背に
跨
(
また
)
がり、あるいは後肢を伸ばして
覆
(
うつ
)
むき臥し、前手で母の背毛を握って負われ居る。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
一しきり咳入った
後
(
のち
)
は、ぐったりと死骸の様に
横
(
よこた
)
わっている一寸法師の上を、肉襦袢のお花が、踊り廻った。肉つきのいい彼女の足が、
屡々
(
しばしば
)
彼の頭の上を
跨
(
また
)
いだ。
踊る一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
お照の甘ったるい声に送られて、僕は窓を
跨
(
また
)
いで小暗い地下道に下り立った。しかし、そのときはこれがお照との永のお別れになろうなどとは気がつかなかった。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
跨
漢検準1級
部首:⾜
13画
“跨”を含む語句
踏跨
大跨
一跨
打跨
蹈跨
引跨
小跨
跨下
跨倉
跨有
跨込